Never Says「Good by…」   作:らんかん

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夢の世界で三人目

 そろそろちゃんと休もうじゃないか、と思って帰ってきたは自分の家。

 

 ずっとナーバスになってたし、その状態でも新たな騒ぎは止まんなかったし、ストレスらしいストレスが爆発しそうになる。

 

「上流階級っぽい、優雅で余裕のあるレイアウトに変えるべきかなあ」

 

 エレクワールドでは、プロプレイヤーなど世界を熱狂させたりしたスターに関してはプライベートワールドの作成権限並びに家の拡張が認められたりする。自分は最低限でも普通に過ごせる人間だったから別になんとも思わなかったが、確かにこれからみんな集まるんだし狭い場所じゃ困りものか。

 

 いやそもそもここ俺の自室だし……うーんキャラが出て来れるようにしたワールドは本当に水の上の大屋敷ってなもんだから正直拡張いらない気がする。てかそれするくらいなら大和の方に押し掛けたら良いのではないか。ああいう斜陽館的な場所で会議した方がかっこいいし、身が入るはず。

 

「ま、いっか。どうせ俺はここで寝るしかしないんだし」

 

 ソファに転がって、足を膝掛けに乗せて寝る。

 

 疲れてる時に寝転がるソファーは、思っていたより寝心地がいい。どうしてかなんていうのは分からないが、ベッドみたいなので寝ると義務感を感じてなんか虚しくなるせいかもしれない。もしくは動けない中で深く沈むソファーは包み込んでくれるやつ感があるのだろう______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 起きる。

 

 夢を夢の中で認識できてしまう人間は、現実がこびりつきすぎて真相意識ですら見分けがついてしまうのかもしれない。俺は多分、そのタイプだ。

 

 目の前には灰色だが下は動くたびに波紋を広げる。無辺の海原のようなもので、追い続けていたら先に疲れて結局見逃すのだろう。

 

「アレイシア」

「ん?」

 

 呼ばれた声の方を向くと、誰かが立っている。

 

 ファイノンみたいな姿をしているが、それよりは少しだけ髪が短く、そしてスパイみたいな服装。

 

「君の深層心理とやらは、こんな場所にティーセットとテーブルがあるんだね。この景色でよく茶が飲める」

「誰だお前は」

「仮面ライダーゼッツ、と名乗ろう」

 

 少しばかりはつらつだが、往年の日野聡ボイスが響く。

 

 言われた通りに座ってみると、目の前にはクッキーやらケーキやら、そして上品な茶葉の匂い他漂わせる紅茶が目の前に出てきた。

 

「そろそろ第二段階ってところで、君の顔を見に来たんだが結構暗い顔してるもんだからさ。少しばかりイタズラしようかなって」

「その挙げ句に名乗るのが仮面ライダーゼッツというわけか?ジャッ……」

 

《WONDER》

 

 カプセルみたいなのを回して後に腕が伸びてきて人差し指が口に当たる。

 

「おおっとその名前はまだナシだ!確定ダメージのバフが乗らなくなっちゃうからな!」

「ああわかったよゼッツとやら。で、なんだ。本当に何のようで来たんだ」

「記憶の主からそろそろ働けって連絡が来たもんだからね。必要な先バレってやつをしに来た」

 

 言ってることの要領が掴めないままただ首を傾げてクッキーを食べる。死を悟ったインコみたいだな、俺。

 

「君の次の戦場の話だよ」

「次の、戦場。俺らが戦う場所……ってことは」

「そう、次のOSGPだ。尤も、さっきの言い草で全てを理解してそうだけどね」

 

 記憶の主だの確定ダメージだの特定作品でしか聞かない単語を並べられては当然わかりきったことだ、スターレイルの______

 

「オンパロス、か」

「大 正 解」

「人を馬鹿にしやがってお前!」

「いいねえその反応!元気を感じてとても嬉しい」

 

 落ち着け、何だこいつ。イラついてきたがとりあえずここで荒ぶっても何の益にならない。

 

 それにこういうケースだって鬼鳥とやらの一件もあったし初めてでは無い。話を聞く、という点においては有益なんだ。

 

「そう、次君たちの戦場はオンパロスになるんだよ。細かい話は作者からのネタバレNGがあったから話せないけど」

「細かい話?」

「シュレディンガーの猫って知ってるかい?確定するまでは未確定ってやつ。それやっちゃうとシナリオが確定しちゃうから話しちゃダメって作者から厳重注意が出ちゃってるのさ」

「そりゃな。大体、そこまで話さなくてもあらすじで走るかどうか決まるだろ」

 

 そりゃそうだ!と手を叩く自称ゼッツ、怖い。

 

「あらすじを教えろ」

「ちょっと待ってね!」

 

 懐から彼はメモを取り出している。少しばかり、髪色に茶色が混ざっていってるような気がした。

 

「今から読むよ!」

「ああ」

 

 目の前の男は、できる限りキュレネのモノマネに声を寄せ、楽しそうに読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無事鉄墓を封じ込め、自分でオンパロスの永劫重版を決めて缶詰をしていたデミウルゴスことキュレネは、その缶詰部屋にブルートワルツが侵入して大変な目に遭っちゃったの!鉄墓の完成をさせるべくライコスを殺し、乗っ取って、鉄墓の感性から知恵の天井であるヌースを壊し、そのままの勢いで宇宙の熱的死さえも超える大崩壊を起こして永遠の世界を作ろうとしているわ!星や丹恒、なのかを加えたオンパロスの半神達も物語の中に閉じ込められ、作者もまたその中の文字に書き連ねてしまった!』

 

『彼女は今度こそオンパロスで永劫の宇宙を作ろうと画策しているけど、立ちはだかるは物語の外、天外どころか揺らぎの空から飛び込んできたアウトサイダース!彼らはブルートワルツ、ホヨバースの始まりの女神、その分神と戦うためにやってきた彼らは最後まで足掻いて立ち向かう……新たなる仮面ライダー。日本にあった街を彷徨うみんな。そして、青色の、反対側の色をした私!?さあ、目を開けて!立ち上がって!嘗て、世界を救い幸せな生活を送っている黄金裔達と共に、宇宙の平和を守るのよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だそう」

「……ギャグコメディ系だな、本当に戦うのかそれは」

「それはお楽しみにってことで。これを伝えにくるのが、えっと……そう、一個目の試練だったんだね!」

「あと十一個試練があるのか?」

「次の解除条件は攻撃行動六回だ!いや待て、そこに話を波及させるのはやめない?燃えたくない」

 

 彼の苦労は計り知れない。そんなものを人前で読むために夢の中に潜入したなんて、末代までの恥じゃないか。

 

「試練って言ったら試練だけど仕事って言ったら仕事。次の試練は達成するかどうかは、ずっと安定しないオリチャーだからね」

「裏にパチンコジジイがいるのか」

「だーかーらーそっから離れろ!てかこれあれだから、いわゆるエリオの脚本的なやつだから!ったくもーなんでこういう子と仲良くなっちゃったかなあ!それでも上手くやっていけるの良いところだけどさ!」

 

 そうか、まあ、お前ならアイアンのこともちゃんと覚えてるもんな。でもよかった、彼の中にはずっとあいつは残ってたんだな。仲間として嬉しい。

 

「まあいいや、それは置いとこう。とにかく次で出会ったら、その次に出会うのはオンパロスだからね。オッケー?」

「OKOK、そんな慌てなさんな」

「誰のせいだと思ってるんだ本当に」

「悪かったよ」

 

 なるほど、そうか。いや、そうだな。

 

 オンパロスが舞台になるならこの先遣隊みたいな扱いも納得だ。確かオンパロスに行かなかったら宇宙や銀河がやばかったみたいな話を聞いてたし、実際にそういうルートがあったみたいな話を聞いた。

 

 そこが戦場になった、ということは過去をある程度修正しないといけない。

 

 目の前のジャック・ユウグレは、アイアンを突き動かす動力源に……いや、考察ごっこはやめておこう。人の飯の種を物知り顔で嘯く食い方はしない主義だ。

 

「次に会った時にはそろそろ覚悟しろってことだな」

「そうそう。よろしくね」

「ああ」

「じゃあ、僕はそろそろ帰るよ……あ」

 

 席を立った後に、何かを思い出したかのようにこっちを向いてる。

 

「覚悟を問うのを忘れてた」

「おいおい今更だな」

「黙って聞いてくれると嬉しい」

 

 なんだなんだ、と紅茶を飲みながら聞いてみる。

 

「これは単純な疑問だけど……君は結末が分かりきってる旅があったとして、それを始めるかい?」

 

 出た出た、ホヨバを語る上ではよく出る質問。これで通ぶるやつがいるよな。

 

「たとえどのような選択肢を取ろうとも、物語の結末が変わらない。どう足掻こうとも無理だと分かった物語を歩く勇気は?」

 

「愚問だな!」

 

 威勢よく、口にする。声が大きすぎてびっくりしたまま、こっちを見ている。

 

「そんな本ごと焼きはらって都合のいい話に書き換えるのが無法者(アウトレイジ)のやり方だろうが!俺たちはそういうゲームをやってるんだ、最初から結末が分かりきった物語に飛び込んで荒らしまくって俺たちが勝てばいい!」

 

 それに、俺たちの物語に結末があったとしても、その先には必ず時間があって、生きている人間が必ずいる。古代期の恐竜や魚達だって全滅するのが分かっていても目の前の世界で生きるためにあがいたんだ。

 

 全滅して地表になって、化石になったり石油になったり……でもそれが何万年も後の時代の誰かを移動手段の補助として間接的に助けてる。自分がバットエンドでも、誰かがハッピーエンドを辿る。そういうのが文明の妙って言えるんだと思う。

 

「俺は自分のことをそこまでたいそうな人間だと思えないし、みんなが一生懸命生きてるのを良いなって思って遠巻きに見ては入れないか伺う人間だったが……それでもやっぱ楽しみたいから憂鬱になる。でもそのままじゃ終われない、たとえ楽しんだ先の結末がバットエンドだったとしても、永遠の鬱の苦しみよりはマシだ」

 

 

 

 

 

「ああ、大丈夫そうだ。君ならハッピーエンドに辿り着ける、僕が保証しよう」

 

 

 

 

 

 少しばかり、笑顔を向けたジャックは、それ以上の言葉を残すことなく歩いて去る。

 

 見えなくなるまで見送ると、水面の波紋さえも遠くへ消え去り、止まって漸く彼が消えたのを知った。

 

「……ああいう友と戦えるのは、ちょっぴり羨ましいな」

 

 少しだけ感じた、アイアンへの嫉妬の言葉を反射させて、俺もテーブルを後にした。

 

 あいつ羨ましいな、彼女もいて友達もいて、勝ち組じゃないか。

 

 ほおを膨らませて進むうち、視界は俺の肉体も見えないほど暗闇に包まれていく______

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