楽園よりのダイブ
「ブルーアーカイブOSGP エデン条約Cap 500th直前!参加者のうち、目玉プレイヤーに突撃インタビューのコーナーです!今回はアレイシア・ガレットピア氏に来ていただきました!よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします、アレイシアです」
俺は挨拶する。
今回、知り合った奴らとチームを組んでブルーアーカイブのOSGPに参加することになった。当然周りも足掻いた結果得た名誉によって組めた実力者だらけだ。
インタビュアーはポニーテールの大巨乳、あまりにも好みすぎて目を引くがカメラの前。理性で無理やり目を戻す。
「崩壊3rdOSGP三人目の優勝者でしたね、まずその感想を改めて聞きたいですね。時間経ってどうなのか」
「ああ、そうですね。ストーリーが共有されないのでなかなか手探りでやってました。息を潜めてチャンスを伺っていたと言うわけではないのですが、最後に持っていたストライクフリーダムがなければどうなってたことやらと。それに最後に戦ったヒュッケバインのせいで本当に苦労が絶えないグランプリでした」
「確かあの作品は今OSGP限定かつ人気な作品ではないために無茶苦茶上げられた難易度以外では見向きがされないので結構情報を共有されないと聞きました」
「本筋ばかり追うとマジで序盤の情報不足に苦しみますから*1、いやほんと最後の最後まで情報不足だったんでヘマやらかして。キャラカードも結局逃げるために使ったのばかりで、前回の優勝者であった勝永レイジは一体どうしたんだか」
自分が持ち込んだのは全部破壊されたのは今となってはいい思い出だ。
ゼロワンドライバーは破壊され、フルバーニアンもそれより大きい機械に破壊され、セイバーのカードは白い髪のお兄さんに奪われ、散々な思いをした。唯一まともに機能したサルーインのカードは普通にプレイヤー同士の遭遇戦でパワー負けし、挙句最後に隠していたストフリも持ち込んだネゲントロピーで改修を受けたが結局まともな調整をしないままぶん回し続けるという強行軍が続いた。
その上でのプレイヤー決戦がマイフリvsヒュッケバインという頭のおかしい決着で、それにギリギリ勝利したことで一部を終えてフルスペックカードをゲットしたのである。
勝永レイジという人物は順調にプレイヤーを潰して回ったそうだから、一体どうしてそんなことができたのか。記録が昔過ぎるために探すのに若干時間が掛かるのが難点。
「という感じなんでね、なかなか俺も困りどころで。でも勝てたのは良かったです、最後はOSGPらしい戦いにもなったし、あれでようやくまともな戦闘だったので。事実上の決勝戦では大分ドキドキしたし……紙一重の決着だったのもあったから」
「なるほどぉ。では、次の質問です。今回のブルーアーカイブOSGPへの参加理由を教えてください」
もらった水を飲みながら、話をする。飲食も快楽の一つなので、当然意識のデータ上でも接種行動が取れたりするし満腹中枢もある。
「優勝後知り合った流神 大和って人からの推薦です。今回はチーム戦であり、コンクエスト方式。シナリオも多く残っているエデン条約編でしょ?だから初めてならおすすめだと言われて。ある程度の流れは覚えたけど、正直な話緊張してます」
「確かSGPでの優勝者でしたよね?しかもモブスポーン限定の。相当な手だれじゃないですか!」
「ええ。彼女に先導してもらう形で進めようと思っています、今回は事前振り分けもある大規模OSGPなので情報が出ていると思いますがトリニティスポーンです。この時点である程度情報戦が有利です。経験者がいる状態なので、アリウススポーンやゲヘナスポーンよりは
「そうですねえ。意気込みまでありがとうございます……あ、そうだ。最後に何か軽くではありますが、フリートークをしたいなと」
フリートーク?そう聞き返すと、彼女は頷く。
「しかし急にそう言われてもなあ」
「そうそう。今回はエデン条約編でしたよね?時間はかなり掛かるので、せっかくならあれしたいこれしたいみたいなのってあります?」
「うーん、それこそ前回があんな目にあったし個人戦だったのでゆっくり情報を整理する時間とかが欲しいですね。それ以外だとあんまり余裕ないので、結局OSGPなんで……SGPと違って泥沼化する確率があまりに高いのもあってその中心にあまり居たくないです。うまいこと情報戦で有利に進めて、シャーレの権力でデメリットを被らないようなムーブを意識したいと思います。具体的にどうするかは、チームの方で口封じあるんで話せない」
「なるほどなるほど……あ、お時間みたいです」
カメラは最終工程に移ろうとしているし、後ろのディレクターも頷いている。
「本日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
「今回のブルーアーカイブOSGP、どういうふうに戦局が運ぶのか!アレイシアさんはもちろん、SGPで大立ち回りした大和さんのいるチームが圧倒的な動きでストーリーを駆け巡るか!それとも他のプレイヤーが出てきて荒らしまくるのか!次のコーナーではその予想をします」
当然、こういうものにはCMがある。映像に広告がつくのはいつの時代も変わらない。
その間に俺は転送され、参加者用ロビーにやってきた。
小説で一呼吸置くような移動も、便利な時代では省かれる。
「お」
「戻ったぜ」
チームごとに分かれてるから、当然そこには仲間もいる。
「おかえりアレイ」
「お前のこともちゃんと話してきたぜ」
「照れるなあ」
「かな?」
「まあいっか」
さっき話した大和という女。こっちを見たら首を傾げて見つめてくる。
要領を得ない話をしながら、もう一人の方へ行く。
「終わったぞ」
「おお、終わったか」
「まあな」
もう一人の男、アイアンランド・プレイス。
こっちは俺と同じくOSGPでの珍しい優勝者。
「小生はてっきりまだ帰ってこないものだと思っていたのだがな。はて、何か?」
「別にやらかしてもねえよ失礼な」
「バレてしまったか」
「やっぱそう思ってたんだなお前!」
「ほら喧嘩しないよ〜!」
互いに腕で抱き寄せられる。
「ね、二人とも。今回は一緒に行くんだから仲良くしよーよ。OSGPの優勝者がずっと不和ですなんて変な話擦られたくなかったらさ〜!」
「ふん、貴様には分からんことだ」
「こう言う時って素直に従った方がいいって聞くもんな」
「そーそー!」
こんなことしてても、周りは変な目で見てこない。
いや、見る暇はないのだろう。今回はスポーンする学園ごとに勢力が決定しているが、結局俺が言った通り自分たちのチームが上位に来ないと今回はフルスペックカードが入手不可。その作戦を練っているのだろう。
寧ろ練ってないこっちの方が異常だ。
「で、二人とも。今回どういうルートで行くか知ってる?」
「案外簡単なルートだよな。補修部入りルートを避けるために勉強して、自由時間を確保して調印式まで時間を稼いで、調印式で一斉に暴れ出すのもうまいこと潜んで人がいなくなってきた段階でリソースを一気に投入して殲滅、その上で原作通りにベアトリーチェが討伐されてハッピーエンドってことだ」
「そう言うこと〜!ま、下手に接触しないで楽しみましょう!ってこと!」
「つまり三人で青春を送れ、か。小生と、貴様らで」
「嫌か?」
「いや、嬉しいぞ。小生らは、そもそも生まれてから自由で孤独、こうして学園生活を送ることは逆に楽しみではないか?」
アイアンの笑み。
俺らは生まれてからは親のことは知っていても、すべてのリアルはこの電脳世界。必要な知識や行動能力もインプットされる形だ、自由意志があるが発達障害も時間の束縛もない。
それが楽園の時代の人類だった。
「まあ、そう言われてみればそうか」
「しかもお嬢様学校でしょ、楽しみだなぁ」
「いやでも俺ら男じゃ」
「何言ってるの?ベースは全員女になるよ!」
「まじ?」
配られたルールを見ようとウィンドウを開こうとした時だ。
《運営よりのお知らせです。ブルーアーカイブOSGP エデン条約編 500thへの参加プレイヤーはストーリーダイブ準備をお願いします。繰り返します》
「まじかもうそんな時間」
「そろそろだな……小生はすぐに行くぞ」
「おいおい俺も」
「私もー!」
それぞれが、ダイブ準備に入る。
SGPでのダイブでは、リアルタイムで情報を変換して動いたりするため開催中はドロップアウトするまではコフィンに入って保管する。そもそもが電脳世界だが、いわゆる専用プログラムでのデータ管理に移行するのを感覚的にするものだ。
その中に体を入れ横たわり、目を瞑る。
《参加者はそのままお待ちください。現在フィールド構築中、意識移行まで残り10分》
自分の意識が、なんとなくぼやける。
参加だけなら何回もやってきたのだが、リアルから電脳世界が近すぎてこういうものの方がワクワクするのは変わらない。
キャラカードもちゃんと持っていることは確認している、あとはダイブを待つだけだ。
《フィールド生成完了、意識移行開始》
目が開かなくなるが、瞼の裏にはキヴォトスが映る。
ああ、トリニティの街並みだ。昔の地球のヨーロッパを彷彿とさせる街。
すでに体も動かない、ただ、まだトリニティ自治区に行っているわけでもない。
《意識移行完了。ダイブ開始まで3,2,1...》
カウントダウンが始まると同時に、景色に体が引っ張られる感覚。
急速接近する景色と共に、アナウンス音声が流れた。
《ダイブ開始、健闘を祈ります》
俺は、目の前の街へと落とされた。