お気に入り登録であったり、最新話にしおりをつけてくれるのを見ると改めて多くの方に自分の書いた小説を読んでもらえているのだと実感します。
もっと多くの方に満足して読んでいただけるよう、努力していきます。
まるで赤い閃光が空を斬るかのようにランエボのテールランプが横切る。
見事なオーバーテイクだと抜かされた身とはいえ感じた。
鮮やかな左足ブレーキによる突っ込み。
この分野において清水は匠の域に達していただろう。
(遂に撃墜モードに入ったワケか)
今まで後ろに張り付いて獲物を狙う猛獣が飛び出してきたようだった。
高木にとって、ここで前を取られるのはかなり不利な状況だ。
だがアクセルを踏む右足は緩めようとしない。
不屈の精神が高木を我に返らせた。
そしてアクセルを底までベタ踏みする。
エンジンの回転数は一気に上昇する。
ハイカムに入ったことでエンジン音は甲高いものへと変化する。
それは前のランエボに必死に追いつこうとするエンジンの悲鳴や咆哮だった。
その前を行く清水は半ば勝ちを確信していた。
このストレートに持ち込んでしまえばどんなにドライバーの腕が良くともマシンのパワーで引き剥がすことができるからだ。
だが先ほどのコーナーで見せたコーナリングの技術は本物だった。
流石はかつて東堂塾最強の三本指に入る実力者。
おそらくこのままこのストレートで前に出なかったらこの後の連続ヘアピンで逃げ切られていただろう。
しかしこのまま逃げ切れるわけではないだろうと背後のエンジンの咆哮からヒシヒシと感じた。
ここから一体どのように巻き返していくんだ?
恐れ半分、どのような技術を見せてくれるのかという楽しみ半分で後方のCR-Xを警戒するのだった。
ストレート区間と言いつつも完全なストレートはすぐに終わり、タイトなコーナーが連続する区間に入る。
アクセル全開にしたくてもすぐにコーナーが出現する。
また道幅は狭く、運転席側からは見えにくい左側には蓋のない側溝が口を開けている。
見かけ以上に走行ラインは制限される。
僅かでもアクセルを抜くことでターボのブースト圧が下がりエンジンの本調子が出せない大柄なランエボ。
一方、NA・VTECによる低回転域でも本気を出すエンジンと軽量・コンパクトな車体によってCR-Xは軽快にこの区間を爆走する。
突如ランエボのヘッドライトによって目の前にコンクリートの岸壁が現れる。
清水はブレーキを踏む。
目の前のランエボのブレーキランプが視界いっぱいに照らされる。
一呼吸の後、高木はブレーキを踏む。
二台の間合いは縮まる。
そしてコーナーを曲がり、そのままランエボの後ろに張り付く。
油断は出来ない。
再び短くも真っ直ぐなストレートが現れる。
だが今度は決して逃しはしない。
ランエボは必死の加速をするが、CR-Xは補足し続ける。
再びコーナーが現れる。
二台の間合いは縮まるが、立ち上がりで伸びてしまう。
だがなんとか4連ヘアピンまでランエボに追いついていくことができた。
ここからはテクニカルな区間、車の性能差は縮まる。
勝負はここからだ。
「…そうか、分かった」
眼鏡を掛けた男は携帯電話からの連絡に短く応え、ガラの悪そうな男の方に体を向ける。
「来たか」
「ああ、あの2台は高速区間を終えてもうすぐここに来る」
「どっちが前なんだ」
「ランエボだ」
「あのサイバー、まだ引っ付いているのか」
ガラの悪そうな男は驚くわけでもなく、落ち着いて呟く。
「このバトル、どっちが勝つと思う」
「CR-Xだな」
眼鏡の男は即答する。
「どうして」
「地の利というのはあるだろう。だがそれ以上に彼は良い走りのセンスを持っていると思ったからだ。」
「センス?そんなアイマイなもので評価するのか」
「確かにセンスは数値や目で見れるものではないかもしれない。だけど俺は最初彼を見た時に醸し出していた雰囲気に賭けてみようと思う」
「…お前らしくはないが、そこまで言うんならそれに賭けてみようかな」
「彼はこの作戦の要なんだ。彼は絶対にあのプロジェクトDを打ち倒す存在になる」
眼鏡の奥の瞳は目の前のバトルではなく、その先の行方を見据えているようであった。
二台は一つ目のヘアピンに入る。
道幅が広くなり、仕掛けに行きやすい場所となる。
だがまだ仕掛けられるだけの間合いになっていない。
仕掛けるならこの先、接近戦になってからだ。
若干オーバースピード気味に突っ込む。
車体は外側に沈みこみ、時々浮きそうになるイン側の車体をしっかり支える。
前を行くランエボは元々ラリー用の柔らかめのサスペンションであるが、手を入れているのかあまり沈み込まない硬めのセッティングのようだ。
曲率の比較的大きい一つ目のヘアピンを抜けるとタイトコーナー区間だ。
左に緩くハンドルを切ると次は右に大きく切る。
その急激な運動の間にランエボに一気に近づく。
清水は右コーナーをアウト・イン・アウトで走行し、次のヘアピンも同じラインを取る。
ランエボがアウト側に逸れた時、高木の目の前の視界はついに広がった。
(ここだ!)
高木のCR-Xはそのままコーナーに突っ込み、ランエボのインを刺す。
左足ブレーキでコーナリングのアンダーを押し殺す。
「なにっ!」
清水は叫ぶ。
インにCR-Xが存在するのでこれ以上インにも、アウトにも寄ることができず、走行ラインが制限される。
「流石は東堂塾のトップ、、テクニックだけじゃなくて度胸も違う、、、」
「ここからは手加減なしでやらせてもらう!」
ランエボをようやく抜いたと思った束の間、猛烈な立ち上がりからの追い上げを見せる。
再び最初に見せたプレッシャーが押しかかる。
次の三つ目のヘアピンが現れる。
バックミラーのランエボは殺気を向けつつこちらを伺っているようだ。
ここもオーバー気味に突っ込んで左足ブレーキを使いつつコーナリングする。
だが後ろのランエボはほぼノーブレーキで突っ込んだと思ったら車体が横を向き、タイヤからは白煙が上がる。
まさかのドリフトをしてきたのだ。
高木はブレーキとアクセルから足を離し、タックインで急激に旋回させる。
急な攻めにもなんとか対応し、最後の四つ目のヘアピンに達する。
アウトから侵入し、タックインを使いつつ山肌の土を巻き上げる。
アウトからはランエボが虎視眈々と狙う。
コーナーを抜けた、そう思った瞬間、イン側のタイヤの接地感が無くなる。
インリフトしてしまったのだ。
だがなんとか立て直す。
辛くもこの4連ヘアピンはやり過ごした。
この先にはカーブの連続するテクニカル区間が待ち受けている。
依然、ランエボは背後に異様な存在感を示していた。
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