「変身!」
《TURN UP》
戦闘の中を潜り抜けるのに剣を取れないのは痛手なのは明白で、ブレイドに変身してから徒手格闘とブレイラウザーを振り回して応戦。
エレクワールドの主は変身も何もしないで殴る蹴るだけで大体の敵を蹴散らしているもんだから俺のカッコよさは霞むばかりだ。
「おいおい、これじゃ俺のハイライトがないぞ」
「要らないでしょ」
「確かに?」
平和を守れればそれで良いのでカッコつけが空回りしてしまった。
それもまた守りたい平和の一部なのだから、こうして敵を斬り続けている。
「居た!」
進み続けているうちに、爆発が起こっていた中心地に到着。
「やっぱり、腐っても律者ですか。選ばれし者は違う、とでも言っておきましょうか?」
「何とでも言え……!」
デザイアドライバーと一緒に転がってきたのは、髪が紫と紺色が混じっているいつもの俺。
身体の動きが全体的に鈍くなっているのは出血もあるだろうが、それにしても何処かが錆びてるような動きを見せる。
「おい!大丈夫か!」
急いで近寄って抱えようとすると、こっちを見てきた。
遅いぞ、と可愛いフェイスで文句を垂れる。
「なんだ、貴様か。くそ、身体が動かん……!」
「結構無理させちまった。俺の代わりに世界を守ってくれるなんざ随分人想いな律者じゃないか」
「私は凡百の律者と違う。終焉のかけらをサルベージして作られた人の為の律者だ、人を守らないでどうする」
「そう思ってくれるのはありがたいな。俺から生まれたからかな?」
ビンタが飛んできた。
「痛っ!?」
「自惚れるな馬鹿者、元々は第三律者の人格だったのだぞ」
「へっ、厳しいな」
ともかく肩を持って後ろに下がる。
それと同時に、エレクワールドの主とエスパーニャが対面。
「漸く親玉が出てきてくれたのですね。嬉しいこと」
「余は庭を荒らされて大層不機嫌だ、草刈りでもして整えなければ心まで荒む」
「私を雑草扱いとは、随分と舐められたものですね」
「雑草も雑兵も変わらぬ」
どんな顔してるか分からない主だが、声は少々怒りを持っていた。
「ペガール・エスパーニャ、いや戦艦大和。貴様が望んでいるものを知ることも聞くこともないだろう。貴様にとっては“存じない無機物が生んだ歴史の抹消”が全てだ、その為にホーキンスポイントへ向かうのだろう?」
「ええ、よくご存知で」
「ならば分かり切った事だ。ブルートワルツと組んでいるのも頷ける」
ブルートワルツと組んでいた?
初耳だぞって叫びたいところだが、頷ける話か。
「あの女は宇宙と世界を想像して広げ続け、自分だけのものにしようとしている。熱的死を超えた瞬間、その偉業によって人類への復讐を企てた。ゴースト一匹がここまでするとは思いもしなかったがな」
「あの子は凄い、私が慕っていた提督もどきの化け物には程遠いくらい」
「アレも人ではなかろうに」
「そもそも私も純粋な人ではない、だから人間そのものに価値はない」
うふふ、と笑うエスパーニャの顔が妙に怖い。
自分自身を抱えたまま走る哀れなアレイシアの兄貴と自分を呼称しておいて、周りの敵も援軍が到着したのか誰もこっちへ寄ってこないから一騎打ちをしようというのか。
「最近はアレイシアのお陰でライダーのブームが来てるからな。秘蔵のカードを出すとしよう」
エレクワールドの主が白いカードを出し、それを手で砕く。
すると腰には見た事ないベルトと、見たことない色のプログライズキー。
《ゼイン》
ボタンを押すとそう鳴って展開したキーの内側には、これまた初めて見るライダーの姿。
後ろには星座や宇宙みたいなのが出てきた。
「なんですか、それ?」
「OSGP初めての、隠してきた一個の扉を開ける時だ。ゼッツや、その先のライダーが発掘されても一生固く閉じるべきだった扉の先を見せてやろう」
「変身」
《ゼインライズ》
後ろの宇宙が統合されてビッグバンを起こすように光り、その後光によって主の身体が隠される。
《ジャスティス》
《ジャッジメント》
《ゼイン》
《ゼイン》
白いマントを翻し、白いアーマーに金色のラインを走らせ、快晴の空のような瞳を宿すライダー。
《Salvation of Humankind》
「余にのみ与えられた力が一つ。その名を……」
顔は若干俯き気味で、光に背いているからこそ鋭角に当たった光が影を強調して威圧する。
「仮面ライダーゼイン」
そんなライダーがいるなんて知らなかった。
いや、歴史上居たとしても彼女が意図的に封印していたのだろう。
「余のカードを一枚、これで等価だ」
「ふむ、悪くはありません。貴女のようにしっかりと同じ土台に立つ方は大好きです、故」
この前よりも大きくなっている太刀を引き抜いて構えるエスパーニャ。
「私も出来る限りでお相手しましょう」
「そうか」
両者激突。
主が刀の腹を手甲で抑えて弾き、蹴りを入れようとすれば受ける方はそれを蹴り飛ばして位置を変えつつ構えを直す。
円を描くように間合いを図り、また激突する時にはエスパーニャの刃が主の腕ごと持っていこうとするが_____
《執行》
《ジャスティスオーダー》
何かを出したかと思えばウルトラセブンのアイスラッガーで、それで刃を受け止めて交わした後にそこまで距離が離れてない相手に投げる事で動体にダメージを与えた。
それでもやはり艦娘か、エスパーニャの腹は切り裂かれたというほどのダメージには至ってない。
「怪獣の首さえも容易に斬り落とす秘技でこれとは、随分ウルトラマンと言う種族は誇張された生き物なのだな」
「いいえ、私が避けるのが上手いだけですよ。それとも貴女の戦い方が下手、と言って差し上げましょうか?」
「不愉快な事を言う」
あいつらは放置してても問題なさそうだ、と思うもののとりあえずカードを出すとしよう。
「スネーク!」
「ようやく出番か」
ずっと持っていたソリッド・スネークのカードを取り出すとそのまま出てきた。
「周りの警戒を頼む、少しばかり今抱えてる奴と話をしたい」
「分かった。もう一枚あっただろう、それは?」
「後で使う」
「分かった」
周囲は静まり返っているがいつ飛んでくるか分からない。
しかしスネークが居れば、リタ達もこっちに気づくはずだ。
状況が状況なので、急いで抱えてる律者君に話をしよう。
「えっと、俺自身だよな。そのなんだ、俺そっちに戻りたいんだ」
「歯切れの悪い頼み方だな」
「俺自身と話してるとちょっとどう接すればいいか分かんなくってさ。いやそれよりも、カードを他のやつ使えるようにしないといけないし、その身体も必要だ」
「自分自身に気色悪い事を言うな、何故必要なのだ」
仕方ないじゃないか。
「カードとかは純粋に俺自身にあんまり強いカードがないってのがある。でもお前の、いや、その姿の”俺“は必要なんだ。変えも効かない」
エレクワールドの主と話した事を、目の前の自分に言う。
その姿の俺は崩壊3rdのグランプリから始まってしまったある人間性の発現に起因する主の恐れでもあり、その恐れを生み出すほどの自由と尊重がある存在に対する畏敬の念でもある。
「人間性、か」
「お前は俺だ、多分自分の性格に大した誇りも執着もないと思う。だけど、主が仕組んだその姿はそれだけの意味があるし、俺はあの主に『人間性という新たなキャラクターデザインを与えてシンギュラリティのない新たな自由を与える』って約束した。それには二人の関わりの証……可愛い俺が必要だ」
手を握ってみる。
「俺はもう迷わないとか、後悔に足を引っ張られないなんてははっきり言えないし、誰かにそれを強要するつもりもない。だけど……そうだな。俺はリタと話ができた、彼女との会話が出来たからこそ芽衣とある程度の落とし所がついたんだ」
「ふっ……よかったな」
今はまだ殺さないでやるって程度だが、でもまあそれで十分だ。そしてここまで出来たならこれから先もやっていける、そう思ってる。
「だから俺は帰ってきた時みたいにフラフラしない。ようやく元の俺に戻れて、それがずっと記憶にあるなら大丈夫」
「療養は、もう少し取らないでいいのか?」
「言われてみたら欲しくなってきたな」
「ふん、張りのない奴だ」
それでも、俺を信じてくれるなら無問題。
「危ない!」
主の声がするとその方向から同タイミングで青い光が飛んできた。
手を握っていた律者と一緒に転んで回避すると、艦娘形態になっているエスパーニャ。
「リベンジだ、手伝えよ」
「ああ」
握っていた手は、いつの間にか刀になっている。
バックルをひっくり返してカードを引き抜き変身解除して、その刀を構えた。
「芽衣、サポートを頼む。剣の扱い方は正直苦手だ、刀なら尚更な」
《分かった、出来る限りサポートはしてあげる。でもあまり無理しないで、あなた弱いからあまりにも》
「これでも終焉の律者に土付けたんだぞ頑張って」
《誰のおかげかわかってる?》
「芽衣様と英寿様のお二方のご助力です……」
わかればよろしい、ときた。
冗談言い合えるようになったのはいい事だが、隣にゼインが飛んでくる。
「色々カード使いたいがどうしても好きを与えてくれないようだ。二人で畳み掛けるぞ」
「しゃあなしか、頑張ろう」
見様見真似の抜刀術から一気に崩す、と宣言するように腰を低くして構える。
「おや、随分と舐められてますね?」
「どうだかな。初心者には優しくしてくれ」
「ふむ」
エスパーニャにそんな言葉は通じない、か。
だが俺には仲間がいる。
行けるはず、だ。