Mauvelhiese ~Maliugne Lufu~   作:Elenor

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A Fumidukulefe yiekitase ~また行こう、図書館へ~

ああ、あの人のせいだ。図書館に行きづらい。

 

光のせいで開いてくれない目蓋と、ボサボサの頭で、僕はそんなことを思っていた。

気分は、最悪だ。あいにく今の僕には、その言葉しか浮かばないらしい。

そもそも僕も、ずっと前から気づくべきだったんだ。まるで僕の独り言を、一つ一つ覚えてるような口調だったから、きっと図書館に入り浸ってる僕を観察していたんだろう。そう思うといい気持ちなんてするわけない。

ーー今日は久しぶりにぶらつくかな。

そう思って僕は、図書館に行くのを諦めた。これから気分転換のためによくいく、もう一つの場所に行こうと思う。

僕が通っている学園都市は、真ん中にとても(もう山って言ったほうがいいくらいの)高い丘がある。そこから眺める学園都市の風景は、誰にも知られたくないほどだ。電車(ハリアル) が、路線バス(エクオハイト)が動いているのもみえる。赤色の氷に見える学園も、朝日に照らされて、その赤が淡く溶けだした図書館も、指でつまみ上げたいほど小さく見える。ーーここは、僕のお気に入りの場所だ。山の端(やまのは)の緑を橙に染める彼は、まだ登校時間じゃないことを僕に教えてくれる。

なのに、なんでだろう。優しい朝日も、この綺麗なんだろう学園都市の風景も、今は、とてつもなく鬱陶しい。

僕は吐き出したい言葉を必死に探した。

Sa miach sumim wot fomur,

Nut oi tirit mia cheu ge sœr.

Sat chaum fomugne tolhomim tur,,,,

 

都会は星を地面に落とし 僕は彷徨う蝶になる

眩い川は流れを止めて ーー

 

 

そこまで言って、僕には何も思い浮かばなかった。いや、そもそも僕が思ってることは、こんなのじゃなかった。こんな綺麗な街並みが目の前に映ってるというのに。こんなにもこの街が、この気持ちが、僕の言葉を待っているというのに。なのになんで、それらを鬱陶しいと思うんだろう。ここは、お気に入りの場所だったはずだ。

ーー僕なんか、

この次に出てくる言葉を、僕は今まで何度も、頭の中からえぐり出してきたんだ。そう思った後に、僕の思い浮かんだその言葉に従ってほしくないって言ってくれる人が欲しいと、何回望んだことか。そんなことをいつも思い、そしてこんな醜い自分に、何度も何度も吐き気を催してきた。

 

「ーーなにやってんの?」

不意に、僕の後ろから声が聞こえたので、振り返った。そこには、白い髪と日に焼けたような肌、そして白い猫のような耳を持った男の人がいた。なんとなく、僕が一番会いたくない人と顔が似ている。少し違うとすれば、この人のほうが顔が幼いということだ。

「ーーお前、あいつじゃん。いっつも図書館にいるやつ。」

この人、話し方が少しぶっきらぼうだ。でもこのぶっきらぼう加減は、気持ち悪いくらい優しい口調のあいつよりずっとマシだった。

「別に。ただ風景をみているだけです。あなたこそ何しに来たんですか?」

「お前と一緒。眺めたいだけ。」

そう言って、彼は僕の隣に立った。

沈黙が流れる。ーーなんだろう、この人、すっごく話しかけづらい。

僕は喋って欲しくて、黒肌のこの人の口もとを見た。とても整った唇を持っていた。

僕の視線に耐えられなくなったのか、その唇はすこし開いた。

「ーー昨日ウチの弟が迷惑かけたな。」

「……弟?」

僕はそう聞き返して、今一番嫌なヤツの顔がうかんだ。でもそうなると、一つ気になることがあった。

「じゃあ、アイツも猫耳族(ヌクマ)なんですか。」

「ははっ、嫌われてやがるな、アイツ。ーーああそうだ。アイツも猫耳族だよ。」

「でもアイツ、耳持ってないじゃないですか。」

お兄さんはキョトンとした顔で、僕を見た。空を閉じ込めたかのような、綺麗な瞳が僕を捉える。やがて、理解した顔を浮かべた。

「ーーああ、アイツ、猫かぶるとき耳隠すんだわ。んで、甘いもんとか可愛いもん見つけたときとか、女と喋るとき、気が緩むのか耳がぴょこん、っていう感じでさーー」

……なにそれ、需要なくない?

僕は思わずつぶやいてしまった。

「ーーまぁ、女子ウケ狙ってんのかどうか知らねぇけど、つまりそういうことだ。」

話を戻すんだがと、彼は話を切り替えた。

「アイツ自身、悪気があってやったわけじゃねぇけど、お前が不快な気分になったんなら謝る。」

「なんで兄であるあなたが謝るんですか。」

「まぁそうだな、弟が謝るべきかもしんねぇ。でも仕事中なのに止めなかった俺も俺だ。だから、すまなかった。」

お兄さんはそう言って、深々と頭を下げた。

うん、ここまでマジメに謝られると逆に困っちゃうよね。でも、ぶっきらぼうなのは口だけっていうのは好感が持てるな。

僕はそう思い、お兄さんの方は許した。

「やべっ、もうこんな時間だ。(わり)い、着任時間もう過ぎてるからもう図書館に行くわ。」

そう言って、お兄さんは駆け足でこの丘を去った。

ーーそういや、名前きくの忘れたな。

僕はまた、図書館に行くことを決めた。そしてお兄さんがやっぱりあの人の兄であるということを思い知らされるのは、しばらく後のことだった。

 

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