Mauvelhiese ~Maliugne Lufu~   作:Elenor

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Alaude nunusule ~うるさいアロド~

「いつもお疲れさん、アロド。」

今は図書館の受付で休憩中だ。俺の友達であるアキラが、差し入れのお菓子を持ってきてくれた。

「おれは何もやってないよ。ただ貸し出しがあったら受け付けて、返却されたらそれを元の場所に戻す。ーーそれだけの単純作業さ。」

正直に言えば、お疲れさんと言いたいのは俺のほうだった。なんせアキラは風紀委員で、しかもヘルマン帝国直属の警察官なのだから。

この学園で風紀委員をやると、将来を期待してもいいくらいのかなりの地位が持てる。その代わり、やるべきことがきつい。噂だと、向上心ある人は遺体の処理もやらされるらしい。それが本当ならアキラは、相当な数の遺体を処理してきたはずだ。あくまで俺の推論でしかないが。

「ほんと申し訳ないよ、キール。」

俺はアキラをあだ名で呼んだ。

「ーーだからさ、ね?そのあだ名はよせって言ってんじゃん?もうさ、中等部一年のときから言ってんのにさ、なんで直さねぇのかな?」

「……ええと、なんで嫌なんだっけ。」

「それもずっと言ってるよ。なんか女みてぇじゃん、って。」

ーーあれ、そうだっけ?

「お前絶対わざとだろ。そんな顔してもムダだかんな?」

そうは言っても、アキラは俺にイジられるべきだと思っている。警察官は精神的に強くないといけない。だから俺はこうしていじっているのだ。ーーあーほんと、おれってやさしー。

「でもね、おれ思うんだけど、『アキラ』っていうあだ名は、万国共通かつ男女共通だからさ、そういうあだ名は仕方ないと思うんだ。」

「だからって呼ばなくてもよくない?」

「えー……?」

「えー?じゃない。」

「ケチー。」

「ケチー、でもない。ーーって、ちょっ。だからって泣くなよ。」

「何回引っかかってんの、バーカ。」

「……ああもう、クソ。」

あーほんと、アキラって楽しいなぁ。

俺がそんなことを思っていると、アキラは誰かにトントン、と軽く肩を叩かれた。アキラが振り返ると、彼の頬に人差し指がめり込む。定番のアレだった。そしてそれをやった本人は、顔を前髪で隠した猫耳族(ヌクマ)のリュークだった。

「ーーまた引っかかった。これで365×3+15回目。合計1110回目。」

「何回やってんだよ、リューク。」

ーーいやその前に何回引っかかってんの、アキラ。

リュークは呪術科専攻の、俺とアキラと同じ中等部四年生だ。

この学園で学べるのは、大きく魔術科と呪術科の2つだ。この2つを簡単に説明するなら、魔術科は言葉そのものを操る魔法を勉強する学科、呪術科は数と図形を操って繰り出す魔法の学科だ。当然、前者は詠唱が必要で、後者はいらない。リュークはその呪術科において、かなりの実績を持っている。

それは、「形銃弾方陣術」(リューク命名。なんか、アレをこじらせたヤツらがつけそうだ)というらしい。

その名の通り、銃弾を撃ち込んで(この場合、地面にも人の体でもいける)四角、もしくは何かを象徴する形をつくる。そうすれば、魔法が発動する仕組みだ。ーーこの術を、リュークが発明した。それまで、専用の杖がないと呪術はできなかったのだ。

「キール、ボクにもお菓子……。」

「ああ?欲しいってんのか?」

(こくり)

ーーでも何なんかなぁ、見た目も性格も幼いんだよなぁ。

そう思いながら俺はリュークを見ていた。リュークは俺に気づいた。

「ーーどうしたの、アロド。」

「いや、なんでもないよ。」

「ーーそれよりもアロド、キールがお菓子くんないからアロドのちょうだい。」

「ほんと仕方ないよね、キールはさ。……ほら。」

俺がアキラからもらった菓子をリュークに渡そうとすると、アキラが俺の手首を掴んだ。

「ーーおいこら。こいつ食堂でプリン(かんみかんてん)30個食ったばっかなんだぞ。少しは自重させねぇとな……」

「何言ってんの。リュークはよく動くし、頭もよく使うんだからさ、特に糖類補給させないと。」

「バカヤロウ、俺たち中等部四年の平均的糖分摂取義務量は、プリン3個分でも十分多いんだよ。その10倍も食べてるんだからいい加減止めねぇとな……」

「甘いよ。水上選手で激しい動きをしなきゃいけない人たちって牛丼2杯はザラだよ?リュークだってほんとそれぐらい動くんだから食べさせないとーー」

「うるさいぞ、司書。」

この声は、兄さんだ。俺は兄さんの声に制された。

「アロド、ーーお前、司書なのにうるさくしてどうすんだよ。しかも内容聞いてりゃ、糖分とか食べさせないととかーー、夫婦か、オメェら。」

俺とアキラは恥ずかしくなった。そして小さく、すいません、と言った。

いつも静かなのが、今日はうるさかった昼休みだった。

 

あの二人、初めて見た。ーーへぇ、アイツにも友達いるんだ、ちょっと意外。

いつも静かな図書館は、昼休みの時間帯は少し賑やかだった。ーーあ、今あいつ、お兄さんに叱られてる。あいつの友達もだ。

今は叱られてるその様を喜んで見ているんだけど、本当は、本を借りるついでにお兄さんの名前をきいてみようと思っている。でもなかなか、機会が掴めない。

「なるほどなるほど、いい男が勢ぞろいでごじゃりますねー。」

……ああ、びっくりした。横からそんなこと言わないでよ、もう。ーーというか、誰なんだろ、この子

「ーーねぇ、あなたもそう思われますでしょう?……って、アレ?」

声の主である女の子は、僕の上から下までをまじまじと見つめた。ーーなんだろう、こいつ。すっごく失礼だ。

「およよー?男の方でいらっしゃいましたか。」

「制服見ればわかるでしょ。」

女の子はあちゃー、っていう声を出した。

「いやはや、これは失礼!ーーあっと、その前に名前名前……」

そして、名刺を僕に渡した。

「申し遅れました!!私、放送部で耳長族(レイギーユ)の、エルノア=ウォンディシーニュです!!ノラって呼んでください!!」

ーーこいつ、うるさいなぁ。

「ーーところで、フィーさん。」

「……なんで僕の名前を知っている。」

「今おいくつで……?」

「人の話聞けよ。」

「生年月日は……?」

「あくまでごり押しのつもりなんだね、……はぁ。」

僕は諦めて自分の年を述べた。

「13だよ、二年生だけど、まだ誕生日迎えてないんだ。」

「えっ!タメなの!?」

「ーー顔近い。」

「なんだぁ、同級生かぁ。それなら早く言ってよ〜。ごめんねぇ、敬語ウザかったでしょ?」

「いや、今の方がウザい。」

「女の子にそんなこと言っちゃダメなんだぞ☆」

うわー、殴りてー。こいつちょー殴りてー。

「……ところでエルノア。」

「ノラって呼んで。」

「ーーノラ。なんで僕の名前を知ってるの?」

「ふっふーん、そりゃあもちろん知ってるよ。ーーだって、『詩人のフィー』ってみんなから呼ばれてるくらいなんだから。」

「……は?」

今度は僕の顔がノラの顔に近づいた。

「やだぁ、出逢ってすぐ口づけ?もうっ、お盛んなんだかrーーって、いふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!?」

僕はムカつくぐらい綺麗な唇を思いっきりつまんだ。

「……うう、婦女暴行だぁ。」

「ーーで、僕がなんだって?」

「……みんなが『詩人のフィー』って言ってたんだもん。」

どうしよう、こいつすんごい涙目だ。僕は少し反省する。

「それを詳しく言って欲しいな。」

「友達からきいたんだけど、フィーが……」

僕は嫌な予感がした。

「ごめん、その次は言わないで。」

「え、なんで?」

「なんでもだよ。」

僕がそう言った時、ノラはあくどい笑みを浮かべた。

「おやおやぁ〜?なんか都合の悪いことでもぉ?」

「ーーまたやられたい?」

「あ、いえ、すいません。」

まぁとりあえず僕は、なんで図書館に来たのかノラに教えてもらった。話をそらすためだ。

「なんでって、学園内のイケメン特集をやるからだよ。」

「放送部で?」

「新聞部も掛け持ちしてるんだ。」

「へぇ、ーーそれで、見つかったの?」

「あの受付にいる人2人と、『貸出』にいる2人。あの人たち、かなりいい線いってるよー……ぐふふ。」

ーーうわっ。よだれ出てるよ、この人。

「あの2人が、ジュドー兄弟。返却にいるのが兄のイオ=ウォンディール=ジュドーさん。貸出にいるのがアロド=グルオール=ジュドーさん。」

へぇ……ホントに兄弟なんだ。

「んで、あの人がアキラ=セリム=セリアスさん。あの人がリューク=サルート=エリオーさん。」

「……『さん』?最後に言った人って、僕らより年上なの?」

「そうだねー。」

やっぱり人って、見かけで判断できないものだ。

「そっか、ありがと。」

「いえいえー、情報提供は我々の仕事ですからー。」

こいつ、ホントはいいやつなのかも。さっきひどいことして悪かったな。

僕は今度こそ反省した。

昼休み終了の鐘が鳴る。僕とノラはまた今度と言って別れた。

ーーそれにしても、僕が学校いかないの、疑問に思わないのかな。

 

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