Never Says「Good by…」   作:らんかん

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作戦会議

 昼飯は暗殺者のパスタだった。

 

 イギリスどころかイタリアだが、食える飯があるだけありがたい。急いで捕虜にも食わせてから捕虜が陣取る部屋を掃除したり専用の道具を置いたりして放り込む。

 

「ちょ……アンタら酷すぎない!?」

「それは不意打ちしたやつが言うセリフじゃ無いな」

「ちぇっ!」

「しばらくはそこでゆっくりしているんだな」

 

 随分不満そうなアシェイラを部屋に閉じ込めてから、もう一度リビングに戻ってくる。

 

 掃除とかに手間取ったのか今は3時20分。

 

「皆様、茶菓子はいかがですか」

 

 そう言ってくれた家主に御礼を言いつつ貰い、それが終わると家主は大和に挨拶して下がっていく。

 

 それでいいのか。

 

「ふー、これで少しゆっくりして話ができるね」

「そうじゃ無いと困るっての……んで、どうするかだったな?」

「そうそうこっからの動き」

 

 今ここにいるのは俺と大和とナギサ。

 

 ミカは別で何かするのかシャーレに向かうだろうし、アイアンは普通に正実の方で働いているからな。

 

「みなさんは捕まえたあの少女を使ってゲヘナの動きを探りたい、で良いんですか?」

「んーまあそれはあるよね。だけどねえ、彼女だけで釣り出すのは正直難しいかなって考えてるんだ」

 

 俺も言わなくてもわかる。

 

 何にしても今、彼女だけでは人質作戦をするにはあまり効果はない。彼女に期待されているのはおそらくフルスペックカードの奪取並びに可能であればプレイヤーの排除。詰まるところメイン戦力としては数えられていない。

 

 それが失敗したともなれば、正直捨て置いた方がいいだろう。スパイが快楽堕ちするエロ漫画で組織がスパイを捨てるのと一緒だ。

 

 一応スパイの情報漏洩防止の為に遠隔でぶち殺すか、直接乗り込んで始末してくるかも考えたが______アシェイラはゴジュウウルフに負けた、しかもフレイムスティーラーの力を使って。

 

 その程度の人間に焦って行動を起こすかと言われれば怪しいところだ。彼女のことを過小評価していれば、正直このままかもしれない。仮に俺の方を過大評価していても、手を出すのに躊躇して黙っている可能性だってある。

 

 ここにやって来るとすれば「相手が余程仲間思いで助け出そうとしてくるやつ」「どうしても漏らしたく無い情報があるから苦渋の決断で乗り込んでくるやつ」「彼女でカードの情報でアド取ったから勝とうとしてくるバカ」のどれかだ。ただし、さっきのことを考えれば行動してくる確率は低い。

 

「ともかく相手側が彼女をどうしても連れ戻す以外にこっちくる理由はない。どうせ彼女をダシにしてトラップ貼ってるだろうとも予測しているし、ドタバタで助け出すのが一番だとは思うけどそのドタバタって別に私達が起こす側だし」

「んじゃしばらくは俺らは自由だな。ってことは」

「そう、今度は百合園セイアを強奪しないといけない。力づくでね」

「んじゃ普通に襲うしかないな」

「どうやってさ」

「ああ、そんなもん簡単だよ。もう一回戻って騒ぎ起こそうぜ」

「無闇矢鱈に起こすわけにはいかないよ」

 

 流石に軽率すぎる提案だったか。

 

 やるべきことは否定してない以上、当面の目標はセイア捕獲になる。

 

「うーん、でもスニーキングして何とかなるか?どうなんだお嬢様」

「私もミカさんもセイアさんも厳重に守られています。特に住居となれば、直属の部隊が居るほどです。そのための派閥でもありますから、正実にも委託できませんし」

「機密保持の観点から仕方ないか」

「批判されてますけどね」

「そんなバカは気にしなくてもいい」

 

 ナギサにとってそいつらが欲しい事実を持っていない。持っていたところで、それが自信を利することに繋がらないならやってやる必要もない。

 

「ふふっ」

 

 で、笑われてしまったが。当人に。

 

「な、なんだよ」

「い、いや。中々面白い方だなと思ったので」

「笑えるのはいいことなんだがなあ……」

「最近こうして楽しく話せる機会が無かったのもあってか非常に楽しいです」

「そりゃよかった」

 

 先生が目の上のたんこぶ、と言ったところだろうしな。

 

 大和が少しだけ話してくれた内容に『ナギサを先生は肯定できない』と言うものがある。

 

 この時点では確実に肯定できない理由。

 

 政治的には裏切り者を炙り出して排除するために補修授業部を作った彼女、それには俺は関わってないが怪しい奴らを放り込んで先生と一緒に裏切り者を探すのがシナリオだ。これも正しい判断ではあるものの、先生というのは大人として"理想的な正しさ"を提示する必要がある。

 

 詰まるところ「相手を信じて真実を見つけ出そう」という曖昧で馬鹿げた結末を言い続ける必要が彼にはあった。

 

 だが、それはナギサから真っ向から反対する考え。彼女は頼ろうとしたやつが敵になったという、最悪な状況。

 

 そして俺らは"エデン条約"以外には全く関わらない。

 

 つまりこっちの視点だったらナギサは()()()()()()()()()()()()()。普通だったら彼女を殺して一度場を硬直させつつ、情報戦で上回っていくスタイルが取れるが________

 

 今回はプレイヤーの視点も持っているわけだ。無論最初は脅されたのもあるが、逆を言えばそのプレイヤーという範囲での話で言えば俺らはプロな訳で。その共通点で味方になれるし、それはナギサにとってもプラスなわけだ。しかも大和のおかげでミカはゲットできた、ってことは信頼も順調に獲得できている。

 

 あと言えば俺らはこの件が終わった後関わらないので、その点でも彼女の邪魔になる可能性が低いのもポイントが高い。

 

 総合すれば、余程の下手をしなければ先生よりも好感度が高い状態を維持できる。

 

 今の彼女は、多分そう言った理由で安心しているのだろう。

 

「でも本当にどうしましょうか。セイアさんをなんとか強奪しないと……」

「強奪ねえ」

「なんですか」

「いよいよ無法者(アウトレイジ)になってきたな」

「シスターフッドの血肉で花火を上げたいのに不発弾になったらつまらない」

 

 こっわ。

 

「何引いてるんですか」

「いやそりゃそうなんだけど表情変わんないままそんなこと言われたら誰でも引いちゃうだろ」

「あなたはそういえば子供でしたね」

「何言ってんだこれでも優勝者だぞ!マジでワルだから俺!」

「そういう人間って逃げ回ったり素直に人頼ったりしないよね?」

「ほ、ほら!サイコパスって線も」

「自称してる時点でダメでは」

「るっせえ!」

 

 酷い。

 

 相手の言いがかりを返そうとしたら、もっと痛手を負わされた。

 

 いじけるしかないぞ俺は!と膝抱えようと思ったけど、もっと惨めか。

 

「ん〜、でもねえ。結局セイアちゃんの強奪どうする?」

「おびき寄せるしかないでしょう?正面突破を繰り返すのはあまり得策ではないと思います。顔割れる可能性もありますし、実際対峙したのは他校の生徒だけでしたから」

「キャラカードで姿誤魔化して、は出来ないのか?」

「私がフルスペックの聖園ミカで変装できたしカードだったら出来ると思うけど……」

「無理です」

 

 ナギサが言う。

 

「私はロックブーケに完全になり切れることは出来なかったですし、今島津豊久になれないのでおそらくノーマルカードでは無理ですね」

「じゃあフルスペックは……あこの子持ってない」

「持ってないけどまるで最初からゼロみたいな言い方」

「でも今持ってないでしょ?いや、正確には人間らしいものがない」

「そうだな」

 

 起源の律者はそもそも使い方分からなくて放置している、自分の倉庫データに入ったままだ。そもそもムーブ的に実は雷電芽衣にまともな面識もないし。

 

 優勝した時に身内の知り合いに貰ったゼロツーの方がフルスペックカードで有り難かった。特殊能力らしいものはあんまりないけど、元の強化が強すぎるし。

 

「だからまあ襲撃プランならびに誘拐なら俺は変身して突っ込むかMSで突っ込むかぐらいしかない」

「MS何持ってきたの」

「ジ・Oだ。武装シンプルで扱いやすいし」

 

 地上戦だと分かってるなら別のやつでもよかったかもな。遅いが。

 

「ん〜とね。んー……」

「結局どうするか決めあぐねてるじゃないですか」

 

 困ったものだ。

 

 そう言おうとした、瞬間。

 

《こちらアイアン、二人とも聞こえてるか》

 

 アイアンからの呼びかけがあった。

 

《あーどーも。聞こえてるぞ》

《どうしたの?》

《トリニティ外れの大聖堂で戦闘中、複数のプレイヤーの出現を確認。応援願う、近くに正実の奴らがいてカードが使えない》

《了解、アレイシアと一緒に向かうね》

《早めで頼む》

 

 軽い通信が終了した。

 

 急に喋らなくなったのに喋ってるような仕草をしていたのか、ナギサは不審に思ってる。

 

「何か?」

「急用ができた。私達は急いでいかないと」

「プレイヤーの奴らが出てきた。流石に仲間を見捨てるわけにはいかない」

「私も向かいましょうか」

「誰が見るんだよあいつのこと」

「カードは全部私たちが持っています。先にカードの方を回収するにしろ、あの人を回収するにしろ、どの道雑魚を引き連れて戦うか手ぶらで戦うかの2択。もっと言えばそれを狙って私達が到着したタイミングで一斉に襲いかかってくるならば、順位にしか興味のない貴方達の同族はこれ幸いにと襲ってくることでしょう。何がどう加算されるかはどうでもいいですが、邪魔者を減らすのにこれ以上ないチャンスとも言えます。表舞台に出れば、結局二人は持っていける」

「いいなそれ」

「ならば急ぐべき。兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久を睹ざるなりとも言うでしょう?」

「俺の好きな言葉だ」

 

 全員で家を飛び出し、鍵を閉め、車に乗り込む。

 

 この車も大和が用意したもの。なかなか準備がいい。

 

「発進するよ!」

 

 そう言って、車は全速力で走り出した。

 

 助手席にナギサが乗ってしまったので後ろで周囲を確認してる。

 

「とりあえず付近に着いたらさっさと変身するなりして後ろから突っ込んで敵殺しまくる!アイアンを救出したらすぐに逃げるよ!」

「オッケー!」

 

 とりあえずこっちの指示に従って、急いで向かうことにしよう。

 

 俺らが着くまでに無事でいてくれよアイアン。 

 

 

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