Never Says「Good by…」   作:らんかん

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神様が二つ、悪戯を一つ

 カレーを食いながら作戦会議……というわけにはいかなかった。全員がカレーに夢中になった結果、素直な腹拵えと、俺の精神回復に時間を費やした。

 

 食べ終わったら軽く食器を片付けて、もう一回焚き火を囲むように座る。

 

「これで本腰入れて会議出来るわね」

「そうだな……とはいえ、こっちはもうやるべき準備も終わったからこの後輩化け狐君にやるべきことをやってもらうだけだ」

「その準備を何のためにしているのかを聞きたいんだが?」

 

 そう聞き返してみたら、芽衣が近くに寄ってきた。思ったよりも遠いのと炎が暑かったらしい。

 

「まず、あなたがギーツIXになったとしても五分五分の戦いは出来た。貴方の実力と、ライダーとしての力が終焉に余裕で届きうるだけの戦力になる」

「実際ブーストマーク2にある機能を理解した上で相打ちを考えて実行するのはよく考えたと思うぞ。その前の宝具の魔力をレーザーブーストで逸らすのもな」

「このことを理解してかつ自分も触れたアツコちゃんはアレイに創世の神になる事を止め続けた。どうしてか分かる?」

 

 そこに関しては、なんとなくわかっていたことを伝える。

 

「思うに五分五分で戦って負けたら後はないからか。できれば大体乗っけて勝つ!みたいなのが一番ってわけだし、そうするんだったら起源の律者も乗っけた方が強えって?」

「そうね」

 

 芽衣は立って、カードを渡す。

 

「私の力はすべての律者の力を接続できる。だから、終焉の律者も情報があるならきっとあなたに繋げることもできるはず」

「創世の力と終焉の律者で二つか。あとは戦闘技能の上乗せがあるから……全然勝てちゃうな?」

「いや、無理だ。お前は律者とやらじゃない」

 

 英寿の言葉に顔を向けると、彼女も視界の端で頷いてた。

 

「キャラカードがあるなら通じ合わせることも可能なはずだ。俺がカードを切って起源になって、終焉を奪取する。その上で創世の神になればいいじゃないか!」

「……正確に言えば、起源があって終焉を生み出せた以上……あれがキアナちゃんである以上、起源のコントロールがそのままだと支配される可能性もある。戦いの時に若干の時間停止があって、そこから創世の力でロールバックを行い続けることで倒すのも考えたんだけど、正直それで勝てるかどうか怪しいの」

 

 おおよそ検討がつく要素はあった。データドレインだ。

 

「データドレインか」

「データの書き換えを行えるシステムが同格の存在だと効いてしまうの。起源の律者になっても、創世の神になっても、終焉の律者を含めてそれらをただ掛け合わせたところで意味がない」

「じゃあどうするんだ」

「そんなの決まってるだろ?」

 

 英寿が俺の目の前に座って、微笑みかけてくる。手に持ってるのは……デザイアドライバーと、赤色が紫色になっているブーストマークIIIレイズバックル。

 

「こいつでお前をこの電脳世界限定で終焉さえも超えた律者にする」

 

 今更になって疑う理由もないのでそのまま受け取って見る。ギーツのコアIDが入ったままだが、その色合いが青と紫をベースにライダーのマークそのものは銀色になっていた。

 

「これは……」

「律者にはコアというものがあるらしい。それを知ってから創世の力で、同じような力を持ったコアIDを作った。実物を観るのは叶わなかったが、お前が気絶している間に頑張って拵えたぞ」

「それでこいつに変身すれば晴れて律者の仲間入り、ねえ。しかし待った、律者を名乗るのはいいがどんな名前にするんだ?無名のミューテーションカードなんてないぞ」

「あら、そんなもの決まってるじゃない。エリシアの嘘を、本当にする時がやってきたから」

 

 芽衣は、口元を緩ませてその名を言った。

 

「第十三律者……《創世の律者》よ」

「はっ、ベターだが最高のネーミングだな。だが、折角だから創世の神様にも、もう一つ名前を決めてもらおうか」

 

 今度は英寿の方を見る。ライダーとしての招待をもらった以上は、その名前くらい聞く権利はあるはずだ。

 

「丁度考えていたところだ。仮面ライダーヘルシャギーツ……いや、ヘルシャギーツIXだ。終焉(グランドエンド)さえも力にして進む未来を愛し続けるヒーローの役を、お前に託す」

「なるほどな……ありがとう。どっちを名乗るかは、気分になるが……ま、前者はブラフにしておくか。嘘なんだろ?」

「ええ……だけど、折角なら願掛けの一つや二つはあった方が気休めにはなるでしょ?お狐様も化かすのが本業だもの」

 

 二人の心遣いに深く感謝をして、とりあえず今の話をまとめることにしよう。

 

「一度纏めるか。

 とりあえず、これがあれば終焉の律者と起源の律者、そして創世の力を組み合わせることで上位存在になり、相手よりも権限を上にすることで無理矢理な変更を食い止める。データドレインに関しても全力でぶつかってバックアップありで対処、データが剥がれて飲み込まれる前に決着をつけて平和を取り戻す……で、いいんだよな?」

「ああ、その認識で間違いじゃない。俺らは固定されたキャラで、カードを使うことはできても結局パターン化された情報だ。ミューテーションという不確定領域で動かし続けるのには、ステータス的に何の不都合や個性のない状態を持てる純プレイヤーの方がいい」

「オッケー」

 

 英寿の方は問題なし、あとはこっちで出発すればいいだけだ。

 

 一応芽衣の方にも聞いとくか、と思い彼女を見ると_____なぜか、少しばかり悲しそうな顔をしている。

 

「……あれ?どうしちゃったんだ」

「ねえ、アレイ。一つだけ、聞いていい?」

「何だよ、今更畏まったりすることはないだろう?」

「私、今までカードとしてあなたを見てきたからちょっとだけ保護者面するけど……結局あなた一人に戦わせたの、申し訳なく思ってる。英寿はともかく、私はプレイヤーになれなかったから」

 

 そればっかりは状況をよく知っているだろうリキッド陣営に行かないと分からない。分からない以上、責めたところでと言ったところだ。自身の状況を鑑みた上で出来ることをやろうとしてた彼女を、誰も責めたりはしない。

 

「きっと、ブルートワルツの中にはキアナちゃんがいる。あなたのずっと前に旅をしたキアナちゃんで、私の知ってる彼女じゃないかもしれない。それでも私は助けたい、あの子にとっての私が助けられないなら、今いる私が助けないと」

「そうだな。でも、別に俺は俺一人で戦ってるなんざ思っちゃいない。軍事行動には軍人と軍属がいるように、必ず裏方と表舞台に立つスターがいる。それに裏から二人が時間関係のサポートを挟んでくれるならやりやすいさ」

 

 インチキには相応のインチキで返す。ブルートワルツは悪いことしてるんだったら手は貸してくれるかどうかは五分五分だけど、俺は少なくとも神様が二柱助けてくれることが確定している!改変能力は強力だが、それ同士の戦いは結局改変のスピードに左右される。つまり作業する数と速度が、何よりも重要。

 

「それに、そのキアナを救えたとしたら、俺らはブルートワルツが何をしようとしてたのかを掴むに至れるってことだ。もしかしたらついでに勝永レイジ……ま、俺の前に優勝した奴の居場所や、そいつ自体が助けた瞬間出てくる可能性だってあるのさ。だから、利害の一致でもあるから気にするほど俺らの間に溝はないって言えるかもな。信頼にヒビ入るようなものはない」

 

 と言っても、そんなクールな理由で戦うよりは誰かの大事なものを取り返す/自分が心より熱く信じている信念の為に戦えた方がカッコいいと思うし、やる気が出てくる。相手を安心させるために言ってはいるが、俺はヒーローとしての自分を信じて戦うことをとっくに決めていた。

 

 俺も、少しばかり笑ってみる。

 

「だから気にせずに力を貸してくれ。どのみち大会が無事に終わったらしばらくは暇だし、そしたら異世界でお前の大好きな彼女といろんなところを見てまわればいいさ。英寿だって創世の神を一時休業して遊園地で遊び呆けるのもいいしな」

「アレイシア……」

「俺はそんな世界を守り続けるために、今この場でヒーローになるんだ。この面白くて純粋なリアリズムがあって、怠惰さえも悪にならない世界を守り抜くために」

 

《BOOSTRIKER》

 

「一緒に頑張ろうぜ!」

 

 何も飾ったりとか、カッコつけたりすることなく心の底から叫べることで励ましてみた。

 

「……ええ、頑張りましょう」

「そうだな。神様として、お前を応援しようか」

 

 二人はそう言って、ヘルメットを被った後の俺の手にカードとして入ってきた。キャラカード……ギーツIXと起源の律者。片方は誰かのトロフィーで、もう片方は俺の人生の宝物。

 

 視線の向こうには色々な景色があるが、大変なことになっている。

 

 アリウスは今だに派閥争いで黒煙を出しまくってるし、トリニティは貴族と治安組織でかなりの内覧状態になっている。ゲヘナも何かが侵攻しているが、遠くにブルートワルツらしいものは見えた気がした。

 

「よし……いくぜ!」

 

 思いっきりアクセルを捻るとバイクのトルクが跳ね上がって、ウィリーになるレベルの加速で一気に景色の中へと突っ込んだ。

 

 暴風が吹き荒れる中でハンドルを握って耐えるが、別に力みすぎなくてもすっぽ抜けたりしない。ブーストマーク2の時よりは穏やかであったのもそうだが、まっすぐ突っ込んでいる時の空気抵抗の方が強く体を押さえつけてくれる。

 

 あっという間にブルーアーカイブの世界に戻ってくると、そこはアリウスの学校から少し離れた場所だった。

 

「へえ、何と優しいこって」

 

 道に迷わなくて住みそうだ、と安堵しつつもそこで呆けてる暇は無し。スロットルを開けて、また全速力で走り出す。

 

 今は大和達の無事を確認するよりも先に、確認をしやすくしてかつ安全のためにブルートワルツをぶちのめして勝利するのが一番。彼女がこれ以上、何か強大な力を身につける前に勝ってしまえば憂いなし。

 

「ん?」

 

 アリウスの寒風を掻き分けていく俺の中に、体内での通信が入る。

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