そんなこんなで体力テストは続き、緑髪の子……座席表を見るに緑谷君かな?が指をけがした以外は比較的穏便に済んだ…………穏便に……
いや、一度爆豪がよくわかんないが緑谷にブチギレて襲いかかったのを先生が縛り上げたりしたけど……まぁその位。因みに先生の個性は抹消。見た人間の個性を消すらしい……アングラヒーローってんで知る人ぞ知る!みたいなヒーローなんだとさ。
まぁそういう訳で今は緊張のトータル発表の時間……先生が映し出す成績表によると、俺は三位……轟と爆豪に挟まれる感じだ。まぁ、爆豪がした俺の体力テストの成績に対する反応を見るに、五分五分……僅差で勝ったって所だろうか。
いやぁなんにせよ、除籍を免れるどころか好成績で嬉しいな。
「因みに除籍はウソな。」
へぇ嘘なんだ……んっ?
「「「嘘ォッ!?」」」
「君達の力を最大限測るための合理的虚偽……」
ゴーリテキキョギ!?嘘も方便とは言うけども!?こんなサラリと!?マジかよ……
「は……はは……こりゃ除籍免れても油断なんかできねぇな……」
「……かもな。」
「ショートはどう思った?」
「流石に嘘かとは思ったが、本気でやりそうって感じも……したな。」
「そっかぁ……」
まぁ、兎も角誰も除籍になるような羽目にならなくて良かった……特に最下位だった緑谷は肝が冷えるような思いだったろうな……あっそうだ。
「おぉい、緑谷ぁ……だっけ?」
「わっわっ!?え……えっと君は……」
「氷室だ。宜しく……んでその指……」
「あ……うん、まだ僕個性をうまく扱えなくて、使っちゃうとこんなふうになるんだ。」
「調整できねぇの?」
「なんとか調整しようと特訓中……かな。」
「ほぉん……あぁ。いけね。」
俺はとりあえずハンカチを出して空中の水分を凝固凍結……純水の氷を作って布に巻き氷嚢を作る。
「ほれ。保健室までこれでしのぎな。」
「っ!ありがとう……っ!冷たっ……」
「俺の個性で純水の氷だからな。」
「あっ!ちょ、ちょっと見てたよ!氷を出す個性なんだよね!?」
「あぁ、だが厳密には違う。」
「俺の個性は身体から直接氷を出すんじゃなくて、空気中の水分とかを操って集めて凍結させて氷を形成すんだわ。気を張って作れば不純物を避けて水分だけを凝固させる事もできる。逆もまた然りだ。」
「なるほど……かっちゃんみたいな体内で物質を生み出すんじゃなくて外から形成するタイプ……しかも空中の水分から氷を生み出せるってことは態々水とかを持ち歩かなくてもいいって事か!それに確かに氷ってのは不純物が混ざると温度や硬度が下がるからブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ」
この子怖い怖い怖い怖い怖い!?どうしたコイツいきなり独り言ブツブツ言いやがって……んっ?こうして心の中で色々語ってる俺もある意味同類……じゃなくて!!
「お、おい……そろそろ保健室行ったほうが……」
「あぁっ!そうだ…………えっと、あ、ありがとう!氷室君!」
そう言って足早に去る緑谷……この教室面白い奴しかいないね。っと……
「轟、待たせたな。行くか。」
「あぁ。」
さて、と……初日でこれだと先が思いやられるな…………変な事、起きなきゃ良いけど。
なんて事がありながら二日目。午前の授業自体は平凡な高等教育で、確かにレベルは高いがついていけないほどじゃない…………うん、まぁなんとかね。
まぁ、高校生の授業なんてこの学校ではあくまで一般常識を学ぶ程度……本番は午後から始まるヒーロー基礎学からだ。何をするかは見当もつかない、そのためにもまずは学食で昼メシを食べて英気を養わなければ……
「ショートぉ。そのそば何割?」
「十割そば。」
「売ってんの!?」
十割蕎麦って作るのかなり難しかったような……それが学食で食えるなんて良いね。因みに俺はあったかいうどん食ってる。麺類だとうどんがこの世で一番美味いと思ってるから。轟は冷たいそば……この辺の食の好みは何故かあんまり合わねぇんだよな。
「所で、ヒーロー基礎学。何やると思う?」
「……普通に考えれば、入学前に頼んだコスチュームの確認とかじゃないのか?そこから発展した基礎訓練、あるいは対人訓練。」
「あー、なるほど……そう言えばショートお前。コスチューム本当にアレで通したのか?」
「あぁ。」
雄英では、入学前に個性届や各自の希望に沿って戦闘服……コスチュームが製作される。んで、そのコスチューム案を提出前に俺は轟に見せてもらったのだが……
なんと左半身を顔面も含めて全部氷で覆って赤い目を光らせるという、もう何がなんだかわかんないコスチュームだった。そりゃ轟がオヤジさんの個性を受け継いだ左側が嫌いなのは知ってるが…………そこまでやるか?とも思う。まぁ、別にいいんだが……
「ま、まだクラス全員の個性は把握できてねぇし……それができる場を用意するとは思うが……楽しみにしとくか……」
「あぁ。楽しみだな。」
そう言えば、ヒーロー基礎学って誰が先生するんだ?担任の相澤センセイ?
「私が普通にドアから来たァッ!」
「るぇぇぇぇ!?なんでぇっ!?」
「えっあっ……氷室少年?驚きすぎじゃあ……」
なんで!?なんでオールマイトが雄英で教師やってんの!?ん……?んんっ!?なんで皆あんま驚いてないんだよ!?……えっ、これ俺がおかしいの!?俺がおかしいのかぁ!?
すると、後ろの席の緑谷がトントンと声をかけてくる。
「ひ、氷室……くん?」
「ちょっ、緑谷!?なんであんま驚いてないんだよ!?あのナンバーワンヒーローだぞっ!?」
「えっいやぁっ……合否発表の投影機でオールマイトが出て……そこで今年から雄英に教師やるって話してたから……氷室君、あの映像見てないのっ!?」
「あぁっ!?投影機…………」
……そう言えば、合否の発表自体は映像じゃなくて、ルミ姉から聞いたんだよな。投影機は蹴り飛ばされでぶっ壊れてなかの映像は確認できなかったし……書類は別途だったし……
なぁるほどね!俺は皆と違って直前映像が見れなかったから今の今まで知らなかったわけかぁ…………
「……あんのクソ姉御ォォォ……!!」
「氷室君……!?顔がアレだよ……!?」
「え、えぇ!思わぬサプライズもあったみたいだが……とにかく!私が君達のヒーロー基礎学を受け持つことになるわけだ!この授業では、ヒーローの素地を形成してく!単位数も最も多いぞ!」
ちょっとしたトラブルはありながら、オールマイトは気を取り直してヒーロー基礎学がなんなのか、そして初回は何をするのかについて説明を始める。
「と言うわけで今日から行くぞ!内容は……戦闘訓練だ!!」
「「「戦闘訓練!!」」」
戦闘訓練!甘美な響きね。爆豪えらい顔になってる…………不意に後ろを確認すると轟もえらい顔になってる。アイツあれで結構血の気多いからな。
だがまぁ、俺も結構ワクワクしてる……すると、壁からロッカーがせり出して、なかから番号の流れたアタッシュケースが顕になる。
「それに伴ってこれ!みんなの個性届や要望に仕立てたコスチューム!戦闘服!」
なるほど、あれが……!!
「さぁみんな!コスチュームに着替えたらグラウンドβに集合だ!!」
「「「はい!!」」」
そんなこんなで俺等は男子更衣室で着替えている……因みにおれのコスチュームは基本的にフードにモコモコの付いたモッズコートをベースに小物が入ってたり耐火防弾性能を高めたものだ。一部にはプロテクターも付いてる。……まぁ、私服に毛が生えたみたいなもんだが、こう言うのも悪くねぇ。
そして轟のコスチュームは……うん!コスチューム届出見たやつそのまんま!クライアントの要望を実現!!いい仕事するね!!……そんな事を考えていると、赤髪の上裸のコスチュームを来た気迫のいい男がかけよってくる。
「なぁ!あんた!氷室……だっけ?」
「んっあぁと……切島、さん?」
「呼び捨てで良いぜ!……んでさ、なんでさっきオールマイトが来たことにあんなに驚いてたんだ?」
「あー……」
すると、周りから「確かに」とか「合否発表の映像で出てたよな?」みたいな声が聞こえてくる。うん……みんな責めてるとかではないんだけど、なんかすげぇアウェーな空気感……まぁ、隠すことでもないから言うけど……
「あーっと…………俺実はあの投影機の映像直接確認してないんだ。」
「えぇっ!?」
すると当然周りからは驚かれる……そりゃそうだ。あの時期のみんなにとっては一番大事なものなんだから。と言うか俺にとってだって大事だったよ!!
「な、なんで!?合格確実って自信があったから!?」
「ちっ……舐めやがって。」
あぁ、いやそう言うのじゃねぇよ!?変なこと言うなよ爆豪に睨まれんの嫌なんだよ俺!!それにそうだったら俺自信家にも程があるだろ!?ヤバいやつじゃん!!
「いや違くてさ……俺の姉御?師匠?みたいな人が留守中勝手にその投影機の映像確認してさ。」
「?」
「んでその姉御から合否は聞いたんだけど、その時に姉御が俺に対してその投影機を蹴り飛ばしてきて……」
「??」
「その反動で投影機が壊れて映像確認出来なかったんだわ。だから、オールマイトが雄英で教師してるのも俺は全く知らなかったって訳。」
「???」
「あっ、俺着替え終わったから行くな。ショート!行こーぜ。」
「あぁ。」
「「「待って!?理解が追いつかないから待って!?」」」
はは、混乱してるな?……大丈夫。俺も逆の立場ならそう思うよ……
「なぁ日向。」
「どしたショート。」
「そのコスチューム私服じゃないのか?」
「ちげぇわ。これでも素材すげぇんだぜ?」
と!言うわけで!グラウンドβにやってきた我々1年A組!オールマイトが各々のコスチュームを褒めるが……ここは、入試で使った試験場か?すると、いかにも真面目系男子、飯田な手を挙げて質問を投げかける。
「先生!ここは入試の演習場ですが……また実戦訓練ですか?」
「いや!もう2歩先へ踏み込む!……屋内での実戦訓練さ!」
ほへ……対人戦な気はしてたけど、外じゃなくて中でやるのか。
「ヴィランってのは、闇夜に潜む……屋内等でのヴィラン活動が実のところ最近では一番多いのさ!故に、その技術を求められることも多い!戦闘訓練と一口にしても、入試でやった外での戦闘活動とはまるきり異なるスキルが求められるぞ!」
なるほど、確かに…………外での戦闘ってのはおおよそ正面切ってからの戦闘になるから真っ向からの戦闘力が求められるが、室内だと隠密や索敵などのスキルのほうが重要。確かに2歩も進んだ技術が求められるのか。
「んで!肝心の内容だが…………ヴィランとヒーローの二人一組に別れてもらう!状況は核爆弾を発射しようとするヴィランを抑えるためにヒーローが出動!ヴィランは制限時間内までに核を守り切るか、ヒーローを戦闘不能にすれば勝利!ヒーローは核の回収、及びヴィランを戦闘不能にすれば勝利だ!」
話自体はなんかアメリカンだが、結構シンプルだな。わかりやすくていい……ん?二人一組……?
確か今年からAB共に21人になったから………ンッ!?1人余る!?いや、まぁ待て……中学時代じゃ確かにこんな感じの授業じゃ余りがちだったが、俺には今轟がいる!大丈夫大丈夫……
「因みにコンビ相手はクジだ!」
「適当なのですか!?」
「プロは!状況に応じて即席チームを組むこともあるからそれを見越して……じゃないかな?」
「なるほど!先を見据えた提案でしたか!」
畜生がっ!!……あれ、でもそうなるとますますどーなるんだ?
「先生!そうなると1人余るんですが……1チームだけ三人にするんですか?」
「いや!このクジにはアタリが入っていてね!そのアタリを引いたものは……なんと!最後に好きなコンビ相手で訓練ができるのさ!自分と相性のよい個性の子と相手を組めるって訳だね!」
なるほどな……うん、なんか学校の体育でもこんな感じの流れあったよね。なんか見世物みたいで気分は良くないが……まぁ、有利状況を作れるのには変わらないし、最後ってことはみんなの個性を知ってから活動できる、一種のアドバンテージを得られるわけだ。それになんにせよ、俺がアタリを引かなきゃ良いだけだしなぁ!!!
なんて事を考えながら引くと大抵は……
「……。」
「おぉ!氷室少年がアタリか!!ラッキー……な顔はしてないね!?」
ま、まぁ一人余ってどっかの班に割り振られるよりかはマシか…………既に若干先が思いやられるが……こうして、初めてのヒーロー基礎学が幕を開けた。