Mauvelhiese ~Maliugne Lufu~   作:Elenor

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Vataluchule ~再設立~

いつもの様に図書館で本を読んでたら、いきなりノラがやって来て、僕を強引に外へ連れていった。だから僕は今、図書館じゃなく学園の中庭にいる。しかもノラとあのサヤと一緒に昼食をとることになった。――もう、食欲ないからほっといてよ。しかも移動魔術なんか使って。結構酔ったじゃん。

「……納得いきませんわ。」

いつになくサヤは眼鏡の奥にジト目を覗かせて、柔らかそうな頬を膨らませてた。

「何が?」

「部活の件に決まってますわ。ーー全く、私の権限で通ると思ってましたのに。」

(かがみ)になるべき存在が何言ってんの?」

「……だって職権乱用してでも入りたかったんですもの。」

……いや、拗ねないでよ。

僕たち(というかほとんどサヤなんだけど)が問題にしているのは、昨日新しく部を作る手続きをしようとしたけど、法に触れるということで許可が降りなかったことだ。なんでも、『歴史的関連事物保護法』という、同盟国中で通用する法律に違反する行為だったらしい。

 この法律は、名前の通り歴史に関わるものは全て守らなきゃならない、という法律だ。なにも遺跡とかの、物体だけではとどまらない。昔から言い伝えられてるおとぎ話とか、それを話されている地域、果ては考古学者までその法律の保護下になる。もし壊そうとか、殺そうとか思って実行したら、良くて終身刑、悪くて死刑判決が下される。……いや、たぶんそこまでじゃないだろうけど、とにかくそう言った度合いなのだ。

「ねぇねぇ、警察って法律を変えることって出来るの?」

ノラはいきなりそんなことをきいてきた。

「私たち警察は、あくまで法律の下で国を監視しているに過ぎませんわ。」

そう、警察は響きは悪いけど「監視官」なのだ。

「同盟国議会」というものがある。ヘルマン帝国・タツメノミヤ王国・クィエル王国・そしてメリア公国が経済的な理由で組んだ同盟(頭文字をとってアウスティールクェルメン同盟という)は、お互いが公平でいられるように議会を

開いた。――歴史的関連事物保護法は、 その議会で作られた法律だ。

「その同盟国議会が法律を作り、同盟国がそれらを執行、そして私たち警察が取り締まる。この3つのーー固まりと言えばよろしいかしら――それらが不正な行いをしてないかお互いに監視するのですわ。」

「ねぇねぇ、裁判はどうなるの?」

「裁判権を持っているのも警察ですの。」

「ふーん……。」

ノラは納得したようだった。

「ところで、フィーはお弁当をお持ちで?」

――持ってるわけないじゃん。もう済ませたんだし、まだだとしてもノラに強引に連れてかれたせいで用意する暇もなかっただろうし。

「食べ終わったから。」

 ノラとサヤは、怪訝そうな顔をした。誰もが分かってるだろうけど、きっとこう思ってるはずだ。――なんでこんなに早いんだろう、って。だから僕は説明することにした。

「いっつも授業に参加してないからね。三時限目が終わる40分(8個分)前には昼食を食べ始めるようにしてるんだ。」

 ――ああ、つらいなぁ。これだけで僕が一人ぼっちなんだって感じる。

「……本当に?」

 ――だからノラ、いつも僕と喋るとき顔が近いんだって。

 ノラは僕のこと心の底から疑ってる様だった。

「正直に言って?食べてないでしょ。……というか、いつも食べてないんじゃないの?男の子でその体型はおかしいよ?」

 ――ちっ。ばれたか。

僕は嫌そうな顔をわざとした。

「……だって本の方が気になるんだもん。」

「自分の体を気にしてよっ!もうっ、この様子だと絶対朝も食べてないんでしょ!?」

 ――あー、うぜー。自分の体なんだからどうだっていいじゃん。

 僕はわざとらしく耳を塞ぐ仕草をした。ノラが強引に僕の手を耳から引きはがす。

「こうなったらもう一日三食全部私が作るからっ!!」

「いや、作れるからいいよ?」

「うっ……。でも作らないでしょ?」

「作るから。」

「嘘だ。」

「来ればノラの分まで作るけど?」

「ううううううううう……。」

ノラが悔しそうに涙目になっている傍ら、サヤがいきなり口出しをしてきた。

「私の権限で料理することを禁じますわ。」

「おいこら警視総監。職権乱用しようとすんな。」

「ノラから聞きましたが、ーーあなた、お菓子も作れるらしくて?」

「人の話を聴け。……まぁ、いいや。何で僕にいちいちちょっかい出すの?」

サヤは口を(つぐ)んだあと、俯きながら言った。

「……だって、男の方にそういう所があると女は可愛くなくなりますもの。」

「それ明らかに私情だよね!?」

「私情じゃありませんわ!!女子代表として言ってるまでです!!」

「その中に自分が入ってんのは分かってるの!正当化しないでよ!!」

サヤは思いっきり立ち上がった。

「ああもうっ!授業にでなくても試験でかなりの点数が取れて?顔も整っていて?しかも料理が出来るなんてもう、妬ましいにも程がありますわ!!」

「ぶっちゃけやがったコイツ!!」

ーーーーいや待てよ?

僕はあることが思い浮かんだ。

「ーーもしかしてこの人の前では可愛くなりたいとか、思ってたりする〜?」

「は?何でそういう話になりますの?」

「あっるえ〜?サヤって私に隠し事してたの〜?」

「何でノラまで……。」

「恋話(コイバナ)してるとドキドキしちゃう!女の子だもんっ☆」

「訳が分かりませんわ。」

「でもでも〜、恋話は新聞部が黙っちゃいないよ〜?」

ーーああ、悪どい。ノラの顔がすっごく悪どい。

「いやだから、そういう話じゃなくて……。」

「さっきから顔が赤いけどどうしたの?」

「あなたのせいですわ、フィー!!」

僕はニヤニヤが止まらなかった。

「いい加減吐いちゃったら?吐けばスッキリするよ?」

うふふ、と言いながら僕は答えを急かした。

「もうイヤ。自分が有利になると調子に乗る人って嫌い……。」

「早く言っちゃいなよ。」

サヤはノラと同じくらいの耳を少し垂れさせながら、涙目になっていた。

気持ちを落ち着かせようとして、サヤが大きく深呼吸をしようとしたとき、

 

「おーいっ、みんなーっ!!」

 

あの嫌に甘ったるくて爽やかな、聞き覚えがある声が遠くから聞こえてきた。サヤは声がしたほうに顔を上げ、そして顔を真っ赤にして逃げていった。

「あっ、逃げた!!」

「あー、逃げちゃったか。まぁ僕が悪いから追わないけどね。」

近づいてきたのは、アロド先輩とアキラ先輩、そして麗しきイオ先輩だった。

「あれ?さっきサヤさん顔真っ赤にして走ってったけど、どうしたの?」

「う〜ん?べっつに〜?」

「なんかフィーもニヤニヤしてるけど、ーーああ、そういうことか。」

何がそういうことなのか疑問に思ったけど、アロド先輩は僕を呼び、囁き声で答えを教えてくれた。

「もしかして、サヤさんの好きな人、きこうとしたでしょ?」

「あれ、何で分かるんですか?」

「俺、サヤさんの好きな人、知ってるからね。普段そういう態度しない人がああいう風に走っていったから、なんかあっただろうな、って。」

「へえ、知ってるんですか。」

僕はちょっと興味を持った。

「あの、どうやってききました?」

「そうだね。ーーあの人劇が凄く好きだから、3年間ずっと劇場に通って観れる優待券を渡したら、吐いてくれたよ。」

「ついでになんと言う劇名で?」

「どうだったけな……。確か、『あの橋は封鎖できない』っていう刑事モノだったような気がするけど。」

ーーほほう、それはいいことを聞いた。

「まぁ、そんなことは後できくとして、どうされたんですか、仕事もされないで?」

「あっ、そうだった。」

アロド先輩は思い出したかのように喋り始めた。

「俺たちの部は続けて創立することにした。やっぱり俺たちは、建国前のことが気になるという結論に至った。」

アロド先輩が淡々と述べる。ーーでも、法律うんぬんはどうするのだろう。そういう顔をしていたのだろうか、僕らに向かって悪どい笑みを浮かべた。ーーああ、これで2回目だなぁ。

「そして同盟国は建国前のことを隠しているのではないだろうか、……そういう仮説を俺たちはたてた。」

何でそういう突飛な仮説を立てたんだろう。僕は疑問をぶつけた。

「遺跡はどう説明するんですか?それだけじゃなくて、おとぎ話も、言い伝えもどうやって?」

「ーー前者は形があるから仕方がない。でも後者がその遺跡の情報を元にそれっぽく作った、偽物だとしたら?」

ーーえ?

「形が無いものは頭さえあれば何でも作れる。歴史というのは、その形が無いものが確かにあったという証拠が有って初めて成立する。建国前の伝説である、俺たち各々の種族の起源なんか、猫耳族(ヌクマ)妖精族(ニーム)竜人族(ガルアーグス)耳長族(レイギーユ)は分かってるのに、黄色人種(レオミー)白色人種(レオフェン)が曖昧だ。」

「つまり、その伝説が嘘だという可能性がある、っていうことですか?」

アロド先輩は深く頷いた。ーーなんだろう。こんな先輩、見たことない。

ふと、アキラ先輩が口を開けた。

「俺はそのまま政府に対抗したいって言ったんだけどな、その前に皆の意見をきくべきだっていうから、俺たち3人は部員を探してたってことだ。」

「ーーそういうこと。だから。」

アロド先輩は僕らの顔を見て言った。

「部員全員、図書館に集まってほしい。そこで緊急会議だ。」

ーー夕日は、赤く染まっていた。

 

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