銃火が鳴る。
一切途切れることもなき銃声、光途絶えることないファイア。
荊は生えた端から銃弾がぶっちぎり、挙句本体も乱射の被害にあって身動きが取れない。
「ああ……?」
そんな長い間撃てる銃なんてあるのか?バレルだって熱くなっちまうだろうし_____
「見ろ!」
ベロニカの声を聞いて、指さす方向を見る。
すでにミサキは抵抗する力を失ってはいたが、無限射撃は化け物でも嫌らしい。何発も撃たれれば形も力も持ち続けることはできず、崩れていく。
残ったのは。
普通の姿に戻った少女と真っ二つになったキャラカードだった。
「はあ……これで漸くか。長かったな」
「気を抜くな、まだ居るだろ」
「居るったって」
銃を撃っていた人間がいる方向を覗く。
周辺は死屍累々、気付いていなかっただけだがモブだろうがプレイヤーだろうが問わずに死んでいる。可愛かった正実のモブだって頭が潰れて動けなくなってたり、アリウスのやつに至ってはぐちゃぐちゃになって人の原型が保ってない。少女達は死ぬ直前までのポーズで固まったまま動かなくて、放置するしかなくなってる。
「ああ……!」
ベロニカはショックを受けていた。俺はもう何度も見てついぞ呆れ返るばかりで、言葉がでない。
血の匂いがしない、人の匂いもしない、詰まるところ俺らは血が渇くほど火薬で地を焼いた。
「待たせたな」
そんな若者どもを助けたやつが、歩いてくる。
これ以上なく着こなしているノーマルスーツ、体格は非常に良くバランス良く仕上がっている筋肉に、茶色の髪とテンプレートだが味があるアメリカ系フェイス。
ただ、持っている銃が異常だった。
ドラムマガジンが二つくっ付いたような銃。
「パトリオット」
「この銃を知っている……いや、知っている人間は多いと見るべきだな」
「プレイヤーだが俺らのどっちも狙わない、どこの誰だ!?」
男は銃を腰につけ、煙草を咥えて火をつける。
「……良いものだな、この時代はまだ気軽に煙草を吸える」
俺は問い、戦友のベロニカは惨状に目を背けてる。
威張るように情報を引き出す理由もない。周りにいるのは死体だけ、隠れてる不意打ち野郎もこの場の誰もを傷つけるには至らない。
男は周辺を見渡してから、自己紹介を始めた。
「俺はイロコィ・プリスキンと言う。プレイヤーの一人だ、今はシャーレの先生をやっている。パトリオットはビッグボスのを拝借した」
「イロコィ……すげえ名前」
「生徒達からもそう言われているが、これも立派な名前だ」
「聞いたことねえってだけで驚いたが、まあ俺だって名前に食い物入っているからな。俺はアレイシア・ガレットピア、今隣にいるのがベロニカ・グルースだ。ちょっと周辺の状況が状況で狼狽えているが頼りになる」
「大丈夫か」
イロコィはそのまま降りて、受け入れつつはあるが動きが鈍い彼女を支える。
「立てるか」
「あ、ああ……」
流石にベロニカも回復してきたか。
「す、すまない……あまりに、何故だか……」
「その反応が自然だ。俺も敵地でこう言った死を見てきたが……慣れてない方がいい。こんな戦い続けていたらいずれ慣れる、慣れてしまうがな」
「_____一緒に戦った友は慣れているのに不甲斐ない」
正直な所、俺は多分バカなのかもしれない。バカじゃないとしたら、感受性という無能の苦しい言い訳もしないやつだ。
結局これは俺にとってはゲーム、死んだところでゲームオーバーになるだけ。大した感動も動揺もないし、目の前の奴らはNPC、死んだところで良いアイテム落とさなければ無駄死にと大差ない。
「気にすることはない。俺もイロコィと同意見だ」
それは本心ではない。
自分が嫌になることさえ無いので、俺は目を逸らしながらただ大人らしいやつに同意してるだけ。
三文以下の芝居を見ているようで気分が乗らず、そのままミサキの方へ歩く。
他に誰もいない。
アイアンや大和、ナギサがどうなっているか分かりようは無い。生きているかもしれないし死んでいるかもしれない。死んでいたら“あの時”のように一人で走り切り、生きていれば喜んで戦う。
この死体の山を見てたら、さっきの戦いの熱と楽しさが嘘のように引いた。
目の前の少女は近づくと、まだ少し反応があるのかピクッと動いている。
「……生きているのか」
歩いていくと、まだ息がある。胸が少しだけ上下する、死にかけの少女の体に興奮を覚えることもなく、近寄って片膝をつける。
「大丈夫か?」
「……大丈夫に、見える?」
「____ったく、聖剣やら半神パワーやら無限銃弾喰らっておいてまだ生きてるとは驚いた。キヴォトス人って頑丈なんだな」
「あの聖釘が私を守ってくれた。最後の最後まで」
「まるで自我があるみたいな言い草だが」
「あったと思うよ、私を恒星から守るくらいだもの」
「あ……?」
何を言ってるかは理解できないものの、おそらく間違いでもないはずだ。
否定もせずに、服もボロボロのミサキを見ている。
「……あんた達って、何のために戦うの?」
「ん?」
「私達は自分の人生のために、またはマダムのために戦っている。あるんでしょ?そう言う理由」
「人によって違うが俺はプレイヤーと戦う事には意味を見出してるからそれが理由かな。大義も何も持ってない」
彼女は目を逸らす。
拳は握りしめられてるから恐らく怒りがあるのだろう、俺も強くは言えない。
「失望したか?」
「ううん」
静かな問いが、二人の間を響く。
「私を殺さない理由ってなに?」
「もうこの時点で勝っているからな。お前は手持ちにカードもないし、武器もない。パンチされたら流石に痛いがまあガウェインのフルスペックを解除しない限りは致命傷にもならないだろう。仮にそうして死んでもイロコィはともかくベロニカは話の聞けない獣相手じゃ死ぬまで殺してくるだろうし、結局お前は袋の鼠だ」
増援が来れば全員焼くだけだ。だが、既に決着が付いているこの戦場、生き残っている奴らは尋常じゃなく強い上に仲間がどれくらい生きてるか分かんないんじゃ突撃してくる奴もいない。
「俺はプレイヤーと本気でやり合ったり、いや、自分が本気で戦ったりするのが一番好きなんだ。だけどそれで相手が死んでしまったら、そいつとの戦いはそこまでになっちまうだろ?それは困るから余程じゃない限りは死なない事を祈りながらやってる。手加減なしの本気で立ち向かわないと楽しくないし、失礼だし……でも死んでほしくもないからな」
「あんた達がやってるOSGPとやらじゃないと、どうしても達成出来なさそうだね」
「立ち回りを考えるのも身の程を弁えるのも俺には難しいからな」
俺がこのゲームから離れられないのもそれが原因。自分の全てを噴出して、最低限のルールで暴れ続けること以外に大した価値を見出せなかった結果卑怯卑劣も正々堂々もありなこんなゲームでしか居場所がなかった。
スポーツなんてやってたら、自分の大多数を押さえ付けて名誉やらなんやらと気に掛けてる間に憤死してしまう。俺らは気持ち良くなるために生きてて、誤魔化すために生きてない。
それは生きるために全力を尽くすミサキにしても同じことなのかも知れない。
「立てるか?」
「……ううん」
「じゃ」
彼女に肩を貸して持ち上げ、ゆっくり歩くことにした。
「私は負けたから、もう既に捕虜……いや、それ以下か」
「トリニティじゃなくて俺達が抱える訳だからな、下手な扱いはしないさ。これでも捕虜は二人目だ」
「だと良いけど。夜這いしに来たりしない?」
「俺は少し年上で胸も尻も大きい女性が好きだからそんな事はしない。アイアンだって彼女がいるしな、ロリ巨乳の」
「度し難い性癖してるんだ」
「言ってやるな」
俺も最初どうかと思ったが、正直な所そう言う女性も欲しかったりする。甘やかしてくれて、しかもえっちで……はっいかん。
「まあ、世の中にはそう言うやべー奴もいるってことで。でも捕虜は丁寧に扱うよ、ここまで言っておいて捕虜かどうかも怪しくなるけど。サオリだっているし」
「……つまらないって事はなさそう」
「ああ」
少しだけ明るい声で返事して、安心させられるかはともかく誠意は見せよう。
長居してる理由もないし、と彼女を連れて仲間のところへ戻る。
「お、戻ってきたか。どうだ?その娘は大丈夫そうか?」
「あまり喋らせると傷に障るからあれだが、少なくとも生きてるしそこそこ元気。だが早い所移動した方がいいのは事実だな。長居してたら多分悪化する」
「そうか……ベロニカ、お前は大丈夫か」
「あ、ああ……私は構わないぞ」
「では俺が先導を切ってここを離脱する。着いてきてくれ」
「オッケー!」
気分が乗った。
勝ったら凱旋しないとな、なんてバカなことを考えながら急いでついていく。
道中には何もなさそうだが、こう言った混戦ではトラップがあって当たり前。
「前方は大丈夫だ。後ろから着いてきているのはいるか?」
「今のところは見当たらない」
「よし。ではこちらに着いて来い」
「オッケー」
ベロニカとイロコィに挟まれながら、ミサキを抱えて走る俺。
大聖堂の近くを抜けると流石に騒ぎが減ってきたのか、普通に人が出歩いてたりする。
「ここまで来たら一旦は大丈夫だ。油断は出来ないがな」
「だと良いが」
「おーい!」
そんな、俺らを呼ぶ声がする。
あまりに激戦で忘れてしまいそうだが、しっかり覚えていたようだ。
「アシェイラ!」
捕虜が自由に走り回っている。
「お前抜け出したのか!?」
「いいや、色々手伝ってもらったんだ」
後ろには男の声。聞いたこともある声。
「流石に自力で脱出してフレイムスティーラーのカード取り戻すまでされちゃったのはビックリしたけどね」
「お前ら……!」
大和もアイアンも、全員生きている。いつも通りの姿にはなってしまったために困るが、それでも仲間が生きていると言うのはとても嬉しい。
「よぉく生きてたねえ。偉いよ〜」
「えへへ、これでも頑張ったんだぜ俺」
「小生らが居ない間によく一人で耐えた」
「私達も色々動いてたからさ……まあでもとりあえずは移動しようか。すぐそこに新しい拠点あるから」
「ああ」
そう言って、俺らは一丸となって休息を取ることになった。
新しい拠点、ゲヘナの辺境にあるところか。
楽しみだな。
(キーボード壊れたので余談は治った時に挟みます)