お互いの刃が激しくぶつかり、火花を散らして床を焦がす。紫色の光がどこまでも広がっては、そのまま何度もステンドグラスを貫いた。
相手にまともな姿勢を取る時間を与えまいと、レーザーレイズライザーで連射を続けるがそれは悉く左手に持っていた銃弾で叩き落とされてしまう。
「踊ろうよ二人とも!」
「踊らされてると気分悪いね……」
ブルートワルツとアツコが交える刃は、これ以上なく眩しさと激しさを兼ね備えている。
互いに振り下ろしてぶつけて一回、ブルートワルツが一度引きつつ振り上げるのをアツコが逆手持ちにして受けて一回、後者が持ち方を変えつつ捻るようにして相手から武器を外そうとしたのを前者が素早い段階で手放してキャッチし逆手持ちで反撃したのをまた順手にして受けて一回。
アツコはテロリストとはいえ真っ当な軍隊の訓練を受けてきているのを考えれば、少なくとも剣と銃を持って戦うなんて経験は今回が初めてだ。銃を持った片手での射撃をしながらの斬撃がイメージ出来てないのか動きが硬いし射撃を挟まないから対処され続けている。
その余裕がそっくり俺の銃弾の対処をする余裕を生み出しているのだろう。と言っても、こっちはライダーの機能による確実な射撃と、インファイトしている味方に当たらないような弾道調整をエネルギーベクトルの操作でしているのに何の補正もない相手は的確に銃弾で叩き落としてきた。
「アツコ!銃を使え!」
「そんな暇ない!」
「弾が出るナイフだと思え!ナイフぐらいなら扱ったことあるだろ!?」
「そうだけど……!」
彼女の余裕がない表情が見て取れるので、俺も銃弾を撃ちつつもスピードを上げて突撃。
二人の剣戟は更にヒートアップ、アツコが剣を振り下ろすのと振り上げるのを繰り返しては相手がそれを的確に防ぎ続けた。近づいた段階で俺も射撃を繰り返し、飛ばしてくるやつをコントロール化に置いて相手に跳ね返すとそのまま当たって飛んだ。
「うがっ!?」
酷い声を上げながらも綺麗に着地して、構え直したブルートワルツ。顔に余裕はなくなったが、どこにも醜さはない。
「へえ、やるじゃん。いや、こればかりはボクが甘いのかもしれないね?」
「じゃあ今ここで負けを認めるか?」
「いいや!まだやるよ!」
第二ラウンド。
今度は俺と彼女の殴り合いだ、一瞬で近づいてきたブルートワルツと同時に届きそうな刃を上半身を逸らして避け、レイズライザーの射撃で反撃しようとするがそれを銃を持った方の腕で弾かれる。相手の射撃をベクトル操作でどかして、鳩尾を殴ろうと素早く殴れば今度はそれをバックステップで回避された。
そのタイミングで距離があるのをいいことにアツコが王の財宝で280°の角度まで砲門を増やし、財宝を射出して牽制。
「甘いよ!」
その言葉が聞こえた刹那。
彼女が目の前に出てきて、俺を蹴り飛ばす。
「がは」
そのまま放物線を描くように飛ぶと、上にブルートワルツが飛んできた。
「な」
空間をガラスのように破壊して飛んできた彼女に悲鳴を上げる暇もなく、腹にかかと落としを喰らっては、教会の中心にクレーターを開けてぶっ倒れる。
「あぐ、あが……が……」
血を吐くほどではないが体の節々から痛みが上がる。
見下ろすようにして刃を突き刺し殺そうとしてくるブルートワルツ。
「終わりだよ!」
「そうはさせない!」
直後、光の束が彼女だけを包んで吹き飛ばす。
「アツコ!」
「できた!」
流石に使えない武器を使い続ける判断はしなかったのか、手には原罪を持っている。しかし形状以上に、雰囲気やパワーにセイバーを感じた。
「うっへえ!?なぁにそれ!?」
「色彩や名もなき神には、テクスチャを剥がしたりくっつけたりできるんだよ。私もそれに倣って、
「全く、アレイシアじゃなくて君に驚かされてばかりだよ」
吹き飛ばされた方は入り口付近のピューの背もたれに座っていた。俺が彼女達に挟まれている形になる。
「言葉の遊び方が上手い人が相手だと嫌になっちゃうよねえ〜?アレイシア?」
「それよりもお前の代わりぶりに俺は動揺しているよ」
「ま、それもそっか」
彼女の後ろに、羽のようなものが出てくる。小さいが、少なくとも六つほど、ひらひらと。
「勝利しないといけないのが無法者だしなあ。君たちをみくびっていたよ、最初のフェーズだとそこまで手応えなかったからね。本気で行くよ!」
「ああ、そうだな……アツコ!」
____最後に声をかける。
彼女がギーツIXの使用を止めた理由は、おそらくエアを使った”外”の観測で何かを見たんだろう。技の使い方さえ把握している彼女なら、ギルガメッシュにある千里眼で先が見えているはずだ。
「許可は出せるか?」
「出せない」
その光景にたどり着くためにはどうも創世の力じゃダメらしい。
「はあ、仕方ねえ」
レーザーレイズライザーを捨て、ブーストマーク2レイズバックルを挿し直しレバーを捻って変身。
ブーストマーク2に戻って、構えた。
「お?」
「使えないうちでの最善策はこれだ、正直小細工を使わなくて済む分余裕で倒せるかもしれないな」
「うっはあ、舐められてる?」
「行くぞ!」
尻尾と足で稼いだ加速力で、相手へと殴りかかる。
銃を使ってる暇はないが、遠くにいるアツコへの圧がけはしないといけないのか剣と姿勢の急激な変更でインファイトを躱しつつもう一人へと射撃をするブルートワルツ。銃も終焉の律者のやり方に耐えれるものだから、片方でも威力の低いだけで
それを避けながら同じものを撃って行動に制限をかけようとするアツコに合わせるように、ブーストの超加速力で弾幕を掻い潜りながら相手に連続攻撃を浴びせた。剣を五回殴って叩き落とし、蹴りは手で受け止められた相手だが、弾幕を張るのが疎かになって数発当たって壁に体を擦る。
「うぐっ」
「まだまだ!」
加速力を利用した壁パンチで確実にダメージを与えようと左ストレートをかますが、それを無理やり壁を這うような転がり方で避けられ、内側に潜られて銃弾をお見舞いされて今度は俺が床に転がる。
流石に仮面の中で血を吐くことはしないが、そのダメージを感じるように腹に生暖かいものを感じた。装甲を貫通したわけではないが、衝撃がどうやら皮膚を少し破ったらしい。
「かは……ヒュ……」
そうして悶えてるのと若干タイミングが遅れ、壁を突き破るほどの射撃が教会の長椅子よりも上の方に降り注ぐ。流石にすぐ伏せるというまでに考えが至らなかったのか、そのまま外のでかいロビーへと壁の瓦礫ごと吹っ飛ばされた。
痛みを抑えて立ち上がる。
「大丈夫?」
「ああ、右折もしてない」
下手な冗談もほどほどに、ブルートワルツの飛んだ場所へと足を向けた。
そこには、切り絵のような紫の翅を大きく広げ、瓦礫に腰をかけて優雅に座っていた彼女の姿。
「案外うまくいっちゃった」
「そりゃよかった……こっちもうまく死なずに済んだぜ」
「それは残念」
「素直でよろしくねえな」
立ち上がり、俺らを見るブルートワルツ。もう余裕はないと見たのか、全力を出すべく上へと飛んで翅を広げた。
「ちょっとダサいのは否めないけど……仕方ないね、そろそろフィニッシュを決めるよ!」
溢れ出るエネルギーは威圧となってバシリカを駆け回りる。
時を弄り倒して一方的に殴り倒すをしない、ということは恐らく狙いは時空の大崩壊だろう。エアを使って同じことをしたアツコや、恐らく警戒されているだろう俺らを時空の断裂でぶっ飛ばして別の場所に閉じ込めて、自分はグランプリ続行する。そう考えていてもおかしくはなさそうだ。
しかしアツコも、恐らくは同じ断裂を望んでいる。彼女にも同じような翅が生えているが、四枚で、それぞれ茶色、水色、藤色、紺色と分かれていた。仲間の髪色なのかもしれない。
「あなたの好きにはさせない!」
ああ、俺にある装飾は五本の狐の尾だからな。まあでも、見劣りはしないか。真っ赤だし。
スロットルを何回も捻って構える。
「これで終わりにしてあげる!」
「逝くよっ!」
翅を大きく広げ、互いにライダーキックの姿勢で互いに接近し合う少女達。
《BOOST GRAND STRIKE》
俺も上に飛んで、姿勢を正し____ライダーキック!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
「でりゃあぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
「終わりだぁぁァァァァァーッ!」
互いのキックが衝突する。
終焉の律者と、そのコピーと、創世の神が道中手に入れた世界を救える力。
三人のキックが集中した場所から、周辺が割れ始める。
ブルートワルツは俺たちを倒して時間の狭間にぶっ飛ばすため、俺とアツコは目の前にいるbブルートワルツを倒して終焉の律者を止めるため。
だが、時空はその決着まで耐えられない。
「なっ」
そう、声を上げた瞬間には、確実に水のような感触があったのに、風と呼ぶしかない何かの本流を受けて飛ばされる。アツコとブルートワルツは耐えられたが、俺だけ耐えられずに吹き飛んでいく。
姿勢を崩され、慌てふためきつつも空中で安定姿勢を取りながら彼女達を見る。
「アツコ!ブルートワルツ!」
敵の名前まで呼んでしまう己の未練さにも嘆きたいがそれどころではない。
ただ、アツコはこっちを見ている。
「俺のことは構うな!自分が正しいと思ったことを!」
精一杯のエールは暴風に消えるが、仮面ライダーらしい視覚機能は視線を向けた彼女を綺麗に捉えている。
彼女はウィンクをし、唇でこう伝える。
『任せた』
と。
まるでここで死ぬみたいな言い草で納得できずに叫ぼうとするが、それを言おうとした瞬間に首元を掴まれた感覚がする。
「あ」
その瞬間、俺を取り巻いていた装甲が一瞬で剥がれ、傷口が暴風に揉まれて痛みが全力で俺の体を這い回った。もうこれ以上は、この時間は戦えない。そういう失意が、一瞬で俺から逃走力を奪い去る。
悲鳴を上げる暇もなく、感覚も耐えられる暇もなく瞼が急速に閉じていく中で、後ろから声が聞こえる。
「間に合ったわね」
_______なんて、一切知らないはずなのに、知っている誰かの声が。