「まずいね!ベアトリーチェとヒエロニムスの挟撃だ!」
「ああ!?」
戦艦の装備を着たライダーが慌てながら砲撃して牽制しているが、地面が爆発していてまともな攻撃を繰り返しているだけでは倒せない。
「リキッドォ!」
「スネーク!」
大塚明夫ボイスの正実モブが頑張ってるところが見られる、面白い。
「どうした!」
「これをどうにかする手段はないのか!」
「あると思うか兄弟!今それができる人間はプレイヤーを呼び寄せるために飛ばしたところだ!」
「計画性がないやつめ!」
「ダメかもしれません!もう少し火力を!」
「今やってるよー!でも間に合わない!」
「もっと回すんだ、えっと……ミサキ?」
「貴族らしい無能さだ……」
あちこちで、いろんな奴らが、それぞれ目の前の敵と対峙している。
みんな、それぞれ終わりを信じて戦ってるんだ。プレイヤーだって分け隔てなく戦ってるし。
「くそっ、火力が出ないね!ちょっとそこ二人!戦ってるの!?」
「アタシらだって戦ってるんだよ!?人が増えてきて大変な目に遭ってるけど!」
「紛争を舐めるな!」
「面白いものだな!斬りがいがある!」
ダメだ狂人しかいない。
「アレイ!」
「なんだ!」
呼び出したのはレイジ。
「どうやらこの奥に彼女がいるらしい。どうだ、決着付けに行かないか?」
「決着をつけるだあ!?こいつらを置いてか!」
「人海戦術だ!そうだろう、リキッド!」
呼ばれたリキッドは、そのまま頷いて返事。
「そうだ!そのまま首魁を叩きのめして来い!雑魚とちょっとした怪物は俺らがしっかり仕留めてやる!」
「……わかった!」
毎回、こうして返事して何かを託されているな。
周りのメンバーも誰一人として否定している様子もないし、なんだったら早くいけとせかす奴もいる。
「せっかくだったら譲ってあげるよ!だから早くなんとかしてー!」
「貴様はしっかり勝てば、それだけ勝利に近づく!早く倒してこい!」
最初から味方だった奴らが、特に強く背中を押した。
ならば、迷うことはない。
「行くぞレイジ!」
「ああ!」
二人して走り出す。
溢れ出した崩壊を止めるのであれば、きっとこの二人が適任なのだろう。
飛んでくるヒエロニムスの攻撃を避け、ベアトリーチェからの爆撃のような攻撃と衝撃波をジャンプで交わしながら教会に近づく。
「くそっ邪魔だ!」
それでもなおやってくるユスティナ聖徒会の複製を叩きのめす。
数が多いが今更気にするほどでもない、突進はやり過ごしてそのまま足を出して転ばせたり、回避からの腹パンでえずいたところでガードしながら投げ飛ばして山を作る。
俺らはその山を足蹴にして飛ぶと、そのまま教会の入り口へとやってきた。
「おらよ!」
引いて開けるタイプの窓だったが、引こうとすると重すぎる。それをレイジは蹴破って開けた。あまりに雑かつ横暴で強い蹴りは、扉の端さえ曲げるほど。
「お前横暴だな……」
「はっ、無法者がドアの開け方知ってると思うか?」
「そうだな!」
元気よく納得して、二人で教会へと侵入した。
「よく来たね」
見慣れた声が、向こう側から響く。
教会というより中身は立派な大聖堂、アリウスのバシリカと特に変わったところはない。
「アツコ!」
「……待て」
その中央には、アリウスの姫が割座で大きな台の上に佇んでいた。
だが、色々眼を疑うような光景。
まず彼女自体が、いつもよりも大人に近い姿になっている。サオリ位の大きさで、それでいながら華奢なのは変わらず、かついつものガスマスクに競泳水着っぽいスーツではなく、ドレス。
周辺には、紫の花が咲いていた。
「ふふ、驚いたでしょ?一度、こんなふうなお姫様をやってみたかったんだ。ようやく、夢が叶った気がするよ」
「なら、お勤め先でどんなプリンセスをするかゆっくり吟味して欲しかったな。崩壊世界のお姫様なんてろくなもんじゃないぜ、アツコとやら」
「あなたは誰?」
「ブルートワルツに囚われていたさすらいの旅人!といったところかな」
カッコつける余裕があるのがちょっと腹立つなおい、俺とかお前の力を使ってた奴と戦う時にそこまで余裕なかったぞ。
「ま、名前くらいは知ってるだろ」
「そうだね。勝永 レイジ……」
「ちゃんと知ってて光栄だね」
すまし顔で髪を靡かせ、俺より5歩も進んでから彼は問う。
「なあ、アツコ。アレイと一緒に救ってくれたことはすげえ感謝してるし、それをした上でこんなことを言うのは忍びねえってオレ思うんだけどさ……終焉の律者の権能を捨ててみるつもりはないかい?」
直接的だな。
「無論、それ相応の手伝いはするし、逆を言えばプレイヤーはもうオレらしかいないから対象の討伐を遅らせて……みたいなこともできる。といっても復旧にはだいぶ時間が掛かると思うが」
「終焉の律者の権能はもう捨てたよ、私に残っているのは後遺症の崩壊エネルギーだけ。あのタイミングで手放して、託したのがあなたのギーツに宿っている」
デザイアドライバーのコアIDと、変異したマーク3レイズバックルを見せる。
「だから、私はもうただ死にかけの少女でしかない。それでもあなた達をここに呼び寄せたのは、そう……私のわがままを聞いて欲しいから」
「わがまま?」
「そう、私の、うぐ……」
口を押さえ、咳き込み、なんなら床を赤く染める吐血。彼女の身体負担は、相当なものだ。
「がほ、げほ……かふ……私の、中に巣食ってしまった力を、全部取り除いて。崩壊の力と拮抗して死にそうになってるロイヤルブラッドの……全てを……出し切って、私は普通の女の子になりたい」
自然な願いかどうかは、そもそも秤アツコというキャラをそこまで知らない俺からすればわからない。だけれども、普通の女の子になりたいという願いは本物だ。
「あなた達は、きっと私を、本当は敵キャラだと思ってるし、なんだったらさっさと殺してゲームクリアしたい、何て思ってるのかもしれない。この世界との接続が切れれば、あなた達はもう関係ない……だから、きっと乗ってくれるんじゃないかって」
「アツコ!それは!」
彼女の表情には、憔悴が見えた。
当然なのかもしれない。本来アツコという存在は世界の外側を見ることはそうない、というかシナリオを見るという最悪のネタバレを喰らってしまっている。先の歴史がわかっている世界で生きることは、安全地帯のない人間にとって最悪であることは容易に想像がつく。
しかも、彼女は急に世界の全てを知らされた上で外界の神に抗わなくてはいけなくなった。それも同じような力を使い、すべてのストーリーを予測した上で……盤面を俺がずっと乱しまくった弊害で、故に自分は彼女の願いを叶えてあげたいが、辛すぎてどんどん嫌味が彼女の口から出てきた。
「だから私は、せめて世界の最後は綺麗なままで終わりたいんだ。世界がゆっくり黒く閉じていくなら、せめてみんなだけは、私のことを守ってくれた人たちだけは笑顔で終わって欲しい」
「そんなことはない!この世界はずっと続くさ、シナリオから外れたならもっといいことだって起きる!外界の力に対応しようとした少女がいるなら、お前の後に続く少女達だっている!しかもアリウスの少女だ、どんな社会的格差があっても乗り越えていけるさ!」
「でも先生は?この世界に先生はいなかった、いたはずだけど消えていった。じゃあ、誰が
「つまらねえことを言うな!」
レイジが吠えた。
「オレにとっちゃな!目の前にいる人間は全員おもちゃなんだよ!いや、ただのおもちゃじゃねえ!全員
腕を振り、威勢よく威嚇し、なんだったらさらに声を張っている。
その言葉に怒りを覚えたのに呼応してか、外側に色々生えてくる。ユスティナの連中だが、よく見てみると3rdのゾンビに近い風貌に見えた。
だがお構いなしなのが隣の男だ!
「先生は確かにターニングポイントでもあるし、そいつがいないと物語として破綻するのも知ってるさ!じゃあなぜこの世界はずっと続いた!?お前らが生きてるからだろうが!プレイヤーが生きてるからでもない、お前達が世界を作ってきたからだ!その歴史が続いてる限り世界は続く!」
咳き込み、もはや反論するタイミングが失われつつあるのをいいことに、戦いの火蓋を切らせようとする男の咆哮。
「恨みっこなしで持ってきた全てをオレらにぶつけろ!プレイヤーになったなら、その特権で全てを破壊するくらい他人のプレイヤーを踏み躙って見せろ!オレらは強いがそれがどうした!戦えと面を向かって言える強者なんざ拒みはしねえ!全てを出し切るのが願いなら、そうしてみやがれ!」
「アレイシア!準備はいいな!」
《MARK IX》
《SET IGNITION》
「ああ!」
彼はカードで空を切ると、大きな剣が突き刺さる。それを拾う右腕は、大きな腕輪がついていた。何かの武器だろうか。
まあ、それは今はどうでもいい。隣は狩の哲人だ、気にかける必要は一切ない!
「変身!」
《REVOLVE ON》
突撃してくるゾンビ達を白黒の狐が葬り去って、俺がレバーを倒した装甲に変化。
《DINAMITE BOOST! GEATS IX》
そのまま装着して、9つの光の柱が背中について変身完了。
対終焉の律者用装備だが、折角なら少女を救ったという確固たるプレミア付きで英雄に仕立て上げようじゃないか!
《READY FIGHT!》
元気良く鳴り響く試合開始の合図。
《GEATS BUSTER QB9》
ブレードモードで取り出して、剣を群れに向けながら啖呵を切ろう。
「さあ、ここからがハイライトだ!」