単発・アイデアシリーズ   作:UBW・HF

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時を渡る真の道化師

 

アイデアが思いついたので、最初の部分だけ書いてみる感じのシリーズです。

単発の読み切りなんかも書いていこうと思います。

……こうやって後先考えず風呂敷広げていくから、後から苦しくなるんですけどね。

分かっていても止められない、それが真のUBW・HF。

 

というわけで、始まりますが続きはありません。

若干タイトル詐欺かもしれないです。

嘘ではないですよ?

嘘ではないですけど、詐欺かもしれないです。

ま、そんな感じの話です。

これを読んでみて面白そうだったら、誰か続き書いてください。

 


 

時系列は本編21巻の後くらい。

救出作戦が終わって、やっと一段落して次の行動に移る間くらいのイメージです。

では、どうぞ。

 

 

それはロキ・ファミリア救出作戦が終わったあとのこと。

負傷した団員の治療や亡くなった人々の埋葬が終わったあと。

やっと一息つくことが出来るようになった時のこと。

 

負傷した団員たちも、アミッドから許可が降りて全員が退院した。

精神的な疲労や経過観察は兎も角、スキルのお陰で目立つ傷が残らなかったベルは早々に病院を後にしていた。

一足先に穏やかな日々を取り戻したベルはファミリアの仲間たちと笑い合いながら元の生活を送っていたが、今日は休養日。

午前中から全員が買い物に行く程度。

ベルもヴェルフと一緒に少し買い出しに行ったくらいで、今は彼と一緒に茶菓子や紅茶を楽しみながら何気ない話をしている。

 

そんな中、いきなり部屋の扉が勢いよく開かれる。

突然響く大きな音に驚いたベルとヴェルフはギョッとして扉を見ると、そこにいたのはヘスティア、リリルカ、リューの三人。

 

「か、神様…?」

 

殺気の如き剣呑な雰囲気と鋭い視線を携えた三人。

そして、そんな彼女たちが睨んでいるのはベル。

まるで心当たりがないベルは戸惑いながらヘスティアを呼ぶが、返ってきた返事はタックルだった。

 

「どっせ~~い!!」

 

「ヘブシッ!?」

 

勢いそのままに転がっていき、押し倒されるベル。

ちなみに、紅茶や茶菓子はヘスティア達が訪れた時点で机に置いているので無事だった。

 

「ちょ、神様!?いきなり何ですか!?どういうつもりですか!?」

 

「こっちの台詞だぁ~!!ボクというものがありながら、君こそどういうつもりなんだ、ベル君っ!!」

 

「だから何が!?」

 

そして、そのまま胸ぐらを掴まれ揺らされながら理由の分からない詰問を受けるベル。

ヘスティアだけではない。

彼女に続くように、リューとリリルカもハイライトのない瞳でベルを問い詰める。

 

「とぼけないでください、ネタは上がってるんですよ!?」

 

「話すなら早くすることだ。私の理性が残っているうちに」

 

「ホントになんなんですか!?」

 

詰問され続けるが、本当に心当たりがないベルは戸惑うばかり。

そんな彼を流石に不憫の思ったのか、ヴェルフが助け舟を出す。

 

「落ち着いてくださいよ、ヘスティア様。お前らもだ」

 

「止めないでくれ、ヴェルフ君!!ボクたちは今日という今日はこの天然ジゴロ朴念仁に分からせないといけないんだ!!」

 

「そうです!ヴェルフ様は引っ込んでてください!」

 

「あなたは下がっていなさい、ヴェルフ」

 

「だから、ホントに何があったんだよ?せめてそれくらいは説明しろよ」

 

怒り心頭で話が通じない三人に呆れながらも、最低限の事情くらいは知ろうと尋ねるヴェルフ。

その言葉に三人は我慢できなくなったのか、爆発させるように叫びだす。

 

「ベル君が、ヴァレン何某くんとデートしてたんだよ!!」

 

「は、はあ!?」

 

「おいおい、マジかよ!?ついにか!?やるじゃねえか、ベル!!」

 

「テンション上げないでください!!リリたちは怒ってるんですよ!?」

 

事の次第を聞いても戸惑うベルと、ベルの気持ちを知っているからこそ嬉しそうにするヴェルフ。

ニヤニヤとしながらも、思わず野次馬根性が芽生えてしまう。

 

「この色男め!!どこでデートしたんだよ?」

 

「嬉しそうにしないでください!!腕を組んで都市中を歩いてたらしいですよ!?」

 

「そうかそうか。よかったなぁ、本当に。この前の救出作戦の甲斐があったか?」

 

「そんな言葉で表すな!!ベル君の四肢がもがれていく様を見たボクの気持ちも少しは考えろ!!」

 

「いつの間に約束したんだ?せめて俺には言ってくれても良かったのによぉ」

 

「ちょ、待って待って待って!!本当に待ってください!!」

 

怒号を飛ばすヘスティアやリリを無視しながら、ベルに尋ねるヴェルフ。

だが、やはりベルは戸惑うばかり。

なぜなら、心当たりがないから。

 

「本当に、何の話ですか?」

 

「往生際が悪いですよ、ベル。バレた以上、もう全てを話してください」

 

「話すも何も、本当に分からないんですよ。僕、退院してからはアイズさんはおろかロキ・ファミリアの人たちとは誰とも会ってませんよ?」

 

「そんな見え見えの嘘を――――ついて、ない?」

 

神々に嘘は通じない。

それは誰にも揺るがせない下界の摂理だ。

そして、ヘスティアの目にはベルが嘘をついているとは写らなかった。

では、一体どういうことなのか。

 

「え?じゃあ、どういうこと?都市中で目撃証言が上がってるんだよ?」

 

「買い出しに行った先々で言われましたからね。だが当然、その人々も嘘はついていなかった」

 

「言われたってことは、お前らが直接見たわけじゃないんだな?そいつらはいつ頃見たんだ?」

 

「えっと、話の内容を整理して考えて、一番古い情報は……今から三時間ほど前ですね」

 

話の内容を精査しながら、リリは告げる。

そして、その言葉でベルの無実は確定した。

 

「じゃあ、やっぱりベルじゃねえぞ。三時間前なら、丁度俺達が買い出しに出た頃だ」

 

「一応聞くけど、それって本当?」

 

「本当ですよ。まず最初に青の薬舗に行ったんで、確認したら正確な時間も分かると思いますよ」

 

ここまでハッキリ言われて第三者からの証言まで提示された以上、神々でなくとも嘘でないことは分かる。

だが、同時に分からなくなる。

ベルでないなら、街の人々が見たアイズと腕を組んで歩いていたというその男は一体誰なのか。

 

「ベル君じゃないなら…、誰?」

 

「ちなみにですけど、御兄弟は?」

 

「いないよ。僕の家族はお祖父ちゃんだけだったし」

 

兄弟ではない。

他の親類の可能性もない。

ならば本当に、それは誰なのか。

 

「………なんだか、嫌な予感がするね」

 

「奇遇ですね、私もです」

 

「予感云々は兎も角として、一旦剣姫たちを探さねえか?もし騙されてデートしてるなら大問題だろ」

 

「もしかして、リリみたいな変身魔法を?」

 

「そこまでは分からねえよ。でも――――」

 

「その男の素性が気になりますね」

 

知ってか知らずかは分からない。

だが、どの道ベルと瓜二つだというその男はこの都市において不審人物以外の何者でもない。

彼女が騙されている可能性もあるし、瓜二つならベルと無関係でもない。

ベルの容姿で悪評を振りまかれたら溜まったものじゃない。

 

「手分けして探しましょう。リリ達は館から北側を探すから、ベル様とヴェルフ様は反対方向をお願いします」

 

「分かった!」

「おう!」

 

「ロキへの連絡はどうする?」

 

「確証が取れるまで一旦保留で。もし剣姫様の意思で内密な交流を持っている可能性が残っている以上、ファミリア間での不和になりかねません」

 

「了解!」

 

リリの指示の元、各々が立ち上がり動き出す。

 

「情報交換と報告も兼ねて、見つかっても見つからなくっても1時間後には本拠に集合だ!いいかい、行くよ!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

そしてヘスティアの号令のもと、全員が館から飛び出ていった。

 


 

時を同じくしてロキ・ファミリアで。

多くの仲間を失った悲しみとも、折り合いがつけれるようになって来た頃合いで。

その異変は起きた。

 

「大変だよ!!現在進行系でアイズさんが【獅兎の光(レグルス・アルネ)】とデートしてるって!!」

 

「………は?」

 

幹部たちも含め、多くの団員たちが団欒室でゆっくりとしていた昼下がりのこと。

駆け込んできたエルフィによって、穏やかな時間は終わりを告げる。

その言葉にいの一番に反応したのはレフィーヤ。

持っていたグラスを握りつぶしながら、額に青筋を浮かべている。

 

「都市中で噂になってるよ!?目撃情報も多数!!救出作戦の時から何かあるとは思ってたけど、こんなに早いとは!?」

 

「落ち着け、エルフィ。それは確かか?噂に踊らされてるだけではないのか?」

 

「違いますよ!行きつけの店の人達も、実際に見たって言ってるんですから!それも一件や二件じゃないんですよ!?」

 

「分かった。分かったから落ち着け。朝から姿が見えないとは思っていたが、そういうことか…。」

 

さすが大樹の心を抱く偉大なるハイエルフ。

突然のことにも動じず、冷静にエルフィに尋ねる。

娘同然に思っている少女がデートをしていると聞いて、思うことがないわけではないが相手がベルだと聞けば幾分か安心できる。

この前の救出作戦もそうだし、彼の善良さは皆が知っているところ。

何の心配もない。

しかし、他はそうではない。

 

「アルゴノゥトくんがアイズとデート!?それどこで!?」

 

「最後の目撃情報はバベル近くです!」

 

「ティオネ、行こ!!」

 

「行かないわよ!そっとしといてやりなさい!」

 

「嫌やあぁぁぁ!!ウチのアイズたんがあぁぁぁぁぁ!!」

 

「ロキうっさい!!」

 

テンションがブチ上がり見に行こうとするティオナ。

騒ぎ出すロキに、二人をたしなめるティオネ。

部屋中が各々の反応を示し、混沌とする中でその妖精はついに爆発する。

 

「あんの、発情兎があぁぁぁぁぁ――――!!!」

 

誰よりも大きな声で叫びだすレフィーヤ。

その怒り具合に、全員が静まり返る。

 

「見直したと思った直後にこれですか!?油断も隙もない!!」

 

「待て、レフィーヤ!何処に行く!?」

 

「魔法一発ぶち込んできます!!ついでに私の銀の腕(アガートラム)が火を拭きますよ!?」

 

「やめろ!!問題になる!!あと銀の腕(アガートラム)もやめろ!!いくらしたと思ってる!?」

 

穢れた精霊との戦闘で左腕を失ったレフィーヤは銀の腕(アガートラム)を装着することに。

魔法剣士とはいえ、後衛寄りのレフィーヤにとって特に不便が出るようなものではなかった。

だが、あれは高級品だ。

ディアンケヒトの意地悪も幾分かあったとはいえ、当時中堅規模だったミアハ・ファミリアの経営が大きく傾くレベルでの高級品だ。

いくら天下のロキ・ファミリアとはいえ、安い買い物ではない。

 

「我慢なりません!!行ってきます!!」

 

「あ、レフィーヤ待って!あたしも行く!」

 

「待て、お前たち!窓から出るな!はしたない!」

 

リヴェリアの制止も聞かず窓から飛び出ていく二人。

あまりの様子に頭を抱えるリヴェリア。

 

「ハハハッ、まあまあ。いいじゃないか。レフィーヤたちは兎も角、アイズとの関係がうまく行けば彼の勧誘もしやすくなる」

 

「アイズをお前の打算に付き合わせるな!まったく…、男女の関係とはそういうものではないだろう?」

 

「アイズたんがぁ……、アイズたんがぁぁぁぁぁ……」

 

「いつまで言うとるんじゃ、お前は…」

 

打算ありきで応援するフィンと、嘆き続けるロキ、そして呆れ返るガレス。

同じような立場であるはずなのに、なぜ自分だけこうも頭を抱える羽目になるのかと、リヴェリアは思った。

 

「相手がベル・クラネルだからあまり心配はしていないが、デートは少し早いだろうに…。」

 

「あの二人も年頃なんだから、別にいいんじゃないかな?」

 

「丁度適齢期真っ最中。儂らがとやかく言うことじゃなかろうて。あとは若い男女二人に任せればよい」

 

「精神年齢の話をしているんだ。ベル・クラネルは兎も角として――――」

 

と、そこまで言いかけたその時だった。

横から声が聞こえてきた。

 

「ベルがどうしたの?」

 

「だから、ベル・クラネルとデートをしているという話だ」

 

「デートって、なに?」

 

「男女の逢引、関わり合い、蜜月だ。恋人もしくは夫婦やそれに近い関係における交流の一種で――――」

 

「つまり?」

 

「つまり、あの少年とキャッキャウフフなことしとるっちゅうことや!!クソがぁぁぁ――!!」

 

「きゃ、キャッキャウフフ……?そ、そんな……。わ、私のベルが………」

 

「フッ、私のって……。ベル・クラネルは君のものじゃないだろう、アイ……ズ?」

 

フィンは笑いながら声の主を窘めようとして、そこまで来てようやく気づいた。

自分たちが誰と会話をしているのかを。

 

「……アイズ?」

 

「? 何?」

 

「お前、何でここにいる?」

 

「? アミッドの診察が終わったから、帰ってきた」

 

穢れた精霊に取り込まれたアイズの体調には最新の注意が払われている。

定期検診もその一環だ。

そして、そういえば今日がその検診日だということを今思い出した。

 

「えっと、アイズ、君は今ベル・クラネルとデートしているはずじゃ……」

 

「私が、ベルとデート?………いいかも」

 

「うん、ありがとう。その反応だけで違うことが分かったよ」

 

頬を赤らめながら目を輝かせるアイズを見て、違うと判断したフィン。

ロキの目から見ても、嘘はついていない。

 

「どういうことや…?」

 

事態が飲み込めていないロキの小さな呟きがこぼれ落ちる。

ロキ・ファミリアの面々がヘスティア・ファミリアと同じ結論を出したのは、これから5分後のことだった。

 


 

都市中を走り回るベルとヴェルフ。

しかし、いくら探しても見つからない。

目撃情報は過去のものばかりで、段々と手がかりも薄くなっていく。

まるで人目を避けながら動いているようだった。

 

「やっぱ、これって妙だよな?」

 

「うん、妙だと思う。なんで最初から人目を避けて行動しなかったんだろう?」

 

人目が嫌なら最初からそのように動けば良い。

しかし、その人物たちは途中から動きを変えた。

まるで、迷いながら歩いているかのように。

 

「あれ!?ベル先輩!?」

 

「ベルくん!?」

 

「ニイナ?それに、エイナさんも!」

 

話しながらも走っている最中、知っている声が聞こえてきて足を止める。

すると、そこにはよく知るハーフエルフの姉妹がいた。

 

「お二人はどうしてここに…?」

 

「仕事が休みだからニイナと一緒にオラリオを散策してたんだけど、その最中にベル君がヴァレンシュタイン氏と腕を組んで歩いてるのを見て……」

 

「それでさっきまで姉妹仲良く落ち込んでたんですよ……、ハハッ」

 

「お、おう…。そりゃ、どんまい…」

 

乾いた笑みを浮かべる二人に何を言って良いものか迷うヴェルフだったが、ベルは何のことか分かっていない。

可哀想だが、それにばっかり構っているわけにもいかない。

 

「アンタら、そのベルたちを見たって言ったよな?いつどこで見た?」

 

「十五分くらい前に、ここで。それで驚いてるんですよ。なんでベル先輩がヴェルフさんと一緒に?」

 

「どっちに行ったか分かる?」

 

「この路地を真っ直ぐだよ。ねえ、なんで?」

 

ここは裏路地と言うほどではないが、大通りからそれた場所にある一番人が少ない道だ。

ここをその2人は真っすぐ進んだようだ。

それを聞いたベルとヴェルフは頷き合いながら、再び走り始める。

 

「すいません。説明は後でするので、今はその2人を追わせてください」

 

「うん…、まあ、仕方ないか…。後でちゃんと説明してよね?」

 

「はい、必ず!」

 

「私も一緒に行きます!ごめん、お姉ちゃん。散策はまた今度で」

 

「気をつけるんだよ」

 

「うん!」

 

神の恩恵がないエイナはベルたちと同じスピードで走れないが、ニイナは違う。

ベルとヴェルフの後を追って、走り出す。

すぐに見つかると思ったが、予想外にもこの路地は入り組んでいた。

道が二つ三つと複雑に別れていき、目的の人物たちがどの道を進んだのか分からない。

その中の十字路に差し掛かり、どう進めば良いのか迷っていたときだった。

 

「ベル・クラネル!」

 

「フィンさん!それに――――」

 

「剣姫も一緒だと…?」

 

正面の道から、フィンとアイズが走ってくるのが見えた。

それを見てベルたちは動揺し、フィンたちも同じように戸惑っている。

 

「久しぶり、ベル」

 

「お久しぶりです、アイズさん!アイズさん達はなんでここに……」

 

「おそらく、君達と同じだろうさ。その様子だと、件の二人組はどちらとも偽物ということになるね」

 

「あぁ、分かんなくなってきた。どういうことだよ……?」

 

「一切合切不明だよ。分かってるのは、ベル・クラネルとアイズにそっくりな二人が、都市中を歩き回ってるってことだけだ」

 

どちらかが騙されているわけではなく、どちらも偽物だった。

だが、ますます分からない。

そんなことをする目的も、犯人たちの正体も。

 

「というか、問題はレフィーヤとティオナなんだよね…。本当に君達がデートしてるって思ってるし。知り合いだと思って近づいて痛手を負う、なんてことが起こりかねない」

 

「それって逆も不味くねえか?ベルや剣姫に向けるのと同じ感覚で魔法放たれたら、相手によっちゃひとたまりもないぜ?」

 

「………確かに!」

 

「確かにじゃねえよ!?」

 

ここ最近格上とばかり戦ってきたせいか、不審人物に不用意に近づく二人の心配しかしていなかったが、逆も心配だ。

相手がどんな目的でやっているのかは分からないが、何も分からない現状で殺しはまずい。

 

「よし、効率的にスピード重視で行こう!レベルの低い君達二人はまだ調べていない右の道を!ベル・クラネルは僕達と一緒に左だ!」

 

「分かりました!」

 

「分かったよ!」

 

レベル差によって、身体能力とそれに依存する速度に大きな差が出てくる。

だからこそ、同じスピード感で走れるグループに分けて、捜索を再開したのだ。

 

捜索を再開して間もなく。

遠くから甲高い女性の声が響いてきた。

 


 

ティオナはレフィーヤと一緒にデートをしているというベルとアイズを探していた。

そして、運良く見つけられた。

見つけられたのは本当に幸運だったとしか言いようがない。

なにせ、証言を頼りに適当に走っていたら見つかったのだから。

まあ、それでもそれなりの時間がかかったのは言うまでもないだろう。

 

その二人はゆっくりとした歩調で入り組んだ路地を歩いている。

一件仲睦まじいカップルだが、その様子にティオナは少し違和感を覚えた。

二人が仲睦まじいのは間違いないだろう。

あれだけ密着しているのだから。

でも、それだけじゃないように思えた。

どちらかと言えば女性側がリードしているし、歩くのが本当にゆっくりだ。

自分たちが知るアイズやベルにしては、少し違和感があった。

あれではまるで、介護のようだ。

 

「ねえ、レフィーヤ、なんかおかしく――――あれ?レフィーヤ?」

 

隣りにいた少女に話しかけようとして、そこに彼女がいないことに気がついた。

考えてみれば当然だろう。

最近の出来事で幾分か矯正されたとは言え、直情的な彼女のことだ。

これを見て、どういう行動に出るかは想像に難くない。

 

「見つけましたよ!!」

 

二人の背後から勢いよく叫ぶレフィーヤ。

突然の声に驚きながらも、二人は振り返る。

 

「……フィーナ?」

 

「いえ、フィーナでは――――」

 

「私の前でもイチャイチャと!!当てつけですか!?自慢ですか!?」

 

「は?え?なに?」

 

「ちょ、いきなりなんですか!?」

 

「離れててください、アイズさん!!問答無用です!!」

 

前までのレフィーヤなら、ここで魔法を放っているところだった。

やり過ぎもやり過ぎ。

本当にそうならなくてよかった。

彼女も成長したのだ。

しかし、それでもその青年に対して体当たりを仕掛ける程度の攻撃性は残っていたようだ。

相手がベルならそれで全く問題はない。

なにせ、相手は前衛のレベル5,しかもステイタスオバケのベルなのだから。

 

だが、今回は違う。

彼はベルではない。

ベルと比べるまでもなく脆弱な身体しか持っていない。

そんな相手に、後衛とはいえレベル4の冒険者が体当たりをかますとどうなるのか。

答えは当然、吹き飛ばされて重傷を負う、だ。

 

「アリア――――!!」

 

「っ、アル!?」

 

レフィーヤの身体が当たる直前、青年は付き添っていた少女の身体を突き飛ばす。

せめて彼女を巻き込まないように。

その結果、青年だけが吹き飛ばされてしまった。

 

青年の身体は路地の壁に激突し、倒れ伏す。

その様子を見ながら、レフィーヤは鼻息を荒くする。

 

「フンっ、こんなものではすみませんよ!さあ、早く立ってくだ――――」

 

「アル!!」

 

レフィーヤの声を遮るように、少女の叫び声が響く。

その声でようやく、レフィーヤも違和感に気づいた。

 

「アル、アル!!しっかりしてください、アル!!」

 

「………え?」

 

頭から血を流しながら倒れる青年。

青年の体を揺らしながら呼ぶ彼の名は、レフィーヤが思っているそれとは違った。

そして何より、起き上がらない。

いつもならすぐに起き上がってくるのに。

 

「ちょ、レフィーヤ!?なにやったの!?」

 

「いや、私は何も……。」

 

慌てて駆けつけてきたティオナの言葉に戸惑いながら、レフィーヤこぼす。

何かがおかしい。

いつもの彼ではない。

 

「何があった!?」

 

「団ちょ――――え?アイズさん?ベル・クラネル?」

 

少女の叫び声を聞いて駆けつけてきたフィンたち。

彼に続くベルとアイズの顔を見て、ようやくレフィーヤは事態を理解した。

恐る恐る自分が跳ね飛ばした青年を見つめる。

彼は起き上がらない。

代わりに、少女がレフィーヤを睨みつける。

 

その顔はアイズにソックリだった。

でも、その瞳は碧眼だった。

 

つまり、ただのよく似た別人だったのだ。

 


 

「本当に、申し訳ない」

 

場所はディアンケヒト・ファミリアの一室。

負傷した青年の治療をするために運び込まれた病院でのこと。

フィンを代表とするロキ・ファミリアの面々。

そしてベルとアイズのデート疑惑を聞きつけて探し回っていた春姫たちも合流し、ベル達ヘスティア・ファミリアが揃う中、フィンとリヴェリアは頭を下げる。

 

フィンやリヴェリアは、眼の前にいる少女に深々と頭を下げながら謝罪の言葉を告げる。

だが、それを見つめる少女の瞳はどうしようもなく冷たかった。

 

「要するに、人違いだったと?ただの人違いで、私の夫はあのような目に遭わされたと?」

 

「端的に言えばそうなるね…。」

 

「なるほど。確かに人違いなら仕方ない……、と言うとでも?」

 

「思ってない。もちろん、誠心誠意尽くさせてもらう」

 

フィンのその言葉に、少女は静かに怒りを燃やす。

 

「フザケてるんですか?そもそも人違いであったとしても、話すら聞かずに強襲するのが正しい行いだとでも?しかも、彼は目が見えないんですよ?」

 

「それに関しては何も言えないね。だから謝り倒すしかないわけだが……。」

 

今回ばかりは完全に加害者。

一部の隙もないその立場に、さすがのフィンも困り果てる。

恩恵もない一般人、それも盲目の。

どう養護しようが、彼らは加害者だ。

 

「謝ってすむ問題ではないと言っているんです!!フザケてるんですか!?アルが何をやったんですか!?彼が、誰よりも人の幸せを願う優しい彼が、なんでこんな理不尽に遭わなければいけないんですか!?」

 

彼に救われた少女は、彼を襲う理不尽を許さない。

あまつさえそれがただの人違いがキッカケだったなどと。

許せるわけもない。

 

「気持ちはわかるが、少し落ち着いて――――」

 

「落ち着けるわけないでしょう!?彼が意識を失うほどの重傷を負ってるんですよ!?」

 

「身勝手は分かっとるが、少し気持ちを落ち着けて……。」

 

「ガルムスは黙っててください!!」

 

「誰じゃそれは!?」

 

「おい、本当に落ち着けって!」

 

「クロッゾも黙ってて!!」

 

「家名で呼ぶな!?」

 

「いいから、二人は口を挟まないでください!!」

 

興奮しすぎて他人と勘違いしているのか。

他人の名でガレスを呼び、初対面で名乗ってすらいないヴェルフを家名で呼ぶ少女。

激昂する少女を宥められずにいる周囲だった。

だが、穏やかな声が響いてきたことで事態は変わる。

 

「アリア、少し落ち着いて」

 

「――――アル!!」

 

気づくと、車椅子をアミッドに押されながら、青年が部屋に入ってきていた。

頭に包帯を巻いた姿は痛々しいが、当の本人は平然としている。

青年に駆け寄った少女がそのことに悲痛そうに顔を歪めたのは、誰も気づかなかった。

 

「怪我は?大丈夫ですか?」

 

「多少の打ち身と、転んだ拍子に頭を少し切っただけさ。血が盛大に出て驚いたかもしれないけど、大した事ないから心配しないで」

 

「本当ですよね?」

 

「本当だよ。それに、彼女の魔法のお陰でもう治ってるし。いやぁ、すごいねえ。美しいだけでなく、魔法の腕も素晴らしいとは!まさに聖女と呼べるだろうさ!」

 

「………はぁ、どうも」

 

「また貴方はそうやって……。」

 

見えてないくせにそんな事を言う彼に、何と返せばいいのか迷うアミッド。

アミッドを困らせる彼に呆れながらも、少女は青年を心配し続ける。

 

「そんな美しい聖女様にお願いというか、質問なんだけど。これってやっぱり、治せない?」

 

「――瞳のことですね」

 

自身の目を指さしながら問う彼に、アミッドは再度状態を確かめながら答える。

 

「頭の傷を見る時に軽く診ましたが、私では無理そうです。古い傷ですよね?いつ頃ですか?」

 

「一年くらい前かな?」

 

「なるほど。でしたら、もう完全に自己治癒が終わってしまってます。今からできることは何も残ってないですね。お力になれず、申し訳ありません」

 

「いやいや、ダメ元で聞いただけさ。そんなに悲しそうな顔をしないでくれ。私まで悲しくなってしまう」

 

「……悲しそうな顔?」

 

「見えなくても分かるさ。貴女は他人の傷を自分のことのように痛み、悲しむことが出来る人だからね」

 

見えない瞳でアミッドを見つめながら、彼は続ける。

 

「どうか、自分の心の痛みにももう少し目を向けてあげてくれ。他人を思うばかりじゃ、苦しくなるだけだよ」

 

「………あなたがそれを言いますか?」

 

「おっと、愛すべき妻から手厳しい言葉を頂戴してしまったね!どうやら少しヤキモチを焼いてしまったようだ。残念ながら、聖女様を口説くのはこのあたりでおしまいだね」

 

軽口を叩きながら、彼は笑う。

 

「瞳のことは本当に気にしないで。身の丈に合わない理想を抱いてしまった、ただの報いなんだから」

 

彼は笑う。

どこか笑顔の奥に悲壮を覗かせるようにして。

 

「さてと、はじめましてだね。私はアルだよ。私に寄り添ってくれているのが――――」

 

「妻のアリアです」

 

「あぁ、やっぱり君もまだ自己紹介してなかったんだ…。」

 

怒り心頭で自己紹介すらしてなかった妻に少し困りながら、アルは穏やかに笑う。

 

「見ての通り盲な身でね。どのような人がいるのか見て取れないんだ。よければ、自己紹介してくれないかい?」

 


 

向かい合うように座り直したアル達は一通り自己紹介を聞き終えた。

事情と事の経緯もついでに教えて貰った。

相変わらずアリアと名乗った奥方の表情は硬いが、当の本人は朗らかに笑っている。

 

「ハハハッ、なるほどね、そういうわけだったんだ」

 

「重ね重ね、本当に申し訳ない」

 

フィンやリヴェリアに合わせ、レフィーヤも頭を下げる。

 

「そんなに謝らなくてもいいよ。アリアも認めるほど似ているんだ。仕方ないさ。そんなにソックリな人物がいるなんて、普通考えないよね」

 

「アル…!」

 

「アリアも、そんなに怒らないで。ただの不幸な事故だったんだから」

 

「事故じゃなく人災です!なんでそう簡単に許しちゃうんですか!?」

 

「いやぁ、そう言われても……。」

 

困ったように頭をかく青年に、少女はもう少し怒れと言う。

それでもまるで怒ろうとしない彼に、今度は説教が飛んでいく。

 

「この前だってそうです!貴方を殺そうと城内に忍び込んだ旧王派の暗殺者を逃がしちゃうんですから!命が幾つあっても足りませんよ!?」

 

「彼なら、その後改心して今はエルミナの部下として頑張ってるじゃないか。それに、狙われたのが私だったんだし。別に大丈夫だって」

 

「貴方だったら良い、とはなりません!むしろ、貴方だからダメなんですよ!」

 

「いやぁ、でもねぇ……。」

 

「その考えを治せって、この前フィーナと一緒に散々言いましたよね!?まだ足りないんですか!?」

 

「だから、それはね……」

 

物騒な会話と、そこから読み取れる二人の事情。

彼らは高貴な身分なのだろうか。

そんな事を考えている間にも、二人の応酬は続く。

一方的にアリアが怒鳴っているだけだが、これでは話し合いにならない。

 

「あの!」

 

しかし、ベルが間に入ったことでアリアの言葉は止まる。

 

「えっと、アルさんの考えもアリアさんの気持ちも分かります。だけど、少し落ち着きませんか?そんな言い合いになっても、お二人共疲れるだけですし、ね?」

 

「………むぅ」

 

「おお、少年!君は救世主だ!」

 

アルによく似たベルにはあまり強く言えないのか、難しい表情のまま言葉を止めるアリア。

一方で、アルは歓喜している。

 

「……たしかに、このままでは問題も片付かないことですし。仕方ありません」

 

「助かったよ、少年!」

 

「アル、話は後で」

 

「はっは~、ただの執行猶予だったか」

 

喜びもつかの間。

後回しになったお説教に苦笑いを浮かべるアル。

 

「それじゃあ話を戻すと、えっとレフィーヤだったかな?」

 

「! 本当に、すみませんでした!!」

 

「いやいや、怒ってるわけじゃないんだ」

 

アルに呼ばれたレフィーヤは一歩前に出て、深々と頭を下げる。

そんな彼女を気遣いながら、アルは諭すように続ける。

 

「今回のことは不幸な事故だった。私は本当にそう思ってる。だから、そんなに心を痛める必要はないよ」

 

「ですが……」

 

「でもね、次からはもう少し踏み止まるようにしなさい」

 

その穏やかな言葉は、不思議と聞くものを安心させる。

 

「行動を起こす前に、もう少しだけ相手の立場になって考えて、一瞬だけ落ち着いて考えて。それでも進むべきだと思った時だけ、進むんだ。そうすれば、今まで見えてこなかったものも見えるようになるし、過ちを犯す前に止まれるようになる。一瞬だけでいいんだ。それだけを、覚えておいて欲しい。分かったかな?」

 

「は、はい!」

 

「分かってくれたんなら良かったよ。アリアも、それでいいかい?」

 

「よくありません。ありませんが、あなたがそう言うのならこれ以上は何も言いません。言ったところで無駄ですし」

 

「ごめんて」

 

安心したように穏やかに笑う彼。

その表情は、どこか達観しているように年齢に見合わぬ老齢さが見て取れた。

 

「実を言うとね、君とよく似た可愛い妹がいてね。責めるのも気が重いんだよ!」

 

「そんな感じで許していいのかよ?」

 

「いいんだよ、クロッゾ――――ではないね、すまないヴェルフ」

 

「そっちのカミさんといい、なんで俺を家名で呼ぶんだか…。」

 

「ちょっと事情があってね。気を悪くしたなら謝るよ」

 

「いいさ、別に。気にすんな」

 

クロッゾという名を呼ぶ彼らからは、どこか親しみにような感情が伝わってきた。

他の連中のように魔剣鍛冶師として憎むのでも嫉妬するのでもなく、ただ純粋に友の名を呼ぶように。

それが、不思議だった。

 

「ま、そういうわけだよ、フィン。君達も気にしないでくれ。ここの治療費も君達が出してくれるわけだしね」

 

「これですますわけにもいかなくてね…。我儘かも知れないが、もう少しだけ僕達に何かさせてくれないかい?」

 

「う~ん、そうだね…。それじゃあ、暫くの間居候させもらってもいいかな?諸事情あって帰れなくてね。帰る手段が見つかるまでの間でいいんだ。多分、一ヶ月も掛からないだろうから。もちろん、その間は私達にできることは色々お手伝いするよ」

 

「その程度のことでいいのなら、よろこんで」

 

「おお、ありがたい!行く宛がなくて困ってたんだ!」

 

安心したような声を出すアル。

こうして全ての話し合いが一段落ついた、その時だった。

一番はた迷惑な神が来てしまった。

 


 

「グッモーニンっ!!みんな!!」

 

「ゲェッ、ヘルメス!?」

 

来てほしくないタイミングで来てほしくない神が来た。

お騒がせ兼はた迷惑な神筆頭。

今まで散々ベルを面倒事に巻き込んできた神、ヘルメス。

 

「何しに来たんだよ?」

 

「随分なご挨拶だな。ベル君がアイズちゃんと痴話喧嘩して担ぎ込まれたって聞いたから、おもしろ――ゲフンゲフン!心配して見に来たに決まってるだろう?」

 

「今面白そうって言おうとしたよな?ふざけるなよ、本当に。こっちは笑い事じゃないんだから」

 

「へえ?一体何が――――え?」

 

野次馬根性丸出しで来たヘルメス。

ニヤニヤとしたいやらしい笑みを浮かべていたのだが、それが突然固まった。

フィンたちと向かい合う、アルとアリアを見たその瞬間に。

 

「ヘルメス?」

 

「おいおいおいおいおいおいおいおい!マジかよっ!?マジなのか!?こんなことあり得るのかよ!?」

 

突如として、今まで以上にテンションが上がるヘルメス。

その様子に怪訝そうな顔をする周囲だが、彼がそれに構うことはない。

ただひたすらに自分の感情の赴くままに、アルとアリアに話しかける。

 

「もしかして君達、行く宛がない?」

 

「なんなんですか、あなたは?」

「まあ、ないけど」

 

「もしかして君達、迷い込んだ?」

 

「その表現が正しいかは知りませんが」

「少なくとも帰り道がわからないね」

 

「もしかして君達、オラリオを知らない?」

 

「………………。」

「……知っているとも言えるし、知らないとも言えるね」

 

「ああ、そうかそうか!そうだろうさ!君達にとっては、大穴と言ったほうがしっくり来るだろうか――――」

 

「どっせい!!」

 

「ヘブシッ!」

 

二人に不躾な質問ばかりするヘルメスに対し、ついにヘスティアの制裁がくだされた。

 

「いきなりなんなんだよ?アキネーターか君は!?」

 

「重要な質問だったんだって!!」

 

興奮も冷めぬまま、すぐに起き上がったヘルメスは再びアル達と、アルと向き合う。

一応アリアも視界の端に入っているが、ヘルメスが見つめる先は間違いなくアルだ。

 

「非礼を詫びるよ。ついつい興奮しすぎてしまった。許してくれ」

 

「まあ、それはいいけど……」

 

「心に燻る少年心が抑えきれななってしまった。野球ファンの前にメジャーリーガーが現れたみたいなもんだからさ」

 

「その例えはよく分からないが……」

 

「ああ、今でも興奮してくるよ。なにせ、君のような偉大な英雄が目の前にいるんだからね」

 

ヘルメスのその言葉に、アルは初めて笑みを消した。

 

「……冗談だろう?生憎だが、私は誰かに称えられるようなことをした覚えはないよ?」

 

「それこそ冗談だろう!?この人類史において、君ほど偉大で重要な英雄は存在しない!!」

 

ヘルメスは大袈裟なほどの仕草で、アルの言葉を否定する。

その様子に、アルは眉をひそめる。

 

「君がいなければ今のオラリオは疎か、数多の英雄たちは生まれなかった!狼帝ユーリスも、大戦士ガルムーザも、争姫エルシャナも!いいやそれだけじゃない!!フィアナも、フィンも、セルディアやアルバートすらも!すべて、君がいたからこそ生まれたんだ!!」

 

「……あなたは、何を言ってるんですか?」

 

「君が一番良く分かってるだろう?彼こそが、今を象る英雄の原点にして原典だと!」

 

ヘルメスはアリアにも問うように続ける。

 

「たしかに、彼がやったのは他の英雄からしてみればちっぽけな行いかもしれない。だが、そのちっぽけな喜劇が世界を変えた!彼が救った英雄や少女が、国が世界を変えたんだ!!そうだろう!?楽園の女王『アリアドネ』!!」

 

アリアは、アリアドネはその言葉に不愉快そうに目を細める。

だが、ヘルメスは意に関することなく続ける。

 

「俺は君に協力を惜しまないと約束しよう。ここでの生活も、元いた場所への帰還方法も、すべて手配しようじゃないか」

 

「生活は兎も角、帰還方法はありがたいね。で?なんでそこまでしてくれるんだい?」

 

「決まってるだろう?俺が君の応援者(ファン)だからさ!喜劇の道化にして、英雄の船の礎となった偉大なる始まりの英雄――――」

 

彼の名を、ヘルメスは告げる。

 

「『アルゴノゥト』ッ!!」

 

笑みを消したアルは、アルゴノゥトは、見えない瞳でヘルメスを見つめる。

その瞳が持つ意味と真意は一体何なのか。

それは彼にしか分からない。

だが、こうして新たな喜劇は始まった。

 

古代の英雄、喜劇の道化『アルゴノゥト』。

楽園の女王、英雄の道標『アリアドネ』。

 

この二人は何の因果か現代のオラリオに迷い込んでしまった。

彼がなす喜劇は、そして現代の英雄候補達と織りなす新たな物語は。

 

一体どのような結末を迎えるのか。

それはまだ、誰も知らない。

 


 

あとがき

 

はい、というわけであとがきです。

アルゴノゥトとアリアドネが現代にタイムスリップする話ですね。

 

誰か書いてください。

お願いします。

誰か書いてください。

 

前も似たような感じで書いて、結局続けることになりましたけど、こればっかりは本当に書きませんからね。

続きが読みたいなら、誰かに書かせるか自分で書いてください。

よろしくお願いします。

 

本当はオルナの手紙の要素か、時を渡る道化師の要素を入れた話にしたかったんですけど、手紙のほうはやらないほうがいいと思ったし、道化師の方は話がとっちらかって無理そうなんで、諦めました。

ま、そんな感じで、以上あとがきでした。

 

あと、多分次の一ヶ月は更新できないと思います。

ご容赦ください。

 

 

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