Never Says「Good by…」   作:らんかん

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カードロックという謎

 ゲヘナでの拠点はちょっと豪華。

 

 バーとか社長室とかビリヤード台とか、地下室に行けば射撃訓練場もある屋敷みたいなの。すぐ目の前には噴水があるし……いやどっちかと言えばストリートの角にある正面がほぼ三角形みたいな、扇形の建物と言ったほうがいいのか?

 

 ともかく住みやすくて居心地のいいこの場所で、社長室の社長椅子に座りながらダラダラしている。

 

「はあ〜……」

 

 実を言うと困ってはいた。

 

 アイアンはどうかわからないが、基本キヴォトスに男の人間がそう居ないようだ。それは俺達の過去、二次創作が流行っていた時に“男生徒”なるジャンルが出てくるくらいには。

 

 それはつまり、男一人で歩いていたら目立つと言うことに他ならない。

 

「下手に動けなくなっちまったしな」

「気に病むことか?」

「アイアン……」

 

 いつも通りの姿でやってきたアイアンは何も気にしてない様子。

 

「おいおいお前だって分かってくれるだろ」

「心中察するが、正直なところプレイヤー戦闘まで待機ということだ。そもそもこの時まで手当たり次第当たって全勝していたのが幸いだと言っていい」

「それじゃ俺が悪いみたいな」

「そう聞こえたなら申し訳ない。だが、そう言わせてもらうだけの権利はある」

「……」

 

 言い返せない事を持ち出されたら、素直に受け入れるしかない。

 

「戦隊モノのカードを持ってきたことはいいだろう、貴様ぐらい強い人間が持っているなら初めてベイトとして役に立つ。他のカードが何かは分からないが、まあこれも許そう。このゲームはエンタメの側面もある、それで活躍したということはまあプレイヤーとして遊び場への金落としも成功したというわけだ」

 

 だが、そう言ってアイアンは俺に近寄る。

 

「ノーマルカードしか持ってこなかったということはどんな魂胆だ!」

「貰ったゼロツーのカードのことは忘れてた」

「起源の律者は!」

「あんなもん使い方知るかあ!」

「なぜ知らんのだ!」

「使おうと思っても使い方知らないし出会ったこともなければフルスペックのくせに使い方書いてねえし!そんなもんを使ってみろ!?ソロでも変なこと起こったらどうしようもねえ!」

「ゲームだろう!?無茶苦茶にしてこそだと」

「それを今言うか!俺は持ってこなくてよかったと思ってるぜあれは!」

 

 胸ぐらを掴んで叫んだ。

 

「仮に持ってきていてもプレイヤーの不可解な失踪を繰り返している状況でそんなの使えるか!」

「……そうだな」

 

 顔を逸らす彼は、少しばかり俺を髪の隙間から見ている。

 

「すまない、熱くなりすぎた」

「俺こそ悪かった。ノーマルカードしか持っていかないの、忘れてたのさえなければ理由がないわけじゃなかったんだよ……ごめん」

 

 話が逸れて少し冷静になれてしまったのもあって、互いに話すことを失う。

 

「で、それはそれとして。俺もアイアンに聞いておきたいことがある」

「なんだ?」

 

 真面目な話でいいのか、わかんないままだが。

 

「これはお前がこのゲームのこと俺より詳しいと仮定しての話だ。あの力についてどう思う?カードを封じるなんての、あり得ると思う?」

「有り得るだろう。構造的な話そもそも小生らはプレイヤー、相手はNPC。だがやれることはほぼ一緒、それはつまりシステム的にはほぼ同一の存在だ。ハードウェアは大体一緒、いや、ソフトウェアも一緒だ。それを使うAIが違うというだけだ」

「つーことはなんだ?似たような設定の存在が複数いるから一人が改竄できれば、連鎖して情報引き出して同じようなシステムを使えるって話か?」

「ああ」

 

 やりい、俺あったまいい。

 

「だが、それをやるには一つ条件が加わる」

「なんだよ」

「"それを認識できるかどうか"だ」

「認識?」

 

 難しい話かと思い身構える。

 

 こういう時には真面目に聞いておかないとな、大和とかに後で聞かれたら答えれないと恥ずかしいしアイアンに二度手間取らせるわけにもいかない。

 

「そう、認識だ。小生らと同じ視座に立つ、とも言えるか」

「ああ…?」

「小生達はそもそも自分たちがプレイヤーで、彼女達と同じ世界に入り込んで遊んでいるプレイヤー。しかもNPCと同じシステムで、出来る限り五感を活かせる……リアリティが出るようにNPCと同じようなボディとデータで遊んでいる。だが、当然ルールとかも改変できないように、プレイ中はルールプロテクトに一切触れられないようになっているし、仮に何かしらの必要があっても基本的にはゲーム内アイテムないしイベントとして変換して出てくるだろう?」

「そりゃそうしないと下手にアナウンスとかお知らせかましたらプレイヤーの行動に関わらず上位存在の検知かなんかで作品のキャラが狂う可能性がある。言い換えれば"今までプレイヤーが取ってきた行動が無駄になる"からな」

「だが先ほども言った通りキャラもプレイヤーも同じシステムで動いている、極限のリアリティを追求するためにな」

 

 ________あ、なんとなく理解できた気がするぞ?

 

「……その同じだということに気づく何かがあったのか?」

「そういうことになる」

 

 ロックされたカードを見た。

 

 例えばリドル・ローズハートが型月の魔法使いに強く出れるのと同じように、特定のものを封じるという形で実質的なロックをなせることがある。だが、今回はどんな理由もなく、ノーマルカードを封じれる。能力を無効化することではなく、カードの種類を指定して封印する方式。つまりルールやプログラムに入らないと出来ない芸当だ。

 

 そんなことが出来るのか?まさか、このステージの外側を認識できるような________

 

 思い当たる節がある。

 

 ブルートワルツが……?いやまさか。

 

『分からないな。俺らが見えない高次元の住人のこと、どう見ようと思っても見えないから。だから惹かれるんだろう?』

 

 自分の言葉が反芻した。

 

「どうかしたか……?」

「ブルートワルツだ……!」

「ブルートワルツ?ああ、お前に次ぐ実力のプレイヤーだったな。それが?」

「俺あいつに会ってる」

「しかしプレイヤー同士がただ再開したという話だろう?何も今話すべきでは」

「……ダイブ直前の話だ」

 

 素直に打ち明けよう。首謀の大和にはともかく。

 

 俺はダイブする直前、本来なら起こらないはずのダイブ途中の空間でブルートワルツと接触したこと、その時に宇宙の事やらなんだか意味深な発言をしていた事。

 

「……本気で言っているのか?」

「俺は確かにあの時宇宙の話を聞いたし、それに関する答えも出した。AI以外が無限に世界を描き続ける事は不可能に近いと」

「しっかりと答えていたのだな。それは評価するが果たして関係あるかと言われればないが」

「それに彼女のムーブも謎なんだ」

 

 本題。

 

 ここからは真面目に今後の動きに関わる事だ。

 

「ブルートワルツはアリウスにいた。俺らが来た段階で既にアリウスは壊滅状態だったし、プレイヤーは0人だった、つまりあいつはアリウスのプレイヤーじゃない」

 

 サオリやベアトリーチェの話を振り返ると彼女らに力を授けたやつはアリウススタートのプレイヤー皆殺しにできるような相当強い奴になる。前者に至っては彼女がアリウスの協力者だと言っていたし、ブルートワルツならあり得ない話でもなかった。

 

 彼女自体の動きも知ってる範囲ですらおかしい。

 

 そんな圧倒的な力で信頼を得ているのであれば何故態々ゼロノスに変身して記憶を消そうとしているのか。その際に『多すぎる』と2枚のカードを見て呟いたのもアリウスに協力的ではないと考えられる。

 

 加えて仲間ならば攻撃するのにも数を減らすのも躊躇なし。その状態でアリウスの協力者であり続けるのも難しいはず。

 

 とにかく、彼女には不可解な点があると主張した。

 

「なるほど……確かに気になるな。だが、ゲヘナ陣営という線はないか?」

「ゲヘナ陣営なら尚更アリウスを表沙汰にする事件を起こさないと思うし……いや待てよ、アリウスが邪魔にならないよう間引きするはあり得るか。いやでもだが」

「やはり“時間”だな」

 

 アイアンも同じところでぶち当たっていた。

 

 スタートの前に関わることはできない、どう足掻いてもプレイヤーじゃない限りは無理だ。

 

 ブルートワルツも自分と同じところに居たとはいえ、やはり彼女もプレイヤー。どうしても時間に辻褄は合わない。

 

 ゲヘナ陣営であれば行動の説明が付くが、スタート時間が俺よりも前、つまりアイアン達が起きていた時だったとしても"すぐにマコトとかが画策しているものに参加してアリウスに行きベアトリーチェ達との信頼関係を作る"なんてやっぱり無茶だ。

 

 当日の夜にはすでにサオリが信頼してこっちに寄越しているというのを見るに、多分当日で組める話じゃない。嘘だったとしても、協力させるだけのリターンを……そのためのキャラカードか?ミサキがフルスペックを使っていたのもあるし……いやだからプレイヤーですら介入できないプロテクトをどうやって!ベアトリーチェにそれが協力したのが事実だから、わざわざブルートワルツが手を組む必要はない!

 

 彼女がもしアリウスのプレイヤーを壊滅させるようなやつだったら?いや、それこそプレイヤー殺してどうするんだよ!信頼減るぞ!てかあいつのどこにそんな力がある!

 

「あ、うう、ああっ!」

 

 だめだ考えるほど訳わかんねえ!何をどうしたらそんなバカなことが起こる!

 

 立って机叩いても分からない。

 

「おいアレイシア」

「あんだよ」

「……ものは、丁寧に扱え」

「_____悪い」

 

「はいはい」

 

 扉を開けて入ってくる奴がいる。

 

「大和」

「飯の準備が出来たよ。ノーマルカードの件は自分も言っておきたいけど、まあそれ以上に逸れた状態ですぐに助けに行かなかった私達も同じように責められるべきだと思うし」

「お前達がなんもなしに逃げるとは思わない。アシェイラの手引きも何かあってのことだし、それを責めることはしないさ」

「アレイシア」

「ああただそれをいうなら俺も敢えて言えば情報共有してくれないことだけはちょっと根に持ってる。作戦というか、こうやって勝ちたいってのは言ってくれないと仲間外れみたいで寂しいぜ」

「……酒の席でいい?先生もいるところで話したほうが手間がなくて済む」

「しゃーねーな」

 

 これでも、俺のカッコ付けに乗ってくれるのは感謝しているんだぜ。

 

「行こうか。一階だよ」

「ああ」

「オッケー」

 

 三人揃って部屋を出る。

 

 バーのある一階の部屋からすでにいい匂いがエントランスに充満。

 

「休めるのって今日限りになるかな」

「いいや、そんなことはない。小生らは結局、指針を合わせるために結局休むことになる。行方をくらませるのもここまでくれば簡単だ」

「しばらくの買い出しは先生と私になるけどねえ」

 

 あくびをしつつ、入ってきたバー。

 

 すでにいろんな人間が、食い物食って楽しんでいる。




《余談》
わーい!欄干だよー!

キーボードが復活したことによって楽しくやっておりますが、まあともかく余談です。

今回はまあ『十万文字突破しての感想』みたいなのーですかね。

え?感想?

あーっとですね、すごいね。やる気がある。自分は評価されないとやれないタチなんですけど、だったら今書いてるブルアカのやつやりゃいいじゃんってなるじゃないですか。

でもこっちの方が楽しいの。自分が考えたもの葛藤せずぶち込めるし、自分の思想も入れれるし、何よりこういうばら撒いて組み立てるみたいなもうバカ上等!なものは大好きです。

ちなみにこの作品でやりたいことは「無限の証明」「結局飾っていても異性と名誉に溺れるのが人間です」「俺が考えてる宇宙のうんたらを聞いてくれ」の三つになってます。ついてきてください、そういう人が増えたら気持ちいい。

十万文字もこんなことを書いてるバカのこと哀れむ時はお気に入りよろしくな!この作品それで一人増えると跳ねて喜ぶから!

以上です。

らんかんより。
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