Never Says「Good by…」   作:らんかん

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Solid Cloudy

 バイクはネイキッド、つまりカウルのないバイクだ。しかし蒸すだけで結構パワーが出るから、おそらくこれは大型だろう。

 

 クラッチが重い。

 

《よし、通信はできてるな》

《スネーク》

 

 彼からしてみればナノマシンの通信、こっちからしてみればただの通信が始まった。

 

《バイクの調子は?》

《問題はない、このまま旅に出れそうだ》

《それならいい》

 

 道案内のモニターはここから3km先を指していた。だが何も見えない。

 

《そういえば、お前が持ち出したのはファイブセブンだったな。あの名前で呼んだのはカッコつけか?》

《知っていた名前はそれで正式名称なんざ覚えていなかったからそうなった。確かにコンビニでタバコの銘柄で頼む恥ずかしさに近いかもな……》

《日本では番号で頼むんだったな。この世界でもそうなのか?》

《余程の狂人以外店員やらないから基本何で頼んでもOKだ》

 

 待て、タバコ談義をしようとしたんじゃない。

 

《で、どうしてその銃の話を?》

《選んだ理由を知りたいからだ》

《低反動で貫通力が高い。相手が相手だから、警戒してな》

 

 エスパーニャに拳銃が効くとはあんまり思えないのだが、それでも他に装甲が薄い艦娘か、そうでなくても銃弾が効く相手なら確実にダメージを与えれる銃を選んだ。

 

《ボディアーマーを貫通するような銃を、公的機関に依頼されて作り上げたとも聞いている。だから、ちゃんとした戦いには向いていると判断した。尤も、当たんなきゃ意味ないがな》

《じゃあ、到着するまでに蘊蓄でも聞いていくか》

《そりゃいい、もしかしたら命を拾うかもしれない》

 

 バイクに乗っていてもまだ遠く、ただ戦闘しているところに近いのか乗り捨てられた車が邪魔。なので聞く時間は十分にありそうだ。

 

《FNファイブセブンはボディアーマーを貫通できるPDW、P90のサイドアームとして製造された経緯を持つ。PDWの正式名称はPersonal Defense Weapon(個人防衛火器)で、その名の通り取り回しがよく単独で使用でき貫通力の高い銃弾を利用する、短機関銃と突撃銃の中間に位置する銃器のことだ。そのサイドアームで、使う銃弾は同じ5.7x28mm弾だ》

《あれか?ピースメーカー(SAA)とウィンチェスター1873の銃弾規格が同じだから便利だった、みたいなことか》

《以外と銃器について知っているじゃないか》

《知識だけはな》

 

 どれだけ銃について知っていても宝具魔法ライダー超科学なんでもありの世界では才能もないのに銃を使うことがどれだけ無駄か。自分は緊急時以外では、生身で使ったことはない。仮面ライダーは補助や火力のサポートが手厚いから使えたけども。

 

《PDWは1900年代後半から軍の運用理論の変化に伴う兵士の役職固定化が進み、その上で広報部隊が攻撃を受けた時の対処法がないとして後方部隊の人間でも扱える小型火力を、と言うコンセプトで作られた概念だ。だから基本的には”戦闘機会が少ない兵士用”に開発されたものと言える。小型であれば扱いやすくなるから使える人間は増え、貫通力が高く、その上で装填数も多いもの。当時にしては非常に革新的かつ無茶な要求ではあったが、ゲリラを始めとした非対称戦争への対処としては真面目に必要なものだった》

 

 そもそも非対称戦争は両者間に大きな差があるからこその戦いだ。ゲリラ、テロのような正規軍同士ではない戦争。

 

 ロケットランチャーの普及によって正規軍の兵器を破壊でき、その結果によって弱者側が活気づき破壊活動を繰り返す____だったかな。俺がこの世界でシステムから入れ知恵された時はそんな感じだった気がする。

 

《後方部隊の活動圏内で扱える対物貫通力がある小型火器、と言うものだから後方部隊だけでなくテロの対処などを行う特殊部隊にもPDWは重宝された。最初こそゲリラが想定とは違う襲撃の仕方をした為にPDWを装備したパトロール隊が開けた場所での戦闘で命を落とすこともあったが、それでも例の911以降、屋内における戦闘での必要性が高まったことによって使用弾薬など多少の変化があったが、種類としては普及した》

《その先駆けの伴星が、ファイブセブンってことだな》

《ああ》

 

 蛇行するようにすり抜けてバイクを進めると、黒煙が大きく見えてくる。少しばかり梅の花びらが頬をかすめ、水色の冷たい光が奥で輝いた。

 

《もうすぐで着きそうだ》

《なら、少しだけ役に立つ話をしておこう。注意事項、と言うやつだ》

 

 スネークは、真面目な顔をして俺に指導。

 

《お前が渡されたファイブセブンはどうやら少し進んだ時代のものらしい、リタに確認したところシングルアクションのモデルだそうだ。初期の方はダブルアクションでトリガープルが重いからな、いい判断だ。だから、初心者のアレイでも引き金を引くのに力を込めすぎて狙いが大きく狂う可能性は少ないはずだ》

《リボルバーのシングルアクションとピストルのシングルアクションの違いがよく分かってないんだよな。拳銃ってどれもちゃんとリロードしてマガジン入れたらスライドして撃ってるイメージがある。どっかで使った時も撃ち切ってからそうしてたから、余計分かんない》

《運用法の勉強はしているあたり、戦いに必要な知識だけ入れてるが使い手としては経験が浅い。だが、しっかり出来ることと知っていることを認識してその範囲で全力を尽くし、余裕があれば広げる努力をしているのはいいことだ。虚栄心や油断は必ずそいつを死に突き落とす》

 

 褒められている分には素直に感謝を返す。

 

《実はお前のその扱い方はセミオートピストルの作動方式に関わらずしっかり作動する》

《えっマジ?》

《セミオートピストルのシングルアクション・ダブルアクションはリボルバーと同じく射撃した後にハンマーが自動で起き上がるかそうではないかの二択だ。リボルバーであればSAはしっかり射撃する毎に指でハンマーを起こす必要があるが、セミオートピストルの場合は射撃時にスライドが反動でバックすることで排莢・装填と同時にハンマーも起こすから全弾打ち切った後のリロードで薬室に送り込む為にスライドを後退させれば勝手に使用可能になる》

 

 銃器を扱う訓練とか、射撃場にはあまりお世話になったことはない。しかしそれでもちゃんと動くようにと確実にリロード後はしっかりボルトかスライドは引くタチだ。

 

《なるほど。つまりいつも通りちゃんと薬室に送り込んでおけば問題はないわけだが……なんだったかな、そう言うのが中東方面の国のテクニックにあって真似したやつが弾詰まりを起こしたとかあったな》

《若い頃のリボルバー・オセロットが自動拳銃(オートマチック)で起こしたミスだな。引き切る力が不十分か、自動拳銃をカッコつけて振り回したせいで二重装填(ダブルフィード)か何か、弾詰まり(ジャム)を起こして恥をかいたらしい。お前、使う時はどうやって扱ってる?》

《基本的には抵抗力を感じるところまで引き切って戻す、プレスチェックなどはやってない。そんなことやってる暇ないし、扱いに慣れてないから作動不良を起こす可能性もある》

《つくづく真面目な使い方しかしていないな。お前のように若くて、しかも見てくれが重要視される世界でそこまで味気のない戦い方をするやつは珍しいとは思うが》

 

 正直なところ出来たらカッコつけれるのだろうな、とは思うもののそもそも拾ったものが銃ならそもそも当てにしないし、どうしても使わなければならず、その上で準備期間があるなら部品数が少なく頑丈なものをメンテナンスするか、戦場で使うことをあまり想定されてないものを使用する場合も同じく整備をした上でその場で一番詳しいやつと一緒に確認する。

 

《何かを殺す道具で一番重要なのは”殺したい奴を殺せること”だと、俺は思っているんだよ。それが果たせるか怪しいものを当てにするつもり気は最初っからない。それにOSGPは現実にあった銃器以外にもたくさんそう言うものはある、だからこそ実用性の為に作られたものは、その証明のために使うことが前提だ。色々なテクニックが生まれて久しいが、倒せればどれも同じ、倒せなければ意味はない》

 

 そういった知識でマウントを取る奴は万年単位からいるものだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()があるのだろうか。誰かを撃って、その誰かを見たことがあるのだろうか。俺はこんなバーチャルな世界で、撃ち殺してもそいつが生き返る世界に生きてるからあまり他人のことは言えないが、だが武器を使うと言うことは”命を奪う”こと。

 

 戦いに行くなら自分が扱いを熟知し、状態を理解できる方法と知識を携えているものだ。そして、戦いとは常に簡素であり長く戦うもの。どれだけ素晴らしい技術があっても、使える時間が長くなければ意味はない。

 

《安全確認のテクニックなんて、よほどの兵器じゃない限り戦場では必要はないんじゃないかって思う……その間に撃てる銃弾が、己の命を救うはず。それにそんなのが必要な銃は、何度も言うけど信じるべきじゃないはずだ。確認をせずとも、アナログで理解できる知識を持った人間が、できる限り頑丈かつ簡素で確実な動作をするものを抱えている。時代によってその持ち込む技術の結晶たる武器の基礎、射程や射撃精度や頑丈性は上がるが、結局戦いに於いて必要なのは確実性。それが確保されてるなら、余計な操作をせずに作動するのが一番いいんだ》

《……一つだけ、聞いていいか》

《なんだよ》

 

 スネークが、神妙な面持ちで問う。

 

《地獄を見たことはあるか?》

《地獄?》

《何かを奪われるのが当たり前の世界……はっきり言えば戦場のことだ。目の前に武器があり、目の前の人間を殺す。そんな世界のことだ》

 

 そんなもの、答えは一つ。

 

《ないさ》

 

 命を奪っても結局戻ってくる、戻ってこないのは”その時目の前にいたキャラクター”だけ。

 

 涼しい顔で答えるのが普通だろう。だって、()()()()()()()()()()()()()()かもしれないから。

 

《そうか》

 

 返答も、淡白な声色。

 

 そんな話をしているうちに黒煙が空を覆うようになり、遠くに青い光が見えるだけの場所に来た。

 

《……切るぜ》

《ああ。何かあったらSENDしてくれ》

 

 敵が見えた。

 

 金髪の女性だが、キャラクターというにはいやに普通の欧米人。全容は黒いマントでよく見えてない。

 

「随分と遅かったようね。来ると思っていたぞ、アレイシア・ガレットピア」

「……へぇ、俺の名前を知っているんだな」

 

 バイクから降りて、拳銃を手にかける。

 

 建物の光から反射する鈍い光が、相手の手元にあるからだ。

 

「あの二人はいずれ逃げ仰るだろう、彼女達が逃げれば私もお前を逃す」

「の、割には待ち構えてくれてたじゃないか」

「私があの女から頼まれたのはお前の説得だ」

「随分と大人しいじゃないか!」

 

 互いに銃を向ける。

 

 俺は警官殺し(ファイブセブン)を、女は愛国者(パトリオット)を。

 

「ザ・ボス!」

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