Mauvelhiese ~Maliugne Lufu~ 作:Elenor
みんなが放課後で帰る時間帯の中、いつも受付にいたアイツが、他の机で作業をしていた。作業というより、会議だ。イオ先輩とアイツ、そしてその友達がいる。僕は小耳に挟んでみた。
「問題は部費なんだよなぁ……。」
「ーーアロド。部費なら僕の家から出すよ?」
「……だから、リューク?親御さんから部費を出してもらいたくねぇっていう話、何度もアロド言ってたじゃん?」
「じゃあアキラ、学校から部費を出してもらうっていうのはどうだ?」
どうやら新しく部活動を始めるらしい。でもそのためにはお金が必要なんだって。
アイツが部活やるっていう話だから、少しは興味を持っていたけど、何よりも気になったのは、受付左にある窓の陰からちらちら覗いてる女の子だった。
僕はその窓よりずっと左にある、多目的室へと繋がる扉から出た。そしてそーっと彼女の後ろに近づく。
「ねぇ」と僕はその女の子に声をかけた。
「!!ーー何か御用かしら。」
「何やってんの。」
彼女は少し、戸惑いを見せた。
「あの部活動に興味を持ってますの。……でも男の方々がたくさんいて、しかも楽しそうだから入りにくいのですわ。」
「ふーん、なるほどねぇ。」
僕はその女の子の話を聞きながら、彼女に見惚れていた。
ーー まるで太陽の光をまぶしたかのようなその髪は、触れればきっと光の音を出すんだ。
「いきなり頭を撫でて、どうかなさいました?」
窓の奥、君の瞳のその青は、どれだけ空を吸い込んだ?
「ーー歯が浮くような言葉を連ねるのはやめてくださいまし。」
ああ雪色の頬が林檎になるなら、僕は蛹から蝶になろう。そして君の蜜を吸い上げようーー
「待って!待ってくださいまし!!こんなところでこんなことをしてはいにゃああああああっ!?」
僕はハッと我に帰った。女の子は眼鏡の奥で涙目になって僕を睨んでいた。よく見ると、制服も淫らに乱れている。ーーもしかしてこれ、僕がやったの?
「ーーあなた、今すぐここで捕まえて死刑にしますわよ?」
……はい?
「この
サヤっていうこの子は、警察の一番偉い人だった。
「……申し訳ございませんでした。」
僕はとても綺麗な土下座をした。
「分かればよろしくてよ?ーーそれにしてもあなた、珍しいのですわ。」
「え、何が?」
サヤはとても言いにくそうだった。
「ーー私、女性の方々からしか襲われたことがないのですわ。」
( わぁい、キマシタワー。)
「だからあなたのような男性の方に
「あ、うん……そうなんだ。」
僕はなんて答えたらいいか分からなかった。
「あれ、サヤじゃん。サヤーッ!!」
新聞部のノラが、サヤの名前を呼びながら、ステキな笑顔でこっちに来た。
「はぁ〜、やっぱ癒されるぅ……。」
そしていきなりサヤに抱きついた。
「ーーねぇ、女の子にはそんな抵抗しないんだね。」
「……もう慣れましたわ。」
「……。慣れって怖いね……。」
全くですわ、とサヤは肯定した。ーーそういえば、なんでノラは図書館に来たんだろう。僕はそのことをきいてみた。
「え、あの部活に入るためだよ?新聞のいいネタがたくさんありそうだから。」
「……放送部は?」
「やめちゃった。」
ーーそんなあっさり言わなくてもいいんじゃない?
「ねぇ、フィーも一緒に入ろうよー。ねーえー。」
いきなりそんなことを言って、その心は一体なんだろう。
「……めんどくさい。」
「やーだー、フィーもいっしょー……。」
とことんうざいやつだな、こいつ。
僕はノラの唇を摘もうとしたそのとき、
「……サヤ、ここは私の権限で
サヤはそう言って、人が変わったようにノラと僕をあいつらの部活動会議へと連れ出した。
「そこのあなた方、少しよろしくて?」
「ーーなんだい?今見たとおり話し合い中なんだ。」
イオ先輩の弟はそう言ってこっちを向いた。そして瞳を小さくした。
「これはこれは、サヤさんではないですか。」
「ご機嫌麗しゅう、アロド先輩。」
サヤはそう言って胸の前で横棒二本、縦棒一本を指二本で描き、礼をした。ヘルマン特有の敬礼だった。アロドって呼ばれたやつもそれを返す。
「いかがなさいましたか?」
「我々三人、あなた方の部活動に参加させていただくことを願いますわ。ーーよろしいかしら?」
「ーーええ、もちろん。」
僕は納得がいかなかった。まるで工場の作業で入部依頼が終わったかのように、トントン拍子で話が進みそうだったから。
「ちょっと待ってください。僕イヤイヤしながらここに来たんですよ?僕には拒否権がないんですか?」
「ーーええ。強制入部ですわ。」
「ふざけないでよ!!僕はめんどくさいって言ったのに!!」
「それは中等部二年になって以降、ずっと不登校のあなたが言えることなのかしら。」
僕は口をつぐんだ。
「あなたを担任する先生から頼まれましたわ。ーー再び登校できるように、いい環境を作って欲しいと。」
何も言えなかった。反論してもいいかもしれなかったけど、そうすると僕は墓穴を掘ってしまいそうだった。
「というわけで、お願いいたしますわ。ーー入部届は、こういう風でよろしくて?」
「……ああ、うん。」
イオ先輩の弟は、僕に悲しそうな顔をしながら認め印を押した。僕の意思とは関係なく、入部が決まっていく。
僕は図書館からかけて行った。……みんなみんな、余計なお世話だよ。