バンダナはつけていないが、精悍としている外国人の男。
その男に見覚えがあった……ソリッド・スネーク!
荷物を置いたところで、邪魔にならないように声をかける。
「スネーク!」
「アレイシアか」
すごいな、俺って一発で分かるのか。
姿は
「よく俺って分かったな。あんな見た目と比べて本当にただの男だってのに」
「人ってのは必ず変えられない立ち振る舞いがあるものだ。お前に、あの時出会った人間と同じ匂いを感じた、それだけだ」
「そっか。じゃあ、分かるものか」
「それにここのマスターが”必ずアレイシアが来る”と言って聞かなかったからな」
リタの方に視線を向けると、少しだけそっぽを向いている。
「え?」
「いつもの上品さは崩さなかったが『彼は必ずここにやってきます』と強く推していたぞ」
「やってくるっていうか連れてこられたんだが」
「ん?ということは仲間にならないのか」
事情を説明する。
彼女と自分は一人の少女から出来た因縁で敵同士のままゲームが終わり、今漸く当時の状況を共有して互いの警戒を解いたと伝えた。
「状況が状況だからな。これで協力しないで死なせましたとなったら、作る墓が一つ増えるから協力することにしたんだ。尤も_____」
「カードがないから戦えないが、か?」
「大正解。だからリタに強請ろうって訳」
「残念、ここには銃器しかありませんよ」
「なんで銃器はあるんだよ!」
別に使えないって訳でもないが得意かと言われれば微妙だ。プレイヤーとしての腕は正直並で、多少の下駄がないと真面目に戦えない。
「銃器を使う方が多いので、自然と用意が増えました。貴方の分までご用意出来ますが……」
「生身で使っても当たらないから要らないぞ」
「下手なのですか?」
「その通りだよちくしょう」
はあ、とため息をつきながらもう一度座る。
苦手なんだよな。どれだけ意識していても、意識しているだけ手が震えるから思った様な場所に飛ばない。ばら撒く前提のやつなら意外と当たったりするし、ライダー系列は補助機能あるから普通に当たるんだが。
「ではカードの用意が必要……あれ?ノーマルカードは買えませんでしたか?」
「ああそうか」
そう言えば自分はプレイヤーじゃないか。ゼロからのやり直しも悪くな……あれ。
おいプレイヤーコマンドどころかエレクワールドユーザーウィンドウも開かない!
「あは、あはは……たはー……いやあああああーっ!」
膝から崩れ落ちる。
「くそっ!なんて事だ!俺は世界にいるのにハブられてやがる!律者に全部持ってかれた!クソが!」
「あら、随分と情けない格好ですね。諦めて銃を握っては如何ですか」
「使える様になるまでに話が終わってそうだな」
「その必要はない」
また声がする、聞いたことのある声だ。
「酷いじゃないか兄弟。俺に色々重い荷物を押し付けておいて、勝手にパーティーを始めようとするとは」
「お、リキッド!」
「なんだ俺のことを知っているのか〜?誰だお前は」
「アレイシアだよ、アレイシア・ガレットピア……って言っても信じないかな」
金髪で髪の長いスーツ着た銀河万丈の声をしている男が、バーに沢山の肉と野菜とワインを入れてやってきた。
俺の姿を見て首を傾げていたが、何かに合点がいったらしい。
「そうか、これが本来の姿か」
「分かってくれたか!」
「振る舞いがあまりに軽薄だが、不思議と動きに説得力があった」
「どう言うことだよ」
スネークと同じ様な事を言ってる。
ん?
よく考えたら
スネークには
「待った」
「なんだ?」
「FOXDIEはどうしたんだ。ナオミ・ハンターが仕組んだあれ、隣に居て大丈夫なのか」
「今更だな、血清を作って打った。ルアン・メェイ博士にな。スネークも
荷物を置いたリキッドは説明を始める。
俺と彼が出会う前の段階でルアンとヘルタに合流した彼は、最悪スネークがいた場合に備えてFOXDIEの情報を共有。前者は生物学者であり、ブルートワルツの危険性を説明した結果協力を得られ、その一環として血清を作成して打っていた。
つまり『ブルアカGPの時にはすでにFOXDIEを克服していた』ということだろう。
「その言い草だとスネークにも打っていたって話になるが……いつ?」
「それは俺から説明しよう」
「スネーク」
「といっても、お前が来る前に頑張ってリタが集めたメンバーにリキッド御一行も居たからついでになんとかしてもらっただけだがな。俺がそもそもFOXDIEを持っていたのを改めて研究した上で完璧な血清を打ち込んで変異種になる前に止めた。肉体はあの時よりも若返っている」
さすがだなルアン博士!狐の呪縛から二人を解き放ったのか。
ともかくこれで二人は必要な時に、ちゃんと行動ができるようになった上で支障なく協力できる。
「……で、そのウイルスから解放してくれた博士は今どこに?」
「俺に聞くな。スネーク」
「一緒に帰ってきてなかったのか?」
あ〜あ、これあれだ。いつの間にか一緒にいたやつがいなくなっていて、その消えた本人が窮地に陥ってるっていう_____
やばいやつ!
「リタ!あいつらの位置分かるか!?天才達はそうそう死なないと思うがこのまま放置したらまずい!」
「逸れてしまったのを探しに行くのですか?あの方達に大きな問題はないとは思いますが」
「スネークとリキッドが意図しない逸れ方して無事だと思うのかよ!」
カウンター越しにリタと向き合う。
物語にはこういう始まりのトラブルは付きもの。これだけなら俺の予感を刺激するだけに過ぎないが、それを抜きにしてビッグボスの息子二人が困惑すると言うことは予期しなかったことになる。
無論、女性同士の買い物で逸れた可能性だって否定できない。できないが、さっきまでそこらで戦闘があった後だ。天才がそこで自制が効かないのも考えづらい。
「こいつらが特別ってわけでもないが、じゃああの天才達がアホって訳でもないだろう!?取り越し苦労だったら恥をかくのは俺だけだがそうじゃなかった場合取り返しがつかなくなるぞ」
「そこまで強く押すとは、相当心配なのですね。確かに、ヘルタ様もルアン博士も狙われやすいかもしれない……しかし、良いのですか?今行く場合は貴方の苦手な銃器しかありませんよ」
「選べる時なら選びたくはないが、緊急時で選べないならその時のベストを尽くすしかない。選ばなければなんて後悔は失敗したらどれを選んでも付きものだが、それが許されるのは立ち向かった時だけだ!」
必死に説得していると、カウンターの機械が回線を繋いで自動で開く。
《えーっと、聞こえてる?リタ。私達も帰ろうと思ってたけど、ちょっと面倒ごとに巻き込まれちゃって》
「ええ、聞こえていますよ。今増援の用意をしていたところです」
《随分と用意がいいのね。でも、頼りになるの?》
「ご期待には添えると思いますが」
《あっそ。じゃ、早めによろしく〜》
いつも通りというかなんと言うか。
「と、言うわけです。アレイシア、頑張ってください」
「ああ、言われなくても」
「こいつを持ってけ」
リキッドから、あるカードを渡される。
「仮面ライダーのことはよく知らないが、そいつなら十分貴様の使用に耐えるはずだ。異常事態だからな、フルスペックを盗んでくるのはそう難しいことじゃない」
渡されたのは仮面ライダーサウザー、フルスペックならばサウザンドジャッカーが相当スペックが上がってる。ありがたい。
ただ、それはそれ。遠距離手段が乏しいから、リタにも頼む。
「リタ」
「はい、どうかしましたか?」
「銃を一丁借りたい。コップキラーはあるか?」
「随分変な呼び方をされるのですね。ファイブセブンならこちらに」
クイック&デッドみたいな軽いノリで渡される。
基本的に純正品そのままかつ薬室に銃弾は入っていない。少し構えてみたが親指の付け根に酷い圧迫感も感じない、反動を受け続けても痛くなり続けることもないはずだ。
「ありがとう、これなら戦えるよ。マガジンもいくつかくれ」
「貴方は結構撃ち尽くしそうなので、ロングマガジンを六つ。合計180発もあれば有効打にはなるでしょう」
「ああ、それだけあればサウザーの射程までは詰めることが出来そうだ」
ホルダーも受け取って腰に装備。
「あとこれも」
「なんだ」
飛んできてキャッチしたのを受け取ったのは、大きめのコート。
「それを羽織ればある程度実体化して変身できる様になるはずです。今の貴方は肉体から精神を追い出され、少し霊的な存在になっています。実体化してアクションを起こすには、それが必要です」
「でもさっき俺銃は受け取れたしワインだって飲んだじゃないか」
「ここがそれだけ特異な場所であると、ご理解下さい」
確かに外から見える店なのに誰も入ってこない時点で相当おかしい気がする。
「他には何か?フォアグリップ付きも、少し時間をいただければすぐご用意しますが」
「いや、いらない。あっても使えない。それよりも、何か移動用のはないか?バイクとかはエレクワールドでも普通に使えるようになってるし、俺らは免許がいらないようになってる」
「で、あれば入り口に置いてあるものを使ってください。誰のものかは分かりませんが、ロックはかかっていませんでしたよ」
「助かる」
入り口に手をかけると、そのまま開く。オートだったの忘れてた。
あ、そうだ。
「スネーク、リキッド!俺一人でヘマやらかしたら本当に恥ずかしいから何かあったら無線でサポートくれ」
「思春期の男が大人二人に頼って恥ずかしいとは思わんのか」
「その思春期が信じれると思ったんだ、頼らせてくれよ」
「いいだろう。武器装備については俺が、兵器や軍事についてはリキッドがサポートする。周波数や通信システムはこっちで設定するから、普通に繋いでくれていい。便利な世界だな」
「ああ。じゃ、行ってくる!」
雨が止んでいる道に出て、そのまま濡れたシートを構わずコートを挟むようにして乗り込み発進する。
近くで煙も見えないとなると、割と遠いらしい。
空冷の乾いたエンジンが、街を揺らした。