目の前の少女について行って、やってきたのは応接室。
羽はいつの間にか黒くなっているが、周りは気づいて居ないのだろう。
「ここならば安全です、聞かれないというだけですが」
「それ信じて良いのかよ」
「聞かれては困る話を今目の前で見せているでしょう?」
「そりゃそーか」
すでに菓子が用意されている。
ティーセットとそれらを乗せる台みたいなのを挟んで、俺らは座った。
「あなた達のことはある程度調べて居ます。アレイシア・ガレットピア、アイアンランド・プレイス。私の名前は分かりますか?」
「分からない」
「小生は知っているぞ。桐藤ナギサ、だったか?」
「知っているのですね」
「ナギッ……え?」
流石に聞いたことあるぞ。
「フィリウスの桐藤ナギサ!」
「はあ、言わないと分からないのですか。責任者のことぐらい存じているものかと」
「すまない物覚えは悪いほうだ」
「今回は許しましょう」
やったぜ。
しかし、態々自分らを呼ぶというのはやはり分かりやすいプレイヤーだったからか。怪我の功名とでも言えばいいか?
「で、俺らを呼んだのには何か理由が?」
「ありますよ。この件においては一番信用出来るのが貴方達だと判断しました、もっとも現状ですが」
「ほう?」
「他のプレイヤーが顔を出さないのもあるので、判断材料が少ない。しかし時間もない。そういった状況の中では、共有出来るものは共有しなければ勝てません。私にはある程度カードがありますが、それをうまく使え、かつ教えてくれる人がいないと困る。なので、こうして話を持ちかけた訳です」
「なら、まず小生らを試すといい」
「おいおい」
「小生らはそちらに対してさして恐怖を感じていない」
案外アイアンは強気なのが困りものだが、実際相手も強気だから物腰柔らかにしていると腰ごと逝かれる可能性もある。
「では、一つだけ質問をしましょう。これの答え次第では、貴方達は死ぬ」
「早く言え」
「ロックブーケという少女についてはご存知ですか?」
「ロックブーケ?はて」
今の相方は首を傾げるが、なるほどそうか。
翼が黒くなっている理由も頷ける。
「……テンプテーション*1か」
「なんだ?それは」
「余計なことを聞くな。お前がゲイなら止めないが」
「それは私が彼女を持っていることを知ってのことか」
「過去、結婚しながらもハッテンバで盛りあった奴らもいた。そういうもんだ」
「_____では、黙ろう」
アイアンが大人しく下がる、ということは真面目に話を受け取ってくれたのは事実らしい。
ただ、ナギサは優越感に浸ることもない。
「懸命な判断です、お二方」
「トリニティの人間らしいやり口だが、まあそういうものか。小生らはまんまと罠に嵌ってしまったようだな」
「ちぇっ、ついてねーな」
正直なところ虚勢だ。
ロマサガの方には行ったことがないからテンプテーションに見切りをつけたことはない。しかも俺らには治療用のキャラカードもなければ、そういった耐性を持っているカードもない。俺の方は正直お手上げ。
隣の男は分からないが、多分何かあったとて出さないだろう。ここで出すのは、他のプレイヤーへ情報を渡すことに等しい。しかもここで問題を起こせば、立ち行かなくなる。
「で、俺らに話を持ちかけたいんだろ。何が欲しい?」
「そうですね。貴方達二人をティーパーティーとしてスカウトしたい。もっと言えばフィリウス派として同行を願いたいと、思っています」
「協力者が増えるのは全然良いが正直協力できない」
「小生も正義実現委員会に今入っている。武力組織がある政党と密接な関係を築いてましたとあっては、顔向けも出来ないだろう。ゲヘナとアリウスが敵にいる以上、攻め方は情報戦も含まれる。態々弱点を増やすべきではない」
「アイアンさんは仕方ないですが、アレイシアさんは出来るでしょう?」
「恥ずかしながら……」
頭を掻いて誤魔化すように、苦々しい顔をしながら打ち明けた。
「俺はそういう政治仕草っていうのは向かない。そういった勉強もしたことはないし、この世界にそこまで詳しくないものだから役には立てないな。それに俺らは多分すでにプレイヤーバレしている可能性も高い、
「アリウスが居たのは本当だったんですね?」
「隠してもしょうがないから言うけど、昨日そいつらと戦った。その怪我がこれだ」
丁度いい。今のうちに、彼女に情報を渡しておこう。
細かい話は省くとして、とりあえずアリウスの奴らがテロを起こしていたことと、ベアトリーチェなる頭領のコピーを倒したことを伝えた。あとは奴らがもアリウスのプレイヤーを壊滅させて、カードを手に入れていることとか。
「なるほどそうでしたか」
「しかもトリニティにいる奴らもろくに反応寄越さねえし。そのせいで、今俺らも頭悩ませてる状況だ。誰も戦ってくれないであげく隠れてるだけでさ」
「どうしてですか?同じ力を持つのならば、熟練度で勝てるはずでしょう?」
「そうもいかねーんだよ」
今回のゲームルールが悪い。
コンクエストでも結局上位入賞者じゃないとフルスペックカードはもらえない。しかも、高性能予測システム付きのセイアのフルスペックカードじゃみんな欲しいに決まっている。ただ、友人をあまりに値踏みする発言は慎むべきで、それがある以上狙いが何かは話せない。話したら、正直何が起こるかわかったものでもないから。
「もしかして貴方達のやっているゲームの都合上ですか?」
「ああ。今回はアリウス、トリニティ、ゲヘナでそれぞれ分かれてプレイヤーで競うゲームをやっている。アリウスは壊滅しているが、キャラカードの所有者が変わっただけであんまり実情は変わらない」
「ふむ……」
「誰かがやってくれるだろうで放置する奴が多いんだ。プレイヤーは他のところにもいるからな、自分たちの手札を隠しておいて漁夫の利を狙うことに注力しすぎて目の前の問題を解決することには興味ない。メインの人間さえ死ななければ、たとえばあんたや先生みたいなのが死ななければそれでよし、とするやつしか基本いない」
「ではなぜ貴方達は戦ったのですか?」
ごもっともな質問だ。
確かに自分達もプレイヤーの一人だし、そうする事で得するようなことは非常に多い。なんなら自分達が戦わずに一緒に逃げるみたいな事をすればよかった。
だが、戦った。それもこんな怪我をしてまで。
「小生らは戦えるから戦った。何の疑念もなく、不満もなく、恐怖もなく……ましてや出し抜くなぞこの言葉を発するまでに一度も脳の隅にさえ無かった」
「……そうなのですか?」
アイコンタクトする彼に俺もウィンクで返す、アイアンの発言に異論はなかった。
「ああそうだ。俺らは戦えるから戦った。十分に勝てる相手だったし、不意打ちさえ貰わなければ俺はこんな怪我をすることなく勝っていた。そして貰った以上、次から気をつけることが増えるだけだろ?カードだって互いにノーマルカード一つ、バレたところで問題ない」
「小生らにとっては他のプレイヤーは脅威ではあるが、あくまでそれは現地人よりも何してくるか分からないという“未知の度合い”による判断に過ぎない。それはつまり“手の内さえ見れれば何が来ようと負ける気はない”も同義だ。我々はそう言った実力を持った人間だと思ってくれていい」
「……」
「それに、こちら側の事情をある程度知っているなら、プレイヤーとして扱えば卿が今の所一番怖い。それが協力を持ち出したとあっては、願ったり叶ったりだ。尤も小生はさっき言った手前表立っては協力出来んが_____」
彼は俺の背中を叩く。
「いだっ!?俺怪我してるってば!」
「ああすまないな。ともかく彼もいる、アレイシアは少なくとも誠意はある。場をひっくり返せるくらいのな」
だから頼れって言いたいのかお前。俺もさっき政治的なこと分かんねえって_____つっても仕方ないか。
「だから頼ってくれて構わない。ついでと言ったら何だが、ミカに関しては我らの仲間の一人の手引きで今の状態に持って行ったことも言っておこう。伝えたことがバレたら怒られそうだが」
「道理で態々行く予定も会う理由もないのに会っていると思ったら」
「すまない、卿の友人を口車に乗せて動かしたことは代わりに小生から深く詫びる」
頭を下げるアイアン。
ただ相手も分かってくれたのか、素直に受け取ってから頭を上げさせる。
「気にしないでください。これで彼女が犯罪者や謂れもないことをされていたと思うと」
「そう言って貰えて嬉しい」
あー、凄いな。蚊帳の外。
謝罪が終わると、俺も口を開く。若干の諦めもあったが、これを不意にする方が大和も怒るだろうし。
「_____分かったよ。
ナギサ、俺あんたに協力する。と言ってもマジで3人組の中で頭脳プレイからっきしだからな、あんまり期待はするなよ」
「元より、全部を預けるつもりでは頼りません。そんな事をしては、フィリウスの名折れです」
「じゃ、交渉成立だな」
状況が大きく変わるのに目に見えて変化がない。政治になってしまった気分だ。
こうして、俺達は大凡三人目の現地協力者を得ることになった。しかも利権者の一人。
さて、話をしていると少し時間が経ったな。喋ってる内容はそこまで無くても、時の流れは変わらないものだ。
「小生は正実での実習があるためここで失礼する。アレイシアは好きにしてもらって構わない、だがテンプテーションとやらを掛ければすぐ分かるからな。殴ってでも戻す」
「怖えこと言うな!」
「そんな事は致しません」
「ならいい。では」
アイアンは最後に怖いことを言って部屋から出て行った。
残ったのは俺とナギサの二人だけ。
「彼は余り食べていかなかったようなので、多めに頂いてもらえますか?」
「何も今日食べ切らないと腐るとかじゃないなら持って帰りたいな。食べるだろ、大和とか」
「仲間想いなのですね」
「あんたほどじゃない」
だけど飲み物は頂く、何しろ会話に熱中し過ぎて喉が渇いたから。
熱い紅茶を飲んだら、潤う気はしない。
他の奴らは如何なのだろうか。飲み物は冷たい方が飲んでる気がするんだが。
《余談》
らんかんです。
余談あった方が嬉しそうな人多いので余談です。
今回は『プレイヤー間通信』とは、について語ります!
ナギサが前回彼らに語りかけたこれは、端的に言えば彼らにしか聞こえないボイスチャットみたいなのです。彼らは電子の世界で生きる生命体。なのでそのデータにそう言った通信システム構築のためのプログラムを入れてれば特に道具も必要なく通信が出来ちゃいます。
これはプレイヤー間でしか付与されない機能。分かりやすく言えば攻殻機動隊であったトグサと少佐の通信(マテバで良ければ)のシーンみたいなものです。これがある事で、色々な会話を裏でしながら動けるんですね。
とは言え、これはタイミングを見計らわないと中々リスキーな通信。いや、通信しながら動く事自体は皆さん出来るとは思うのですが、その通信が時代にそぐわないものの場合SGP・OSGP問わず怪しまれて動きにくくなったりしちゃう。主人公達も余り使いたがらないですね、脳のリソースを多岐に使ってしまう都合上突然呼ばれたりすると変な動作をして怪しまれるので_____
今回ナギサはどうやったか、こういうのが入れる状態。しかもプレイヤーじゃないのにです。
どうなってんのー!?ってのは後々解明されると思うので楽しみにお待ちください。
らんかんでした。