Never Says「Good by…」   作:らんかん

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エデンズ・ショットガンスターター

 俺はガラディーンを振るって炎を広げる。

 

「来るかぁ!?」

「ここでぶちのめしてやらぁ!」

 

 目潰しをしつつ真正面から突っ込む。

 

 本当のリキッドだとしても戦闘能力そのものは低いと見て、炎による視界潰しで真正面からのハイスピードアタックが到達するタイミングを陽炎で屈折させてずらしてクリーンヒットを狙う。

 

 炎で隠すように剣を構えて、そのまま振り下ろす。

 

 だが、相手は何もなかったように杖でガラディーンを受け止めた。

 

「ああ!?」

「甘いな、炎でリーチとタイミングを誤魔化すのはよく考えたが俺の肌はその程度では誤魔化せんよ!」

 

 姿勢がしっかりとして芯があるから、杖で受け止めてダメージもなし。

 

 だがどれだけ強くても今使っているのはマダムヘルタ!人外じみた円卓の騎士なら近づいた以上ぶちのめせる!

 

 地面に足がついているからこそ力を入れて、聖剣を振り撒くる。

 

「ぐおぉぉぉっ!」

「どれだけ強かろうが、マダムヘルタは接近戦が不利だ!鏡を使おうと意識を向けばガラディーンがお前を裂き、距離をとって超遠間合(アウトレンジ)から攻撃しようとしてもそれより前に俊敏B+がお前の喉元に迫る!戦う相手を間違えたなぁ!」

「そう思っていられるのも今のうちだ」

「ああ?」

 

 乱打するように聖剣を振っていると、あるタイミングで杖に引っかかって動かなくなる。

 

「確かに俺とお前では差があるが____それでも実戦経験では俺の方が上だ。アレイシア、お前には技術がない」

「偉そうに」

 

 反論しようとした瞬間だ。

 

 杖でガラディーンを絡め取られて、耐性を崩したところに膝蹴りが入る。

 

「ぶべ」

 

 よろけたところを頭を蹴られて吹っ飛び、そのまま転がる俺。

 

「お前は力の入れ方も知らなければそもそも構えのやり方さえ頭にない。いや、お前どころか他のプレイヤーと呼ばれる奴らも大概そうだ。軍の格闘術すら知らんとは呆れた、それで勝ったところで価値がないと思わないか?」

「るっ____せえ!」

 

 立ち上がるが、どうしてやられたかよく分かってない。

 

 いや、予測はある。

 

 相手の言う言葉が正しいのであれば、多分あいつはマダムヘルタ関係なく中身が強い。

 

 力を瞬時にどれくらい入れれるか、その上限を上げる瞬発力というものが異様に高い。それを高めるためには力の抜き方もおそらく上手い。俺がガラディーンで杖を叩いた時、あいつの足元の瓦礫は結構凹んでた。必要分以外は地面に逃したのだろう。

 

「どうした、もう一度やるか!?俺は構わんぞ!」

「杖もお前も叩き折ってやる!」

 

 今度は、足に力を十二分に入れてタックル。

 

 ガウェインのステータスに物言わせてこのままあいつを轢き殺す!騎士が女に手をあげるがどうたらとか無しだ、あいつが本気で挑発したなら俺の今できる本気をぶつける。

 

 だが、相手はそれで一筋縄で行かなかった。

 

「そう来なくてはな!」

 

 なんと杖を捨てて、素手で構える。

 

「貴様に徒手格闘を仕込んでやろう!」

 

 サーヴァントを生身で受けるとは本当にイカれた野郎だ_____

 

 接近する刹那。

 

 リキッドは俺の側面に回り込み、タックル時に曲げていた肘に自分の腕を絡ませて引っかかったアメリカンクラッカーのように俺の体の進行方向を回転させる。

 

「なっ」

 

 動体視力と運動能力があまりに違い過ぎる、いや、ありえない。本物のリキッド・スネークにしてはあまりにもマダムヘルタの体に慣れすぎだ。

 

 そのまま相手の動きに振り回されて、自慢の俊敏B+のタックルは地面に向けて叩きつけられて停止。

 

「あがっ」

 

 顔を瓦礫が削り、振り回し方でムチウチ気味の苦痛を味わって俺は屋根の一部となれるレベルで埋まった。

 

 顔に血を流し、体のあちこちが悲鳴を上げているが俺は止まれない。

 

 いくら敵だからと核ミサイルをぶち込むような真似は阻止しなければ。

 

 立ち上がるが、ゲヘナのドイツじみた色を自分の血色で追加してるようだ。瓦礫が墨汁を差し込んだルビーのような色してる。

 

「まだだ____まだ終わってない!」

「はっまだやるか!根性だけは見上げたものだ」

 

 立ち上がってファイティングポーズを取る、リキッドはなんか両手を前に出してるポーズ。

 

 だが俺はベロニカから貰ったガウェインのカードがある!己の行動が制限されすぎないように立ち回れば!

 

 声を上げずにそのまま一瞬で相手に近寄ると、そのまま鳩尾に拳を入れるべく全速力で殴る。

 

 相手は回り込むように回避したが、もう片方の腕は引っ込んでいるからこっちの拳で殴りつければ勝てる!と、突き出していない左腕の拳で闇打ち。

 

「おお!」

 

 と歓喜の声を上げながらも、その腕を掴む。

 

 避けるスピードが早過ぎる。と、愚痴を言いたくなったその束の間。

 

 腕を引っ張られて後ろで固定される形となって、身動きが取れなくなる。

 

「チッ!」

 

 引っ張られた左腕の代わりに、自由な右腕の肘で後ろのリキッドをどつき回そうとしたが全部避けられて、挙句に右腕も絡まれてそのまま膝で腰から曲げるように飛び込んできて屋根へダイブ。

 

 いくら鎧やサーヴァントレベルの身体能力があったとしても、それを貫通するような人体の無理な負荷は抑えられない。海老反り極まった角度で屋根に突っ込んだせいで体の数箇所から固体が割れて肉体に刺さる感触がした挙句、神経がズタボロになって再起不能。

 

 血を内外構わず垂れ流し、挙げ句動けなくなった俺。

 

「ふむ、どうやらここまでのようだな」

「終わったよ」

「おお、もう出来上がったのか。装備の変更に時間が掛かると思ってたんだが」

「そんなわけないでしょ。あと私の体返してくれる?」

「ああ」

 

 後ろからやってきたのは、人形のヘルタ。

 

 だが、口ぶりから要約するにおそらくマダムヘルタ本人なのだろう。

 

 見た目がマダムヘルタのやつとヘルタがカードを交換すると、大きく変化。

 

 金髪のジャケット着た半裸の男と、マダムヘルタがそこに立っていた。

 

「嘘、だろ」

 

 血に頭が登らなく冷静だったがよく考えればおかしい。

 

 なぜマダムヘルタがリキッドの味方になっているんだ。OSGPならプレイヤー同士で、見た目がそうだという理由で納得出来たがどうも本物らしい仕草というか、プレイヤー特有のメタ的な視点、スコアに対する執着やキャラに対する劣情のようなものを一切感じない。

 

「ん?このガキは一体何?」

「なんでもOSGPというものの中で一番の激戦区をくぐり抜けてきたやつだ、装備が少なかったのか、それとも扱いきれないものだったのか。ともかくあまり強さを感じるような相手ではなかった。兄弟を仲間にしておきながら何も学んでないとはな」

「ふぅん_______ということは彼がアレイシア・ガレットピアなんだね」

「殺してはいないが全力で襲いかかってきたせいで反動がそのままダメージに繋がっている、どうする?」

「うーん、持って帰りたいかなー。彼が死んだら流石にあれに協力させてって言えなくなっちゃうし」

「予定通り、だな」

「でもまだ動いているね」

 

 体はどうしても生きているから、動いてしまう。死んだふりが通じるとは思えないし、通じたところでどう助かるかもわからないが。

 

「うわ、これ大丈夫なの」

「ガウェインのカードとやらは機能しているからしばらくは耐えるはずだ。お前はすぐに脱出しろ、俺はREXで花火を上げる」

「お前って呼び方やめてくれない?」

「悪かったな。ミス・ヘルタ、そいつを安全なところまで運んでくれ」

「分かった。じゃあ、ここからは一人で頑張って」

 

 俺の眼の前には、鏡が。

 

「これを運べばいいんですね!」

「そう。浮かせてぱぱっと回収しちゃって」

「はい!ミス・ヘルタはいかがしますか!?」

「私は別のルートで帰る。調べたいことがあるから」

「任せてください!」

 

 鏡に見つめられると、体が浮く。

 

 浮いてる感覚はするのだが、視界が潰れててその鏡がどういう形をしてるのかはっきりまでは見えてない。

 

 抵抗できる力もないから、そのまま空中を運ばれるガウェインみたいな何か。

 

 外からはシュール極まりない光景だろうが、俺に抗う術はなし。

 

「っ、ぁ_____」

 

 最も、そんなことはどうでもいいのかもしれない。

 

 既にゲヘナの校庭にはメタルギアREXが鎮座しており、その中にはリキッドがいる。

 

「暴れないでくださいよ~、殺したりはしないですから」

 

 空中からだとよく分かる。

 

 イロコィ達は襲いかかってきてるやつらを蹴散らして、メタルギアの方に駆け寄ってる。指を指しているのは______ああ、そうか大和とかか。

 

 どうにも手を伸ばそうとしても、感受性以外ろくに機能しない。

 

 大声が響く。

 

「リキッドォォォォォォーッ!」

「スネェェェェェェークッ!」

 

 何回も見たような光景(メタルギアソリッド)が、普通に見ないような場所(ブルーアーカイブ)で起こってる。だが、俺はもう動けない。

 

「ようやく出会えたな兄弟!」

「早くREXを止めろ!」

「このREXは既にここの生徒(アポストル)どもでも壊せないように仕上がった、貴様らの敗北だ!」

「リキッド!」

 

 持っている銃弾で一斉射撃を浴びせようとするがどうも効いていない。

 

 うじゃうじゃいる女性のような兵士はベロニカ、アイアン、サオリ、ミサキの四人が追い払っている上に完全に他のメンバーを自由に動かせるようにしている。アシェイラが見当たらないが、おそらくそれだけ見当たらないということは大和が何かしらの指示を出したのだろう。

 

 しかし、それが分かったところでもうどうにもならない。

 

 REXのレールガンは角度を付けて急速チャージ、かのマダムヘルタが弄ったメタルギアだ。

 

 チャージ時間も短縮されてれば狙いも明確だろう。

 

「あの時の再演、いや、可能性(イフ)をその目に焼き付けろ!」

 

 メタルギアの金属の軋み。

 

 ”咆哮”が鳴って、レールガンの輝きが最高潮に達する。

 

「今から見せてやる!」

 

 もう意識が保たない俺の瞼は、目の保護のために無理やり閉じようとして俺は抗う。

 

「俺達の21世紀を導いた、悪魔の兵器をな!」

 

 既に打つ手無し。

 

 飛びかかろうとしてもリキッドに近づけず、レドームを破壊して直接コクピットを開けさせようとしても壊れない。

 

 REXは、己が抱えるアロンの杖の煌めきに歓喜の声を上げ______

 

 この捻じ曲がった福音書(ストーリー)を強制的に進行させるためのポストモーテム(ICBM)を空に走らせた。

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