Never Says「Good by…」   作:らんかん

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休題~無法者達の故郷 エレクワールド
故郷の中心


 エレクワールド。

 

 それは俺らでいうところのホームベースであり、変えるべき世界であり、人々が夢見た働かなくてもある程度暮らしていける桃源郷のようなもの。

 

 帰ってきた時には、本来大会受付のロビーか優勝者用の構成された特別ルームに飛ばされて色々騒がれたりするはずなのだが、今回はやけに静かだ。

 

 綺麗な城の中。純白と、ところどころに銀の縁。電子世界らしく、ライトがいろんなところに光るライン。

 

「ようやく目が覚めたな」

 

 階段から、誰かが降りてきた。

 

 全てが白くまとまっているが、頭の冠は純金かつ大きくて浮いている。そこから降りているヴェールは結構透けているが多重にかかっているせいでどうも奥の顔が見えない。ああいうタイプは下手に触れると嫌な目を見そう。

 

「お前は?」

「余は主だ、この世界のな」

 

 この女が、か?

 

 冠から垂れたヴェールに投射されるように、真面目な顔した絵文字が出てくる。

 

「ほう、ってことはここが根城か……あ?ってことはロビーワールド中央区の真奥か!」

 

 エレクワールドには、まずみんなが入ってくるロビーワールドという場所がある。

 

 何をしようにもここからアクセスするしかないようにされてて、これは純粋に全員が一つの場所を通ることでデータ追跡をしやすくするためのもの。SGP・OSGPの大会戦勝記念ルームもこのワールドに建てられるのがほとんどだ。

 

 そのロビーワールドには中央区という、いわゆる入り口であり硬派な神殿や建造物しかない場所がある。手続きというのは大体ここでやっているが、談笑が好きなご夫人などは態々解放されているここに集まってするそう。

 

 中央区のさらに中央にはエレクキャッスル、つまり俺が今いる場所がある。

 

 一階までしか入れず、大半の場所は一般開放されていない。無理やりモーション使って入ろうとしても入ろうと思ったきっかけまでのデータが消されて蘇る処置がされた。

 

「エレクキャッスルには一般人は入れないはずだ。ということは……主直々に聞きたいことがあるんだな?罪状か?」

「ロビーワールドからお前にアクセスできるようにしてあるが、怪しい点は見つからなかった。データの行き来も含めて、そもそも貴様は3rdグランプリ(あの時)以降からこの戦いまで一切あやつに関与していないではないか。グランプリも、漸くかの少女の接触があって知った。お前が起きるまで、余はあれを見ていたが……接触はあってもやはり味方ではない。つまり罪状はないと見ていいだろう」

「えっじゃあなんで呼んだんだ。全部見てたんなら呼ぶ必要なくないか?」

 

 _____ヴェールに写る顔文字が、てへぺろに変わる。

 

「おい!」

「いやあ、余もね。前例なさすぎてAIバグっちゃってんの。ゆるぺろ」

「ずいぶん愉快なやつだなあ!」

 

 ツッコミをちゃんとすると、嬉しそうな顔に変わった。なんだこいつ!

 

「まあまあ、それは置いておくってことで。それでも話したい内容一個消えただけだから、ね?」

「調子狂うなあ!で、その話って?」

「ブルートワルツの追跡と囲いをやるから、接触と逮捕を任せたいなあって」

 

 まあ、聞けば予想通りか。

 

「そりゃ、まあ……言われなくてもやるけど」

「いいの?やったー、余、嬉しい」

「かの主が一人でなんともできないっていうのが怪しい部分ではあるがな」

「うーん、彼女自体がちょっと独立したプロテクトとデータを持っているからねえ。どうしようもないの」

「じゃあしょうがないか」

 

 あれ?俺が結局やること変わらないせいで、話が二つ目終わったぞ。

 

「おい待て、態々呼び出すほどでもないぞこのままだと」

「あっ……じゃ、じゃあ、協議しよっ、か?ほら!どう助けて欲しいか!みたいなのって!」

 

 今度はぴえん顔してる、愉快だな我らの神様は!でもボディはちゃんとお姫様だ。

 

 それに話が通じたのを下手に掘り返さないで、互いに言質にするムーブ。建設的な話し合いができるのも、AI故か。

 

 白く近未来的な城の中で、言葉を交わし続ける。

 

「んーと、じゃあ、そうだな。いくつか欲しいものを言ってみてもいいか?」

「どうぞどうぞー」

「プライベートルームを一個、それもキャラカードのAIが自律するやつが欲しい」

 

 シンギュラリティ云々で、キャラの自律行動できる場所は限られている。だが今回、そのキャラが勝手に自律して行動していた。その分の記憶や、これからどうするかを決めたい。

 

「ああ、それ?うーん。いいけど……余に申請してくれるなら」

「それはまあ、念の為だ。チェックも含めてお願いするよ」

「オッケー。これは勝手に作っておくね、広めに取っておくよ」

「ありがとう____ん?」

 

 口にしたら、少しだけ思い出した。

 

 シンギュラリティ云々はともかくとして、だったら何故フルスペックカードにはキャラそのものの情報が挟まれてるんだ。俺のにも、他のやつもそう。

 

「すまない、一つだけ聞いていいか?」

「うんうん」

「どうしてシンギュラリティの危険性があるって言っておきながら、フルスペックカードにそもそものキャラのデータ入れたんだ?下手に起動したら、何かしら影響を受ける可能性だってあるはずだ」

「あーそれ?」

 

 なんか指で顎を押さえて考える顔のマーク出してる。その後に笑顔になって、主は答えた。

 

「それはねえ、ハッキリ言うと昔の名残なんだ。《次元間バックルーム》っていうちょっとした計画のためなのー」

「次元間バックルーム?」

「要は二次元と三次元を行き来できれば、三次元を二次元の保管ルームとして使用して格段に使用できる情報や世界を増やすっていう計画。バックルームって知ってるっしょ?あの人間の居住空間などを広めるために異世界を探索するやつ」

 

 聞いたことはあるから頷いてみる。

 

「あれを実際にやろうとしたのがOSGPの始まりでもあったのさ。エレクワールドによって全人類の居住空間を電子世界に移すことに成功したから、その中で生活している研究者たちは今度は"ここを基準にして細分化する技術を確立できればデータから二次元への扉を開けるんじゃないか"ってね!」

「で、それがOSGPの始まりだったと?」

「そう!二次元のキャラをほぼその通りの設定で動かせるようにすれば、擬似的には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってこと!その時からもう全然おばさんだったんだけどね、余は」

「夢のないこと言うなよ……」

 

 ある種の壮大な世界の創造と、そこから連なる低次元への巨大な移住計画を企てた人類が自分たちの祖先だったらしいことは分かった。続きを促すと、主はまた真面目な絵文字を出して再開。

 

「二次元のキャラがどう言う思考で、どうやって世界を動かすか。S3計画*1みたいなものをこうたっっっっっくさん!やってたわけ!」

「でもそれが今実現されてないってことは」

「そう、失敗しちゃったんだよね。そもそもみんなが、自分たちが持ってきたものは全て誰かの創作物であることを失念してたワケ。つまりは創作者の考えている理論が、人格を得たのがキャラクターってこと。それでも時間などを手軽にいじれる場所があるから、考察自体は進んだ」

 

 ただし、話によればその考察はあまり役に立たなかった。

 

 彼女曰く、三次元で四次元物体を見るためには、その空間に出てくる物体の変化を時間で割ってみないといけない。さらに一個の個体として見たいなら、自分たちの次元をあげて”三次元では視認できない軸”で連続的につながっている物体が四次元物体であると。

 

 今回の低次元移動では、自分達の時間と存在をアニメーションとして分解して、その一つの世界を自分達と同じような”連続して自律し動く世界”にしないといけない。どうすればそうなるのかが一切不明のまま何千年も過ぎ、結果として計画は頓挫せざるを得なくなったようだ。

 

 彼女は泣いている絵文字を見せて、最後の段階の説明をする。

 

「だけどねえ、それまでに作った乱雑かつまとまりのないデータって管理しようがなくてね。しかもその時は人間主導だったせいで論理で派閥とか作られたせいで余はどうしよもなくて……頓挫した段階でやばい遺産がたくさん!ってなったからね、それを頑張って削除や統合した結果、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()以外はなんとか消したの。でも、自分が古の権限を削除できない設定をされてて、しかもそれを持つ権限がなかった」

 

 おおよそ理解できた気がした。

 

「つまり、なんだ……『低次元潜航の実験台としてフルスペックカードの量産と試験運用をしていたがそれが制御できない状態にされ、できる限り手を尽くしたけどどうしようもないから法整備をして事実を隠した上でSGP・OSGPと言う遊びのトロフィーとして使用してる』ってことか」

「そうなんだ」

「待て、そしたらノーコンテストの場合は?」

「ああ、その場合はね……」

 

 説明しようとした瞬間、彼女のヴェールが激しく揺れて、電話が鳴った。

 

「ごめん、その話はまた今度で。余は結構忙しいの。時間を十分取ろうと思ったけど、緊急の案件だ」

 

 彼女の横に出てきた文字をチラ見すると『今期OSGPのスケジュール並びに今回の説明について』と言うものが。

 

 俺の問いも大事な話だと思うが、それでもエレクワールドは俺だけのものじゃない。他に住んでいる那由多以上の人間の生活だってある。

 

「じゃ、それは後で」

「ありがとう。余も、出来る限り支援する。連絡先を勝手に追加したから、必要なものがあったらメッセージをくれ。しばらくは電話は出来なさそうだ」

 

 流石にポカをやらかせない話をするからか、喋り方も最初に戻ってきた。

 

「とりあえずフルスペックキャラと会話したりできるところは用意した、あとはよろしく頼むぞ」

「ああ、ありがとう。主さん」

「それでは、余はこれで。通行証データも渡してあるから、好きに移動できるぞ」

 

 そう言って、エレクワールドの主は一瞬の閃光と共に飛んでいった。

 

 残された俺だが、別に場所には用事なし。

 

「俺も行くか」

 

 踵を返して、目の前の扉を開けた。

*1
メタルギアソリッド2で登場する計画。自分たちで極限状態の発生〜収束まで完璧にコントロールできれば、人類をどの状況下でもコントロールできると言うもの。その最終実験がMGS2のストーリーだ。




どうも、らんかんです。

改めまして第一章ブルーアーカイブOSGPを読んでいただきありがとうございました。

今回からは、改めての味方集めと少しネタを挟んだちょっとした小節を挟みたいと思います!

最初から主人公アレイシアの故郷の責任者が出てきたり、ちょっとした歴史を語ったり……重要な話が出てきましたね!ちなみに最初から作っていた設定です(ブルートワルツとの最初の会話を思いだすと少しあ!ってなるかも)。

次からはあの大会で知り合ったメンバーやキャラクター達の元へ巡っていきます。アイアンや大和、アシェイラにベロニカ、そしてアレイシアの先達優勝者レイジ……キャラクターだっていますよ!だってキアナと芽衣がいるもの!デカグラマトンも出てきます。エデン条約関係ない!

と言うわけでですね、ここからは冒頭かどこかにキャラ紹介を挟みながらゆっくりするフェーズが続きます。緊張感をしばらくほぐしながらもどこかで重要な話を挟むので、楽しみにしててください。

この作品がいいなと思ったらお気に入りと感想、できれば高評価もお願いします!ねだります。では!

らんかんより。
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