Never Says「Good by…」   作:らんかん

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「お前のハイライトはここまでだ!」

 俺の啖呵が響く。

 

「よう、(オレ)だぜ」

 

「アレイシア!」

 

 互いの声が響く。

 

「時間の狭間、時間の向こうにある死した者たちの楽園から舞い戻ってきたぜ」

「あれで死んでなかったんだぁ?」

 

 だけど彼女は笑ってる。

 

「お互い様だろ、終焉の権能をコピーされて不安定なやつと一緒に殴り合いしてるのに無事だったなんて思っても見なかった」

「見ての通りだよ」

「そうだな」

 

 デザイアドライバーを取り出し、マークIIIレイズバックルも手に持つ。

 

「ようやく使う気になったのかい?」

 

 彼女の揶揄うような聞き方。

 

「ああ」

「ようやく本気で戦ってくれるんだ、嬉しいな」

「最初から本気だったさ、だが、こっからは本気(マジ)を超えていく」

 

《DESIRE DRIVER》

 

「創世の力は、終焉の権能とかち合う。それだけを見れば五分五分だ。まあ悪い賭けじゃない」

「だけどボクにはデータドレインもある、どうするつもり?」

「簡単な話だ」

 

《MARK IX》

 

 神聖な待機音が鳴り響く。

 

「終焉の律者と創世の神は五分、データドレインを含めれば不利だ。だからお前をパクったアツコとの戦闘データをフィードバックさせ、終焉を素材としてギーツを進化させたんだ」

「そんなこと出来るわけ」

「出来たんだよ。起源の律者はお前の世界に飛んできて、俺と英寿を繋げてくれた」

 

 貰った時よりも色味が少し変わって、白をベースに黒の装甲に紫のラインが走っているレイズバックル。

 

「今も俺は変わらない。起源の律者でも創世の神でも、芽衣でも英寿でもない。アレイシア・ガレットピアだ」

「……じゃあ、ボクはブルートワルツだよ」

「そうだな。俺とお前の関係性はそれだ」

 

 彼女の言ってることは間違いじゃない。俺と彼女の関係は、戦い以外にないし、戦いが全てでもあった。

 

「だからお前が終焉の律者としての振る舞いを貫くなら、俺も同じステージで戦うよ」

「じゃあ、今の君はどの律者?」

 

 ふざけた戯言だが、その厨二病で雑な2次創作みたいな戯言を、本気で叫ぶ。

 

「俺は第十三律者、またの名を……」

 

「創世の律者だ!」

 

《SET IGNITION》

 

 眼の前に出てきた、取っ手のある円を掴んで回すとエフェクトが出てきて、邪魔だからどかしてみるとGEATS IXという表記。左後ろには白と黒に紫のラインが入っている狐が。

 

「俺は、俺の意思、俺の願いでお前を倒す!」

 

「変身!」

 

《REVOLVE ON》

 

 狐が展開したドライバーの横、右手に添えてレバーを倒す。

 

「させないよ!」

 

 彼女の腕から、ステンドグラスのような形をした腕輪が展開して俺に帯のようなビームとびっしりと詰め込まれたプログラムの弾丸が飛んでくる。それは全て狐によって燃やされ、腕輪に到達する寸前に展開が収容。

 

《DINAMITE BOOST! GEATS IX》

 

 そのまま周辺に九つの光が出てきて、狐は変形して俺の目の前に装甲に変形。後ろにあった装甲と一緒に俺を包んだ。ギーツIXをベースに、メタリックな場所は白く、白いところは黒く、赤いラインは紫と赤のグラデーションになっているのが仮面の裏のデータに出ている。

 

 青と赤の炎は周辺の建物を炙り、窓を割り、その硝子が俺の炎とあいつの光を乱反射させた。

 

「不思議な色だね、綺麗だ……」

 

 彼女の声も、ガラスが鳴る鈴の音と混じって綺麗に響く。

 

 乱反射する世界観を切り裂くように、もう一度暴風が雲と瓦礫を吹き飛ばして世界を明るくした。晴れ間が差し込むヨーロッパ風の街並みに、俺らは向かい合う。

 

《READY FIGHT!》

 

 屋根から踏み込んでそっと降り、そのまま地面へと降り立つ。

 

 彼女の銃弾が何度も俺の方に襲いくるが、全て外れて地面へと叩き落とされた。創世の手の上。いや、其に振れれるのは其に成れるものただ一人。銃弾程度ではたかが知れているのだろうか。

 

《GEATS BUSTER QB9》

《MAGNUM SHOOTER 40X》

 

 着地した後に武器を召喚し、手に取る。俺に英寿ほどの実力があるとは思いはしないが……それはブルートワルツでさえ同じこと。彼女にどれだけの実力があろうとも、彼女自身は本物のキアナじゃない。

 

 二つのマグナムを前に向け、連射してみる。

 

「効くと思う!?」

「これだけ撃てば一発は当たるだろ!」

 

 二丁拳銃を突き出して突っ走り、とりあえずは彼女の姿勢を崩し続けて隙を生ませてみよう!

 

 互いに急接近し、そのまま撃ち合いが続く。相手の銃撃も、こっちの弾幕に潰されて距離が縮む以外に劇的な一手はない。

 

 気がつけば互いに5歩の場所に近づくと、とりあえずスライディングして相手の空中制動を誘発させて行動の自由を奪うべく乱射し続ける。無論追突の危険性を承知したのか彼女は飛んで、拳銃を二つ取り出して互いに撃ち合うが効果はなし。

 

 俺の装甲は硬すぎて銃弾をダメージと認識せず、俺の弾丸は彼女の権能のせいで届く前に存在を終えた。

 

 スライディングした後の地面が銃弾で粉々になって穴に空き、水圧に耐えきれなくなった水道管から水が噴き出る。透き通ってる、綺麗な水だ。

 

「甘いよ!」

 

 ブルートワルツの元気な声と共に、目の前の空間が割れる。ガラスのように砕け散るその景色がくるくる周り、ひっくり返れば周辺を水浸しにしつつその裂け目から爆発する瞬間までのワンシーンで空間が埋まろうとする。

 

 これで爆破して周辺もろとも被害が広がればその爆心地にいる俺はまず助からない。どれだけ装甲が丈夫でも、中身がシェイクされてしまってはギーツ型のジュースが出来上がるだけ。それを狙っているのはバレている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ______ゴォォォォォン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鐘の音が鳴り響く。

 

 背中にある尾が翻っては、青い炎を周辺に撒き散らす。

 

 俺は知っている、その力がギーツIXの力であることを。

 

 周辺ごと砕け散るシーンは、そもそも銃弾で穴が空く前まで巻き戻って砕ける前のガラスみたいに戻って行った。

 

「なっ……?」

 

 ブルートワルツの、信じられないものを見る目。

 

「終焉の律者の権能は、そんな簡単に上書きされるものじゃないはず!どうして!」

 

 明らかに狼狽えた少年のように聞こえる声。彼女の動揺が、恐怖が、少しずつ明確になっていくようだ。

 

「お前が持っている力は、確かに強大だ。簡単に上書きできる物でもないし、もっと言うなら今の俺では無効化できない。出来てたら戦う前に事は済んでいるからな」

 

 一歩ずつ、彼女に近づく。

 

「だが、俺には仲間がいる。まだ帰還できてない、お前から出来る限りの情報を抜き取ってこの世界のために戦ったアツコが残してくれた力。俺がなんともできない場所でお前に争い続けるために戦い続けた大和達。ちょっとしか会ってない俺のために全てを話して助けようとしてくれたリキッド達。あの一夜という時間の無い状況で力を貸してくれた英寿もそうだ。そして……」

 

 足音が、かつんかつんと響いた。

 

「俺の都合だけで自分のコピーを作られた上で、最愛の人と離されたのに文句を言わずにこんな馬鹿げた戦いに付き合ってくれた芽衣がいる!」

 

 彼女への埋め合わせが永遠に思いつかないくらいに、酷い状況にしたのを後悔はしているが……それでも、もっと酷いことにならないように戦わせてくれた。

 

「お前がどんなことをしたいか全く分からない!そのために、キアナ達が本気になって協力してくれているのかも知れない!だけど俺は立ち上がって戦う!」

 

 それはブルートワルツが悪いことをしているからじゃない。そもそも彼女は善悪のどちらにいるかも知らない。判断できる奴のいる世界じゃなくなってる今は、彼女が正しいのかも知れない。

 

 だが、俺は善か悪か、通かにわかか、proかnoobか、その2極じゃない判断で決めている。

 

 だから、敢えてこう叫ぶ。

 

「俺達が生きてる世界のために!」

 

 

 

 

 

 

「黙れ!」

 

 彼女の叫びと共に空間がひび割れ始めて、俺どころか世界をぶっ壊してしまおうなんて力が目の前の空間を叩き続け、やがては彼女の後ろにある姿を晒す。

 

 操り人形のように動き続ける、何度も見たブルートワルツの姿。ゴスロリ風のカジュアルファッション、だけれども彼女の顔には黒い靄が掛かっていた。その人形がただ、俺を指差し荒ぶっては非難してくる。

 

「もう、もう沢山だ!君みたいなのには分かりやしない!永遠を求める意味も、ボクが禁忌を冒してまでこんなことをした意味も!君は分かっていたはずなのに!全てが仮初で、何を成し得ても結局過去が用意した玩具の世界なんだよ!」

「だけど隣で遊んでるみんなは、自我を持った本物だ!お前だって!」

「君に玩具の気持ちなんか分からないよ!玩具にすらなれなくて、自我を持ったまま壊される恐怖も!」

 

 声は届かない。心の中に、彼女のことを何も知らないのに、本心が伝わってくるような声が哀しみを起こす。

 

 時が崩れ去って、その破片の一つ一つが俺が抗わなかった/抗えなかったバットエンドの世界が映る。もうどの世界かも分からない滅亡が、俺達の目の前に来ていた。

 

《アレイシア》

 

 普通に走ったところで永遠に辿り着けない断絶した空間にいるブルートワルツ。それを見た瞬間に、脳裏に響く英寿の声。

 

《言霊っていうのを知っているか?古代から日本に伝わる概念で、言葉には力が宿るそうだ》

 

 心の中で頷き返す。これらの時は、すぐには崩す事はできない。データ上でも、一気に穴を開ける行為は時間が掛かってしまうもの。

 

《虚見通 倭国者 皇神能 伊都久志吉国 言霊能 佐吉播布国……と、言われるように言葉には大国を動かす力がある。泣き言を言えばそれだけ気が沈むし、いい事は起こらない。逆を言えば、苦しくても空元気や綺麗事を言えた方が強いままで居られるとも言う》

 

 青い炎が、地を裂いた後の川のように流れては、ガラスの隙間を埋めていくのを見続ける。

 

《その実例を見せてやろう。ヒーローらしく、な》

 

 英寿の言葉に頷いて、俺はマグナムシューターを手放し、人差し指を口にあたる部分に添える、

 

「しーっ……」

 

 蛇のような、鳴き声が響く。

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