転生オリ主が魔皇ロールする話 作:野生の生蛇
「──竜王国への支援?」
蒼の薔薇一行はエ・ランテルに新設された冒険者組合の会議室に通されていた。
そこに居るのは蒼の薔薇とモモンだけである。
「というよりは、魔皇イブ討伐作戦になるのですが……イブが聖王国で活動していたのは知っていますね?」
「はい。聖王国の聖騎士団団長が王都に来ましたから……」
ラキュースは思い出す。レメディオス・カストディオの事を。
自分と同格以上の聖騎士だ。戦えば負ける可能性が高いだろう。チームとして戦えば負ける気はしないが。
「魔皇イブは聖王国のアベリオン丘陵で亜人種を集め、軍としました。だがそれは魔導王の手によって破られた──だが奴はこりずに竜王国のビーストマンを使って同じことを繰り返そうとしているんです」
「……何故、イブはそうも積極的に動く? 何が目的だ?」
イビルアイは疑問を提唱する。
そのことに着いてラキュースも疑問に思った。
やることなす事派手で敵を作るばかり。何をしたいのかよくわからない。
悪魔という種族がそうなのだ、と言われれば納得するしかないが、それでも疑問を抱かずにはいられない。
「それはわかりませんが、放置してよい事でも無いのは確かです。奴は既に軍勢を作っているとのこと。ホムンクルスとビーストマンの混成軍です」
「ホムンクルス?」
「イブの能力で作り出せるシモベの事です。王都で目が縦に着いた白いモンスターを倒したでしょう?」
「ああ、あれの事ですか。なるほど……」
ホムンクルスはそこそこ強い。レベルにして五から十というのは帝国で言う近衛騎士に準ずるぐらいには強い。
冒険者の難度に換算すれば三十程であり、金級冒険者でないと対処は難しいだろう。それが軍となっているとなれば相当の脅威だ。
更にビーストマンも難度三十はある。脅威と言っていいだろう。
「ですので蒼の薔薇の皆さんにはイブ討伐作戦に是非参加して欲しいんです。元王国の冒険者として」
それだけのモンスターを前に単なる軍人では頼りないだろう。
ならば精鋭の中の精鋭、アダマンタイト級が受けるに相応しい依頼と言えるだろう。
「……みんなはどう思う?」
ラキュースは仲間にそう問いかける。
「私としては是非参加したい。奴には苦渋を飲まされたからな」
イビルアイがそう発言する。
「俺もだ。やられた借りは返さないとな」
「私も、SHINOBIとしてやり返さないといけない」
「NINJAは仲間の為なら泥をすすってでもやり返す」
仲間の意見を聞いたラキュースは覚悟を決める。
「今度こそ、奴を討ち滅ぼしましょう──私達蒼の薔薇は魔皇イブ討伐作戦に参加します」
■
うわぁ。大変な事になったぞ。アインズの心を言うならそうだった。
「アインズ様。
ナザリックのアインズの自室でアルベドがつらつらと構成している軍について読み上げる。
「──他
「十万とかやっば。え、俺蹂躙されるんじゃない?」
そう返すのはナザリックと敵対しているはずのイブ──ジェーンだ。
「そうはいってもそっちの軍三十万ぐらいいるんでしょう? 三倍の兵力差なんですがこっち」
アインズはそう苦言を呈す。
「いやレベル十程度の雑魚軍と最低レベル二十以上なナザリックの軍を比べないで、負けちゃうから俺の軍」
「負けちゃうからって、負けるのが目的でしょうが……」
アインズははぁ、とため息を零す。
本来、魔皇イブは聖王国で討たれるはずだった。
だがとうのイブ、ジェーンがそれは嫌だとごね始めたのだ。
どうせならもっとでっかく倒されたい、と。
もっと派手に、デカく──つまり大々的に、エキゾチックに、ラスボスとして散りたいのだと。
「まぁ、こちらとしても軍隊としての訓練が出来る的な面があるからいいですけど」
この世界戦ではナザリックは王国へ進軍していない。
いや、進軍をしはしたが、あくまで内乱を収める為、という名目が強い。
一回ド派手にぶつかった事はあるがそれぐらいであり、都市攻略戦等はしていない。
その為そう言った訓練が出来るという事でアインズとしてもジェーンの提案を断る事はしなかったのだ。
「よし、じゃあトロフィー取りにいくかな」
「? 何か作るんです?」
「魔王のトロフィーと言ったら、当然御姫様だろう?」
にやり、とジェーンは笑みを浮かべた。
■
竜王国の空を一人ジェーンは飛ぶ。
何度とんでもいいものだ、とジェーンは鼻歌でも歌いそうないい気分で空を飛ぶ。
背中から生やした翼がはためき、速度を出す。
時速に換算すれば二百キロ程は出しているだろう。新幹線なみだ。
そうして飛んでいると城が目に見えてくる。
塔が四つ四方に建っている、白く輝く城──竜王国の王城だ。
「はいどーん」
そしてジェーンは適当に城に向かって直撃し、壁を破壊した。
壁が砕け粉みじんとなり、城の中に侵入する。
「……豪華ではないな」
ジェーンはぽつりとつぶやく。
城の廊下に絨毯は無く、装飾品の類も見受けられない。
適当にジェーンは歩くと、兵士が三人程走って来る。
槍を構えた兵士だ。
「何者だ!」
「その目、亜人種か?!」
ジェーンは今スペクテッドを開眼している。
「ちょうどいいな」
ジェーンは右腕を触手に変え薙ぎ払う。
兵士三人は綺麗に吹っ飛び、地に伏した。
倒れた兵士にジェーンは近づく。
「女王、ドラウディロン・オーリウクルスは何処にいる?」
「くっ……いう訳ないだろう……!」
(女王様は謁見の間にいる……喋ってなるものか!)
スペクテッドの力でジェーンは心を読む。
「なるほど。謁見の間にいるのか。感謝する」
「な、何故知って──」
ジェーンは兵士の頭を踏み潰し、殺す。
「さて、行こうか」
ジェーンは堂々とした歩みで城の中を進む。
道中、何度か兵士に遭遇するが触手を振るう事で即死させ、先へと進む。
そうして透視の力で構造を把握しながら進んでいると大きな扉の前に着く。
透視で扉の先を見たジェーンはここか、と右腕を肥大化させる。
異形の腕にし、右腕を大振りに振るう。
扉に衝突し、木製の扉が砕け散る。
木片が舞う中をジェーンは堂々と歩く。
「何者だ!」
そこに膝をついていた男が立ち上がる。
どこか軽薄そうな男だ。ジェーンはデミウルゴスによる事前調査のデータを思い出す。
(ロリコン冒険者のセラブレイトか)
だが、たかがアダマンタイト級冒険者、レベルは三十にもいかない程度だ。
ジェーンは触手を振るいセラブレイトを横に吹っ飛ばす。
「カハッ……」
殺しはしない。生きて貰わないと困る為だ。
「……何者だ? 私の国に何の用だ?」
幼い子供にしか見えない女王、ドラウディロン・オーリウクルスだ。
黒い髪に赤い瞳のあどけなさの残る容姿。美幼女と言って差し支えないだろう。
玉座に座る様は何処か微笑ましくもある。
「貴様自身に用があるのだよ、ドラウディロン・オーリウクルス。貴様を攫いに来た」
「どうぞうどうぞ、不束者ですがどうぞよろしくしてやってください」
そう言うのは宰相だ。
「おい宰相! 敵に何てこと言うんだ!」
「いやうちの最大戦力が何も出来ずやられてるんで出来ることは相手のご機嫌伺いでしょう」
「それはそうかもしれんが!」
「漫才は後にしろ。まぁ、余が欲しいの貴様のタレントだ」
「む、私のタレントだと?」
「ああ、貴様を取り込めば、タレントも手に入るのではないかとな──」
ジェーンは右腕を肥大化させ、まっすぐドラウディロンに向かって伸ばす。
肥大化した右腕でドラウディロンを掴みあげる。
「ぐっ……苦しい」
ドラウディロンは苦しみの声を上げる。巨大な手に全身掴まれれば痛いのである。
「おっと、死んでもらっても困る。まだ実験が済んでいないのでな──」
ジェーンは右腕を戻し、ドラウディロンを右脇に抱える。
「では、余はもう行くとしよう。ああ、歯向かってきても結構。その場合命の保証はしないがね」
そう言うとジェーンはドラウディロンを抱えたまま自分が侵入した壁に戻り、空へと飛んで行った。