Mauvelhiese ~Maliugne Lufu~   作:Elenor

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Wauvrefe yauvise Chariwaude ~光を呼んだフィー~

夢を追いかける人はカッコいい。夢を追いかけられるのはつまり、その人自身に生きてる意味があるんだから。ーーじゃあ、僕はどうなんだろう?ただ図書館で本を読んでいるだけの、つまらない人間ということしか、答えが出てこない。なりたい自分はどこに行ったのか分からなくなってしまったし、そもそもそういうことを考えること自体、億劫になっていた。

図書館へ徒歩で向かっている途中、僕は空を見上げた。雲ひとつない、黄色に変わりつつあるあの青は、僕の虚しさを表してくれるだろうか。

「あ、いたっ!!おーいっ!!」

声の方に振り向けば、ノラが駆け寄ってきていた。

「もう、探したんだよ?勝手にいなくならないでよ。」

ーーいつからこいつは僕の幼なじみみたいな立ち位置になったんだろう。

「その顔、何もきいてないんでしょ?」

「……なんのこと?」

「ほら、やっぱり。ーー私が送ってくんだから、ちょっと待っててって言ったじゃん。」

「……そうだっけ?」

ノラは呆れた顔をしながら、僕の右手を握ってきた。そして彼女のもう片方の手は、端末機器(アーミスタル)が握られていた。

ノラは大きく深呼吸した。

「ソラマメ サイタラ ソノママ ステロ

ソウシテ サイタラ ソラハナダ」

ーー瞬間、僕たちは風たちに囲まれた。

彼らは僕たちを取り囲んで踊っている。たおやかかろやかそれでもしなやか、ノラが節つけ歌う声、彼らは速く踊り出す。

「さっきも聞いたけどさ、変な呪文だよね!」

「うるさいっ!単語の最初の文字と、字数が合ってたらそれでいいの!!」

楽しさではしゃぐ風たちは、僕たちの手を取り合う。

そうして僕たちは図書館に来た。

 

 司書室の中、緊急会議が開かれた。それは、仮とはいえ部が設立されて初めての活動だった。

部員として仮登録してくれた人たちが集まってきた。最後に来たのは、顔を真っ赤にして走り去ったサヤさんだった。心なしか、気まずそうにしている。

全員が集まったことを確認し、アキラに改めて意見を言ってもらう。

「ーーさて、アキラは同盟国に真っ向から対立するっていう意見だけど、アキラ、そうしたい理由を言ってほしいな。」

アキラは勢いよく席から立った。普段の彼とは違う、真面目な雰囲気だ。

「俺が、まあ言っちゃえば敵になるっていうのは、同盟国が怪しいからなんだよ。歴史に関わるほとんどの物が保護の対象になんのってさ、明らかになにか隠してんじゃん?それが悪いことだっていうんなら俺たちは訴えなきゃいけないと思う。」

「それで同盟国は仮想敵にすべき、っていうことかな?」

アキラは深く頷いた。

「ーーという感じで意見を言ってほしいんだ。なにかあるかな?」

俺はそう言いながら、周りを見渡す。左奥から二番目、サヤさんが手を挙げていた。俺はどうぞと意見を促した。

「私は、対抗する時期を見計らって行動したほうがよろしいかと思いますわ。その方が危険性も少なくなる。」

「……ということはつまり?」

「表向きは普通の部活をやり、裏では本当にやりたいことをやる。ーーこういう態勢でいきたいですわ。」

「なるほど。」

一般的な考え方だ、サヤさんの意j見は。しかし俺はこの意見に反対する。

俺は申し訳なさそうに言った。

「……サヤさんの意見は確かに、従うほうが無難なのかもね。でも、俺は普通じゃないことがやりたいんだ。」

「……具体的に何がしたいのか教えて頂けますかしら?」

「部活で同盟国政府を煽りたいんだ。」

「却下ですわ!!」

サヤさんは勢いよく立ち上がった。

「それは人権侵害で捕まりますわよ!?」

「ーー捕まるつもりだよ?」

アキラと兄さん以外の皆が、一斉にこっちを向いた。

「やだなぁ、みんな。別にみんなが捕まってほしいっていうことじゃないよ。」

「じゃあどういうことなんです?」

ノラが俺にそう言った。

「俺が責任持って捕まる。そして後は歴史関連の情報収集。」

「ーーまあ、話し合いをした俺たち三人が全員捕まるか、誰か一人だけが捕まるかはまだ決まってないんだけどな。」

兄さんはやれやれといった感じで言った。

「ーーなんだよ、兄さん。一人のほうが危険性はなくなるじゃん。」

「いや、広範囲に調べたほうが情報量も上がるだろ。」

俺と兄さんが喧嘩しそうだ雰囲気の中で、

「ーーねえ二人とも。」

珍しく、リュークが口を挟んできた。

「ーー言い方おかしいけど、1人か3人だけ捕まってもらうって、通用するのかな。」

俺と兄さんは固まった。

「ーーみんなで活動するんだから、一人一人同じ目的の中にいるはず。だから少数が捕まることなんて出来ないと思う。」

「じゃあリュークはどうしたい?」

「ーー表向きで政府を煽って、裏でこそこそ探険したい。それで捕まりそうになったらみんな捕まって、それから調査。」

「なるほど。まぁ俺も同盟国を煽ること以外サヤさんと同じ意見なんだけどね。」

「ーーそうならそう言ってよ、分かりづらい。」

「いや、兄さんが言葉を遮ったのが悪い。」

「……なんで俺のせいになるんだよ。」

 ぐだぐだになる雰囲気を抑えるべく、俺は多数決をすることにした。結果を言うと、リュークの意見に賛成した人が一番多かった。順調にひとつ目の議題を完了したところで、次の議題を出す。

「さて、問題はみんな表向きではどんな部活がやりたいか、なんだよなぁ……。」

「……遠回しに言いますね。スパッとやる部活を決めようって言えばいいのに。」

フィーが嫌味ったらしく言った。それでも俺が遠回しに言ったのは訳があった。

 結論を言うと、難しいのだ。もちろん、やる部活を決めることが。煽りたい相手にその内容を伝えられるような、情報の媒体を作って使うことを主にしてやる部活は、もう二つある。ーー文学部、新聞部だ。文学部では「この世界はおかしい」っていう内容の小説を作ればいいし、新聞部は言わずもがなだ。ーーそう、結局は俺たちがそこに入ればいい話なのだ。しかし、同盟国の触れられたくないことを扱う俺たちは、自由が制限されることは絶対に避けたい。

 俺はそのことをフィーに、けれども皆にも聴こえるように言った。

「そういうことですか。じゃあ、他になにがあるんだろ……。」

 フィーは、考え始めた。

「出来ればやってて楽しいことがいいですよねぇ~……。」

「……何で私をチラチラみるのかしら、ノラ。」

「えー。だってー、こういうこと考えるのってサヤ得意そうだしー。」

「残念ですわね。私そういうことは苦手でしてよ。」

「でも言ったら案外いい意見かもしれないじゃん?」

「……ノラ、お前は意見あるのか?」

「ーーえ?ないですけど、イオ先輩。」

「ちょっと表出ようか。」

 兄さんがノラに近づき、キョトンとしたノラの腕を引っ張って司書室から出た。しばらくして、何を言ってるか分からないけどノラの叫び声を割と近くで確認できた。

 司書室から入ってきたのは、さわやかな顔をした兄さんと、顔を真赤にしてうつむいたノラだった。フィーは俺の側に来て袖を引っ張ってきた。

「……アロド先輩、イオ先輩ってノラに何やったんですか?」

「ノラの歯に磨き残しがないか確認してたんだ。これで兄さんは口内を見られるのと歯を磨かれるという両方の辱めを受けさせることが出来るわけで。」

「わーやさしー。でもへんたーい。」

 ……やっぱな、分かってはいたんだ。兄さんがあんなことすると誰もがひくって。俺は自分のこめかみを三本指でおさえた。

「……兄さん、他人任せにしようとしたノラが許せなかったのは分かるけど、お説教だけでいいじゃん。何で自分の趣味全開な方法でお仕置きするかな。」

「ーー何でそんなこときくんだ。」

「もうちょっと周りに気を遣って欲しいなぁ……。」

「人のこと言えないだろ、アロド?」

「……うん、分かってた。」

 ああ、言い返せない自分が悔しい……。

 フィーが溜息をついた。

「……何でぐだぐだになったんですかね。」

「ーーそうだよ。俺そうならないように議題を変えたのに。」

「人任せにしようとしたノラがいけないと思いますわね。」

「そうだな、ノラが悪いな。」

「きいてばっかだったけどノラが悪いじゃん?」

「ーーノラしかいない。」

「そうですよね、やっぱり。」

「「「「「「ノラが悪い。」」」」」」

「イオ先輩も悪いでしょ!?何で私だけ!?」

 納得いかないノラを残しつつ、俺たちは会議を再開させた。

「んで、煽ることが出来る部活は何かないかな。」

 そうきいたものの、さっきのせいで皆のやる気がなくなってきていた。見れば分かる。雰囲気でも分かる。これはもう、皆が早く終わらせて欲しいって思ってるはずだ。

 やる気がなさそうなフィーの顔に、突然光が宿った。

「……アロド先輩、自分がやってみたいことでもいいんですか?」

「構わないけど、何がしたいの?」

「ーー僕、歌いたいです。それで、皆と一緒に楽器とか演奏しながら、世界中を旅してみたいです。」

 だめですか?と言いたげな、不安そうな顔を俺に見せる。

「……その手があったか。」

 フィーの発言で、一気に頭が活性化した。つまり俺たちが『カブキモン』になればいいんだ。ーーそうすればあいつらに訴えたいことも伝えることが出来る。

「ーー採用。皆はフィーの意見に賛成する?」

「……楽器できるやついるのか?」

「そうだよ、アロド。俺たちそういうのに対してかなり素人な訳じゃん?」

アキラが不満そうな顔でそう言った。

「そのために部活があるんだ。毎日練習して、それから本業である調査をすればいい。ーーなんなら、自分の寮で練習か調査をしてもいいし。」

「資金集めにも丁度いい思いますわね。」

この話には、サヤさんも乗り気だった。

「歌詞なんていくらだって回りくどい言い方が出来ますわ。煽るのを変えないのであれば、そういう方法をしてくださるかしら?」

「その条件を飲めば、賛成するっていうことだね?」

「もちろんですわ。」

いいぞ、段々いい流れになってきた。

多数決の結果、音楽活動をすることが決まった。

「よかった、全部決まったよ。ーーフィー、ありがとね。」

「えっ……?」

フィーは少し、戸惑いを見せた。

「ーーこんなの、僕のワガママじゃないですか。」

「それがいい意見だったからだよ。だから感謝しなきゃ。」

「……褒めたって何もでてきませんから。バカ。」

フィーがその態度を取った時、俺は入道雲を見た時と同じような感覚に陥った。

「今日はお開きにしよう、ーーじゃあ、解散。」

でもそれに気留めすることなく、俺は会議を終わらせた。




このあとがきスペースを、エルナハト特有の文化を解説するところにします。

カブキモン:タツメノミヤ及びヘルマン、クィエルで流行っている吟遊楽団の総称。元は奇抜な格好をしている者だけをさしたが、次第に他国の流行も取り入れられるようになり、今では童話の世界を思わせるような格好をしつつ楽器を奏でる者たちをさすようになった。代表的なものに、ヨイマチ、エディマセリヒ、ニューヴァンティールなどがある。
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