Never Says「Good by…」   作:らんかん

31 / 61
他愛ない通信

 飯を食い、下に降りたが誰もいない。

 

 家にいるだろうティーパーティーの連中も、飯食ってる途中に部屋を出たベロニカも、アイアンもアシェイラも他の奴らもいない。

 

 特に気にせず軽く食器を洗って片付けた後、机の上に何かがあるのを見つけた。

 

『今から私達はゲヘナ本校に行ってきます。陽が出ているうちに先生と一緒に戻る予定です』

 

「そういえば今のメンバーはティーパーティーのトップ三人も居たな」

 

 自分はやるべきことがない。

 

 なら、怪我を治せるよう安静に転がっているしかないか。暇になったら軽く運動をして、自分の体調をしっかり把握しておこう。

 

「アイアンも居なくなってるとは随分と準備に時間をかけ……ん?」

 

 自分の身体に何かしらの反応。

 

「誰かから連絡がかかって来たのか」

 

 おそらくプレイヤー用の通信だろう。

 

 俺らは電子生命体、プログラムで出来ている。プレイヤー間なら、そのプログラムの接続で体内通信も可能だ。

 

 声は出さないが、耳に手を当てる。

 

《もしもし》

《繋がったか》

《イロコィ》

 

 イロコィ・プリスキン、先生のポストを今代理で務めている男が通信になった。

 

《やっぱりこういう方式の通信がしっくりくるな》

《そりゃプレイヤーはこういう通信の仕方がメインだからな。会ってばっかだが信頼してくれて嬉しい》

《アレイ、一つ聞いてもいいか。ロックのかかってないフルスペックのキャラカードを手に入れたんだが》

《どこで》

《ゲヘナ本校の道端に落っこちていた》

 

 随分と良いものを拾っているんだな。何を手に入れたのやら。

 

《銃が三つに剣の鞘が付いていた。どういう効果かは分からない》

《その説明じゃ俺も分からない。例えば……どんな銃?》

《WA2000にキャリコM950、そしておそらくは30-06スプリングフィールド用のバレルを持っているトンプソンコンテンダーの三つだ。どれも念入りに手入れされているが……どうしてこうも扱いにくい銃ばかり》

 

 銃の名前を言われれば理解した。

 

《そのキャラカードの名前は衛宮切嗣って名前じゃないか?》

《エミヤ、キリツグ……ああ、そうだ。その名前だ》

《お前プレイヤーで知らないのまじか、結構有名なのに》

《どうやらその男を知る人生には恵まれなかったようだ》

《ま、いいか。俺も全部覚えてるわけじゃないからな。で、その衛宮切嗣のキャラカードがどうした?》

《使い方を教えてくれないか、銃だけじゃないからどうしても不安が残る。銃そのものも不安なものが多いからな》

《お前結構な腕してると思ったんだが》

《銃の扱いだけはな、ただそれ以外はまるで素人だ。いかに軍人の知識があろうと、今回のフィールドはそれを大幅に役に立てることは出来なさそうだ》

 

 自分の事軍人だと思い込んで忠実にやろうとしているのは相当な狂人……と言いたい所だが俺も自認アルジェンティの女性プレイヤーに助けられた事がある。イロコィのこととやかく言えない。

 

《わかった、知ってる限りのことはサポートしよう》

《頼む》

《そのキャラカードはさっきも言った通り衛宮切嗣だ。作品はfate/zero、魔術師殺しの異名を持つ魔術師だ》

《魔術師殺し?》

 

 イロコィとは確かどっかの部族の名前だったような気もするから魔術や魔術師に対しては結構な思い入れありそうだと思っていたが偏見だったようだ。

 

《fate、いや、型月には魔術師と呼ばれる奴らがいる。そいつらは神秘を求め、魔術を使って世界の根源に至るために魔術____広義的には科学と相反するものを利用して真理を知ろうとしているんだ。そう言った奴らを殺すために、切嗣は近代兵器や機械をよく使う》

《それが銃か……》

《ああ》

 

 通信しているのに、体は頷く。人間のコミュニケーションはどこ行っても変わらないな。

 

《しかしキャリコか……》

《武器に不満が?》

《ああ、この銃はあまり評判が良くないと聞いた》

 

 声も姿もスネークなせいで、釈迦に説法感が半端じゃない。

 

 てか自認スネークで銃の説明を求めてるのがすげえな。知らないのか、メタルギアにわざわざのめり込むようなオタクが。

 

 だが、説明はするべきだろう。仲間だ、答えられる話はしておこう。

 

《ヘリカルマガジン……螺旋式弾倉というのは非常に故障を頻発しやすい。耐久力の問題ではなく構造そのものが原因だと言ってたな》

《多く言われているのはゼンマイの巻き不足のせいでうまいこと動かないと聞いたが》

《それだけじゃない。螺旋状という特殊なマガジンはその仕組みと後退したボルトとの周期が噛み合ってないとスムーズに弾を送れない。ゼンマイってのは巻いた力と数でエネルギーが違う。ゆっくり巻いたネジと早く巻いたネジでは車の進むスピードは違うだろ?それがそのまま給弾スピードに直結すると考えてくれ。強く巻き過ぎれば給弾が早すぎて引ききれてないボルトに擦れて薬室に入らないし、遅ければ当然前進途中のボルトに弾の先が挟まる。巻き不足でうまいこと動かないのは正しいが、正確には『巻いた力とボルトの運動周期が噛み合わないと給弾不良を起こす』だな》

 

 言っていて何だこの欠陥兵器と愚痴を溢すくらいには酷い。

 

《随分シビアな要求だな》

《ただ、切嗣はそれを採用するには理由があった。彼が相手するのは英雄の霊やそれを使用する魔術師だ。パトリオットと同じだ、携行出来る火力としては優秀だからな。装填数も考えればリロードする手間も減らせるからうまく動けばハマりやすいのもある。もっとも彼が闘ってる相手は銃器が通じる方が稀だから、彼自身は足止め用として割り切っているが》

《どうしてその状態でキャリコを》

《コンテンダーがあるだろ?それを通すための削りだと言っていい》

 

 衛宮切嗣の切り札。

 

《そいつはお手製の弾丸を使うためのやつだ》

《お手製の弾丸》

《『起源弾』っていう、スプリングフィールド用の弾があるだろ?》

《これか》

 

 電話の向こうで、金属音がした。

 

《魔術師ってのは基本”魔術回路”ってのがある。魔術ってのは魔力ってリソースがあってこそ使える()()()()()()()()だからな、当然それを使うだけの回路は必要だ。その回路を急に繋ぎ直すのが起源弾だ》

《回路を繋ぎ直すだけでダメージを与えられるのか?魔力によってサーキットが出来るなら、繋ぎ直されてもそのうちルートを最適化することも出来るだろう。そもそもが実体のない魔術的なものなら一瞬で回路を破棄して作り直すことで被害の最小化も可能なはず》

《言っていることには一理あるが、魔術を使うには当然その人間の中に魔術回路を組むしかない。じゃないと人間の神経から魔術回路に指示を出してから魔術を使うができないからな。型月では人間ごとに使えるやつと使えないやつがあるが、それは組まれた魔術回路の性能と体質による相性によるものだ。そこまで密接しないと、ちゃんと使えないんだよ神秘ってのは》

《聞いてる限り特に得したりするようなものじゃなさそうだ、それでもスピリチュアルにハマるやつがいるとはな》

《そう思っているからこそ”煩わしくない”魔法を求めて研究するんだろうさ》

 

 互いに笑う。

 

 しょーもな、みたいな世間話。

 

《話を戻すが、結局その起源弾の効果は魔術回路が基本外部からの生成である以上、起動していないとただの道でしかない。撃ち込んで効果があるのか?起動しているタイミングを狙って撃たないと、大した効果が得られないと見たが》

《間違ってはないが、普通に撃っても一応効果がある。生身に撃ち込む以上は銃弾としてのダメージは担保できるし……そもそもの話、雑に繋ぎ直す時点で起動した瞬間に魔力の奔流がスタックすることだってありうるはずだ。血管として一括りにされた人間の動脈と静脈だってランダムに繋ぎ直してみろ、血中酸素の循環が破壊されて死ぬのを待つだけの人間が完成するだけだ》

 

 イロコィから、納得した声が聞こえた。

 

《なるほど、そういうことか》

《他にも色々機能はあるが、時間はあるか?フルスペックなら追加で話しておきたいことが一つ》

《そうだな……いや待て!》

《どうした!》

 

 彼の方から銃声や叫び声が聞こえる。

 

《まずい、どうやらこの場所で戦闘が始まってしまったようだ》

《今どこにいる!》

《ゲヘナ本校の》

《先生がいたぞ!捕まえろ!》

《後で話す!一回切るぞ!》

《おい!》

 

 通信が切れた!

 

 くそっ、やっぱOSGPはこうじゃねえとな!だが、傷が治ってねえタイミングで起こるのはナンセンスだ!

 

「アイアン!?いるか!」

「どうした?」

 

 トイレから出てきたアイアンに駆け寄る。

 

「今イロコィのやつがゲヘナにいるんだが襲撃が始まった!連絡も途切れて多分ピンチだ!何がどう起こってるか聞く前に終わっちまって」

「そうか。じゃあ小生が向かおう、貴様は休んでろ」

「そういうわけにはいかねえだろ!他のプレイヤーが来るにしろ、アリウスはノーマルカードの封印が使える!ミカとセイアが持っているかどうかわかんない状態で放置するやつがあるかよ!」

「ん?プリスキンは持っているのか」

「拾った切嗣のカード持ってるけどちゃんと伝え切れてない」

「アヴァロンのことは」

「それ言おうとしてこれだよ」

「馬鹿者!銃器のことで時間潰してたんじゃあるまいな!」

「そうだよ!銃のこと聞いてきたら答えるべきだろそりゃ!」

「本当に貴様は……!」

 

 彼の怒り狂いそうなのを抑える表情を見ていると、少し申し訳ない。

 

「じゃあ俺が自分の尻拭いするしかねえな!行ってくる!」

「ああおい!」

 

 やらかしてもそうじゃなくとも、必ず何かのイベントがあった。なければいい、あったら尚のこと事が進むからいい。どっちにしろ俺がいないタイミングで悪い出来事が起こるのが耐えられない。

 

 ガウェインのキャラカードを噛んで起動して、装備をした上で建物から飛び出してジャンプ。

 

 先生の役をやってる味方のプレイヤーとメインキャラをここで死なすわけにはいかない。

 

 ガラディーンの炎の噴出を利用して加速しながら、俺はゲヘナ本校へと急いだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。