Never Says「Good by…」   作:らんかん

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Next Action?

 痛みに引きずられ眠気が飛ぶのはいつものことだと思っていた。

 

 俺だって3rdグランプリ以前は名無しの根無し草だったんだから、負けたときに激痛を伴ってロストから自宅で目覚めるなんてよくある話だったんだ。

 

 そもそも俺の契機だったその大会ですら何度も現地の人間と仲良くなっては崩壊のせいで無くし、自分は重傷を負いながらも生き残って目覚めて、独りで這い回る。

 

 という人生を送っていた俺にとっては______

 

「ようやく起きましたね」

「大丈夫?ずいぶんとあなた寝てたようだけど」

「やっと起きたか……心配したんだぞ」

「随分と遅いお目覚めだな」

 

 目を開けたら何人も覗き込んでる光景に軽く腕を出して振り払う。

 

「あ、ああ……うるさいぞ……」

 

 足を動かすと落ちる感覚がして、自分の胴体からフィードバックされた感覚と合わせれば『俺はソファに転がされてる』らしい。起きてからすぐに体を起こさないと本当に動けなくなってしまうから、惰性に抗うように足を動かして上体を起こす。

 

「かなりの時間お眠りになられましたね。今の時間は23時です」

「ああそりゃ随分寝たな……は?俺今日めちゃくちゃ頑張ってるのにそれはなくない……?」

「大怪我しないとぐっすり眠れないのは軍人と違うところですね」

「お前らと一緒にすんな!」

 

 文句をつけるタイミングで、眼の前のテーブルに色々出てくる。

 

 ロブスターのロースト、牛のステーキ、デカいパンにサラダ、ポテトグラタンにラム肉そして氷に浸されまくってるワインボトル。

 

「安物ですがいくつか用意させていただきました。もしよろしければ、全部頂いてください」

「悪いな」

「食事も体調の指標です、ただし好き嫌いは許しませんが」

「全部好物だ」

 

 周囲を汚さないことだけ気をつけて、勢いよく食べる。

 

「うまいな」

「お前は野菜から食べるタイプか」

「最初に腹に溜まるものから食わない主義ってだけ。ほら」

 

 ラム肉をスネークに押し付ける。

 

「さっきのリタの話を聞いてたか?」

「ちゃんと話をしないといけないことがいくつかあるからな、そのうちに冷めきったら失礼だろ」

「話?」

「ザ・ボスの話だ」

 

 スネークどころか隣にいたリキッドまで、表情が固まった。

 

「……居たのか?」

「居たどころか交戦したっての。しっかりCQCを叩き込まれて危うく変身解除されそうになったんだよ」

「その割には伝説の英雄の形跡がなかったな」

「俺に協力した黒マントが持ってったんだよ、眼鏡のな」

 

 ステーキをしっかりナイフで切って口に運び、パンを僅差で放り込む。

 

 柔らかい、レアだな。

 

「で、そいつが俺にブレイドのやつくれたんだ。ミューテーションカードの原型デッキも含めてな。しかしそいつはザ・ボスのカードを欲しがってたからお礼にどうぞってした」

「……なるほど、ザ・ソローか」

「リキッド」

「ん?兄弟、まさか知らないとは言わないだろうな。あれだけの影響力を持ったコブラ部隊のことを」

 

 腕組を解除して座り込み話し続けるリキッド。

 

「ザ・ボスは伝説のコブラ部隊を率いて第二次大戦中活躍した。そのメンバーであり、かのリボルバー・オセロットの母親が彼女なのは知っているな?」

「まあ、話だけは」

「そのメンバーの名前を言えるか?」

「やべえペインとエンドしか知らねえ、断末魔が面白いものとか小ネタがあるものしか覚えてないな」

 

 呆れた顔した男が二人。

 

「悪かったな!」

「……話を続けるぞ。親父、つまりビックボスが戦ったコブラ部隊はザ・ペイン、ザ・フィアー、ジ・エンド、ザ・フューリー、そしてザ・ボスで構成されていた」

「おい待てソローどこいった」

「ザ・ソローはその二年前の時点で死んでいる。第二次大戦中は霊媒能力を駆使し、死んだ兵士から声を聞いてその情報を駆使して活躍したらしい」

「レベル1の千手扉間か?」

「トビラマというやつは知らないが……ザ・ボスと親しく、そして霊能力を持っているとすれば恐らくその男だ。オセロットの父親がソローという話もある」

 

 その話の真偽はともかくとして、まあ妻をカード扱いされるのも変な戦いに巻き込まれるのも御免被りたいよな。黒マント幽霊の気持ちが少し分かる気がする。

 

 結局話しに耳を傾けすぎてろくに食ってないスネークに発破をかけるようにラム肉にも手を出して、その柔らかさとソースの甘さに舌がフリー・ジャズ奏でさせながらも話を続けた。

 

「お前はソローにカードを貰ったと言ったな。仲良く分かれたのも含め、なにか引っかかるところは?」

「はむ、ん……気になるところがある」

 

 天才二人はなにかの様子を見るのか居なくなり、今残っているメンバーに話をする。

 

 ザ・ボスは俺のことを評価していたが、それ以上にエレクワールドの主に対して辛辣な発言が目立ったこと。特に”俺はなにのキャラクターの要素も引き継いでいないからこそカリスマになったときに世界のすべてが壊れるかもしれない”みたいな発言をしたのが気になった。

 

「待て、どういうことだ?」

「不快な話かもしれないが、この世界にはすごい昔からキャラクターと結婚できる制度がある。人間同士では満足できないかつ理想的ではない場合、キャラクターと結婚してそいつとの子どもを残せるっていうシステムさ。そしたら物語を破綻しないように強力な個性を持っているキャラクターから強引に精神への補正を掛けれるから鬱病を始めとした精神疾患に掛からなくなる。それを何度も繰り返せればこの世から精神病は消えるって寸法さ」

 

 という話をしたうえで、そのような政策が正式に取られていたにも関わらず俺はどのキャラの血を引いていないという話をザ・ボスがしていたことを伝える。

 

「それが逆に危険になるって言うんだ、不思議なもんだよな」

 

 ワインを開けてグラスになみなみ注いで飲み干す。その後に脂を欲しがって、また肉を食べる。

 

 誰もその意図を理解できている人間はいないようで安心した。

 

 そこからしばらく黙って飯を食い進めていたが、ある程度無音が続いたタイミングでリタが声を出す。

 

「そろそろ、次の行動を決めたほうが宜しいかと。ザ・ソローの件やエレクワールドの主のは今すぐに答えを出せる物ではありませんし、その件を明かそうとしても結局ぺガール・エスパーニャという制御できない危機がある以上我々の急務でもありませんから」

「とは言ってもリタ、どうするんだ。アレイが手に入れたミューテーションカードは今ヘルタとルアンが解析して弄ってる最中だ。それを待ちながら攻撃を凌ぎ続けるのには限度がある。それにアレイ自体も何度も戦わせて死なせた場合どうしようもなくなるぞ」

「いや、エスパーニャの居場所特定と撃破に関しては出来ることはある。二つだ」

 

 綺麗に食べ切った後にワインをボトルごと一気飲みして立ち上がる。

 

「何かあるのか?」

「悪い掛けが一つ、悪く無い掛けが一つ。後者からローラーしていくしか無いからな、今すぐにでもやれることがある」

 

 ようやく、長い長いエスパーニャの多発テロを一回退けて出来ること。

 

「小夜啼鳥へ行く。ちょっとしたバーだ、ここよりちょっと和風入ってる酒場」

「この状況を打開できるような術が無ければ話しにならんぞ」

「俺のことを知っている奴がいる。いや、寧ろ今の姿でないとな」

 

 カミツナギの事を話す。

 

 俺が最初にこの姿のまま生活していた時にお世話になった女性で、少なくとも強い上に俺に好意的で状況の共有や協力の要請がしやすい。

 

「あいつの店はちゃんとパブリックエリアで座標を持ってるから、すぐに行ける。なんでもない頃からの常連だったんだ、調べなくても覚えてるぜ。少しだけ食った後の休憩を挟んでから行くか?」

「カミツナギさんのことよく分かりませんが、ともかく彼女は信用するに値すると思えるだけの何かがあるのですね。しかし、アレイ。何をしに?」

「これは俺視点だがしなければならないアクションは四つだ」

 

 武蔵から情報を聞き出すこと、エスパーニャを止めること、俺の情報を取り戻すこと、そしてエレクワールドの主に事実を聞き出すこと。

 

 武蔵への聴取はどのくらい時間が掛かるか分からないから待つしかないが、その間に戦い続けるのは無駄だ。エスパーニャを止めれるのは現行の戦力で出来るかどうかまだ不明、だから正直戦闘自体を今は避けたい。

 

 俺の情報を取り戻すことは戦力増強の意味では非常に大きい。カードをいくつか取り戻せることと、仲間がもう一回たくさん増えた状態でぶつかれる。

 

「この中で今できることは後者二つだ。カミツナギは他のメンバーと会っているから、おそらく俺のコマンドが全部奪われた状態でも頑張って証明してくれるだろう。うまく事が運べば俺の情報を取り戻せるしエスパーニャ戦への足がかりにもなる。で、エレクワールドの主へのアクセスにも繋がるはずだ」

 

 今、協力者として主とカミツナギの間に協定がある。彼女のところに行けば、自然とエレクワールドの主神とやらにもコンタクトが取れると説明。

 

「そこまで行けるかは賭けだが、あくまで賭けなのは”一回で”そこまで行けるかってところだ。少なくともコンタクトを取れるまでは確実。悪くない行動だと思うが、どうだ?」

「では、私がお供しましょう。お役に立てると思います」

「いや、俺はスネークに来てほしい。イロコィ・プリスキン先生にな」

 

 スネークの方を見ると、ため息をついているが言いたいことは理解したらしい。

 

「分かった。俺が行こう。いつ出発する」

「すぐだ。バーだしな、夜にお邪魔するのが一番面倒なくていいだろうし」

「では貴方を運ぶときに使った車を使ってください」

 

 車のキーをリタから投げ渡されて受け取り、そのままこの場所から出た。

 

 キーで扉を開けて乗り込むと、日付を超えてから14分は経っていた。車の光っている時刻がそう告げる。

 

「ささっと行くか」

「どのくらいで着く」

「ここが戦場だったことを加味して俺が細かい道をちゃんと覚えてれば30分」

「なら、カーナビに頼るか」

 

 カーナビに目的地を入れると出る。

 

 今の時代人間1人いれば誘導など容易いのでこういうアナログじみたのは非常時のシステムでしかなかったが、こうもあると便利で嬉しい。

 

 そろそろ行こう。

 

 車をエンジンで揺らすだけでは意味がないので、アクセルを踏んで走り出した。

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