Never Says「Good by…」   作:らんかん

23 / 61
必死の抵抗

 アリウスの奴らがくることも織り込み済みだったが、いや、こうなったのを確認してやってきたのか。

 

 なぜだか見えないはずのヘイローが見えると、周りとは違う。おそらくはシャーレに入れるタイプの生徒だろう。

 

「おいてめえ!何をやった!」

「あんた達が言っていたキャラカード?を無効化する機能を作ってくれたんだ。だけど、そこの騎士には全く効いてない」

「んなことできるのか!?ゲームのキャラがゲームのデータを書き換えるなんて仕業!」

「それを少女兵に言う?」

「チッ」

 

 困った。

 

 今手元にあるテガソードは無用の長物になったし、自分が持っていたキャラカードは全滅。

 

 ミューテーションカードは確かめる術はないが、そもそもどっちも持ってない以上すでに敗戦濃厚。

 

「ミサキ、か」

「私の名前を知っているの?」

「勿論。いずれシャーレに跪く弱者の名前だ、さして気にしては無かったが……」

「ああ、ゲヘナには伝えてないから。全てあの羽沼マコトの策略だけど」

「ほう?」

 

 ガウェインガールはなんとも気にしてない表情で言っている。

 

「つまりは、私達の動向を掴んだ上でこのような策を用意していたと」

「昨日の晩、マダムは自分でカードを使って無効化するための最終調整を済ませていた。あの女からの伝言も伝えろと言われてるから言うけど、あなた達はもう用済み。ゲヘナもアリウスも"部外者"はその力以外に興味ないから」

「ほほう、それで私達を倒せると」

「本来はそっちも銃弾で倒せないようになってるらしいね、アバター解除によって銃弾でも殺せるとかどうとか」

「ああ?」

 

 そう思って自分の体を見る。

 

 あれ、胸がない。少し動いてみたが、いつも通りの感覚。

 

 声はまあどっちでも通る使用のもの使ってっから変わんないけどすごくこうイケメン風味。情報だけは知っていた芽衣って感じの声でもアルテミスって感じの声でもなく、普通にカタリナやミラ風味。

 

「嘘だろ!?」

「はぁ、今更気づいたの?」

「こんな重要な話のせいで俺の体を気にするタイミングがどこにあったよ!?」

「よくそれでアウトロー気取れるね」

「るっせえ!」

 

 恥ずかしくなって抗議するが、まあ相手は可哀想だのどうだの同情を誘えるテロリスト。つまり教育上俺みたいなやつに哀れみを向ける以外にない。

 

「しかしまあよくそんなシステムを作れた……まてよ、じゃあなんだ。ブルートワルツが関係しているのか!」

「ブルートワルツ?誰それ」

 

 ああそうだ、俺と共闘した時にゼロノスに変身しているからその記憶がないのか。

 

「誰だその女」

「あの大会で最後に戦ったすげえお嬢様がいるんだよ。俺だってそれ以外に真っ当な関わりはないがこのグランプリで会ってる、アリウスに関わりがありそうだが今はそれ以上に話せるネタがない」

「……謎は深まるばかりだな」

 

 だが、その謎は解かれることなく終わりを迎えそうだ。

 

 銃口を向けられすぎて大ピンチ、血の匂いがしてないのに血の気が引く。

 

「はあ、ついてねえ」

 

 肩を落とす。

 

 ツいてない、周囲には兵士が囲んでいて逃げられそうもないし。

 

 抵抗の手段がないところまで追い詰められるのは初めてではないにしろ、まさかゲームキャラがゲームシステムをプログラマーじゃなくて普通に動いてたら自発的に変更を加えられるなんて誰が予想してたよ。

 

 頭を抱えるが、抱えたところで変わらない。

 

「おい、よかったな。今ここで俺を殺せば、お前は有名人になれる。金だってたんまり入るぜ」

 

 隣の騎士は何も言わない。

 

 フルスペックカードは影響を受けない上、今使っているのは大群を焼き尽くせるほどの聖剣使い。周囲を見渡しても静かで、おそらく大和もアイアンも遠くにいるだろう。

 

 というかなんも返事が来ねえ。

 

「おいなんか言えよ、負け惜しみまで無駄になるのは勘弁だぜ」

「まだ終わってないのに弱音を吐くな」

「んでだよ。俺はフルスペックも持ってねえよ」

 

 遺品になりそうなモーディスのキャラカードでも眺めるか。

 

 ポケットの中を弄り、この晴れている瓦礫に差し込む陽の光を浴びながらキャラカードを見てまどろみながら……ポケットの中からカッコよく出して、アウトローみたいに美しい顔で……だからちょっと出てきてくれないかなあ!?カッコつけらんないんだけど!

 

「探し物はこれか?」

「なってめえ!」

 

 いつの間にか奪われているモーディスのやつ。

 

「これはそもそも私達のチームのものだ。遺品にするにはどうしようもない価値のものを、お前は辞世の句に出来るのか?」

「うるせえよ。それが今のところ最大の戦果だ」

「________そうか」

 

 相手は、そのままあるものを投げ渡してきた。

 

「受け取れ」

「あ……?」

 

 カード。

 

 裏面で渡されたのでひっくり返して見てみる。

 

「お前!」

 

 ガウェインが写ってる。

 

「お前どうすんだよ!?」

「アシェイラと私は戦友だ、お前と私、そしてアシェイラは敵だ」

「ってことはまさか!」

「ごちゃごちゃと……撃て!」

 

 やることは分かったが流石に相手は待ってくれない。

 

 だが相手はこちらと違って声で指示を出すしかない。急いでカードを持ったまま瓦礫の隙間に潜り込む。 

 

「逃げれたと思ったのか!」

「はっ!」

 

 啖呵切ってそのまま兵士とを近くにあった店のショーウィンドウに突っ込む。

 

「あぐっ」

「死にな!」

 

 相手のガスマスクの紐を引っ張って割った上で残ってるガラスを喉に刺し、足で頭を踏みつけることで胴体と離し、髪をまた引っ掴んで相手に投げた。

 

 血生臭いし人からおそらく効いちゃいけないクチャ、という音が立っているがなんにしろ

 

「ひっ!?」

「なんだこいつ!」

「何が少女兵だよ!人の殺し方でビビるような雑魚が!」

 

 店頭に置いてあった瓶を取り出して飲むと気分が良くなってくる、酒ではないが炭酸。硝煙と運動で熱った体に冷え炭酸が注がれると誰だってハイになっちゃうだろ?

 

 これで振り回しやすくなったので思い切って銃が有効ではないほどの至近距離で接近。

 

 こう言う時ほどリアルだったものの知識が役に立つ。

 

 ナイフを構えたあぶねえ奴ほど()()()()()()()()()()ってな!

 

「ヒャッハー!」

 

 瓶を使って連続殴打。腹を蹴り、えづいた瞬間にまた殴るとマスクが割れる。

 

「綺麗な顔してんじゃねえか。ああ!?」

 

 だが、俺にとっての真実は今ガウェインになっているやつだ。そして、そいつとアシェイラとの因縁で戦うのが俺の人生の一つだ。

 

 割ったガスマスクをナイフがわりに腹にぶっ刺し蹴飛ばす。

 

 そんな俺を横目に、今さっきまで戦ってたやつは高らかに宣言。

 

「ガウェイン使用許可申請、対象アレイシア・ガレットピア!」

《申請:ベロニカ・グルース 許可理由求む》

「現在アリウスと交戦中。陣営は違うにしろ信頼にたる実力者と共に、システムにハッキングできる陣営の調査及び排除のため即席のチーム結成!そしてその信用の証!担保としてモーディスのフルスペックと引き換えにあの男にガラディーンを託す!」

《了解、申請受諾。ベロニカのフルスペックガウェインの使用許可を新たにアレイシア・ガレットピアに共有。有効期限はこのグランプリまでです》

 

 流石に銃を撃ってくるやつは近場のやつを処したら盾もない状態の俺に容赦もないだろう。羽が生えたやつが撃とうとしてるのを瓶を投げて不意打ち。

 

 瓶というものは意外と鋭いものだ。圧力が掛かるところが少なければそれだけ貫通力も上がるし、それが普通の状態だと一番鋭い飲み口なら尚更。

 

 相手の喉に刺さってそのまま声も出せないままダウン。

 

「すごいな、これがアレイシアの底力か」

「ウラルの銀狼とやらが教えてくれたスペツナズ特有の戦闘方法だそうだ。瓶とか紙でも人の喉ぶっ刺せるそうだぜ」

「私たちがこんなに綺麗じゃない時代なら、特殊部隊の隊員にでもなれたのにな」

「言いっこなしで頼むぞ」

 

 さあ、こっから反撃の時間だ。

 

 カードを目の前に出そう。

 

「お目覚めの時間だ、ガラディーン!」

 

 炎が叫ぶ。

 

 その炎は一本の剣から舞い上がり、それが日差しに向かって伸びる。

 

 相手を焼き尽くし、その融解された血も肉も風に溶け、その風が俺に纏い焼き付いて輝く鎧となった。

 

「よし!」

 

 剣を振り払うと、その炎が敵を焼いて吹き飛ばし、瓦礫の中にと埋めていく。

 

 純粋に威力が高すぎるが、そもそも周囲を気にするほど繊細な戦いもできないし、求められてもいない。味方は不死身のモーディスだ、背中だったかを直接刺さない限りは死にはしない。

 

「確かガウェインはFGOでこんな感じのことやってたよな!?なんだっけ聖別(アウスヴェーレン)だっけか!?」

「聖罰だ。そんな大層な力はない」

「ちぇっ」

 

 銃弾が無遠慮に飛んでくるが、あまり気にならない。

 

 英霊の防御力は凄まじいものだ。

 

 そもそも物理攻撃があまり効かず、魔術系列のものでないと普通にダメージを与えることすら困難。それは周りの兵士が普通に生きているアリウスの奴らなのもあって、普通に有利を取れる状態で戦える。

 

 だが、俺にこの力を貸してくれたやつはもっとすごいことになっていた。

 

 アシェイラが持っていたモーディスを使えるくらい信用されていたベロニカは、この力で紛争の半神となって何度撃たれても楽しそうに立ち上がり拳を振るって結晶と己が肉体で敵を貫く。

 

「やるじゃねえか!」

「そちらも初めてにしてはよくやる」

 

 しっかり赤い血が噴き出て、それが鼻腔に擦りつくが視覚情報で血だと分かるそれは赤い結晶に塗りたくられるかエクスカリバーを慕う太陽の剣が蒸発させてしまって中々リアリティな死に結びつかない。

 

 俺が生身で暴れすぎて、流石に怯んでいるのだろう。

 

「怯むな!ここでこいつらを殺さないでどうする!」

「で、でも!あいつは化け物です!キヴォトスのそそっそ外から」

「狼狽えるな!」

「死に絶えなぁッ!」

 

 会話しているやつごとぶっ飛ばす。炎の英霊タックルは強い。

 

 周囲が結晶と太陽の輝きで増していき、まだ雄大に立つ大聖堂のおかげもあってか一気にファンタジックになった。

 

「おい見てないでこっち来いよ!」

 

 鋒をミサキとやらに向けた。ベロニカの武装された拳も向いた。

 

「……仕方ない、か」

 

 彼女はカードを取り出す。

 

「あまり役に立ちそうにもないし、使ったことはないけど……元の格の違いを教えてあげる」

 

 カードが上に投げられる。

 

 フルスペックカード同士の衝突。しかも片方は管理者権限に等しい力を持つ少女。

 

 今までよりも酷く、激しい戦いが幕を開けようとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。