互いに抜き身の刃を晒せば、止める者なし。
言葉よりも先に鍔迫り合う刀同士の火花から奥、互いの表情を見ている。
「あの時よりも全然強い! これが“人間性の力”か!」
「違うな、これは雷電芽衣の力だ」
全てにおいて理由をつけなければ生きれなくなった彼女に言うには酷い言葉だと理解しているが、それでも俺は叫ぶ。
俺自身に力はないが、話しかけて見ようとする勇気はあるし、戦うための技術もある。
それらを支えたのが人の繋がりで、繋がりが俺に背中を押してくれるから力も技も勇気も手に入る、俺の実力と括られたものはそういう要素で出来ていた。
エスパーニャが忌々しいと吐き捨てて、自分の筋力で無理やり強く薙ぎ払うと起きた風圧も相待って少し後ろへ押されてしまう。
「うぐっ!?」
「任せろ」
《ジャスティスオーダー》
後ろへと下がったタイミングで敢えて耐えずに姿勢を低くして距離を取ると、後ろからエレクワールドの主がライダーキック!
流石に振り払いと僅差で遅れるタイミングなせいで、アイスラッガーさえもちゃんと当たってはなかったエスパーニャはキックを喰らって吹っ飛んだ。
「ナイス!」
「案外こうやって共に戦うのも悪くない」
互いの動きを理解した上で追い詰めているのは、二回戦目としては相当上手く行ってる。
芽衣の力をちゃんと使えてる気はしないが、それでもエスパーニャの動きに合わせるには十分だ。
「
エスパーニャが帰刃し、艦娘形態へと突入。
主砲から虚閃をばら撒く彼女のせいでただでさえ更地になりかけてる周囲がもっと綺麗になってしまっている。
《構えて》
「なんだって?」
芽衣からのアドバイス。
《蚊の構えで、そのまま待って。あれを全部斬り返す》
「斬撃モードか」
ジャックの雷電がよくやっている斬撃モードか。
言われた通りの構えを電脳世界ならではの超検索でさっさと見つけて構え、そして虚閃の雨に身を置く。
《今》
指示されたタイミングで虚閃に向かって四方八方に刀を振ると状況は一変。
そもそもがエネルギーのかち合う状態で真っ当に切れると言うよりかは偏向させて返すという方法になり、虚閃を飲み込んだ起源の崩壊エネルギーは持っていた反律者能力にもなりうるほどの電磁波を放ち、霊力に対しても同様の効果を発揮するようになっている。
刀を振るスピード、正確さ、力加減、どれも適切なのは当然律者の……いや、キャラカードに記された彼女の実力でしかないが、俺は恐れないから力を引き出せてるのだろう。
「なっ!?」
「あんときはまさしく絶不調、俺は誰にも背中を預けなかったからこそお前の勝機に呑まれたが……今は違う。俺は強いんだ、何故なら勝利者だからな!」
どのグランプリでも結局ブルートワルツと死闘を繰り広げた身としては、エスパーニャに怯むことはなかった。自分自身が封じられてたときは逃げ腰な一般論と巻き込まれたなという気の重さが最悪な噛み合い方をしたからこそ負けた。
今は負ける気がしない。
自分のモヤモヤをきちんと話すこともできたし、取り戻した自分はやはり話し合いを選んで、それを本気でした事が今につながっているならば自分は間違ってはないのだから。
副砲を生み出して虚弾をばら撒きながら少し下がるエスパーニャ。
《もう一度構えて》
「いや、ここは避ける!」
流石に王虚の虚閃を警戒するためにあえて指示を無視して、適当な強斬撃を飛ばしながら下がる。
そのタイミングで構えていたエスパーニャの王虚の虚閃が発射。戦艦の破面というよく分からないがとんでもない存在の一撃は重く、そして広くのしかかってきた。
だが俺が放った斬撃は耐えうる者、逆にこちらの状況を分からなくしつつ他の攻撃を通さない壁として分断し、光の翼のビームシールドみたいになり強固な防壁として立ち塞がる。
「頼んだぜ!」
轟音鳴り響き俺の声もまとも聞こえない状態で既に主は居なくなり、その代わりに声を出して数テンポ後に攻撃が収まる。
《ジャスティスオーダー》
「
「舐めるな、私は誇り高き戦艦だッ!」
だが、反撃に出たこそが彼女の敗因となるのだ。
一枚目、使ったのはΞガンダム。
ファンネルミサイルとミノフスキークラフトの動作をなぞりながら砲撃を交わし続けるゼインと比べ、ミサイルが虚閃の勢いに負けて逸れるのを良いことに地面の状況を悪化させ続ける。
二枚目、使用したのはエド。
と言っても汎用的な錬金術師のやり口なのだが、海面と違い足元がぐらつけば自然と戻るものでもない地面は間違いなくエスパーニャに逆転の目を与えないままに円柱を創造して発砲から確保。
「私の斬魄刀が!」
「帰刃がどれだけのものかは知らぬが、まあ良い。治ったところで持ち主が死ねば同じこと」
ひしゃげた主砲と副砲、観測機を出すための装置も破壊されたエスパーニャに最後の一手が襲いかかる。
「これでトドメだ」
《ハイパークリティカルスパーキング!》
ハイパー無敵ゲーマーのエフェクトに、斬撃エフェクトが載ってライダーキック。
必殺技は複数回攻撃が行われるが……HIT! の文字が出た瞬間に斬撃が何十回も発生して……次元斬と併用したのか!
流石にこればかりはいかなる存在だろうと概念的なレベルでないと耐えられない。悲鳴が聞こえる前にすでにバラバラになり、伸ばした手に向かって裁断が進み、消えていく。
「お前の痛みを理解する者はいるだろうが、それ以上に人を踏み躙ったお前は“兵器”でしかない。それを理解できぬまま死に、黄泉路で三途の川に涙を落とすが良い」
エスパーニャの声は聞こえない、そもそもこの世界に存在しなくなったのだから。
「これで一件落着か?」
スッキリしすぎた場所を見渡すと酷いものだ、瓦礫が転がってるのにその瓦礫すらも粉々になって周辺に雨よけになりそうな大きさのものすらない。
刀をカードに戻すと、ちゃんとミューテーションカードとして残っている。
「長い付き合いになりそうだ」
「……そろそろ変身解除するか」
「やめといた方がいいんじゃないか、ちゃんと周りが安全か確認取れるまでは」
なんとなく、だが。
説明できない不安感があった。
「今のなんだが、正直倒せてる気はしなかったんだよな」
「何故だ?」
「妙にあっけないっつーか、俺が芽衣と和解して倒した! っていうこれまでの運びが物語チックすぎる」
そもそも思い出してみると、そういえば今回は“あるプライベートワールドから攻撃してくる奴がいる”というのに遡る。
滅却師の男がいて、エスパーニャが出てきて、でエスパーニャが戦艦大和が……って話が移ろうものだが大元はそういう奴らの拠点を探して叩くって話だったはずだ。
「なんつーか、踊らされてる気がするんだ」
「だが、こいつを放置していい話でもなかっただろう。余達はちゃんと仕事した」
「それは間違いないが」
「まだ何か引っ掛かるのか」
そういえばまだちゃんと戸籍を返してもらってなかったな。持っていたカードをこんこん、と指で叩く。
《なんだお前》
「そろそろ戸籍返してもらっていいか、今のところ力だけで困るんだが」
《処理には少し時間が掛かるぞ》
じゃ、一個だけ質問をしておくか。
「なあ、主」
「なんだ」
振り向くゼインに、俺は聞く。
「今までの攻撃が“全て何かから目を逸らすためだった”と仮定した上で聞きたいんだが……その場合は何処を狙ってると思う?」
「ロビーワールドにある制御区画だがその場合は私に情報が入ってくるはずだ、ログイン履歴やアクセスの通知が。それとも余が気付かないだけでもう入られたか? いや、それをしたところであくまでエレクワールドの管理権が移るだけだ」
ホーキンスポイントとやらに関係するものへと踏み入ることはできないし、宇宙云々を制御する力そのものがない以上はエレクワールドをどうこうしたところで意味はない。
「あいつは大和の事を憎んでいた。何か、思い当たる事はないか?」
「流神 大和のことか」
拳を顎に当て、考える主。
「……ならば一つだけある、余の権限が無ければ入れぬ場所だがな」
「それ俺行けないが」
「レイジとお前には許可を出す、が他は待機だ」
「おいおいアイアンとかは」
人数が多い方がいいだろ、と言おうとした瞬間にカードを入れたポケットが震える。
「なんだ」
震えてるカードを取り出すと、俺の情報が返ってきたのかユーザーメニューが。
急いで電話の方に出ると、サウンドオンリーで大和から来ていた。
「おっ久しぶり」
《ごめんアレイシア! 色々あったんだけど……えっ誰》
「俺だよ俺、アレイシア・ガレットピア」
《アレイシアにしては妙に俗っぽいし可愛くないし雑魚みたいな》
「雑魚以外は余計だ」
ただ懇切丁寧に説明する時間もなさそうなので適当に要点をかいつまんで説明。
「わかりやすく言うとお前が通信してきた人間はアレイシアで俺は律者二個持ちの強いお兄さんで今隣にエレクワールドの主がいる」
《手伝ってくれるんだね?》
「そう言う事だ」
《じゃ》
俺らの前には青白い渦のようなゲートが出てきた。
《そこから先に進んでやってきてくれると助かるよ。何しろこれはわざわざ個人を指定するような話だからね》
「おいおい」
《アイアンにアシェイラあとベロニカ、リヴさんもまあ悪くはないがこの件に関しては君とレイジと主がいないと困る》
「どう言う事だ」
話すのは後にするからなるはやでー、と説明を求めようとした瞬間に通話が切れた。
「と、言う事らしい」
「行こう。余も異存はない」
二人で顔を見合わせて、横暴な19歳の女にため息を吐きながらも渦の中に飛び込む。おそらく異を唱えないと言うことはいずれ行くべき場所か、連れて行こうと考えてた場所なのだろう。
話が動き始めた気がした。