今やっているのはバーベキュー。肉と野菜と貝と、パンがある。
パスタもパンもパエリアもあるなんて、中々嬉しい。データは飯を食わなくてもいいが、飯を食うことそのものは快楽だ。
「美味しいねえこのラム」
「ああ、そうだな。ほら追加を」
「ありがとう」
そう話している二人のところに、俺は来た。
「すまない遅れた」
「色々取ってきたのか。割と盛ってるじゃないか」
「お前らを言い訳に少し多めに貰ってきたんだ炭水化物、ちょっと遠いから」
「構わない、小生らは足りなかったと言って貰いに行けばいい」
「サンキュー」
どんだけ食ってもデータ上、血糖値もある程度保たれるので胃もたれはしない。満腹中枢はあるから、ずっと食べれるわけでもないが。
「そういえば、スズミと話したんだって?」
「ああ、そうなんだ。尋ねてきたしプレイヤーの反応もゼロだったから。エデン条約で割とみんなピリピリしてるから、気をつけてねと」
「そうか」
「俺は下手なことしたのかと怒られることに怯えているよ」
「小生らの正体は?」
「明かしてない」
「キャラカード云々は?」
「いや全く」
「ちゃんと愛想良くできたか?」
「タメ口で話ちまったがまあ不和ではない」
「ならいいんだよ」
大和もアイアンも笑っている。自分だけ変に心配して損してる、んじゃないかこれは。
「こういう話においては当然自分と同じ境遇のプレイヤーがいる、という事実もあるしそれを恐れるのも分かる。事実、他のプレイヤーは私達みたいなのを出し抜こうとして会議しているのもあるかもしれない。でもね、私達は今物語に組み込まれてるの。だから愛想良くすることはとても大事なことなんだよ」
「てっきり怒られるもんだと」
「まさか。小生も同意見だ、むしろ貴様のおかげでリードが取れたというのは大きい。一番最初に出会って話せたスズミは、正義実現委員会にも所属し活躍していたエリートだ。彼女との関係性が出来た、ということはまず大きなアドバンテージだろう。他の奴らは基本、見向きもしないからな。OSGPやる奴らは特に陥りやすい、自身に強大な力があるからな」
「なるほどなあ」
「それに加えて小生はこれから体験という形で正義実現委員会の方での活動も加わる。彼女から聞いたとは思うが、自警団とは良好な関係だ。それの伝手で協力を仰げる時もあるだろう。いいことをした」
「ありがとう、嬉しいぜ。一応予想はついてるとは思うけど、彼女との話で少し気になることもゲットしてきた」
二人は俺を見た。
ある程度の話だが、今回こちら側での認識では2/3のプレイヤーが敗退しているのだがこの世界では正式な人数として今の数が認識されている。つまりは"留学生という形でプレイヤー達が来たこと以外"はあまり変わったことはない、ということ。
「おお、そうなのか」
「正直な話どう役に立つか、というのは分からないが少なくとも"異変が起きていてそれが中心となって動いている"という感じはしねえな」
「ふむ。では、しばらくは普通に学園生活をしながら情報集めか」
「ってことになるな」
そんな話をしているが、食う手は止まっていないため特に怪しまれることはない。
時間が経つと、必要な話も終えてある話にシフトした。
「今回、結構君緊張して動けなくなるんじゃないかって思ったけど案外普通にしているね」
「え、そうか?」
「うーん、なんかやらかしたかなあと気にしてはいたけど全体的に何か不安というかおっかなびっくりな印象はしないな。やっぱ慣れた?」
「どうだろうか。OSGPの参加自体はかなりやったけどチーム戦は初めてだし、それに優勝したのは一回きりだからな。人格的にはあんまり慣れてるって感じはしないかもな。結局誰かが大きな動きをすれば連鎖的に動きが出てくるわけだし、その波に飲まれないようにするのに精一杯だから。ただまあ今回は、目に見える地雷プレイさえしなければ大枠安定していけるだろとは思ってる」
俺の考えはこうだ。
今回のOSGPに当たり、自分らはチームのコンクエスト。完全に信頼できる二人がチームにいる上、フレンドリーファイアなどの害悪プレイを重ねると普通に失格になってしまうのも含め同じ陣営の人間には警戒する必要はない。この時点ですでに現段階では自分の拠点にも害はないことを確認できているため、落ち着けるのはわかっていた。
加えて今回はそのチームがブルアカSGPの優勝者と、全員初見作品のOSGPでの優勝者でありおまけに星神付きのゼロワンドライバーを持っている手だれ。仮にこんな仲良いムーブを取らなかったとしても、頼りになりすぎるくらいにはありがたい仲間だ。
この二点は非常に安心するため、自分の慢心にさえ気をつけていれば順調にクリアできる。ということを話してみる。
「へえ」
「ほう」
なんだか嬉しそうな顔している二人。
「な、なんだよ」
「いやあ、嬉しいなって。思ったよりOSGPやってる人の中では純粋っていうかあ」
「考えそのものがないわけでなく、普通に人を信頼できる人間なのは珍しいなと思ったぞ」
「ええ?」
「貴様はあの電脳の海にいてありえないほどのバカだ」
「なんっ……!」
言い返そうと思ったが、アイアンが笑い始めてついぞ言い返しができなかった。
実際、そう言われるだけのことはあると自覚はしていた。
OSGPは多人数戦、それも公式チートが手に入るための戦い。そんな中で真っ当に人間を信頼する奴もいないし、当然出し抜こうとしてプレイヤー殺しに手を染めるのが一般的だ。今回はOSGPの中でもルールの規制がある方だが、基本的には殺してなんぼの世界であることには違いない。
狂人悪人前提だからこそ頭にOutrageなんてつくゲーム。入り浸っている割には、やっていないやつと同じような感性を持っている俺が珍しかったのかもしれない。自分が純粋で優しくて、良識があるとは思えない。俺視点は言い換えれば"非情になることができない自分"に若干の気後れも感じるくらいだ。単純に界隈の雰囲気に馴染めていないとも言うが。
そんな俺のことを、二人は面白くは思っているらしい。
「でも別にそれは悪いとは思っていないよ?同じプレイヤー目線、そういった確かな信頼を向けてくる中に裏も感じないし、なら同じくらいの誠意を見せればもっと強固な動きもできる。SGPでは一人の性能より団結力が必要になる場面が多いからさ、私はやりやすいなって思ってるよ」
SGPはOSGPのようなパワープレイはできない。参加者で結束した上で、ミッションを達成しながら進む。その貢献度の差で彼女は勝っているから、一人の戦闘力が与える影響度など大きく思ってはないのだろう。
「そう言う意味では、アウトレイジの中では良識と知識を持つ人間を欲していたんだ。この大会のために、二人を誘ったんだからね」
「アイアンはやっぱり俺と違って実力スカウトか?」
「貴様も実力でスカウトされたんだろう?」
「今の言い方じゃ全く理解できねえよ」
「それもそうだな……拗ねてるのか?」
「拗ねっ……ってねえよ!」
「正直に言え」
「すげえ凹んでる」
もっとも今はパーティー中なので飯を食う手は止まらない。骨付き肉を食べながら行っても、説得力はゼロだ。
「うーん、アイアンは単純に付き合いが長いからなあ。今回の大会には真っ先に参加してもらうつもりだったけど、その三つ目の枠が君なんだよ」
「ああそういう……」
「だから実力者という面では君の方を買っていたりするよ?」
「よし。普通に食うか」
「おいまだ食べれるのか」
すでに大皿2枚ほどのパエリアに、パスタもガーリックトーストも、たくさんの牛肉も食べている。
「どんだけ食べるのよ」
「みんなだって食ってる。それに実はちゃんと上品に食ってるんだぜ、皿は綺麗にしてあるし」
「綺麗にするほど平らげるとはな、虫か?」
「あぁん!?」
「失言だったな」
その一言で一度話を終え、食事に精を出す。
なんといったらいいか、トリニティは庶民用のものでも非常に美味しい。お嬢様が集まるのもそうなのだろうが、全体的に上品を求めている街ではやはり質というものに厳格な規定があるのだろう。それが食にも適応されている。
このパーティを開催するのにいかほどの金が掛かったかは想像したくもない。
「すごく美味しそうに食べるな」
「俺見てたら腹減ってこない?」
「ああ、勿論。だからこうして食べているのだろう小生も」
アイアンも、パエリアを食べながら骨付きチキンを食らい、その上で酸味の強いソースで付けられたムール貝のパスタも食べている。というより飾らずパエリアにポークチャップを乗っけるあたり喋り方に反して割と賊じみた食べ方。
「全く〜、二人ともここお嬢様学校だよ?」
「こういう時には食わなすぎるのも損だし失礼だぞ、俺らはまだ少年少女、つまりは不快にならない範囲で飯を食うべしってやつだ」
「そりゃそっかあ」
周りの、元々いた人たちも割と量を食っている。
「じゃ、気にせず私も……と言いたいところだけど」
「どうした?」
「あー……後ろ向いてよ」
そう言ったのは大和。どうやらアイアンの後ろに誰かいる。
自分もその方向を見て、彼も振り向けば人がいる。
プレイヤーチェッカーには引っかからない。
「あ、えっとどなた?」
「私か?私は……」
「ああ____えっと、私は知ってるよ。ごめんアイアン、私たち三人は席を外すって寮母さんに言っておいてもらえる?」
「小生がか?構わない」
「アレイシアは一緒についてきて」
「あ、ああ」
皿とフォークを持って、大和についていくことにした。パエリアもパスタもうまい。
やってきた少女は紺色の長い髪をした少女で、トリニティの制服ではあるのだがなんとなくお嬢様のような雰囲気は感じない。気品と美貌はあるが、ミーム的な上品さはなかった。飾られている、というわけではないと言うべきか。
大和と少女は何も言わずにパーティ会場を後にする。
一体仲間は何を考えているのか、そしてこの少女はなんなのか。
謎は深まるばかりだ。