Never Says「Good by…」   作:らんかん

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それは月の女神か

「キアナ____!」

 

 キアナ・カスラナ。

 

 崩壊3rdの主人公で、学園の方は名前は聞いたことあるがそもそもデータ発掘中だからな。

 

「ね、ほんとだったでしょ」

「いや、だが」

 

 芽衣にあったことはないが、彼女になら一度は会ったことがある。

 

 だが、普通の少女だった。

 

 あの大会の時、何かあったのか暗い顔で放浪してたからか()どっかの都市で偶然鉢合わせして、カップラーメンを奢った____くらいだが、少なくとも話したときにはお嬢様口調でもなければ取り繕うのが苦手な少女だろう。

 

 そもそもが、あんまりメインの方には触れてない気がする。敵に回ったのなら多かったが。

 

 一番関わったのはシンと名乗った少女くらいか。あと亡霊のシーリン。終盤、ストフリの改修でテスラ博士とアインシュタイン博士には世話になりっぱなしだったな。

 

 ああ、いかん。思い出に話が逸れる。

 

 ともかく俺はあの場所でどっちにも会ったから分かる。

 

 キアナとブルートワルツは何かが違う。あれはキアナじゃない。

 

「納得がいかない?」

「ああ、なんか、なんか違うんだよ。あいつはキアナじゃないんだ、キアナっぽい声と見た目してるけど、やっぱどっか違うんだ」

「どんな感じで?」

「ああ、その……」

「はっきり言って」

 

 ヘルタに顔を近づけられて、威圧される。

 

 良い匂いで雑念が混ざろうとするが、眼光がそうさせない。

 

「しっかり言えなくても出来る限り言葉にして。そうじゃないと真っ当な情報が出てこないの」

「だけど」

「言葉にしようとした時のプロセスとかも有益なヒントなの。分かる?あんまり長々ここで時間を費やしたくないの」

「分かったよ」

 

 所感というものを、口に出した。

 

「ブルートワルツは、なんか少女って感じがしないんだ。いや、人格面を年齢で括るのもな。ともかく、知性を感じるんだ」

「キアナには知性がないということか?」

「違う。あれは、なんというか、何だ……悪い何かを感じる。キアナと話した時、それは感じなかったんだ。そもそも勉強苦手そうなやつがアニメと宇宙空間の繋がりを話すとも思えないし」

「ふぅん」

 

 天才の一人は少し離れてこっちを見ている。

 

 気疲れして立ってるのが若干嫌になってソファに座り、話を続けた。

 

「何だ、何て言えば良いんだ。リキッドなら若干分かってくれそうな気がするんだ、この、何というか俗っぽい感情だから分かる匂いというか」

「策略を考えている時の女の、孤高か?」

「で、良いのかな。孤高は高尚すぎるような気がする」

「あながち間違いではないだろう」

 

 リキッドが近寄ってきた。

 

「未熟な頃、思春期に燻る劣情、それを隠すときの男の軋轢の隙間から言い訳がましく『人を見よう』と心に言い聞かせたあの夜に視線を向ければ日常のふとした瞬間にその少女の本心、いや、飾らない魂が見える……それと似たようなものだろう?」

「多分、そうかもな」

 

 はにかみ、ヘルタとルアンにも分かりやすくなるように伝える。

 

「どういうことなの?」

「何というか性癖というか、異性に対する特別なセンサーは_____あ、そうだ!良い例えがある!」

 

 俺をボコしてきた男は、俺よりも長く生きている男。

 

 故に言葉にヒントがあった、俺の違和感を違う角度でドンピシャに説明できつつ理論的なものが。

 

「そう言えばキアナはレズだ、だからやっぱりその女性仕草があるんだけど匂いがやっぱり女性らしいというか。興奮しない甘い匂いがする、何層にもクリームを重ねたような甘ったるいケーキのような女性の匂いになんかフローラルってか花の匂いが強い」

「ブルートワルツは違うのですか」

「ああ。あいつは確かに良い匂いがするが、必要以上に女性のスイートな匂いがしない。てか控えめなんだ」

 

 何度か会ったがやはりそれが原因じゃないかと言ってみる。

 

 ブルートワルツは女の匂いが濃くない。キアナはレズだしそうじゃなくてもそもそも兵士として同性と暮らしているし、その生活の中で芳香剤とかいろんなものを使うからその匂いが重なって、生活から女性としての匂いが強くなるんだ。

 

 気付きづらかったのだが、そうだ。自分は最初女性としてここに入ってきて、色んな生徒と関わっていくうちに女性の生活圏の匂いが日常になってた。

 

「これだったらその、ルアンくらいだったら分かってくれるだろ?生物のエキスパートなら、人間のそういった生活習慣や生態による臭いの変化とか……」

「ええ、分かりますよ。なるほど……根本的に匂いが違う」

「急にキモい話をし出して本当に申し訳なく思うんだが、少なくともそんな感じだ」

「そんな些細なこと気にしてるようじゃ天才になんてなれないから」

「ありがとう」

 

 リキッドは後ろでサムズアップ。

 

 俺も同じやり方で返した、感謝を込めて。

 

「ということは、ブルートワルツはキアナではない。と思っているのですか?」

「ああ。だが、神の鍵を持って暴れてた写真があるってことはきっとカードか情報か、なんらかの形で流出している可能性が高い。関係そのものはあると思う」

 

 ともかく、無関係ではないがブルートワルツそのものがキアナなのはありえない。あのプレイヤーネームだってふざけているに違いない。

 

「面倒になってきたな……だが、どの道やる事は変わらない。様子見てる時にアレイシアのデータを一部貰ったんだが、やはりそれでチェッカーを作ってブルートワルツと遭遇して直接確認する以外の方法はない」

「そうね」

「出来そうか?」

「んー、色々貰った情報から弄って再構築をする。それも有機物の記憶領域に関する事だから少し時間が掛かるかもね。ルアンとやって頑張っても2日かな」

「構わない、スケジュール調整が必要な場合は俺がやる。専念してくれてもかまわん、どうせ暫くは深海にいるんだからな」

「じゃ、お言葉に甘えて。行こう、ルアン」

「ええ」

 

 天才2人は出入り口を開く。

 

「というわけだから余り体に障るような真似はしない事。いい?」

「ああ、分かったよ」

「リキッドがどうにも出来ないことがあったら呼んでください」

「ありがとう」

 

 2人に手を振って部屋から離れるのを見送ると、遠くに行ったのを確認してドアが勝手に閉じる。

 

 残されたのは俺とリキッドだ。

 

「2人になったな」

「ああ」

「案外聞き分けがいいじゃないか」

「話を聞いている限りじゃ俺が協力しても不利益を被りそうな話じゃなかったからな。ブルートワルツの調査もしなければと思っていたから、序盤ボコられた事以外は助け舟だ。協力しない理由もない」

 

 そういえば。

 

「あ、そういやお前REXをアリウスに撃ち込んだんだよな。アリウスどうなったんだ」

「安心しろ。撃ち込んだのはただのミサイルだ、それもアリウスが本来使うはずのな。核でも水爆でもない」

「ほんとかよ?」

「ああ、核爆発を起こしたのではもう全面戦争に突入しているからな。ここが無事ということは、大した被害がなかったに等しい」

「外交上は結果より行為そのものが重要な意味を持つはずだが」

「さあ、どうだろうな。ニュースでも見てみるか」

 

 近くにあったモニターをつけると、ニュースが流れている。

 

《______今日の昼、ゲヘナの校庭に突如として現れたメタルギアREXは大陸間弾道ミサイルを発射。着弾した場所はトリニティではなく、トリニティの奥の方にある非自治区のようです。被害者の中には恐らくメタルギアを止めようとしたティーパーティー、同じく止めようとして重傷を負った羽沼マコト議長と、先生の周りには協力者であるキヴォトスの外からやってきた数名など、政治的問題を孕むものと予想されており、連邦生徒会はこの件について正式な発表を控えているとのこと》

 

 随分な大ごとになっている。

 

 プレイヤー視点で言えばトラブルの最上位にいるとも言っていい。先生たちを味方につけている以上全滅という最悪な結末はまだ免れそうな手札はしているが、アイアン、大和、アシェイラ、ベロニカは注目の的になるわけだ。

 

 下手に動けばリキッド以上の厄介者として立ち回りにくくなるし、そうじゃなくてもこの時点で他のプレイヤーに情報が筒抜け。アリウスのカードロックがある以上、下手に襲われるのは回避できそうだがカードの相性ジャンケンで負けたらまず勝てない。

 

 心配してる中で、ニュースは続く。

 

《今回の犯人にはソリッド・スネークの他にマダムヘルタの格好した一般女性の姿が確認されているとの報告が。ただ、犯人の行方については未だに不明。

 またメタルギアREXと思わしきものが発射した弾頭は、犯人を名乗るリキッド・スネーク容疑の発言とは違い普通のミサイルだとする見解があるとのことで、トリニティ自警団・正義実現委員会は調査を進めています》

 

 リキッドの言っていたことは本当だったらしい。

 

 核ミサイルを使えば当然周囲の影響は避けられない、特に放射線などは顕著に現れたりするのでそれらがないということは核ではないと見ていい。

 

「言ったとおりだろう?俺は核を撃ってはいない、あれは余計な策略を組ませないために敢えて注目させるためのブラフだったんだよ。ゲヘナもトリニティもこれで動かざるを得なくなった、何しろアリウスというのが最大の敵として降臨しているんだからな」

「それだけお前らにとってはブルートワルツが敵だということになる、か」

 

 立ち上がる。

 

「スネークがいれば先生の威光と合わせてまとめることは容易、よく考えられたものだな」

「先生が救世主になれば滅ぶが、スネークは要素があってもその意志(SENCE)には辿り着けない。親父と違ってな」

「それをも利用するとはやっぱPMCを束ねただけはある」

「ゲヘナの方の邪魔を止めるために天才二人には無茶させたがな____ただ俺も出た、イーブンだろう」

 

 違いない。

 

 ふっ、と笑いが溢れてしまうほどだ。

 

 打ち解けるスピードが俺が異様に速いのか、それともリキッドの天賦の才か。

 

「ところでどこか行くのか?」

「頭を使いすぎた、ちょっと歩き回る」

「そうか。飯は一応タダで食える、腹が減ったら寄ると良い」

「あんがとさん」

 

 彼に手を振って、部屋を出る。

 

 いろいろ話し疲れたが、ブルートワルツの件とかもはっきりさせないと結局優勝は掴めない。もっと大きい事態になったとしても、とりあえず仲間としているアイアンや大和との関係を円満に終わらせて自分一人で突っ込むのが手軽でいい。

 

 さて、次はどうするかな。

 

 そう考えながら天国(ステージ)の外を歩き回ることにした。

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