転生オリ主が魔皇ロールする話 作:野生の生蛇
「はー! つらたん!」
ビーストマン軍のテントの中で、竜王国女王ドラウディロンは叫んだ。
設備としては良い方だろう。椅子とベッドと机がある。
望めばがりがりで目が縦に二つ付いてる化け物がある程度は用意してくれるし。
仕事も何もしなくていいというのはよいが、それはそれとして今どうなってるんだろうという心配が勝る。
「元気なようで何よりだ」
そこにジェーンが入って来る。
「……魔皇イブ、何用だ?」
ドラウディロンは多少イブに着いて知っている。
ただ、それは噂話程度の話だ。
聖王国と王国で暴虐の限りを尽くした悪魔、としか知らない。その目的も行動も何も知らないのである。
「何、心の準備ぐらいはさせておこうかと思ってな」
「はぁ~? 心の準備ぃ~?」
「貴様には近いうちに子を作って貰う」
その言葉にドラウディロンはゾッとした。セラブレイトが向けてくる情欲の視線よりも嫌な感じがした。
「それは、貴様と私が子作りを……?!」
「いやしないが。余は悪魔だぞ。人間──いや竜の血を引いてるから純粋な人間ではないが……兎も角人と子など作れるか。貴様には余が選定した人間と子を作ってもらう」
「あ、ならよかった……とはならん! なんで子供作るんじゃ!」
「余は貴様を取り込むことで力を得ようと思っている。だが、万が一手に入らなかった時の為の保険だよ。貴様の血でタレント……
「……なんでそんな面倒なことを?」
「貴様を一度取り込んだ程度で力が得られるのならばいいが、そうでない場合は面倒だからな。竜の血を濃くするために竜と媾ってもらう事も考えたが、まず竜のブツが入らんからな」
「そりゃまぁ、普通の竜のははいらんだろう……てか他人とするの嫌なんだが」
「貴様も捕虜なんだから、貴様の意見は聞かん。数日後には適当に見繕ってくるからな」
ではな、とジェーンはテントから出ていった。
「……まさかこんなところで失うとはなぁ、処女」
はぁ~とドラウディロンはでかいため息を吐いた。
■
それから数日後、ドラウディロンはテントの外がにわかにざわついてるのを感じ取った。
一応は竜の血族である為聴覚も人よりは鋭い。そのために話声を聞くことが出来る。
曰く、支配下に置いた都市が三つも奪われた、だのホムンクルス軍がやられた、だのそういった話が聞こえて来た。
その為かドラウディロンとセックスする予定の人間も来る気配が無いのはドラウディロンにとってはよい事だった。
そうして数日たつとついに軍として出立する事が決まり──竜王国過去最大の戦が始まろうとしていた。
■
(うわぁ、すげぇ)
ジェーンは鹵獲した馬に乗りながら平原を見た。
そこには二つの軍が展開されている。
だが二割程は
これは魔皇イブに対し憎悪を持つ種族で構成されているのである。恨みを滅茶苦茶に買っていた。
対するはビーストマンとホムンクルスの混成軍だ。
数は約三十万と竜王国に散っていたビーストマン全てを一か所に集めている。
「イブ様。そろそろ……」
隣に控えていたライカードが声を拡大するマジックアイテムを差し出す。
ジェーンはそれを受け取ると堂々と宣言する。
「全軍突撃! 奴らを食い殺せ!」
その言葉にビーストマンたちがいきり立ち、咆哮を上げて突撃を開始した。
■
さて、戦争だが、どちらが有利かというと当然魔導国側が有利だ。
数の上での利はイブ率いる混成軍の方が圧倒的に勝っているが、ここは超常渦巻く異世界だ。
平均レベル十二程度の軍と平均レベル二十越えの軍では質が違うのである。
しかも亜人種を纏めた軍隊を除けばアンデッド軍はレベル三十にも届こうかという程だ。勝てという方が無理がある。
そこにレベル百であるシャルティアにコキュートスが追加され、無双ゲームもかくやという程に蹂躙されている。
(うーん、爽快!)
そこそこ手間をかけて集めた軍勢が蹴散らされる様はちょっと笑えて来る程である。
そうして待っていると漆黒の光が軍勢を斬り裂いて来る。
「──来たか、モモン」
ジェーンは馬から降り、右腕を触手に変える。
突撃してきたモモンに化けたパンドラに向かって触手を振るい、衝突させる。
剣と触手がぶつかって甲高い音と共に両方弾かれた。
「久しいな、モモン。どうだ? 余の軍勢は」
「お前は何がしたい? 亜人を支配下に置き、軍勢を作り、ただ悪戯に消費する……命を何だと思ってるんだ?」
「それは貴様も同じことじゃないか? 遥か彼方より飛来せし同胞よ──問答は無用。本気で行くぞ」
ジェーンは下半身を触手に変える。
十二の巨大な触手に変え、ジェーンの下半身が肥大化していく。
一本一本のサイズは木の幹程、長さは約五十メートルという圧倒的巨体。
「これは……」
その大きさにパンドラは絶句──した振りをする。
魔導国軍と混成軍両方から目立つようにジェーンは君臨する。
ジェーンの十二の触手のうち六つがパンドラとナーベラルに襲い掛かる。
ナーベラルは空を飛ぶ事で、パンドラは地面を走る事で触手を避ける。
ジェーンは背中から三つ新しく触手を生やす。人の腕程の太さを持ち、三メートル程の長さの触手だ。
先端はライフルによく似た形状をする触手であり、役目もライフルと同じだ。
ドン、という炸裂音が鳴りパンドラ向かって骨の弾丸が打ち出される。
原理は単純だ。肉体操作で筒を作り出し骨の弾丸を形成、肉を炸裂させることで火薬の代わりとして骨の弾丸を打ち出す。
名付ければボーンライフル、といったところだろうか。
専用の脳を作りそれを使って標準合わせと発射をオートマ化する。
「ちっ!」
パンドラは舌打ちし移動しながらグレートソードでボーンライフルの弾丸を斬り払う。
「
そこにすかさずナーベラルが魔法を唱える。
龍の雷がジェーンに襲い掛かる。
ジェーンは腹を肥大化させホムンクルスを一体作り、右手で掴んで
そうすることで
もう片方の
だがすかさず再生する事で問題にはならないし、レベル八十もあるので魔法耐性も相応に高いため大したダメージには成らない。
十二の触手が蠢き、災害かのように轟く。
パンドラは触手を斬ったり回避するが、触手は斬られたところですぐさま治る。
ナーベラルもパンドラと自分にバフを載せたり
触手がパンドラに襲い掛かる。
パンドラは触手を斬って捨てて、触手の上に乗る。
「無駄だ!」
ジェーンはすかさずパンドラが乗っている触手をとげとげに変える。
だが変える寸前パンドラは跳躍しジェーンに飛び掛かる。
「はぁぁっ!」
パンドラは勢いよく左手のグレートソードでジェーンに斬りかかる。
ジェーンもすかさず右手の手首から先を骨の剣に変えパンドラのグレートソードと鍔競り合いをする。
パンドラが右手の剣で上下真っ二つに斬りかかるがジェーンは腹から腕を生やしパンドラを殴り飛ばす。
レベル八十六相応の攻撃は重い。パンドラはノックバックされ吹っ飛んだ。
吹っ飛んだパンドラに向かって十二の触手を向かわせる。
いわば質量攻撃だ。如何にレベル百相応の肉体能力があろうと重い一撃である。
パンドラはその触手を斬り捨てる。
攻防が始まる。
果敢に攻め立てるのはジェーンだ。十二の触手だけでは飽き足らず、更に触手を生やしたりして攻撃する。
無論<能力向上>に<能力超向上><外皮強化><外皮超強化><流水加速>に<超感知>等の武技を発動し、気功などの
今のスペックはレベルだけならば九十一相応、といったところだろう。
そこに千里眼のスペクテッドを用いる事で空からの奇襲しようとするナーベラルに竜砲などで砲撃する。
「ホムンクルス共! 余の元へ来い!」
ジェーンは最近会得した指揮官系クラスの
遥か遠くに居ても──と言っても多少距離制限はあるが──命令を届かせることが出来るクラス
それを使ってホムンクルス二万に命令を出す。
出す命令は当然モモンとナーベを殺せ、というもの。
魔導国軍とぶつかっていたホムンクルスたちがきびつを返してパンドラたちに襲い掛かる。
だが当然その程度でパンドラもナーベラルもやられる訳が無い。ナーベラルに至っては空を飛んでいるのでホムンクルスでは対処不可能である。
しかし多少でも隙が出来ればいいとしてジェーンはホムンクルスを使い捨てる。
ジェーンは左腕を竜の顎の形に変形させる。
放つのは竜砲。頬化のホムンクルスの対処をしていたパンドラに直撃する。
レベルも八十にあがり威力は増している。通常攻撃よりは威力が高い。
直撃を受けたパンドラが吹っ飛んでいく。
「モモンさん!」
その様を見たナーベラルが思わずと言った風に叫ぶ。
すかさずジェーンは触手を振るいナーベラルを地に落とす。
「ナーベ!」
そこに吹っ飛ばされたはずのパンドラが超スピードで戻って来て追撃の触手をナーベラルを抱えて避ける。
「ヒロインチックな事をしよってからに……」
パンドラはナーベラルを空に放り投げる。ナーベラルは
「さぁ、続きといこう!」
その後もパンドラとナーベラル、ジェーンの戦いは続く。
触手を振るい、時折モンクの
だが、やはり押されるのはジェーンだ。
一対二という数の振りとレベル百スペックのパンドラに対し武技による底上げでも九十一でしかないジェーンとではスペックに差があるのだ。
更にはパンドラは作られた存在として高い先頭技能を持つのに対しジェーンはパワーレベリングで無理やりにレベルを上げただけの存在。
異世界行って戦闘経験を積みはしたが相手はだいたい雑魚でレベル差でごり押しできる相手でしかなったのもあった。
故に順当に戦い、敗北へと近づく。
「何故だ! 何故、人間なんぞに!」
そう叫ぶもジェーンは内心興奮しっぱなしであった。
ラスボスっぽい台詞吐けるぞわっほい、である。
「人間を侮った──それがお前の敗因だ、イブ!」
そしてパンドラもノリノリで返す。役者として熱が入っているのである。
パンドラは触手を一つ斬り捨てるとその触手に乗ってジェーンに向かって駆けあがる。
「まだだ!」
ジェーンは他の触手をパンドラに向けるが全て斬り捨てられ──一部はナーベラルの魔法によって焼き焦がされる。
「これで終わりだ、魔皇イブ!」
ついにパンドラの剣がジェーンの下半身と上半身を両断した。
「ま、だだ!」
だがジェーンはしぶとい生命力で耐える。
すかさす下半身を武器の触手に変えパンドラに向ける。
だが予想していたパンドラは左手のグレートソードで触手の根本から斬り捨てた。
「人間なんぞに! 敗北するなど!」
叫ぶジェーンを無視しパンドラは右手のグレートソードでジェーンの体を袈裟斬りにした。
「──そうだ、お前は……ただの人間に負けたのだ」
■
「という訳で、悪の大魔王は打ち取られましたとさ、ちゃんちゃん」
ナザリック地下大墳墓第九階層アインズの自室で。アインズ、パンドラ、ナーベラルにジェーンの四人は集まっていた。
「これでまたアインズ・ウール・ゴウンの名声が高まったという訳ですね」
うんうんとアインズは満足そうに頷く。
「しかし俺っちも大満足。これはもう漆黒の英雄談が爆売れしますなぁ」
「実際耳ざとい吟遊詩人などは既に謳っているそうですよ」
「魔王役を頑張ったかいがあるぜ……てなわけで」
ジェーンは肉体操作で体を魔皇イブから作り変える。
それは2Bの体だ。イブの装備品を着ていたので上半身裸の為胸が露出している。アインズは沈静化した。
「これからはバトルヒロイン2Bちゃんとしてこの世界を楽しむぜ!」
「これまでも楽しんでたでしょうが」
こうしてオリ主は平和に暮らしましたとさ、ちゃんちゃん。
これで完結です。
番外編でアカメが斬る編書くかも