Never Says「Good by…」   作:らんかん

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新たな助っ人

 ネオン街の排気ガスもない清潔なのにうるさいいつもの場所を通り抜け、やってきたのはある場所。

 

 平安貴族の屋敷、いわゆる寝殿造といったものか。

 

「やあ、レイジ。ようやく来てくれたんだね」

「誰のせいで来させられたと思ってんだ。ほら、お目当ての人間を連れてきたぞ」

 

 強く背中を押されて、目の前の白い長髪の女。

 

「君がアレイシアか……ようこそ、新秋殿へ。僕はリヴ」

「ああどうも、アレイシア・ガレットピアだ。えっと……このお兄さんとはどういう関係で?」

「いきなり聞いちゃう?それ。僕は彼の恋人、かな」

「誰がてめえのこと恋人だと思うんだこの性悪女!」

「えぇ」

 

 レイジが怒って地団駄踏みながら指さして抗議するのが面白いが、リヴは着用していた十二単の袖を口元に当てて微笑んでる。

 

「こういう関係だよ」

「そ、そうか」

「まあ、座って。あぐらでもかいてさ」

「しゃあねえ」

 

 二人揃って座り、相手もまた綺麗に座る。

 

 異様な空気感を感じながらも、とりあえず用事は済ませなければならない。

 

「で、オレ達を呼んだ理由はなんだ。まさか関係ないこいつと一緒に思い出話をしようって訳じゃないよな?捏造できないし」

「君がいない時にしよう」

「すんじゃねえよ!」

「君達を呼んだのは別の理由だ。少しばかり、手伝いをしようと思ってね」

 

 手伝い?と聞き返すと彼女は頷いている。

 

「最近、君たちも出会ったと思うけどOSGP外のフィールドでのカード使用ができるエリアが出てきてしまっているじゃないか。その被害に僕の部下も会うことが多くてねぇ、困ってるんだ」

「ああ、その件か。情報もなかなか吐かねえし困ってるんだよな……協力って話ならそれだけでも助かるんだが」

「話が分かるじゃないか、人を見て騒ぐ隣のお兄さんとは大違いだね」

「はいっスケープゴート成立!」

「でもレイジ以外の子はあんまり興味ないよ?」

「バカがよ!」

 

 少しだけ立ち上がってレイジに拳骨を入れる。

 

「いった!?」

「少し黙っててくれ、話が進まない」

「ひゃい……」

「で、リヴさんの部下は?こんな屋敷をビルの中にぶち込んでるくらいの巨匠の部下が数人程度とも思えないし、無事じゃなかったやつの状態も知りたい」

 

 少しだけ、彼女の顔が曇る。ぱっと見は笑ってるし、屋敷の光も入っているが綺麗でも淡白だ。

 

「無事だったメンバーは全員集団で襲ってきて、撃退できた場合の身元も裏ルートで確認したんだ。そしたら一応プレイヤーかつユーザーではあったんだけどサーバーや住居に完璧な類似性は見られなかった。一応SGP・OSGPの経歴も調べてみたけど時代が最近100年以内の経歴がほとんどとはいえ全員がそうじゃなかったから、経歴から特定の行動を導き出すのは不可能だった。使ってるカードも本当にバラバラかつ経歴に沿った物が多くてねえ」

「無事じゃなかったやつは?死んだとかログアウトしたとか、情報が残ってるはずなんだが」

「彼らに負けたやつは、今はログイン状態とはいえ取り込み中のままだ。でも、彼らの傷は無駄じゃなかったんだ」

 

 俺らとリヴの間に、大きなモニターが出される。

 

 それは大きな町の見取り図であり、その町の下に大きな空間が映し出され、そこが赤く塗られていた。

 

「どうやら負けた人間のデータはここにあるみたいだ」

「ここがあるのは?」

「プライベートワールドみたいだね、地下ということは放水路なんだろうけどまずどこにあるのかは分からない。今はここに入るための鍵や道を探している、って感じかな」

「なるほど……それに関してはデータくれれば解決できると思う」

 

 協力をこっちから申し出る。少しばかり彼女の目が開いて、驚いた様相を見せた。

 

「え?でもいくら優勝プレイヤーとはいえ……ハッキングみたいなの得意?」

「それが得意そうなやつは一人心当たりがあるが、全然違う。レイジあたりは知っていると思うが……」

 

 リヴに、状況を説明する。

 

 彼女とはまた別件で、ブルートワルツというプレイヤー?による大会の書き換え事件があったことを話す。OSGP内で彼女を下した時にキアナとレイジを引っ張り出すことに成功し、終焉の繭を再現したアツコを救ったことや、その後にエレクワールドの主に出会い事情を説明した上で出来る限りの協力をしてもらうと取り付けたこと。そして、今回の件に関しても協力を要請しており、実際に調査をしてもらっていることも話した。

 

「カミツナギっていう女性にも頼んだから、きっとリヴさんも状況をちゃんと説明すれば協力してくれるはず。そのデータもあれば、多分当ててくれるはずだから」

「そこまでしてもらっていいの?」

「相手のことを考えたら全然足りないくらいさ。俺たちは無法者だ、警察じゃない。()()()()()()()()()だろ?」

 

 少しだけ微笑むと、安心した表情を見せた。ちゃんと理屈と根拠があって、その上で微笑みかけることは相手に対しての信用を得るに足らしい。

 

 レイジは黙りっきりだが、多分俺に話を任せたほうがいいとしたのだろう。

 

「ってなわけで、後で俺に送っといてくれると助かる。レイジも証言者としているし、多分情報は信用してくれるはずだ。ただ……」

「ただ?」

「俺からも頼みがあるんだ、二つくらい」

 

 折角ならと頼めるものは頼んでみよう。

 

「積極的なのは好きだよ、言ってごらん」

「まず一つ目は今回の件に関しては出来る限り協力体制を築きたい、そのために呼んだのかもしれないけど一応俺らからもお願いだ。で、もう一つはその中でブルートワルツに関する話は全部共有してくれると嬉しい。彼女のことを追っているからな、足がかりがあったら嬉しいんだ」

「ブルートワルツかあ、あの大会ってプレイヤー同士で因縁の男女が生まれるんだね。レイジ?」

「一緒にすんなよ。ブルートワルツのほうがまだマシだ」

「僕のこと嫌いなんだ」

「てめーがウッキウキで終焉の欠片もらってはしゃいであの姉妹に構ってたせいで例のイカロス殺しを誰がやったと思ってんだ!スラッシュアックスであれの相手はしんどかったんだぞ!」

 

 因縁があるらしいが、まあ突っ込まないでおこう。本題でもないし。

 

「ま、まあ、話を戻そうか二人とも。リヴさん、約一名反抗的だけどとりあえず協力の打診はこれでしておいた。返信とかは後でいい、すぐに決めれるものじゃないだろ」

「すぐに決めれるよ。待たせる必要はない」

「お、本当か」

「ただし質問に答えてからね」

 

 回答の内容によっては、協力しないもあり得るのか。少し怖いところだが、ここで逃げてはそれこそ姿勢としては良くない。

 

 改めて向き直す。

 

「簡単な質問だよ。個人的な質問だけど……君を信じれるかどうかだったら、これしかないからね」

「もったいぶらずに早く言ってくれ、怖くて心臓がドキドキする」

「そうだったね。じゃあ……」

 

 リヴさんは、質問を口にした。

 

 

 

 

 

「ブルートワルツのことは、好き?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、好きだ、好きだった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 間髪を少しだけ入れて、返す。

 

 悩むこともなかったし、取り繕う理由もなかった。彼女みたいな人間には何故だか表面を綺麗にしても見抜かれる気がしたし、アシェイラに言われたことが反芻していたのも大きいかもしれない。

 

「アレイ……」

 

 珍しく、レイジの憂う声が聞こえる。

 

 だけれども、答えは変わらなかった。瞳の弱みさえ吐露し切った後で、鋭くなっている気もした。

 

「あの大会は俺の全てを変えたかもしれない。立場を手に入れてから少なくとも流浪人みたいなことがずっとできなくなったし、行動一つが全て価値ありと分析され続けるほどの人物になったしまった。でも、そうなる最後のタイミング、素直になれる場所で俺は全てに対して全力で当たったんだ」

 

 ブルートワルツみたいな全てを知ってそうで、気品があって、それでいて元気で、綺麗で……そんな少女が目の前に立って本音なしでぶつかり合えて……全てが満たされた瞬間だった。

 

「ブルアカグランプリの時、俺はまたあの戦いができるんじゃないかって思ったんだ。思ったら、あんなことになって……そしてまた全てが変わっていって。そもそも確固たる自分もなかったのに、さらに環境で変わっていって、今勇者の一団みたいな立場になってそれこそ時代で見たらオンリーワンの役目をもらったけど……それでも彼女が敵で滅ぼせって言われた時に躊躇ってしまわないか心配になってさ」

 

 彼女と隣で戦う時は楽しかったし、夢に出てきて触れ合った時、キスをしかけた時、その前にデータ空間で出会って話をした時、全部楽しかったんだ。他の女性、カミツナギとかだって美しくてスキンシップしてくるはずなのに、何故だか彼女が特別な気がして。

 

「俺あいつに惚れてたのかもしれない。だから、好きか嫌いかでいえば好きだった。あの大会で最後のぶつかり合いをした時には運命を感じたし、再会したらくっきりしてもっと好きになった。だけどゴーストが出てきて、全てが崩れて……うん、悲しかった。今でも好きだけど、そうでいられない。だから好きだった、なんだ」

「そっか」

 

 リヴさんの表情に慈しみが宿って、そっと自分に近寄る。

 

「ありがとう、君と僕は友達だ。大好きな人が手に入らない悲しみを背負った、ね」

「そうやって悲劇のヒロインぶっても俺は付き合ったりしねえからな!押しが弱くて、もっとお淑やかなお嬢様と付き合いたいんだ!」

「僕がそうじゃないの?」

「ストーカー気質で戦い方が残虐なTSレッドマン超かぐや姫スタイルなんざ誰が好きになるか!」

「ひどいなあ」

 

 二人が会話していると、少しだけ笑いがこぼれた。罵倒がストレートでひどいものだったからかもしれない。

 

 少しばかり抱きしめてもらった後に、そっと離れる。

 

「チッ、本当に癖つよ女しか近くにいねえの我ながら嘆きの領域だぜ」

「僕はここにきてくれて嬉しかったよ」

「そうかい!けっ!」

 

 彼女はそんなレイジを見てから、俺の方に向き直った。

 

「ありがとう。僕も、君達の手伝いをしよう。できる限り情報共有するし、兵も必要なら貸し出すよ」

「こちらこそありがとうございます、リヴさん」

 

 これで交渉成立だ。兵隊と情報が手に入るのは、ありがたい話。

 

 さて、時間がかかりすぎたので帰るとしよう。立ち上がって、玄関の方まで行く。

 

「そろそろ失礼します」

「うん、またおいで」

「誰が行くかよ」

「レイジもね」

 

 ツンデレなのかなんなのか、ともかく彼を宥めてから退散するとしよう。

 

 時刻は午後0時、日付が変わっても街の様相は変わらない。

 

 快楽に溺れ続ける人間に、日付という概念はいらないから。

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