外見人間系人外の送る不可思議アカデミア 作:サカバヴァスピス
そう、温かな春の温もりを感じて布団の中から飛び出ようともせずにぬくぬくしている子供とは俺のこと
すべてを包み込むような朗らかな風はまるで骸でも撫でるように縁側で眠っている少年を纏う、朝から狸寝入りを続ける少年はもはやあの日、喚き散らしていた赤子とは違っていた
この世界で過ごすということに耐性がついたのだろうか、諦めでも受け入れたのだろうか
だが少年は何も言わず、思わずただ己が幸福を噛み締めている最中であった
「廻暗〜、もう昼になるぞ?」
我が家から聞こえてくるその声はまごうことなき自分の父である
「ん〜…お父さんもおいでよ、日向ぼっこ日和だよ〜?」
「ははっ、お前のそういうところは母さんそっくりだなぁ」
「お父さんにも似てるよ?」
やぁマイファーザー昨日ぶりですね、そういやお母様とご一緒に寝られたとかなんだか(
いやいや健全も健全だよ?何を考えているんですか?
え、3歳児はまだ一緒に寝るもんだって?当たり前でしょ川の字になってみんなで仲良くねんねしてやったわ
「…お前ももう3歳かぁ、時が立つのは早いなぁ」
「お父さんいつもそれ言ってるよね」
「その分、お前がいっぱい成長してくれているってわかるんだからいいんだよ」
理由になってなくない?まあいいか
そうです、この度私3歳になりましてやべえ推定20歳が送る地獄の幼稚園生活がスタートいたしました
ご飯や着るものもとりあえず恥を消さなくてもいいものに進化したぜ
でも終わりだよこの世界、なんでこんなやつが幼稚園にいかなければならないんだ、幼児だからそうですねはい
まぁ見る限り一見普通の幼稚園のようにも見える一歩間違えれば大怪我入院コース真っしぐらの魔境、それがこの世界の幼稚園
そう、その原因とは「個性」
俺まだ分かってないってまじ???
え、本当に無個性コース行っちゃう?底辺社畜クソサラリーマン人生幕開けですか???
だが個性発祥は基本的には4歳まであるとよく言われてた気もしなくもないのでまだ焦る時期じゃない、俺の誕生日はまだ先だもんねー
お話を戻しましてカオス極まりない魔境と化した幼稚園ですが…
「一言で言えば幼稚園教諭の皆様お疲れ様です」
なんだよなぁ…
だってこの前幼稚園の柱食べてる園児だっていたし、この前は遊具を少しずつ溶かしてる園児もいたし
なんなら空飛ぶ園児とかいう何だこれなミステリーに入れそうな部類の個性の子もいたからね
そんな中俺は着実にクラスの和から外されていっているぜドイヒー
ネクラまだ個性でてないだけだもん本当だもん!(
この時期からカースト制度を身につける幼稚園児恐ろしやとか行っている場合じゃなくてですね、いやいじめみたいなのはまだ怒っていないんですが横暴だのなんだのが起こっている状況でしてぇ…
そうっすねいじめと大差ないっすねすいやせん
まだ個性の発症していない子どもたちの傷の舐め合いとかいう世にも見たくない光景がタラレバ垂れ流しで俺の眼の前で放送されている事実よ
このまま何もなく平穏に終わるといいんですけれどねぇ…
コラッそこフラグとか言わない
「そういえば、この後母さんと買い物に行くんだろ?」
「…あっ!?」
あちゃー!?そうだそうだそうだった!
あの麗しボッキュッボンマイマーザーとでー…親子のキャッキャウフフな買い物に行く日だった!
「母さん、今更だからもう準備終わってると思うけど…」
「でも僕靴下履いてるしもうお外行けるよ?」
「まあそれもそうだな、ほら母さん待ってるだろうし一緒に行ってやるよ」
「やたー!」
◇ーーーーーー◇
ということでやってまいりました巨大デカデカショッピングモール
ここで離れたらもう俺は一生この母親を母親と呼べなくなるのか…迷子センターの人が頑張ってくれ(
「そういえばお母さん、今日はなんでここに来たの?」
「そうねぇ…ほら廻暗ちゃんのお洋服小さくなってきちゃったでしょ?
もうそろそろ自分でお洋服を選びたいんじゃないの?」
「うん!」
あのダサいTシャツ以外ならもはやなんでもいい気がしてくるもん!
そう、何故か母さんは洋服のセンスが絶望も絶望的なのだ、こんなにボッキュッボンの美形なのに、こんなにも体のラインが美しいのに(
その代わり父さんのセンスがいいおかげで、母さんは外出する際はよく父さんにお洋服を見てもらっているらしい、素晴らしいよ父さん100点だコングラコングラ
それでも他にも用事があるらしく服屋はその途中に行われることとなった
だが…
「…………」
普通に迷子になってしもうた、詰んだ、助けてくれ
事の顛末を話そう
①お母さんがちょっと並ぶからあっちでまっていてと言ってキッズコーナーに行かされる
↓
②それは嫌なので少しだけ移動する
↓
③今
誠に申し訳ありませんわお母様スライディング土下座食らわしますわよ、食らわされなければいけないの俺だけれど
許してくれやダイス女神今日だけは駄女神って呼ばないからよぉ…
あ、だめ?そりゃそうだ
だがまあ人のいないところに行ったわけでもないからここで誰か大人に母親とはぐれたことでも伝えればまあ問題なく済むはず…
「あ、ぁ…あの〜………」
俺が声かけれる自信あればのはなしだけどなチキショウ!!!
うわーん日曜日特有のざわざわした店内では子供の声なんか聞こえない無情な世界なんて嫌いだバーカ!!!もうちょっと声小さいオタ陰キャに優しくなれショッピングモールいや別にそんな優しくなられても困るから今のままの君が好き精神で行かせてもらうけれども!
「………ぁあの」
うわぁ涙出てきた子供って涙もろいね(
誰かこの中にヒーローの素質を持った心優しきすんばらすぃ!お方はいらっしゃらないのでしょうかー!?であれば助けれ欲しいんですけれど切実に!!!
マップ見ればいいとかいう戯言を垂れ流すやつにはご退場いただこうそんな1回しか来たことのないショッピングモールの地図なんか見てわかるかぁ!俺が方向音痴なだけかこれぇ!
「…君、一人?」
「………ぅえ?」
えっ、こわ、おこわこわのこわ
いや確かに助けてとはいったけれどもこんなに黒パーカープラスぼさぼさおべべの不審者感マシマシの男に助けてもらいたいやつはいねえだろうよあら一般人の方ですかそうならば誠に申し訳ありませんわ腹切手お詫びいたしますぜ
「…一人?」
「う、うん…」
まあ正直に話しておいたほうがいいでしょうよ、人さらいならこんなときに話しかけようともしないだろうけれど…いやそれなりに適している個性とかがあったならば今俺をさらうことも可能なのでは?あれ待って失敗した大丈夫そ?
「迷子、か…迷子なんだな?」
「ま、迷子です…」
「んー、お兄さんにちょっとついてこれる?」
どっちだって言うまでもなくこれはただの誘拐野郎だろこれ、お巡りさーん助けてー!ヘルプミーポリスメーン!
「ぃ、いやです…し、知らない人について行っちゃダメって、お母さんから学びました!」
「…ふーん、まあいいや」
え、は?どういう事?えこれどっち?ごめん何もわからないどゆこと???
そう困惑する少年を前に眼の前の男はゆっくりと立ち上がりあたりを見渡す
先ほどと何も変わらない幸せを具現化したような光景はこの男とは真反対のようで、まるで世界が男をハブっているようだった
――その瞬間、少年の視界は一変した
小さな体に見合った低い視線とは違い、自分が浮いているのかという錯覚に陥るかのごとく、視界は良好で辺りを見下せた
体は力んでおらずむしろ力を入れようと願っても動くことができない、金縛りにでもあっているような感覚が全身に伝わってくる
ガチャ、という聞き覚えのない金属音が頭のすぐそこでなった
だが、もう一つ
ドガァン!!!!!
この幸せを壊す、大きく凶暴な怪物が悲鳴を上げる
目を刺すような光とともに貴方れる無臭の恐怖は名もなき人びとを襲った
だが、少年の眼の前にいるこの男はそれが予定調和のように何も動揺することもなく耳をつんざくような咆哮を唸る
「おいテメェ等ぁ!ガタガタしてっとこのガキをぶち殺すぞ!!!」
どうやら、今日は厄日だったらしい
◇ーーーーーー◇
んんんんんんん唐突なる人質宣言に涙を禁じ得ないよパトラッシュ、俺が何をしたと言うんだ迷子になっただけだろうが
いやー思ってもいなかったっすねまさかこいつテロリストとは、なんちゅーお決まり展開かますのか、神様分かってねぇなぁぁぁぁぁ
そんな呑気なことを考えていても現状が変わるわけもなく周囲の人々の怒号と悲鳴はたちまちかき消された
先程までの輝かしいこの世界は一瞬にして闇に飲み込まれたのである
場面転換がいささか急すぎる気もするが生命の危機なので致し方ない、それよりもこんな3歳児普通人質にするかね普通
個性とか発症してたらどうするんだよ今頃年相応の子なら泣き喚いて個性ブッパして反乱死亡エンドだぞこれ、もう少し頭を使いなさいそうそうお年頃のねーちゃん人質にするとかそれはそれで俺が許さないが
現在俺を捕まえてるこの黒パーカー男に追加して、新しく軍服まがいなものを来た兵隊もどきが2名突入されましたイエ~イ、俺の死ぬ確率が上がったね何も良くねえよ
黒パーカー男とは見たところ軽装っぽそうだけど…兵隊もどきどもが結構厄介だな、なんでか今更の重火器所持してるし、いやまあ重火器はどの時代でも人を殺すには最重要アイテムでもあるんだけども
如何せん3歳ショタショータが何かをこそうとしても良くて銃殺、悪くて嬲り殺しだろうしヘルプミーヒーロー、俺の納に弾丸がぶち込まれる前には早う来てくれ
「ガキぃ…舐めたこと考えてるんじゃねぞぉ…
お前がなにかやらかしたら、お前のせいであの蛆虫どもが死んでいくんだからなぁ!」
あっはい何もしないんで何もしないで投獄されてください、貴方が言う蛆虫の群衆の中身マイマーザーいるんです蛆虫って言ったな殺すぞ(
「………ぐすっ」
「ア”ァ!?なぁに泣いてんだこのクソガキ!」
ちっ違うんですからだが勝手にぃ!(
やめてそんな泣いている子供に拳銃突きつけてもヒーローしかやって来ませんわよはよヒーロー来いやゴラァ(
これが助けを求める未来ある少年(笑)の姿かこれが…笑っちまうぜ
まぁ推察するにヒーローははいってこれない状態なんだろうなとは思ってるけれども、ちょい待ちここ何県?え、プロヒーローとか居ないの?いや助け乞うてる俺が言うことじゃないしそもそも血まみれ合戦なんてしてほしくないんですけれどもトラウマになりそうだから
あー幼児の体って不便でちゅわねー
数時間、いや数分の出来事だったのかもしれない、地獄にいる彼等にはあまりにも長過ぎる時間だった
命が脅かされるという恐怖を真に受けた人々はろくに動けることもない、だって彼等はヒーローではないのだから
外からは救済の声が聞こえる、ヒーローどもがヴィランに制裁を与えるための歓声が鳴り響いている、だが人間一つ道を踏み外してしまえば闘牛のごとく止まることを知らず
ヒーローというものは重しが大きすぎる、本来ならばパトロールですんだろう日々が凄惨な首切り市場とかす、彼等は人の命を助けるためにいるのだから
人質が幼き少年でなければ、なにか変わっていたのかもしれないなんて空想は紙切れ同然のクソッタレである、何が変わるというのか、何を変えろというのか
人は人に高望みをすることが多い、それは一般人も、ヒーローも同じ
そして、ヴィランもだ
彼等はおおよそ人である、いや人であったと言うべきであるのか
人道を持たぬ、人の形を持たぬ人間なぞ人は人と呼ぶことを拒否する、全く面倒な時代だ
黒パーカーのヴィランは高揚していた
かつて自分を見捨てた世界がこれほどまでに自分に跪いて命乞いをしている光景を目の当たりにして気分が良くなっていた
己が握りしめている狂気の存在を忘れるほどにまで
ふと、指の力が強まってしまっただけだ
それさえあれば、このチンケな重火器はそれを指名と勘違いして己が責務を果たそうとする
幼き少年が生まれた日と同じような、とても良く晴れた日だった
空に鳴り響く銃声とともに、その幼き少年は脳天に鉛玉が撃墜した
かすかな肉をえぐる音とともに臭う人を殺した証の煙
幼き少年が見た光景は、頬を赤くしたまま高揚と焦燥感が入り混じったヴィランの顔と、少年の母の青ざめた顔だけだった
《プロフィール一覧》
父
夜光 影文/YAKOU KAGEHUMI
個性:影踏み
相手の怪我を踏むと相手を動けなくすることができる
ただの一般サラリーマンだが在宅勤務、個性「影踏み」は常時発動しているので出勤のときなど踏まれてしまったら移動が困難になってしまうという理由で会社からは在宅勤務を許可されている、会社お優し
朗らかでのんびりきままな人、母親との関係は良好でどこにでもある幸せな家庭
母
夜光 偉躯/YAKOU IKU
個性:体躯
自分の体を思うままに操ることができる
昔は育休で休んでいたが、本職は小学校の体育教師である、個性のしようは禁止されているにも関わらず長年の項のおかげかそのボッキュッボンの体躯でも体は柔らかいし運動はバリバリできる
彼女が父親に告白をしている、父親との中は良好でどこにでもある幸せの家庭
撃たれちゃった、撃ったの俺なんですけれども(
起きて主人公!主人公がここで死んじゃったらこの後のお話はどうなるの!?
勝機も正気ももう残ってねえけどまだ生きる希望はきっとある!
次回「主人公、死す」
「え、俺死ぬの?」