Never Says「Good by…」   作:らんかん

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飛べよ赤狐

 道中を急ぐ俺ら。

 

 走っていて誰も息切れをしていないのは、レンジャーのフィールドワークみたいなのをずっと続けている奴らの集まりなのも大きいだろう。俺も軽い打撲程度で済んでおり、それだけなら大した傷でもないのでそのまま走り続けるのに支障はなかった。

 

「やっば、来たよ!」

「通してくれるわけねえよな!」

 

 尤も支障の方がやってくるのは止められない。

 

 ブルートワルツが築き上げた派閥の少女達がなんの遠慮もなしに銃を撃ちながら落ちてくるのでさあ大変!だが、俺らの方が主人公だ。遠慮なく通らせてもらおう!

 

《SET》

 

「変身!」

 

《BOOST MARK II》

 

 最初から遠慮なしに変身、相手の方へと殴り込む。

 

 少女達は生身ではあるが、ブルアカのキャラだ。何発殴り込んでもそこまで致命傷にならない。パンチ力は90tぐらい、キックは110くらいあったような気がするが、それでも死なないのは中々だ。

 

 逆を言えばそれくらい頑丈なのが敵ならば気兼ねなく殴り飛ばせる。

 

「どけっ!」

 

 何度も一人にパンチを浴びせて、軽く蹴飛ばす。蹴飛ばした少女が弾丸となって人の波を割り、割れた分だけ俺らは進む。

 

「ああもう!これ使いにくい!」

「最初から持って来たものを使えばいいのに」

「こう言う機会って中々ないじゃん!」

 

 大和はなんだか変な武器を使っている。鎌……ああ、ゼーレのか。

 

「カッコよくスターなんちゃらファントムやりたいの!」

「やめといた方がいいって〜!」

「気持ちは分かるが今は得意なやつで戦ってくれ!」

 

 ちぇ、と悪態をつく彼女は別のカードを取り出した。これもまたフルスペックで、どうやらみんなもカードを根こそぎ奪って来たらしい。

 

「これならどうだ!」

 

 取り出したのは刀。

 

「こっちなら戦えるもんねー!」

 

 特殊な技とかは使用しないものの、一気に動きのキレが増加。銃を撃ってくる相手に移動しながら近寄って切り伏せ、それを投げたり盾にして銃弾を防ぎながら同じことを繰り返している。

 

 しっかりとした国の軍隊でさえ静止目標相手で命中率70%、移動すれば30%まで落ちると言う話だ。ベアトリーチェ自体が軍事のプロでもない以上、訓練の成果である命中率はさらにそこから2割減してそうで、大和の暴走は到底止められそうになかった。

 

「楽しそうでいいな!なあ、アイアン!このまま女子会に勢いが負けていいのか!?」

「別に勝たなくてもいいだろうに」

 

 アイアンは舐めプをしているのかはたまた警戒をしているのか、徒手格闘で相手を倒している。ずいぶん余裕な表情だが、何のカードもない状態でそれができているのは一体なぜなのか。

 

「さすがだな」

「貴様も出し惜しみしていないならもう少し戦えるだろう?」

「やってるっての……わっ!?」

 

 本気を出そうとした瞬間に四方八方から金色の光が出て来て敵を貫いていく。変身してなかったら確実にブッ刺されていたところだ。

 

「ちょっ撃つなら撃つって言え!」

「それ言ったら逃げるし……」

「そうだな!チクショー!」

 

 自分が3枚目になりつつあることを自覚するのが悲しいものだが、それを挽回するにはやはり戦うしかない。少女達を殴り飛ばし続けて、何度もブーストを吹かし多人数を巻き込んだラッシュで道を作り続けた。

 

 だがそれでも遠すぎる。

 

 目測で残り2kmのところまできたが、やっぱり遠すぎる。と言うかどうしたらこんなに湧いてくるんだ!

 

「アシェイラ!フレスティの攻撃でうまいこと前に開けられないか?」

「無理かもー!キャストリス使う!?」

「それはNGかも!」

 

 全滅覚悟で攻撃をするには早すぎる。モーディスのパワーで戦っているベロニカも息切れこそはしてないが、やはり動きに鈍さが出て来た。

 

 弱い奴が無限に出てくる方が、強大な敵を相手にするより精神にくる。一度切り上げて抜け出す方法を考えた方がいい。

 

「このままだと埒が開かないね!」

「卿もそう思うか?小生もだ」

「ねえ!何かないの!?」

「私に聞くな!」

 

 プレイヤー達をしてこれである。アツコは余り文句を言わないようで助かったが、ともかく埒が開かないのは本当だ。どうにかしないとただ疲れるだけでどうしようもない。

 

 だが、最初からその悩みを抱えていた俺にとって良い案が思いついた。

 

《REVOLVE ON》

 

 デザイアドライバーを180度回転させて、狐形態へ変化。四足歩行のカッコいい五尾の狐へと化けて、そのままアツコに近寄る。

 

「乗れ!こっから一気に離脱して、アリウス分校に突っ込む!」

「え……?」

「お前が固定砲台をやって上から財宝爆撃しまくれば削れるし、指揮系統を一気に破壊して大和達を離脱させよう!後で合流すればいい!」

「なるほど」

 

 ぽす、という可愛い感じの音が鳴るような乗り方で背中にアツコが搭載された。仲間がこっちを見ながら敵を処理しているのを確認し、俺は口にする。

 

「今からアツコと一緒に休息離脱して先にアリウス分校に辿り着く!上から財宝を振りまくるから何がなんでも生き延びろ」

「大丈夫なの一緒に行かなくて!?」

「ああ大丈夫だ!我らがロイヤルブラッドと最高のプレイヤーがタッグを組んだら無敵だぜ!」

「信じるぞ!」

 

 味方はどうやら信じてくれるらしい。

 

 それを確認したら、そのまま建物の屋根にひとっ飛びして走り出す。

 

「行くぜ!アツコ!」

「うん」

 

 生徒達の頭上に、金色のゲートが無数に開く。開いたゲートからは沢山の宝具が降り注ぎ、少女達を襲った。

 

 悲鳴は聞こえないほどの音が何度も何度も鳴り響き、少しばかり高く溢れた血がピラニアのように路地の間を跳ねるが屋根の上を走り続ける俺らには届かない。俺は前を向いて走るしかないが、アツコは後ろを見て口にしていた。

 

「あの人達よりもこっちを捕まえるのに重視したみたい」

「ゲームでもよくあるよな、すぐに取り戻そうって言うムーブ」

「ごめんね、でも必要なことだから」

 

 王の財宝が、姫と安泰の世を求める者達に死を下賜して、曇り空に雨音の為の静寂を捧げる。人は天により生かされている、その摂理を無視する者へのまさしく天罰のような金色の豪雨。

 

 この雨が、本来の道を行こうとする奴を選別して、未来への道をそいつらで作り上げているようだ。

 

「んー……あの人達離脱したっぽい。一斉に固まって反対方向に突っ走っていった」

「そいつはよかった」

 

 黄金の雨も、少女達の限りある命を釘付けにして平らげたのに満足して収まった。空にある厚い雲はまだ雨を降らせてはいない。

 

 走っていると、遠いと思っていたアリウスへと一気に足を突っ込んだ。大きな階段を登って、校舎にたどり着く。

 

「よし、ここだな」

「ご苦労様」

 

 頭を撫でられてちょっと嬉しそうに振る舞っては見るが、彼女の尻に敷かれ続けるのはやっぱり性に合わないのでもう一回リボルブオンして元に戻る。

 

「あ、可愛くなくなっちゃった」

「仕方ないだろこうでもしないと戦えないんだから」

「そういえばここの近くに……」

「おーい!」

 

 男の低い、そして大きい声がした。あまりに特徴的な大塚明夫ボイス、ならば一人しかいない。

 

「スネーク!」

 

 変身したまま駆け寄ると、どうやら右側の方から二人ほど連れてきたようだ。彼らがやってきた方ではまだ戦っているらしい。

 

「無事でよかった!」

「お前こそ。よく一人で頑張った」

「生徒引率してたそっちよか楽さ。で」

「久しぶりだな、アレイシア」

 

 後ろの二人は見覚えがあった。

 

 サオリとミサキだ!

 

「お前達も無事だったんだな!」

「敵だったのに私たちの無事を喜んでるなんて……変だね」

「あったりまえだろ、戦ったライバルが仲間になってくれるなんざ心強いに決まってる!安心しろ、お前達の姫も無事にしっかり届けてきたぜ」

「アレイシアが乗せてくれたよ」

 

 後ろでふんす、と可愛くふんぞり返っているアツコ。その様子に驚いてそうな二人だったが、俺視点はこんな感じの微笑ましい傲慢さこそが彼女の可愛さの象徴だと思っている。

 

「姫、よくぞご無事で」

「サッちゃんにミサキ、無事でよかった。あれ?ヒヨリは?」

「……今トリニティで情報集めてる。少ししたら、ティーパーティーと合流する」

「よかった。無事に帰ってくるように伝えてね」

 

 仲良くしているのを微笑ましく思っている男コンビだが、まあそれに時間を費やしすぎるのもあまり宜しくはない。スネークは無事を確認してから、俺に話しかけてきた。

 

「アレイシア、今から俺達は旧校舎の方へ向かって、そのまま宗教施設……バシリカへと向かう。そこに恐らくベアトリーチェと」

「ブルートワルツがいるってことか」

「恐らくな。バックアップにリキッドがいる、迎えも今用意中らしい」

「スタースクリームでもよこしてくれるんだろうさ。ま、ともかく行こうぜ」

 

 細かい詮索はしないが、要点だけ伝えるということはあれを信頼する裏付けがあるのだろう。懸念を言わないということは追い込まれているわけでもなさそうだ。

 

 二人でサオリの方を見る。

 

「よし、じゃあ頼むぜ案内。戦いだけは多少は得意だから、任せてくれよ」

「こちらからも適宜サポートはする」

 

 少女達にこれ以上ない、といえば嘘になるが最善は尽くしているであろうバックアップとして明るめの声で背中を押そう。

 

「分かった、じゃあ……お願い」

 

 アツコが前に出て、原罪(メロダック)を手に取って掲げる。

 

「これより、ロイヤルブラッドの王妃が名誉の下に戴冠式を行う!」

 

 光り輝くエクスカリバーの原型は、この先の未来の結末さえ予測させるほど煌めいていた。現実を、その輝きへと降らせるだけ。

 

 その言葉に誰一人として否む者はいない。

 

「私の騎士、私の過客!私に続け!大聖堂(バシリカ)に高貴なる血を戴く姫に、門を守護せし玉座を!」

 

 スネーク以外は声を上げ、彼女に続いて突っ走り始めた。

 

 階段を降りて駆け抜けて旧校舎、そのままハイスピードですっ飛んで地下道へと入っていく俺ら。

 

 しめじめした地下を潜り抜けた先の大聖堂の先が、この世界の答えだ!

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