転生オリ主が魔皇ロールする話 作:野生の生蛇
「どこやねんここ! 外! 草! 平原! ファンタジーか?!」
何の特徴も無い夜の平原で男が叫んでいた。
男は奇妙な格好をしていた。短パンにシャツだけという外出を舐めている格好をしているのだ。
だが、男が悪いという訳ではない。男は寝て起きたらこんな平原に居たのである。
すわどっきりか、何かのテレビ番組かと思ったがカメラの類は無いし、人気も無い。
なんやねん、と男が怒るのも無理は無かった。
「すみません。少しよろしいですか」
「はいどーもよろしいですよ! こちらなんもわかってませ──んが! ──ん?」
男は振り向いてから声の主の姿を見て固まった。
声の主は白髪の老人だ。仕立ての良い執事服を纏った鋭い目を持つ、ガタイの良い執事である。
その姿と隣にいる金髪の美女に男は見覚えがあった。
(──セバス・チャン?)
小説オーバーロードに登場する主人公の配下にしてパトラー、セバス・チャンである。
「あっなるほどそういうことね。理解したわ」
サブカルに詳しい男はだいたいの事を察し、理解した。
つまりはオリ主転移モノという事なのだろう。自分がオリ主という事に間違った意味の役不足であるという思いが強いが。
「少々尋ねたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
セバスは男が何処か普通の人間とは違う──単なる異常者であることを見抜いた──事を把握しつつ、問いかける。
「えぇ。いいですよ。あなたの主にお伝えください。この世界についてだいたい知ってる者を見つけたと」
「……畏まりました。少々お待ちください」
セバスは考える。まるでこちらの問いかけの内容について知っているような口ぶりだ、と。
セバスはソリシャンに
数分話せば魔法はきれる。
「お待たせしました。我々の本拠地であるナザリックまで案内いたします」
「おかのした。案内しくよろ」
男の言動にソリシャンがにらみつける。
「あ、すいません。普通に話します」
男はちょっとはしゃぎ過ぎた、と反省した。
■
男とセバスは問題なくナザリックの第六階層に辿り着いた。
男の足は遅いため途中からセバスが背負ったり、ショートカットの為第一階層の転移罠をわざと踏んで進む等をした。
そのことに男は地味に興奮していた。ファンタジーわっほい、と。
そして男は軽率についてきたことを後悔し始めていた。
(みなさんちょっと視線がいたすぎぃ!)
男はセバスの背から降りながら守護者達の視線に怯える。
レベル百の超越者たちの視線は浴びせられるだけで物理的なダメージを受けそうである。無論錯覚だが。
「ふむ。お前が"この世界"について知っているという者か」
モモンガが重々しく口を開いた。
男はすぅー、と息を吐いてから声を上げた。
「へーいモモンガっち元気?! 最近ペロロンチーノからおぬぬめされたエロゲやってる?!」
瞬間、守護者達──更にはセバスからの視線が殺意が籠ったものになる。
常人ならば失神し、そのまま死に至っても可笑しくはない。
モモンガは精神が沈静化され、叫んだ。
「やめろ! お前達! この男に危害を加える真似は一切許さん!」
その言葉に守護者達とセバスは渋々と言った様子で殺気を収める。
そして、遅れてアルベドとセバスが男に着いて考え、モモンガの言葉の意味を知る。
──何故この男は教えても居ないモモンガ様の名前を叫び、ペロロンチーノ様の名まで出した?
有りうるのは、この男が至高の四十一人に関係する者、友人か、その反対の敵対者か。
ならば軽率に殺す訳にはいかない。至高の御方々の友人ならば丁重にもてなすべきであり、敵対者ならば死なぬよう永遠に拷問にかけるべきだ。
「──あなたは何者だ? 何故、私の名を知っている?」
「あー、うん。俺は……取りあえずた──いや、ジェーン・ドゥだ。しくよろ。何故知ってるかは、モモンガ──様にだけお伝えしたい。NPCの方々にはお伝え出来ないので」
「それは、こちらに危険を承知で一対一になれと?」
「普通に魔法で私探査して貰うとわかるけどただのクソ雑魚蛞蝓です私。レベル一以下の塵なんで、警戒するだけ無駄だと思いまっせ」
男──ジェーンは自分が雑魚だと主張する。
モモンガは軽く
すれば、ジェーンは言った通りに雑魚だった。対情報系魔法で隠蔽しているにしても弱すぎて何かありますよと宣言してるようなものだった。
ならば本当だとモモンガは考える。
「……わかった。ならば私の自室に来てもらおうか」
「りょーかい。お手柔らかにお願いしますね、オーバーロード様」
■
「改めて自己紹介を、アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターであるモモンガです」
ジェーンはモモンガの自室であるロイヤルスイートに入った途端、ほわほわした声のモモンガに自己紹介をされ面食らった。
だが知っているジェーンは名乗り返す。
「別の世界からの転生者、ジェーン・ドゥです。本名は名乗る気アリマセン」
「ああ、やっぱ偽名ですか」
ジェーン・ドゥとは身元不明の水死体の事である。誰が聞いても偽名だと直ぐにわかる。
ジェーンはモモンガに促されソファに座る。
うわふっかふかだ、とジェーンは謎の感動をし、咳ばらいを一つする。
「色々隠すの面倒何で全部ぶっちゃけます。この世界は元は小説なんですよね」
「はい?」
そこからジェーンは全部ぶっちゃけた。もう何もかも全部。
日本、西暦2016年に書籍化、モモンガ、鈴木悟について。この世界について──
「なるほど。実に興味深い。本来交わるはずの無い世界が交わっているという事ですね……」
「ですです。まぁ異物が私だけであるという保証がないので、ちょっと面倒な事になってますが、基本はナザリック無双が出来ると思ってください」
「わかりました。ではあなたの望み通り、ジェーンさんを食客扱いとし、その身を守りましょう」
「シャア!」
ジェーンは叫んだ。第三部完! 己の勝利である! と。
かくして大体の事を知ってしまったナザリックが動き出した。