大変だ。
ゾンビが斬っても斬っても無尽蔵に湧いてくる。
「はぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
「うおりゃあ!」
思い出すな、天穹市で湧いて出てきたゾンビをこうやってずっと切り伏せて、切り抜けて______時間をちょっとだけ操れるシンにサポートさせて、少しばかり遅らせながらゾンビをどかし続けた。
『ボクがこっち抑えてるから早く倒してきて!』
『分かってるよ!』
「アレイ!こっちやばそうだ、フォロー頼む!」
「ああ!しゃがんでろ!」
《MAGNUM SHOOTER 40X》
手に銃を持って、元々持っていた方を剣にしたまま自分の近くを薙ぎ払いレイジの方へと連射。ゾンビは着弾時に火花を散らして倒れ、味方の危機は去った。
「やっぱ神機は扱いにくいな」
「別のカードはないのかよ」
「えっと」
「おい危ないぞ」
死角から襲い掛かろうとしていた刀持ったゾンビを撃ち落として撃破。油断も隙もありゃしない。
「ふいー助かったぜ」
「先代がこれじゃ世話無いな」
「おいおい舐めてもらっちゃ困るぐはあ!」
ゾンビの攻撃がカスあたりしたがキヴォトス人のフィジカルなので少しばかり吹っ飛んで6m先にダイブした。
「本当に世話ねえじゃねえか!」
「何!まだまだカードは残って……んあれえ!?ない!折角くすねたカードが!」
カードが少し遠くに散らばっているせいで回収するにできない状態。
「やべえマジでゲームオーバーかも!先にエレクワールドにオレだけ帰っていい!?」
「ダメだ!ちゃんと働いてくたばれ!」
『そうよ!働いてよね!』
胴体からカードがぽん、と抜いてる。
「お転婆!」
『なんでちゃんと装備貰ってから来ないわけ!?あんたが死んだら私も困るんだけど!芽衣先輩だって今結構呆れてたよ!?』
「そりゃそっか。じゃなんか武器をくれ、できれば強いの」
『もう!』
それで出てきた武器は、少しばかり不思議なものだ。人が使うには少し大きいアームキャノン。
見覚えがある!
「……九個目の鍵か!」
ブルートワルツが持っていたミューテーションヒュッケバインのエンジンだ!
「なるほど重力操作ね……アレイ!この場は頼んだ!」
「はぁ!?」
「オレは天井で大声出すぜ!」
「ふざけんなおま……」
文句を言おうとしたら逆さになって上へとボッシュートされるレイジ、そんな状態でもお構いなしに自分を殺そうとしてくるゾンビども。剣で追っ払い、弾をばら撒いて足を崩して消していってもやっぱり無くなりはしない。
「レイジ!」
「よし!耐えろよ!」
「何を!」
「滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器」
待て待て待て待て!
止めようと思っても叫ぶ暇なく飛び込んでくる奴らに悩まされ、そのうちに段々と四方に黒い壁が出来上がっていく。俺は逃げてもいいんだろうが、中にアツコもいる。助けないと。
「アツコ!」
適当に切り払ってから彼女に近づき、連れて行こうとすると勢いよく弾かれた。
「うぐっ!?」
あまりに強い攻撃と見間違うほどのものに吹っ飛ばされてたが、外に飛ぶ前に黒棺に阻まれてそのまま壁に着地して蹴り飛ばしてもう一回攻撃だが、アツコを守るバリアで刃が滑って攻撃できない。
「湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き 眠りを妨げる」
段々と高くなる壁をなぞる様に見上げるとレイジが見えて、彼の仕業だと気づいたゾンビは攻撃を仕掛けようと飛ぼうとするが壁の途中で重力に逆らえないように落ちてくる。
スプレーをかけた後に落ちてくるハエの様。
「爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形」
もう周りの壁とか見えないほどの黒棺に覆われているが、まだ差し込む光が止まることを知らないゾンビ達を照らした。
「アツコ!どうして!」
何度もバリアを攻撃しようとするが、それでも壊れる気配はない。
バリアの中にいるアツコは、咳き込み混んで苦しんで多分俺に反応できる状態でもないが、それでもバリアは彼女に呼応するかの様に守っている。
空に手を伸ばしては落ちるゾンビ、矢を放っても彼に届く前に砕け散った。
「結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ」
壁から微かに伝わる光が、ギリギリ地面を照らす。バリアも、俺のディテールも、ゾンビ達は声さえ発しないまま影の手となり地に満ちる。
だが、おかしい。
『なに、あれ』
芽衣の声が聞こえたと思うと、新たな光が周辺を包む。
赤黒い星が濃紫の紫電となって迸り、周辺の光を飲み込んでいたはずの黒の壁さえ照らしていた。
『あ、あれ!?なんで!?』
『キアナちゃん!なんかした!?』
『知らないよ!』
赤黒い球体を囲むように、白い結晶が生えてきて包む。
神の鍵の変異。
やってることがやってることだから、もはや崩玉に変容しつつあるのか!
「星が砕け散る様を見るがいい!」
「ヴェルトみたいなこと言ってんじゃねえ!」
もうレイジは止まらない!
「破道の九十」
「黒棺!」
__________黒い棺の中に走るリズミカルな紫電が、歪み、軋み、空気を裂き焼いた轟音さえトーンを落とす重力の奔流。
あまりに圧力が強すぎて空気が入ってこないし、入ってきたところで少量。まずギーツIXじゃなきゃ耐えられなかったが、それでも苦しい。装甲が肉体に食い込んでくる感覚は、どうもなれないんだ。
ゾンビ達は奔流に巻き込まれ圧壊、一欠片さえも残すことなく砂塵の如く消え去る。
だが何よりも、驚いたことが。
『見ろ、アレイ!』
英寿の声が聞こえて、無理やり体を曲げるように言われた方向を見た。
『うっそーーーー!?あんなことある!?』
キアナまで俺の中で声を反響するが、当然俺も言葉が出ないだけで同じ気持ちを抱く。
ありえない。
繭のように守っていたバリアが、割れ続けている!
『ありえない!あの人、そんな!』
もはや立っていることもままならず、地に伏せ争い続ける俺。
何もかもが砕け散っているのは地面がわからせて来るはずなのに、重力が体感を支配して視覚と触覚が乖離させる。
ただし、乖離するのは建物だけじゃない。
床への押し付けがなくなったと同時に、全てが彩られた。
「あ」
短い声と共に飛び込んできたのは、あの光景。
割れる音と共に苦しむ姫が落下したのは、世界の裏側。
長く続く四角形の柱に、シーンが連なっている。
細かく、質の良すぎるパラパラアニメの空間。
SGPの裏では何が起こっているかなんて、今でも分からないが。それでもなんかいつもより、惹かれたものだ。
「ここは!」
『OSGPの裏の方、だな』
崩れた大聖堂の瓦礫が、時空が砕けたような描写みたいに散らばっては小さいものは砕ける。
「おーい!」
レイジの声がして、上を見上げる。
自分が立っていた天井にそのまま、逆さで周りを見ているようだ。
だが、何よりも目につくのは。
宙に浮いているアツコの背中に何個も突き刺すように、紫色の光が伸びている。
目で辿っていくと彼女を操るような紫色の球体がコードを出して、アツコという存在を操っている糸を揺らしていた。
「これは……?」
「こいつがブルートワルツが残していた術式、というやつさ。世界を支配して続ける、そうだな……まさしくM次元の支配者!マジの終焉の繭ってことだ!」
アツコはこれに触れて、世界を守る代わりに終焉へと成ったのか。
彼女に聞いたところで返答が返って来るとは思えないが、それでも外界の脅威と戦うために。
「アツコ、お前は……」
「ぼさっとしてられないぜ、アレイシア」
ポケットに手を突っ込んだままだが、レイジは逆さのままに俺を見た。目の光は強く、俺のことを何か期待をしているんだろうか。視線が、そんなメッセージを出している。
「お前だったら分かるだろ?ブルートワルツ……いや、ゴーストと話したお前なら。終焉の律者が世界を守ることを選択すれば世界は続いた、だけれどもその律者はある種の人身御供でもある」
「終焉の繭を引き剥がして3rdを無理やり終わらせて、ブルーアーカイブを終わりに導く、か」
「そうだ。終焉が文明を選別する限り終わらない、失敗すればループする。酷い話だなあ全く」
________ブルートワルツがしたかったことをようやく理解した。
あまりにも悍ましい話だ、終焉の繭を作り出して世界を支配して永続させようなんて。彼女のバックボーンは知らないが、あまりに独りよがり。
「オレとお転婆はこの世界に入ってからあいつの動きを見てきたが、少なくとも居場所を作り上げるためにあの世界の高次元存在と同じことをした。それだけは確かだ」
「だから、俺らがこれを壊さないといけない、か?」
「できねえ、って内心思ってないか」
静かに頷く。
「確かにな、お前はこの世界の終焉の律者だ。対終焉のための終焉……でも思い出してみろ。この世界はOSGP……つまりは無法者の世界。いろんな世界の力が混ざるから、ミューテーションカードが出来上がる。その力は、プレイヤー同士の意思があってこそ強くあり続けるんじゃないか」
「ああ」
レイジの言いたいことを理解した。
使えるかどうかは分からないが、少なくとも終焉がなければ辿り着かなかったある力。
生まれたばかりでロックの掛かっていない、預言者達が力の跡を。
バックルを外して変身解除、あるカードを持つ。
『変身解除……?どうして!』
「今から世界を元に戻すのに、世界の支配者は必要ない。色彩の力で崩壊を消しとばす」
カードを握りつぶした瞬間。
「ぐ、グアああああああアアああああアアアアッ!」
感じたこともない、自分の神経が針になって突っかかった肉を刺すような感覚が右腕から広がっていく。いや、針だらけの玉が血管を転がる感覚か。
関節から激痛という激痛、喉や脳に到達する頃には焼き切れて視界が点滅する。
「あが、うあ、が……ヒュ……」
耳の神経や組織まで悲鳴を上げ、ふらつくと同時に空中で俺の血液が舞う。
「あああああああああああ」
震える声を上げ続け、無理やり体を振ると_______
腕に黒ずんだデータの腕輪が付いていた。
しかも、つけている右腕はテクスチャが安定しない。女性になったりマッチョになったり、ともかくデータを壊すようなものであることを理解させる。
そう、これが。
データドレインだ。