またしても何も知らない轟焦凍の従兄弟   作:細々した胡麻

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同学年の男の事お母さんって呼ぶなよ。

 

「んだよ!お前も此処で個性の訓練してたのか!いやぁ、焦って損した!サツに突き出されんのかと思ったぜ!」

「……この辺は本当に静かだからな。秘密の訓練にはうってつけだと思った……俺しか知らないとも思ってた。」

 

 アレから轟の話を詳しく聞いてみると……どうやらコイツもヒーロー志望だそうで、個性の訓練のためにここを最近使っていたらしい。

 

 それで、今日も鍛錬してきたら先客が居て……それが俺だったって事だそうな。それにしても驚いたのはもう一つの方だ。

 

「お前も()()()()()()を持ってるとはなぁ!」

「……嗚呼。」

 

 そう言って轟が右手を翳すと、そこから冷気が漏れ出てくる。中々鍛えられている個性のようだが……どうにも右側からしか出さないのが気になる。左からは出せないのか?

 

「氷って右側からした出せないのか?左からはなんかでねぇの?」

「…………………左は、炎を出せる。」

 

 随分と溜めたけどとんでもねぇこと言ったぞこの子。炎と氷!?もう字面が強いんだが…………単純に考えても相性補完が良い。捕縛と守りに使える氷と攻めの炎、個性だけ見れば攻守隙がない。

 

「氷と炎の両属性かよ……強ぇな。」

だが、()を使う気はねぇ。

「んえ何故に!?」

「……何でも、だ。」

「えぇ……そ、そうかい。」

 

 こんな事言っちゃあなんだけど、勿体ねぇような気がする。いくらでも応用が効く個性に思えるし、その気になればトップヒーローだって夢じゃ無いだろうに。

 

 ……ま、本人が使わないって選択肢を選んだならそれをとやかく言う権利は俺にはねぇんだけどさ。こいつの人生だし……けど、そう言うからにはコイツも氷の扱いは得意なのか?

 

「なぁ、お前の氷ってどの位出来るんだ?ちょっと見せてくれね?」

「……そうだな、お前の技ばっか見て俺の技を見せないってのは、なんか嫌だ。」

 

 そう言って轟は少し前に出ると、高架下で構える。何が起こるのか俺がワクワクしていると……次の瞬間、轟の右足から氷結が始まり、蝕むように地表を氷が覆い、ものの数秒で橋の下を丸ごと埋め尽くすほどの氷壁が生み出された。

 

 えっ?強くね?半分の力でこれ?いや、俺より遥かにスゲェじゃん……コレでよく俺のチンケな技見て凄いとか言えたなコイツ。

 

「……轟、お前が俺を羨む理由が思いつかないんだが……。」

「……まだもっとやれる。」

「余計に俺の事羨む要素なくね!?嫌味か貴様!?」

 

 コイツ……ふわふわ天然系に見せかけて結構意地の悪いことしてくれるじゃあねぇか。嫌いじゃない……!!

 

「嫌、味……いや、そんなつもり無くて……その……悪ィ。」

「だぁぁぁぁ!!ヤメロそのションボリした顔!罪悪感がヤバいんだよ!!」

 

 やり辛いぜこの人!!なんと言うか、純粋無垢で良いやつなんだなってのが伝わってくるから余計に!……んで、結局コイツは俺の何がそんなに羨ましいんだよ。

 

「……俺は、あんな風に氷を使って武器や鎧を作ったりなんかできねぇ……応用して技を使うなんて、とてもだ。」

 

 ……まぁそう言って褒めてもらえるのは嬉しいけどなぁ。

 

「つってもなー……逆に言えば俺もお前みたいに冷気を放出って真似は苦手なんだぜ?あんな氷壁作るなんて無理だし、今の方向で伸ばしても十分スゲェと思うけど。」

 

 俺軽いジャブであんな氷壁作る奴初めてみたわ……つかあれどうしよう。俺等がやったってバレるよな多分。幸い誰にも見つかってないけど……流石に騒ぎ起きるよな。明らかにここだけ外気温下がってるもん。氷だらけだもん。

 

 そう思っていたら、轟が氷壁に近づいて左手を触れさせて氷を溶かす……あれが左の炎の力の一端……なのだろうか?あっという間に氷を溶かしてしまう。どうやら、左の炎の個性も飾りではないようだ。

 

「……けど、コレじゃ駄目だ。大技すぎる……もっと小回りを利かせたいんだ。お前のあの爪や武器みたいに……」

「隣の芝生は青く見えるって奴だな……自分が持ってなかったりできないことが出来る奴は大抵羨ましいもんさ。俺の氷の形成なんて真似するよりも、お前の得意を伸ばしたほうが建設的だと思うけどなぁ。」

 

 そもそも俺の氷の形成は、俺の個性じゃ今の氷壁みたいな大技ができないから武具を氷で生み出すって手を取った訳で……今の氷壁が撃てるならそれだけで相手をノックアウト出来るだろうし……確かに威力はデカそうだが、いくらでも範囲を絞る方法はあるだろうしな。

 

「それは、そうかも知れねぇ……だが……」

 

 すると、轟は自身の左腕を恨めしいものでも観るかのようにぐっと握りしめる……今にも血が出そうな勢いだ。……いやあぶねぇな!?

 

「おい、そんな強く握ると血ィでるぞ。」

「俺はこの()の力だけでNO.1ヒーローにならなきゃいけねぇ……その為には、氷で出来る事は全部出来るようになりてぇんだ。」

 

 話聞けよ……でもまぁ、態々炎が扱えるって言っておいてそれを使わないと断言するって、結構リスキーな道を選んでるな。オマケに相当な訳ありか……別に追求もなんもする気はねぇけど。

 

 ……けどまぁ、そうだな。轟がすげぇ奴だってのは身にしみるほど分かったし、俺もせっかく出会えた同じ氷系の個性の持ち主だ。この縁を無駄にするのもどうかと思うし……何より一人だと訓練に限界(基、寂しい)が来た頃だしな。

 

「……事情は分かんねぇが、兎に角、その氷の個性を極めたいってのは分かったぜ。」

「……嗚呼。」

「じゃあよ、お前さえ良ければなんだが、これから一緒に訓練しねぇか?同じ氷系の個性だが、能力には差異があるからな。お互いに吸収できる事があるかもしんねぇしよ。」

「……俺も、丁度同じ事頼もうと思ってた。」

 

 おっ、こりゃ上手く話が纏まりそうだな……いやぁなんやかんやで誰かと訓練とかなんて初めて……待てよ、そもそもこうして家族や店員以外と外で話すのが初めて……

 

 ……改めて考えると俺ボッチ……いや、やめよう!この話はやめよう!!く、クラスメイトとは不自由なくやれてるから!ただちょっと外で一緒に遊ぶ人がいないだけだから!セーフ!セーフ!!

 

「トントン拍子で話が進むな。うれしいぜ……これから宜しく。」

「っ!あぁ…………何も、言わねぇのか?」

「何がぁ?」

「……()を使わねぇって話をすると、人からは勿体ないだの舐めてるだの言われるから。」

 

 あー、そう言う事か。……こんな話を持ちかけるってことは、コイツもコイツなりに心のどっかで迷ってるんだろうな。

 

 炎を使うべきな否かって所で……そりゃそうだ、どれだけ個性が強くても、その半分しか使わねぇってことは単純に考えたら能力が半減するって事だ。それが通用するほど世界が甘く無いって所も分かってるんだろうな。

 

 とは言ってても、俺から言えることなんて既に轟は考え尽くした跡だろうしな……おべっか使わず思いの丈をぶつけてみっか。

 

「そりゃあ俺だって勿体ねぇと思うぜ?氷と炎を操るなんてとんでもねぇ個性だ。能力の半分しか使わねぇってのもとんでもねぇハンデキャップだ、それでNO.1ってのは、大変な道だと思う。」

「……。」

「けどまぁ、それ以上に()()()()()だしな。」

「っ!?」

お前のやりたいようにして、なりたい様になれば良いんじゃねぇか?

「っ!!!」

 

 どした轟コイツ、急にハトが豆鉄砲食らったような顔して……すげぇ震えてんだけど、大丈夫かコイツ。

 

「……おい?おい、おい!轟!」

「はっ!……わ、悪ィ。ボーっとしてた……」

「低体温症か?氷使いがそんな事言うなよな?」

 

 なんか相当ショック受けたような様子だったけど……大丈夫か?俺またなんかやっちゃいました?みたいなの嫌だぞ俺。

 

「大丈夫かよ轟……」

「……氷室、お前、母さんみたいだな。」

「どうした頭打ったか。」

 

 なんか想像よりもやばい事態っぽいぞ!?俺の事を母さんだと思い込んでる一般轟焦凍になりかねねぇ!つかどういう事!?母性を感じたって話!?

 

「……改めてよく見てみると、お前って俺の母さんと似てるな。」

「ほんっっっっっとうに大丈夫かお前?具体的に何処がよ。」

 

 すると、轟は俺の事を頭から爪先までまるで機械がスキャンするようにじっくりと見つめて答える。

 

「……白髪な所とか。」

「まさかの髪色ぉっ!?……いや、よく見てみろよ俺の白髪じゃねぇの、よく見ると灰色がかってるの……分かるか?」

「よく見ねぇとわかんねぇ…………考えてみると、その歳で白髪って……お前も、苦労して……」

「灰髪だつってんだろ!?あと地毛だ地毛ェッ!」

 

 よく若白髪とかネタにされるけどな、この白髪……じゃねぇ!灰髪は地毛なんだよ!別にそんな苦労してねぇわ!!

 

 ……いや、苦労してねぇわって言い方もなんか嫌だけど、そんな白髪になるようなストレス掛かってねぇわ!!

 

「髪の話はいいよ!ほかには!?」

「目元とか似てる。」

「似てんのぉ……!?」

 

 人からはよく冷たい目つきとかナイフみたいな目とかは言われんだけど……えっ、マジに似てんの?見てみてぇわ。

 

「顔とか雰囲気も似てるような?」

「気のせいの極みじゃねぇのかそれ?」

 

 つかさっきから見た目の話ばかりかよ……いや、別に良いんだけどさ?……そんなに似てるって言われるとすげぇ気になってくるな、轟のお袋さん。

 

「あと、一番似てる所がある。」

「……なんだよ。」

「優しい所だ。」

「それほぼ初対面で言うかァッ!?………別に嬉しくねぇぞコノヤロー!」

 

 だぁれが優しいだ馬鹿野郎!んなおべっかつかれてもぜぇんぜん嬉しくねぇっつーの!!(本当はチョットうれしい)

 

「ぜぇ……はぁ……なんかどっと疲れた。」

「大丈夫か?」

「あー、うん、もうなんか、大丈夫。」

 

 コイツと離すとなんか良い意味でも悪い意味でも疲れる……気がついたらもう夕日出てるじゃねぇか!?スーパー……鶏肉の特売日今日だよな?タイムセール近いし……そろそろ行くか。

 

「……兎に角もう夕方だ。俺も飯作りてぇから、先帰るぞ。」

「夕飯、自分で作ってるのか?」

「親父も母さんも今家留守にしててな、だから自分の世話自分でしなくちゃなんだよ…………家賃光熱費諸々払ってくれるし、毎月仕送り多めに入れてくれてるから別に構わねぇんだけどな。」

 

 丁度中学入ってからかな。親父とお袋が長い仕事が出来た……つって家を開けたんだ。何の仕事かは教えてもらえなかったが……

 

「両親、二人ともか……家族は?」

「兄弟も居ねぇし、親戚はだぁれも知らねぇ。絶縁したとかって聞いたかな?」

「ってことは、ずっと一人でか?……キツイな。」

「偶に知り合いが様子見に来てくれっからそうでもねぇよ……っと、本格的にやべぇ。んじゃな!轟!また明日、詳しい話は学校でな!」

「っ!……あぁ……!!待ってる。」

 

 俺は一足先にその場を離れることにしたが、轟はのこって鍛錬を積むようだ。あいつもアイツでストイックだなー……家でやればよいのに、なんて思いながらも俺はその場をあとにして……もう一つのタイムセールと言う戦場に足を踏み出そうと駆け出すのだった。

 

 

―――――――――

 

 

「結局生き残れなかったよ……ただいまー。」

 

 俺はタイムセールで大敗を期して豚肉を定価で買った後、自宅へと帰宅……訓練終わったその足でタイムセールはやっぱりキツイ。あの人混み普通に死ねるもん。

 

 ……そして、自宅のアパートに入るなり感じる気配……うん、まぁ誰かは分かってんだけど。そっとリビングの方を覗けば、そこには堂々とソファに寝っ転がってテレビを見ている白髪褐色のバニーガール美人の姿が……

 

「よぉ日向!邪魔してるぜ―。」

「……()()()()()。せめて来るなら連絡位してくれって言ってるよな、俺。」

「忘れた!!」

 

 うん、この人は相変わらずだなこの人。

 

 兎山ルミ、プロヒーローの一人。ラビットヒーローミルコ。俺の師匠みたいな人だ……体術や戦う時の心構えとかは、この人に随分と教わった。

 

 えっ?なんでそんなプロヒーローに教えを請えてるのかって?…………今日の轟とほぼ同じ!!!以上!!!

 

 中一の頃かな?あの高架下で本格的な訓練を始めてたらいきなり横から体術について口を出されて、いきなり実戦訓練方式のシゴキを初対面でぶちこまれて…………いや、ほんとびっくりした。名前聞く前に「みてらんねぇ!」って蹴り入れられて模擬戦始まったんだもん。

 

 ……ってな訳で、そこからはなあなあで色々と教えてもらってる。ついでに自宅がこの人がヒーロー活動するときの休憩スペースにされてる。今日もそうなのかルミの姉御の格好はヒーロー、ミルコとしてのヒロコス姿だ。正直目のやり場に困る。

 

「姉御も太々しいっすよね……」

「んだよ、ナマイキぬかしやがって。駄賃代わりにできる限りの家事はしてやってんだろ?」

「……それは本当に有難う御座います。」

 

 この人なんやかんやで家事できるんだよな。曰く「事務所を持たない無頼のスタイルだから、自分一人で生きてけるくらいの生活力は身についてんだよ!」とのこと……正直、意外を通り越して嘘やんって思ったね。

 

 お陰で凄い助かってるし、場所提供と飯を出して、家事と体術見てもらえるのは嬉しい。

 

「んで、その後経過はどうだ?」

「体力や体術は姉御にしっかりと扱かれてるから大丈夫。個性の方も……少し遅いけど着実に速くなってる。なんとか受験日までには形になると思う。」

「受験……雄英高校ヒーロー科、ねぇ……相当ランクの高い学校だぞ?やれんのか?」

「やりますよ。」

「ナマイキ!!良いぞ!」

 

 ……雄英高校の入試までのあと一年ちょっと、それまでに勉強も実技も含めてやれるだけはやって置かねぇと。これからは轟ともやるから、より実りある訓練になりそうだ。

 

 ……あ、その話も姉御にしとくか。

 

「……姉御……あと、俺、一緒に訓練する友達できた。」

「おっ……はぁっ!?ボッチのお前がか!?」

「ボッチじゃねぇし。」

「友達0人を貫いてたお前がなぁ……」

「ボッチじゃねぇし。」

「腑抜けた真似はするんじゃねぇぞ?一人と二人だと勝手も変わるからな!!」

「ボッチじゃねぇし。」

 

 この後、三十分にわたり同じようなやり取りが続いた……俺はボッチじゃない。クラスメイトと外で話さず遊ばないでいるだけだ。クラス内だと普通に話せてる……から!!!

 




轟家では……

焦凍くん「……姉さん。俺友達出来た。」
冬美さん「えっ!?……ど、どんな子!?」
焦凍くん「母さんみたいな人だった。」
冬美さん「!?!?!?!?……ま、まさか女の子?」
焦凍くん「いや、同い年の男。」
冬美さん「???????」
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