「よお!楽しくやってるじゃねえか!」
啖呵を切ったのはレイジ。
「お前達のアタマから司令が来たのか!?プレイヤーの抹殺命令でもなんでも!」
「我らが姫より伝言が下された。『外界の使徒を誅滅せよ』と」
「……アツコは戻っていたのか」
俺はレイジよりも前に出て、同じように問いを出す。戦車に乗っている女は、口にした。
「貴様がブルートワルツを殺そうとしている間にな。そして、先ほどの指令を我等に下した」
「そうかい。ま、そうなるな」
「いくら姫と共に戦った者とはいえ、時間はそれを否定した。貴様らに許されるのは、平伏か死か、その二択のみ!」
剣を向けられる。
その剣は見覚えはないものの、少なくともこの世界のものではないだろう。太陽の逆光のせいでよく見えない。
「そうかよ」
彼女のことだ、多分何か狙いはあるのだろう。本気で敵対するにしても、理由は明白。ベアトリーチェの化けの皮が剥がれるのも、自分たちの世界の未来も、外に出てしまえばわかってしまう事だからな。
「なあ、大和」
「何?」
「カードロックの被害は?できればこいつらに、変な傷は残したくはない」
「うーん……いや、ないね。一応システムの繁殖を確認するツールは作ったけど、君が回収したデータドレインと、それが打ち込んだものが発端ぽい。今生きている目の前の子達を相手するなら、ノーマルでもいいよ」
ならばいい。
カードを一枚起動すると、左腕に重さを感じて、足先に帯のようなものがつく。
「え?」
「こればかりはやらないといけないことだ」
ゼロノスベルトを腰に巻き、カードケースを開いて引き抜く。
俺がつまんだカードが最後だ。彼女の痕跡を、完全に消すための最後の一枚。終焉の律者であり、ゴーストでもあった彼女に、ブルートワルツという皮の記憶は必要なかったのか。
「今からお前らに最後のチャンスをやる。俺を殺せればオッケー、殺せなきゃ戦う意義も見失って誰一人としてあいつの味方が出来なくなるぞ」
「何を言って」
「変身」
問答無用でベルトのスライドを右に押し切り、彼女の残したチケットを切った。
《ALTAIR FORM》
装甲が付いてから、頭のレールに二つの牛のパーツが火花を散らしながら付着して変形。
見慣れた、何の特異性もない、普通のゼロノスだ。
「生き残っているプレイヤーはお前らのみ、しかも臨時で編成された混合部隊、それもゲヘナとトリニティという敵対陣営!勝てると思っているのか!?」
「この正念場で裏切られなければ勝つさ」
「だそうだ!」
戦車に乗った偉そうな奴が、俺の後ろを見ている。
アシェイラと、ベロニカを見つめていた。
「姫から頂いた情報によれば、貴様らはこいつらの敵対者だそうじゃないか!どうだ、ここはシナリオ通りにトリニティの鷺供を地に落としてみないか!?」
「……」
思ったよりも反応が悪い二人。目の前にいるアリウスの叛徒が一人は、少しばかり苛立ちを隠せてないように見えた。
「何か言え!」
「アタシたちはこの世界じゃない場所で決着をつけたいな。この世界はずっと危険で、それを知っているからこそ世界を平定するためにアツコちゃんとやらが離反したのは、なんとなく分かってるから」
「なっ」
「だからアタシらはこいつらにつくよ、元の世界に戻ったらちゃんと同じルールでしばき倒す」
子供が考える脅し文句というのは、よほど追い込まれてなければ効かない。というより脅しという行為そのものが、相手がどれくらい事実を確認できないかによって効果が変わってくるのだから、相手の少女がちょっと可哀想に見えた。
「というわけで、アタシはここで殴り飛ばすよ!」
「そういうことだ。私も、アシェイラやアイアンと共に戦う!」
「お前ら」
俺はずっと同行できてなかったが、大和達はしっかりとコミュニケーションをとって事態を動かそうとしていたのは理解できた。願わくばその輪に入れれば良かったのだが、そうじゃないからこそ色々解決できたとも言っていい。
「というわけだ、俺らは反抗する」
「くっ!やっぱり効かないか!全員かかれー!」
皆が、一斉に襲いかかってきた。色々な剣、色々な銃、色々なハンマー……どれにしろ、この世界のものじゃないだろう。
「はっ!」
手を大きく振り上げると、雷が落ちてくる。
周辺の建物にあたり、一部は道路の方へと漏電して相手を感電、ないしその熱で車両が爆ぜたりした。
「うわああああっ!」
「きゃっ!?」
特撮のように吹き飛んだ娘達と、目の前にサーベルモードのゼロガッシャーが聖剣よろしく突き刺さってる。
「言い忘れていたな」
せっかく変身したんだ、名言くらいは言っとかないとな。
「最初に言っておく!」
剣を引き抜いて相手へ向けた。
「俺は、かーなーり強い!」
俺自体が強いわけではないし、プレイヤーの力というのは大体持っているカードの総数や性能で決まるからただの粋がるカス。
だが、折角あーだこーだ考えずに戦えるんだ!楽しまないとな!
サーベルを持って突撃して、振り回す。
「ウオラァ!」
相手がどんな剣を持っていて、どれだけフィジカルが高かろうとライダーの利点はその二つを変身をするだけで有利はともかくイーブンまで持っていけること!
赤い刀身を叩き折り、そのまま相手を斬ると火花を散らして血を流す。あんまり切りすぎると殺してしまうから、それだけは止めるが最初の一撃に力を込めて切り掛かりまくればファーストタッチでダウンさせれる!
先程の雷で混乱しているのをいいことに、押し切りながら進むことにした。
「おいおい、オレも混ぜろよ!」
「ちょっと〜?」
「貴様はしょうがない奴だな!」
周辺に散乱したカードを拾いながら、全員一緒に走り始めた。
死角はフレイムスティーラーの影が切り裂き、進む方向を示す時には後ろから砲弾が少し先に飛んでいって壊滅的な被害を与えてはその波紋が広がって目の前の動揺した兵士に攻撃が入る。
「なあ!大和!俺らどこに進めばいいんだろうな!」
「大聖堂跡地に向かうよ!」
「どこだよ!」
「トリニティとゲヘナの境目にあるちょっと古い場所!多分そこにいるでしょ!」
へえそうなんだとかいう暇もなく、出てくるやつを叩き落としては一歩一歩支持出された大聖堂側へと進む。
しかし、なかなか兵士が多い。こればっかりはプレイヤーの一斉排除を狙っているせいか相当の数が襲いかかってきて困る。
「くそっ!多い!」
愚痴を吐いていると、飛行機のようなものが空を切る音がした。
瞬間。
少し向こうから大きな爆発が発生して、周りの人間が吹き飛ばされていく。後ろからも強烈な風が吹き荒れては、一つの巨体が振動も追加した。
「スタァァァァァァスクリィィィム、トランスフォーーーーム!」
「スタースクリーム!」
目の前にはそれはもうスマートなスタースクリームがいた。
「あのいけすかねえ野郎からのお達しで助けに来たんだよ。まあお前らを目的地に乗せたりはしないんだけどな!」
「まあお前の器の小ささはそのコクピットが物語ってるからな」
「嫌味を嫌味で返すんじゃねえよ!」
「ハイハイそこまで」
足元から、魔女と学者がやってきた。
「やっほー。アレイ、元気にしてた?」
「ああ!二人の天才が裏で頑張ってくれたおかげでとりあえず山場は超えた!」
「そう、なら良かった」
杖を振り回すマダムヘルタは、結晶のような振り子で少女たちを弾き飛ばしてる。
「あなたの仲間なら気づいてるとは思うけど、大聖堂にアツコがいるの。その子を倒せばゲームクリア、ベアトリーチェも彼女が持ってるわ」
「どういう事だ?」
「聞かなくても分かるでしょ?あの子は外に出てしまった以上、弄れる存在になったの。時間は無かったからあれだけど、少なくともゲームクリアを出汁にして確実にこっちを誘き出すつもりでいる」
「はっそりゃ大変だな!」
ゼロガッシャーをボウガンモードに変えて牽制射撃を繰り返しながら話を続ける。彼女と背中を合わせて、回りながら周りを削った。
「で、リキッドはどうするつもりだって?」
「彼はベアトリーチェの攻略とアツコちゃんの攻略を同時にするみたい。だから私達をここに派遣したってワケ。だから、プレイヤーを一気に集めて強襲からの撃破をする予定だよ。トリニティのメンバーは先に着いてるかもね」
「じゃあ急いで向かわないとな」
「そういうと思って、いいものを用意したよ」
彼女が鏡を一枚持ってきて、そこからあるものを投射する。
出てきたのは_____
「これでそのままぶっ飛んじゃって」
「へっ、えらく懐かしいのがやってきたじゃないか!」
レイジも歓喜している。
出てきたのはグラビティキャノン、エーペックスのギミックだ。
「角度的にはこのまま飛んじゃって大丈夫。ほら、早く」
「わかった!みんな!」
仲間に声をかける。
「こいつで一気に大聖堂まで飛ぶ!ついてこい!」
「わかった!」
「いいだろう!」
「オッケー!」
「ああ!」
「いやっふー!」
全員威勢が良くて助かる。
「ありがとうマダム、決着をつけてくる!」
「これが本当に最後だからね」
彼女に礼を言って、グラビティキャノンにそのまま飛び乗る。
ガチ、という音と共に左右のパーツが展開。
「うおあっ!?」
いきなりの重力加速にとんでもない悲鳴が出たが、そのまま空中にぶっ飛ばされた。
一瞬の出来事だが、空から見るゲヘナの光景は綺麗だ。
「いえーーーーーい!」
「あわわわわわわ!」
次々と射出される仲間たちを見ながらも、一番最初に飛ばされた俺がそのまま着地しなければならないが姿勢が悪かった。
「ぶべ」
思いっきり地面に衝突しては転がって、挙げ句の果てにはゼロノスベルトも剥がれた結果そのまま変身解除。転がり終わってからの解除だったから、ダメージは抑えられている。
他のプレイヤーも全員飛んできたが、綺麗に着地しているのを見るに俺が受け身を取るのが下手だったらしい。
「漸く来たな」
珍しく俺に純粋な敗北を与えた奴が、元気よく声をかける。
「リキッド……」
だが、晴れている割にはなんか暗い気がする。
「遅かったな、ご対面する前に門番は起きたらしい」
「あぁ……?」
衝撃に身体が慣れてないままに、立ち上がる。
そこにいたのはベールを被った杖のようなものを持っているやつと、赤く、そしてコールタールのようなものを湧き出させてる異形が俺らを挟む形でいた。
「おいおいマジかよ」
熱烈な歓迎をしたいらしい。
アツコの厚意に、頭を抱えた。