目の前に降り立ったのは俺が持っていたヘルシャギーツ。ギターを持っているということはビートフォームか。下半身が赤いからブースト付きと来た。
「ナイスタイミング!」
「あなたの事だもの、そろそろ困窮しているだろうと思って」
「ほう?増援ですか。しかもこちらの手管を知っていて……何者です?」
「ええっと……あの……近所のお姉さん」
全然親族でも知り合いでもないしちゃんと話したのはあれが最近なんだが。
「ともかく俺の知り合いだ」
「顔出しはNGで……ほら、アレイ」
ゼロツードライバーとプログライズキーが投げ渡される。
「こいつで戦える!」
「この子はどうするの?」
「アシェイラは安全な場所へ、できれば彼女が行く場所に寄ってそこが安全だったら置いてってくれ」
「安全じゃなかったら?」
「そのまま持ち帰っていいぞ。ついでに今の状況説明も頼む」
無理やり抱えられたアシェイラは、ドレスの乱れなど気にせずに俺に吠える。
「ああちょっと!色々説明して!というか、アタシのことこんな雑に扱って」
「説得の方法が変わったな。こういうことだ、手伝え」
「そう思うんなら戦わせろー!」
「残念だな、手持ちのカードはこれしかない」
《Zero-two Driver!》
ゼロツードライバーユニットを左にスライドさせて展開。同時にプログライズキーのボタンも押して開く。
《Zero-two JUMP!》
「おや、あなた一人で戦うというんですか?いくら助っ人に雑魚を倒させたところで、私の矢があなたを貫く!」
青い矢は、使い手の体幹と技術によって一切のブレなく俺の方へと飛んでくる。
だが俺はゼロツーだ。ライダモデルのバッタが二匹上から飛び、そこから散る破片が相手の矢と相殺。
「変身!」
《ZERO-TWO RISE!》
プログライズキーを装填、そのまま変身!
周囲を飛んでいたバッタが順番に後ろに飛び、ゲノム状になっては俺の装甲になっていく。
《Road to glory has to lead to growin'path to change one to two!》
黄色いやつが先にメインの装甲を作り、赤いやつが今度は周辺のアーマーになり、最後に小さい02の文字がスカーフのように胸元に装着。
《KAMEN RIDER ZERO-TWO》
《It's never over》
「悪いな、手加減なしの全力でお前を叩き潰す」
「やってみろッ!」
相手の言葉が出る前に、すでに俺は目の前に出てくる。
弓の真横、相手の目の前。
「オラァ!」
そのままストレートに殴り飛ばすと、思い描いた通りに相手は後ろにあったビルの壁にめり込んだ。
「がは……くっ!」
手を伸ばす男は、そのまま後ろから小さい矢を飛ばそうとしてきている。
ゼロツーの予測と戦闘経験から下の影が青く、小魚のように光る姿を見て察した。
あれは
ならば!
「てめえをもみじおろしにしてやるよ!」
相手の悲鳴が聞こえないレベルのアッパーカットで思い切り打ち上げ、追撃する形で矢を回避。流石に飛んできた矢はこちらを捉えるのには曲がる時間が足りなかったかで、そのまま建物を貫通していった。
流石に早かったが、どうやら割とやる人間らしい。
「まだですよ!」
血を吐きながらも威勢がいい相手は、そのまま上に弓を作って矢を放ってくる。その上で相手の方を見ると、青いラインのようなものが浮き出ている。試しに軽く蹴ってみるが、軽い蹴りではダメージが入らないようだ。
「
「ちぃっ」
どうやら相手は純粋に力を高めた滅却師の能力を使っているらしい。ゼロツーのキック力は120t……まあそれくらいのものを一発で壊せる力があるんだがそれを押さえ込んでるとは恐れ入る。
だがゼロツーは基礎能力だけを上げた代物じゃない。
空中制動をした上で真正面からパンチを加えようとすると、相手はそのまま腕を硬直させて殴りかかって止め、そのまま俺に矢を浴びせようとしたようだ。
「遅いな!」
「何だ!?」
本命は"もっと賢かった可能性の俺"が放つ後ろからのライダーキックだ!
流石に目の前にいるはずの俺が構えている中で下手に姿勢を解くことはできなかっただろう、硬直化させた己の肉体と血液で俺の一撃を喰らってもう一回吹っ飛んだ。
反対側に蹴ったから最初の広間に戻ってきている。
「よっと」
「やりますねぇ……いやあ、困った。あのような邪魔は普通は入らないはずですが……困りました。まさか
「そんなに舌が回ってちゃ効いてるかどうかもわからねえよ」
「ではお見せしましょう。私、
男は立ち上がっている。
無数の糸のように何かしらのエネルギーが伸びて、男の体を動かしているように見えた。立たせた後に糸のようなそれは、本当の糸になって相手の体に巻き付いている。
「
「糸を交差し、服を編むように私の体を纏わせ、
外部から霊子の糸で操るものを、無事な組織と複雑に組んだ可動部で動かす。相手がそれだけの実力者であることは分かったが、そこまでの人間が暗い真似をすることが分からない。
「こんな出会いじゃなければな」
素直に漏れ出た不満。
「私はこのような出会いで良かったと思っている。政治的な駆け引きのもとでは、何も面白くはない」
「じゃあもう少し自分の常識を疑うべきだな」
霊子を常に消費するようなやつでもなく、その上で血装を使う滅却師。
だが、出力を上げて全力キックをすれば撃破可能だ。
「どうする?お前の部下は全員雷で葬られ、お前自体はその様だ。その力がぶっ壊れないうちに撤退するってのはどうだ」
「ふ、私に撤退の選択肢はない」
「そうか」
じゃあもう必殺技でぶっ潰すしかない。ここでぶっ倒したらどうなるか分からないが、少なくとも見逃す選択肢を突っぱねた相手に話が聞くとも思えなかった。
「じゃあここでお互いの最大手をぶち込もう」
「ええ、望むところです」
力強くプログライズキーを押し込こもうとした。
「掲げよ」
その時だ。
「うぐっ…!?」
「ぁあ」
ゼロツーのスーツは全くもって悲鳴を上げないが、俺が急な重圧を感じて動けなくなる。
体は動けるはずなのに神経が恐怖と偉大なものを知覚して止まってしまう。
霊圧、だ!
「銀の紋章・灰色の草原・光に埋もれた円環の途・瑪瑙の眼球・黄金の舌・頭蓋の盃・アドナイェウスの棺」
かつ、かつ、と音がして、それに乗るように女の声が響く。
俺には聞き覚えがあったが、俺の恐怖以上に男の顔が汗と怯えに塗れた。
無理もない。俺でも知ってる、あの言葉。
「掲げるものは」
その言葉に似合わない、下駄の音。
俺は喉にさえ重圧が掛かって声が出ないが、味方であることは確信している。だが、その味方に恐怖するほどの霊圧がアーマーを通してさえ押さえつける。
「お前の心臓」
ようやく街灯に照らされ、顔を見せたその女。
黒くて豪華な打掛は黒を基調としながら金色の糸で風景を映し、引き着は白く、そして白い肌と金色の目が俺たちを見つめる。
「ユーハバッハの、ですって!?」
「アテクシの聖別は少しだけ手加減を加えられるようにしてあるの、アナタの力は奪うけど命までは取らないわ」
「まさか、そんな、カミツナギがアレイシア・ガレットピアの!」
「本当に残念だ」
力を一瞬で奪われた男は、膝立ちで力無く項垂れた。
動けないまでのダメージを与えたのは俺で、それでも動ける手段を丁寧に剥ぎ取ったカミツナギ。二人のファインプレーで、生け捕りできたと言っていい。
「お前の負けだぜ。気絶する前に、目的話せよ」
変身したまま、相手に近寄る。ちゃんと息をしている上で、止血はされていた。
「私、は、あなたを、捕まえ、大和を」
「……は?」
「……」
「おい!」
どうやらお手上げらしいのか、ちゃんと話そうとしたが内部ダメージが思ったよりもえぐかったらしい。幸い死んではないが、気絶してしまった。
「あら、気絶してしまったのね……残念」
「おい!大和がなんだって言うんだよ!あいつに何が!」
「こら」
急いで話を聞こうとしてしまう気持ちを抑えきれずに相手の体をゆすってしまうが、それでも反応がない。自分の気持ちを理解しながらも、今はそれをするべきでないと理解したカミツナギに肩に手を置かれた。
「……ごめん」
ドライバーからプログライズキーを引き抜いて変身解除する。
「気持ちが昂ったり、何かしなければと悩むのはわかるけど、それでもあまり負担をかけすぎないことが話を聞くときに大事なこと。アテクシの言うことを聞いて、ゆっくりしなさい」
「カミツナギ」
「一回アテクシのバーへと戻りましょう?彼女たちはそこにいるわ」
「アシェイラと……」
「雷電芽衣もね」
どこに助け求めに行ってんだ!?と思ったものの、確かに頼りになりそうで話しかけやすいのはカミツナギなのかもしれないと思うと文句も出なかった。
「分かった、一緒に戻ろう」
「ええ」
彼女が何かを唱えると、気絶していたやつはどこかへと飛ばされた。どこへ飛ばしたかなんて聞く必要もないと考え、彼女についていく。
「ありがとう、何から何まで世話になる」
「気にしないで。アテクシの可愛いアレイシア」
「そう言われると、悪い気はしないな」
「やっとプレゼントを使ってくれて、いい気になってしまうでしょ?」
そう言われるとそうかもな。
手を繋いだりとか、そんなことせずとも伝わっていることをあえて口にする必要もなく。
街灯の並ぶ道を二人で歩き、バトルエリアから脱出した。