アウターヘイブンの中は、非常にミリタリズムというべきか。
CICらしい場所では沢山のコンピュータが置かれていて、中心には地球儀みたいなホログラフィック。
道ゆく兵士は全員女性しかいないので肩身が狭いのは否めないが、今は待機中で戦闘態勢でないのか挨拶をすれば返してくれる。
「ああ、どうも。お邪魔してる」
「む、子供がこんなところで油売るな。よくないものが映るぞ」
「その戦地からこっちに連れてこられたんだ、リキッドにな」
「雇い主からか。まあ、あんまりうろつかんようにな」
「ありがとう。どっかで食堂にも寄るつもりだ」
「なら」
装備にあるポーチから飴を差し出された。
「しばらく歩いている間はこれでも舐めているといい」
「良いのか?」
「見たところ装備は何もなし、キャラカードなるものも持ってないからな」
「じゃあお言葉に甘えて、ありがとう」
「気をつけろ」
「ああ」
手を振って別れてから、飴の包装を破って舐める。
りんご味か、ジュースを固めて砂糖でコーティングしたようなそれを舐めれば上機嫌。甘いものは人のやる気とかに直接影響できるから良いよな。
CICを離れ、通路を通る。普通に軍事物のような景色が続くが、息苦しさは自然と感じない。アウターヘイブン自体が結構な大きさだからか余裕がある。
とりあえず空いてるところは頻繁に人の出入りがあるし、無遠慮に入ろうか。怒られないだろう。
「うわお」
ちょっと飾って驚く。
入ったのは格納庫。
メタルギアRAYが沢山並んでるじゃないか、アーセナルギア級だからあるとは思っていたんだが壮観だ。
「かっけえが、敵地に潜入してってなると絶望もするな」
あの時の雷電の気持ちも分からなくはないかもしれない。
一体一体見て回ろうじゃないか、細かいディテールを見られる機会はそう多くないから。
歩き出すと、自然と心が浮く。
カンカンと金網の上を歩く音、細かい話し声が聞こえてて全部は分からないけど熱心で熱中してる内容、空気が触れると共振してシーンと馴染む金属音______
「あのー、聞こえてますー?」
なんか絶対に聞こえないはずの俗っぽい男の声も聞こえるし、メタルギアRAYは静かに佇んでるし、今歩いてるところの格納庫には人型でなんか翼生えてるやつがいる。
「おい!シカトすんじゃねえ!俺が見えないのか、ああ!?みんなのスタースクリーム様がこんな狭い場所でかわいそーな目に遭ってるのに!」
そうそう、スタースクリームが……なんだって?
声がする方に目を向ける。
RAYが犇めくこの格納庫の中の一つ。
銀色で統一されて顔があってなんか話しかけてきてるやつがいた。
「そうそうだよそこのお前!」
「おお」
「なぁにが”おお”だよっ!この俺の悲痛な叫びを無視しやがって!いっつもここで『助けて〜!』って叫び続けてたんぞ〜っ!」
「そりゃ失礼した。で、メガトロンよりも小さいやつに捕縛された可哀想なスタースクリーム様は何をやってるんだ」
「キィィィィィィーッ!」
挑発するとヒートアップするのって一周回って才能だよな。みんな綺麗を取り繕っで冷笑気味なのが流行ってるからちゃんと怒れる人間って……いや人間じゃないが。
腕のミサイル、声が鶴岡聡、全体的に三枚目ってことを含めれば______これはプライムのスタースクリームだな。
「あのな!お前みたいなやつ、ここから解放されたらミサイル一発で吹っ飛ばせるんだからなっ!」
「口だけしか動けないやつがどうやって撃ち込むんだよ。それに動いても天才達の細工で最悪巡航ミサイル扱いになりそうだ」
「一々突っ込んでくるなよもぉぉぉぉ!もう、本当に怒っちゃう!」
「しかしまあ、なんでスタースクリームがここにいるんだ。お前フルスペックなのは分かるんだが、どうしてカード状態で保管されてないんだか」
「僕ちゃんも聞きたい!好き勝手に暴れてたらいつの間にかあのいけすかない魔女にキャプチャーされちゃったんだよ、飛ばされたアリウスは辛気臭い廃墟同然の街だし俺のことを持ってたやつは自分のポケモンに食い殺されて自動的に墓立っちまうし〜……」
「ああ、あ?」
ポケモンに食い殺された?
「今何つった」
「ポケモンがプレイヤー食ってたんだよB級ホラーみたいに黒ぉい幽霊に取り憑かれてむしゃむしゃパクパクごっくんちょ、あー思い出すだけで鳥肌立っちゃう!あの景色を思い出すだけで俺震えちゃう」
「そんなことできるはずがないだろ。黒い幽霊ってことはバトナージスタイラーによるハッキングでも無いはずだし……」
「俺のこと疑ってたりしないだろうなっ!」
「内容は疑ってるがまあそれくらいのことしないとそんな状態で拘束されないよなってのは思う。ちなみにその幽霊とやらの持ち主は?」
「ブルートワルツだよ、あのお嬢様みたいな虫けらが急に中から幽霊を引っ張り出してポケモン持ってるやつを一方的にキルってたんだ。ありゃダブハン爪痕確定だな」
「ブルートワルツが?」
「今度はなんだよ」
話を細かく聞きたいが、その前に自己紹介しないとな。
「話をする前に自己紹介を挟もうか。俺はアレイシア・ガレットピア、ブルートワルツに関係してる人間だ」
「あーそうですかアレイシア……あ?てことはお前が魔女や液体野郎が探してたキーパーソンか?」
「らしいな。ボコボコにされて身包みも剥がされて連れて来られたんだよ。ま、協力関係は成立したからお前と違って自由だけどな」
「ちょっと待てそれじゃ俺が全く協力してないどころか反抗心剥き出しのバカだって」
「そう言ってるんだよ格納庫のスペースにがっちり拘束されてて他にどう見ろっつーんだ。マジで何をどうしたらそこまでの扱いをされるのか気になるね」
「ほんとに癪に障るヤローだなおい!」
体は動けないけど震えてるし表情も声も豊かなので話してて楽しい。
だが、スタースクリームの現状は理解できた。
確かに意地でも捕まえたくなるような情報を持っているのは事実。
ポケモンを持っていたプレイヤーを一方的にキルできるような何かを持っている、それがブルートワルツのスキルの一つだという。だが、ポケモンに対してのみそのようなことができるキャラカードどころか、そういった強制力を持つポケモンの道具もポケモンも思いつかない。
当たり前だがOSGPで舞台になる作品は”必ず流行った形式”が舞台になる。ポケモンは特にそうで、マスコット的人気とRPGとしての人気、キャラ人気の極地でありそれを生かして様々なゲーム形態に出張っては盛り上がるというIPの強さはあった。だが、そこにグロテスクな要素は含まれない。
OSGPではそういった要素は排除される。
「ああ……?」
やっぱり覚えてる限りでも、そういったものは思い当たらず混乱。
「あーやっぱりそーなっちゃうよな。俺もそー思うんだよ」
段々と、ブルートワルツのことが分からなくなってきた。
あいつは一体どうしてそんな能力を持っていて、リキッド達の話を信じるならこの世界に新たな世界形態を構築したくて______
俺とコンタクト取ってきた経緯はハッキリしたが、そこまで内部データに入り組めるなら俺がカード持ってきてないのにする理由はなんだ?手助けだってしなくても、あの時アリウスに囲まれた際にやっぱり芽衣が欲しいからか?データロストまで出来るんだったら強奪できそうなものなんだがな……いやそれが出来ないからハニトラで取ろうとしてるのか?
そもそもポケモンだけに作用するんだったら完全なハッキングと改変は出来ないんじゃ……だからその改変できるようなものが無いから広めに想定してるんじゃないか!
「なんか難しく考え込んでっけど、あんまりそれ続けると参るぞ〜」
「_____ん?ああ、そうだな」
スタースクリームは呆れた顔してこっちを見てる。
「あのなぁ、どんだけ考え込んでても答えを見るまでは分からないんだぜ?このスタースクリーム様もあのメガトロンにしばかれるオチを何度も経験してっけど、それでも次は出来るかもしれない!きゃー!俺って天才!みたいな自信を持って作戦を練ってるんだ。失敗しても次に挑めるのは、その時の信念も最初からある野望に全力で向き合ったからなんだぞ」
顔しか動かないことを除けば震えたりして、一生懸命何かを教えてくれる彼。
「逆を言えばそんな状態じゃ無いのにやったら意味無いんだよぉ〜。ああ、あれ怖い!それ怖い!結局こうなっちゃうかも〜!ってそれじゃ上手く行く話も上手くいかないんだよ。メガトロンの野郎いつも邪魔すっけどそれでも健気にやってるこのスタースクリーム様を見習って、お前も前向きに考えれない時は不貞腐れるんだ、おすすめだぜぇ?」
「不貞腐れるのはさっきやったがまあ……そうだな。忠告はありがたく受け取っておこう、助かったよスタースクリーム」
「お安い御用、でもついでにスタースクリーム様って呼んでくれれば完璧なんだけどぉ……どう?」
「それは断る」
「ちぇっ」
やっぱどこまで行ってもスタースクリームなんだな。
だが、彼の言う通りだ。
次に何をするのかが決まってない、俺自体が何をしたいかも明確に定まってない時期にカッコつけても仕方ない。休めって言われても何をどう休めれば良いのかも分からないから困ってはいるんだが、それでも体と心は休めるうちに休むべきだ。
「じゃ、俺は戻るよ」
「おう。リキッドに出会ったら俺を解放するように言っといてくれよ〜」
「ああ」
そう言って手を振り、今まで来た道を逆に歩く。
歩いて行くうちに、俺の体は若干正直になり始めた。
「腹減ったな」
話して、歩いて、また話して。その間にずっと考えてて。
体をずっと動かしているようなものだから、栄養が足りなくなてきた。
「食堂に向かうか、リキッドは無料で食えるっつってたしな」
肩を回し、背伸びをして、欠伸もして。
気持ちは少しだけ晴れているから、今夜は寝れそうだ。
満足な気持ちで眠るためにも、飯を食べようじゃないか。
「良い匂いだ」
格納庫に繋がってる通路の向こう側の匂いに誘われ、俺は虫のように食堂へと入っていった。