車から飛び降りる。
大聖堂はもうめちゃくちゃ、正実の子達は揃いも揃って地獄を見ているのか死体のように転がっていたり目の前にはすでに馬鹿どもの祭典が開催中。
「楽しそうじゃねえか!」
「楽しそうだよねえアレイシア」
「いつもはあんまりだが漸くちゃんとしたプレイヤーとやり合えるのは嬉しいって!」
はしゃぎながらショットライザーを取り出す。
「さっさと行くぜ!」
《Assault Bullet!》《Over Rise!》
「変身!」
《Shotrise》
走りながら急いで変身。
《Ready Go!Assault Wolf!》
流石にあの時の戦闘の傷はそんなすぐには癒えないが、持っている戦力はある程度後出しした方が強い。
混乱の中に突っ込んだら、もうすでに揉みくちゃにされかけてる。
どこに何人居て誰が味方で何を使ってきてるのかを理解するのに時間が掛かる上に、攻撃を対処しているせいで余計に把握できない。
「ちぇっ」
飛んでくる銃弾も剣も避けながら、手当たり次第に殴ろう。
鎌を避けずに持ち手をガントレットで抑えてから下に叩き落としてやってきたキャストリスもどきの胸ぐらを掴み頭突いて蹴飛ばし、その後ろからやってきたよく分からん太刀使いは構えてる愛でに銃弾を浴びせてから首を握りつぶして服を掴んで投げつけて、遠くから襲いかかってくるロケラン野郎は普通に足場もろともガントレットとの一斉射撃で足場ごと崩してから銃弾を浴びせることで動けなくする。
「くそっ多いな」
大半はノーマルカード、こっちの戦い方さえなんとかなってれば基本的に負けない。しかし数が多いと当然乱戦で全員来ないとはいえ、対処しなきゃいけない数は増える。
大和は関係なしにカードを使わず蹴りとパルクールで相手をしばいていく。
「なんだあいつ!?」
口にしてもこっちの苦労が減るわけでもない。
相手はすでにこっちにも目をつけている。というより、俺はちょっと目立ち過ぎたようだ。手早く処理し過ぎたか、優先的に始末しようとしてくるやつが多い。
「助けろよ誰か!?居るんだろトリニティの奴ら」
「ここにいるぞ」
射撃戦に夢中になり過ぎて後ろから襲ってきていたやつを気づいても対処できてない俺の後ろから迫ってくる野郎を倒すやつが一人。
「アイアン!」
「待たせた」
なんか刀を持ってる。
「それは?」
「さっきそこらへんで転がってたノーマルカードを使ってみたんだ。三日月宗近、という刀らしい」
「へー、役立つの?」
「女性向け作品は雑な最強設定以外はあまりそこらへんで味はないからな。だからこういう時しか役に立たないぞ。ま、お前と違って姿を隠す理由もないからな」
「頼むぜ」
「ああ」
互いに背を向けたまま前に走り出して、敵を倒す。
仮面ライダーはいいものだ、いや、特撮か。基本的に銃弾というものにリロードとかが必要ないのがともかくリソース戦で勝ちに繋がるのがありがたい。
流石に装甲が邪魔になりやすい瓦礫の山だが、武器は全部取り回しがいい。アタッシュショットガンを取り出して、出会い頭に一発700発くらいの散弾をぶち込んでダウンさせたり、そのまま殴りつけてから混乱中のやつをスラッグ弾で吹き飛ばす。
「くっそ減らねえなおい!」
「だから助けて欲しいと?」
「ああ!そっちは!?」
「そろそろ刀が折れそうなほど輪切りにしているんだがな」
血の匂いが微かにするが、それ以上に瓦礫の匂いと煙る視界のせいでどうだか確認できていない。
ただまあアイアンは剣の扱いが慣れてる方であるし、俺が倒れるのも処理しなければならないものが増えて嫌だろうから真面目にやっているはずだ。
「貰った!」
「あぁ!?」
喧嘩を売られてアタッシュショットガンでガード。
突っかかってきたのはガラディーンで切り掛かってくる女。いや、男か。この世界じゃアバター固定だ。
「ようやく現れやがったな!」
「アシェイラの仇!」
「飾るなよ!」
腕にショットライザーで銃撃を加えて受け止めていたショットガンを自由にしてから胴体にぶちこむ。
流石に少し吹き飛ぶが、すぐに耐えて構え直している。
「ガウェインか……」
それにようやくフルスペックカードが出てきたか。
傷は少なく、それどころか体温が上がっていくのも感じる。
アサルトウルフは基本的に身体維持機能がないからか、そういったものを感じやすい。
「アシェイラの件は残念だったな。だがあいつが悪い、戦隊ヒーローに負けるような救世主もどきは誰が相手でも勝てないもんさ」
持っているカードの一つ、今回俺はモーディスを持っている。それを見せて挑発。
「俺が持っててもどうしようもないが、しょーもないやつが持ってても変わらない。どうする?これをかけてやってみるか?」
「いいだろう」
互いに構える。
仲間の仇と言っておいてカードのことをすぐに了承するあたりは典型的なプレイヤーか。それとも俺が嘘を言っていると思って、カードを先に取り返して手段を増やして救助に向かおうとしてるのか。
相手が相手、仮に宝具をぶっ放されたら困るぞ。しかも今は日が昇ってるせいで長引けば長引くだけ強くなる。
「いくぞ」
「来いよ」
だが、早めに決着をつければ問題なし。
どちらも身体強化があるが、仮面ライダーの方がその伸び代は高い。何しろ行動にtが付くくらいだからな。
すれ違いざまに剣が振れない方に避けて射撃。受け止めて振り向きつつ剣を振ろうとすれば、それよりも先に乱射して牽制。いくらガウェインが強くともそもそも回避も防御も射撃も強ければメインウェポンが剣の時点でこっちに分がある。
フルスペックカードなのもあって相手は炎を振り撒いて周りの生徒もプレイヤーも焼いているが、まあ俺も大して変わらないしな。
「真正面に立って戦えないか!」
「そういう戦い方じゃねえんだよ」
正々堂々というやつなんて"自分のルールに従ってくれないとまともに戦えません"と言っているに等しい。そんな奴のルールなんて乗っかる必要もない。
こいつは見どころがある戦い方そのものはできる。
自分が射撃戦できないように近づく、そのスピードそのものは非常に速い。
剣を振る力も速度もいい、太刀筋にブレがないというのはそれだけ相手への恐怖を掻き立てる。正確な一撃は、仮に相手がパワーで優っていてもダメージを大きくするものだ。剛柔合わせ持つ剣士こそが、いつの時代も恐怖だからな。
しかし俺はそう言ったのも含めて経験はしてきている。
近距離での戦闘は、相手への行動を制限できる。だが、それは俺も同じだ。
防げない射撃を回避するためには俺よりも早く動けるようにするか、いっそ離れて宝具で沈めるの二つ。
前者は無理だ、俺が上回っているから。ならば後者を取るべきだろう。
が、それに気付いたところで俺はすでに接近戦を繰り返しているから今度は離脱に苦労する。
「甘い!」
「あ」
ただ戦いは、常に一方的であることはない。
ガラディーンの刃はショットライザーを真っ二つにした。
つまり俺は生身になることを意味する。ダメージはないから、素直に相手を褒めよう。
「やるじゃねえか!手元のやつをちゃんと狙えるのはいいセンスだ」
俺の顔が、相手に晒される。
「さあて、俺は誰でしょうか」
互いの瞳が、その光が硝煙の世界に射し、反芻する。
相手の顔が、驚きに変わった。
「アレイシア・ガレットピア!」
「大正解」
テガソードを出したが、少し言葉を交わしたいらしい。
剣を下ろし、俺の顔を見てくる。
「参加しているとは聞いていたが、トリニティ陣営か……」
「ファンが出るような戦い方はしてないのに覚えてくれてるとは、あの大会のおかげだな」
「嬉しいぞ。そのようなやつなら、確かにカードに差があっても勝てるからな」
「それ関係あるか?」
首を抑えながら聞く。俺はあまり、関係ないと思う。
「あの大会はその作品の価値ではなく、純粋にプレイヤーの全力を引き出してなお勝てるかどうかのエクストリームスポーツだ。その勝者には価値がある、どのような勝ち方をしようがな」
「あー偉い偉い。俺らの世界って世辞も学べるからいいよな、ちゃんと戦って負けた方がウケがいいぞ。勝者と敗者は、どっちが共感を得れると思う?」
「それは後者だが、私は別にその話をしたいわけではない。アレイシア・ガレットピアという、最高のプレイヤーと戦えることを誇りに思っている」
「じゃあその誇りは捨てることだな。俺は起源の律者のカード持ってきてねえよ」
「なんだと」
アシェイラの仲間っていっつもこんな感じなのか。いや、類は友を呼ぶと言うしな。
「いや使い方分かんねえしあれ」
「その世界に行ってて使い方分からないとかあるのか」
「だってその当人と話したことねえんだもん!」
「情けないやつ!」
まるで人を異性と関わるのが苦手みたいに言いやがって。
「マジで切れた!お前をここでぶっ倒してやらぁ!エンゲージ!」
ゴジュウウルフのセンタイリングをテガソードにセットする。
だが、何も起こらない。
テガソードが不貞腐れたか?
「あ?おい!テガソード!」
「……どうしたんだ」
「てめえもしかしてカードごと切りやがったのかさっき!」
文句を言ってもカード状態に戻してみても何も変化がない。
なのに、何も装備が動かない。
「嘘だろいったい何が!」
「_____」
そして相手は、こっちを攻撃してこないし。
「お前もお前で何やってんだ!」
「一つだけ聞かせてくれ」
「なんだよ……」
無駄に静かになって、戦火の音が遠く聞こえるこの場所。
今更になって疑問が浮かぶ俺に問い。
「アシェイラは生きてるか?」
「生きてるよ。殺す意味もない」
「________そうか」
「なんだよ!」
何を言いたいのかはっきりしてくれよ、と詰め寄ろうとした時だった。
二人の間に暴風が吹き荒れる。
「うあっ!?」
テガソードを前に出して防御姿勢をとるが、そのまま視界ゼロの状態で吹き飛んで俺は瓦礫に叩きつけられた。
後遺症が残ってしまうような傷は負わなかったが、痛みが強くて立ち上がるのに時間がかかる。
「あたた……なんだ!」
「ようやく、か」
そんな声と共に、吹き飛んだ像を足場にしている少女が姿を表す。
白いコートに、茶色の髪か?いずれにしろテロリストと言わざるを得ない少女。
「あんた達はここで死ぬ」
「偉そうなこと言うじゃねえか!」
俺は、虚勢を張るしかなかった。