転生オリ主が魔皇ロールする話   作:野生の生蛇

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第4話

 

(きーもちい!)

 

 王都の空をジェーンは飛翔しながら堪能する。

 この飛行能力はレベル七十六相応の筋力と肉体操作の力があって成り立つ力だ。無理くりに飛んでいるのである。

 その為欠点もあり、ホバリング、滞空が出来ないという欠点がある。

 その為移動には使えるが戦闘に使うには微妙というところがある。今のところ戦闘で使う予定はないので問題ないが。

 

 そうして飛んでいると王都の倉庫街にまで飛び、目標の者を見つけたジェーンはゆっくりと下降を始める。

 地面に降り立ち、翼を弄って消す。

 

「待たせたな、ヤルダバオト、シャルティア」

「とんでもございません」

 

 其処に居たのはヤルダバオトの仮面をかぶったデミウルゴスだ。

 デミウルゴスを使う予定はないため、ある特殊技術(スキル)──ゲヘナの炎の発動の為だけに来てもらっている。

 仮面をつけた上偽名を名乗っているのは万が一他者に見られた時ようだ。

 

 もう一人、シャルティアは普段と何ら変わらぬ恰好をしており、ふんぞり返っている。

 

 シャルティアの設定はこうだ。

 魔皇イブに従わされている囚われの姫君。アインズ・ウール・ゴウンの帰還を待ち望んでいる、だ。

 つまるところ囚われのヒロイン役である。

 これは原作通りシャルティアがブレインを逃がしたため、シャルティアを活かすためにという建前の元死蔵されたヤルダバオトの協力者ってのを活かしたいよなというジェーンの望みである。

 

「さて、至高なる御方は予定通り進んでいるかな?」

 

 

 ■

 

 

 王都の一角、炎に包まれた倉庫街の離れに魔皇イブ討伐隊の作戦会議所があった。

 

 会議所のテント内には漆黒の英雄モモン、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。青の薔薇のリーダーラキュースにイビルアイ、そして黄金の姫ラナーが居る。

 

「失礼する」

 

 そのテント内にアインズが押し入る。

 

「ゴウン殿?!」

 

 入って来たアインズにガゼフがいち早く反応し、驚愕の声を上げる。

 

「戦士長の知り合いですか?」

 

 ラナーが反応し、アインズを見つめる。

 

「初めまして、皆さん。私はアインズ・ウール・ゴウン。旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)です。早速本題といきたいんですが、魔皇イブ討伐作戦に私も一枚噛ませてくれませんか?」

「いきなり出てきて随分な言い草だな」

 

 イビルアイがムッとした顔で発言する。

 ふむ、とアインズは鼻を鳴らし、手甲を外す。当然幻術で人の腕を見せている。

 指から探知阻害の指輪を外し、威圧感をわざと出す。

 

 瞬間、この場の全員に居も知れぬ恐怖を与える。

 巨大な猛獣を前にしたような、自分が今薄氷の上に立っていたと気づかされたような怖気だ。

 すぐさまアインズは指輪をはめ直し、手甲もつける。

 

 モモン──パンドラはグレートソードを抜き、アインズに向ける。

 

「そう警戒しないで欲しい。今のところ私たちの目的は一致しているだろう?」

「お前がイブの仲間でないという保証は?」

「ふむ。証拠を見せろ、と言われれば出せるものはないが……そうだな。私もイブには一度してやられているのだよ」

「というと?」

「私の親友の子であるシャルティア・ブラットホールンが無理矢理奴の支配下に入れられている。私はそれをどうにかしたい」

 

「──シャルティアだって?」

 

 シャルティアという名に反応するのはブレイン・アングラウスだ。

 

「知っているのかね?」

「ああ……俺も一度、遭遇した事がある」

 

 ブレインは苦々しい顔をしながら思い出す。

 所属していた盗賊団に襲撃をかけた吸血鬼(ヴァンパイア)、シャルティア。人知を超えた存在。

 

「そうか。知っている者がいるというならば話は早い。私という戦力を拒む理由はないだろう?」

 

 その言葉にガゼフとブレインが納得する。

 ガゼフはアインズの強さを知っている。法国の聖典を一つ壊滅出来るだけの実力者だ。

 ブレインはセバスにも匹敵する圧を前に納得せざる負えなかった。

 

「そうですか……ではあなたも加えて、話の続きといきましょうか」

 

 ラナーがそう微笑んだ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「ふむ。よくもまぁのこのこと来たものだな」

 

 王都の倉庫街の奥。ゲヘナの炎に囲まれた場所にて。

 先程と何ら変わらぬジェーンが顎に手を当てながら呟いた。

 

「"英雄"と呼ばれる者が、逃げ出すわけにはいかないだろう?」

「なるほど、それもそうだ──だがな」

 

 イブは左手で指を鳴らす。

 その音に反応し、仮面をつけたプレアデス──ナーベラルはいない──が出て来た。

 

「……イブの戦力を、見やあまっていたか」

 

 イビルアイが苦い顔をする。

 

「では、俺たちは向こうでやりあうとするか──いくぞ、イブ!」

 

 パンドラが宣言と共にグレートソードを抜いて構え、突撃する。

 ジェーンは両腕の十の指を骨の刃に変え、迎撃の構えをとる。

 ジェーンはパンドラによって吹き飛ばされた。

 

 

「私が三、あなたが二です」

「逆でも構わないぞ?」

「……ふん」

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 ジェーンの指の刃とパンドラのグレートソードが交差する。

 ぶつかり合う。互いに人外の領域に居る為に常人では視認する事すら困難だろう。

 

 ジェーンは背中から六つ人差し指程度の細さの触手を生やす。長さは二十メートル程だ。

 

 脳も増やし演算能力を足す。

 触手を振るいパンドラの鎧に傷を与えていき、両手の骨の刃とグレートソードがぶつかり合う。

 ジェーンは徐々に押されていく。そもステータスが違い過ぎるのだ。

 

「ちっ!」

 

 ジェーンは舌打ちをし、正拳突きを放つと同時に距離をとる。

 それと同時に背中から触手を何本も生やす。先端は骨の武器にする。

 

 モーニングスター。槍、刀、剣、ハルバード。多種多様な武器の触手が生み出され、パンドラに向かって直進する。

 

 パンドラは横に走る事で触手の武器を回避する。

 

 触手の武器が地面に衝突し、巨大なクレーターを残す。直撃すればパンドラとてダメージを負う攻撃だ。

 回避されたのは痛いが、そも回避前提だ。

 

 ジェーンは右腕を巨大化させるる。二十メートルの巨大な──巨人の腕と見間違う巨大な腕に変化させる。

 

 儀典:巨人の銃(ギガント・ピストル)。

 

 パンドラは直撃を受け、遠くへ吹き飛ばされる。

 幾つかの建物の壁を貫通して吹き飛ばされていった。

 飛ばされるパンドラを追い、ジェーンは触手を振るい周囲の建物に突き刺しつつ走る。

 

 触手を肥大化し棘を生やし、筋力で無理やり建物を持ち上げる。

 

 何とか着地し体勢を直したパンドラに向かって建物を放り投げる。

 

 しかし流石はレベル百に近い戦士職のステータスを持つパンドラズ・アクター。瞬時に剣を振るい建物を粉みじんに斬り裂く。

 

「流石は英雄! この程度防ぐか!」

「舐めるなよ、魔皇!」

 

 魔皇イブと漆黒の英雄モモンの戦いは続く。

 

 ジェーンは下半身を変形する。

 骨の大鎌の形に変え、下半身を振るい先端をパンドラに当てる。

 命中したパンドラは吹き飛ばされ、遠くの地面に着弾する。

 ジェーンは背中から翼を生やし飛翔。着弾点の空に行くと翼を触手群に変え地面にいるパンドラに向かって突き刺す。

 先端を骨の刃に。触手の腹にも骨の刃を付けた攻撃特化の触手だ。当たればただではすまないだろう。

 ジェーンは割と本気でパンドラを殺す気で戦っている。でなければ戦いが成立しないと思っているからだ。

 

 百近い触手がパンドラ向かって突き進み、轟音と共に着弾する。

 

「やったか?」

 

 お決まりの台詞をジェーンは言う。

 当然やっていなく、触手の一つが握られ、引っ張られる。

 とんでもない剛腕によりジェーンは抗う事出来ず引っ張られ、パンドラの眼前まで引っ張られた。

 

「しまっ」

「せぇい!」

 

 パンドラはジェーンをその手に持つグレートソードで両断した。

 

 斬られた片方、左半分に自我を写しジェーンは斬られた半分を再生させる。

 それと同時に右腕を触手群に変え攻撃。だが触手は全て二刀流で斬り捨てられた。

 

「ちっ!」

 

 ジェーンは地面に落ち走る。

 逃走の形をしながら背中から武器触手を生やし攻撃する。

 

 だが当然破れかぶれの攻撃がパンドラに通じる訳が無い。全て斬り捨てられながらジェーンに突撃してくる。

 

「<能力向上><能力超向上><外皮強化><外皮超強化><触腕>」

 

 最後の<触腕>の武技はジェーンオリジナルの武技だ。

 触手による攻撃を強化する武技である。

 

 ジェーンは両腕の銃の指を骨の刃に変え、パンドラのグレートソードとぶつける。

 

 硬い金属音が鳴り響く。骨と剣が当たったと都は思えない音だ。

 

<流水加速>の武技も発動させ攻撃速度を一時的にとはいえパンドラに匹敵する速度に変える。

 ジェーンの今のステータスは武技によるバフを合わせたことでレベル七十九相応はあるだろう。

 それでもレベル差が二十近くあるという絶望的盤面だが。

 

「ウォォォォォ!」

 

 ジェーンはロールプレイを忘れ、本気で挑むのだった。

 

 

 

 ■

 

 

「久しぶりだな、シャルティア」

 

 アインズは倉庫街のある建物の屋根上に佇むシャルティアの前に居た。

 

「あなたは……誰? ……いえ、知っている……?」

 

 シャルティアは精一杯の演技をする。

 内心では"うひょー! アインズ様との逢瀬! "等と興奮しているが。

 

「私の元に戻れ、シャルティア・ブラッド・フォールン」

「……それは叶わないわ、私は魔皇イブ様のは……シモベだもの」

「そうか──ならば力づくで取り戻させてもらおう!」

 

 ここに、シャルティアとアインズの戦いが始まる。

 

 

 

 

 ■

 

 

「何なのだ! これは! どうすればよいのだ!」

 

 リ・エスティーゼ王国国王ランポッサ三世はそう叫んだ。

 その叫びは、この場に居るもの全員の心からの叫びだった。

 

 空を見れば、空を飛ぶアインズ・ウール・ゴウンと敵であるシャルティア・ブラッド・フォールンが訳の分からない魔法の応酬を繰り返し、余波で建物が消し飛んでいる。

 地面を見れば、触手を生やした魔皇イブが建物をまるで武器のように振り回しながら地形を容易く変えている。

 

 まさしく頂上決戦。超越者同士の戦いである。

 

「陛下をお守りしろ!」

 

 そう叫ぶのは王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。

 

 イブが生み出したホムンクルス兵を薙ぎ払いながら精一杯に戦っている。

 

 優勢なのは王国側だろう。魔皇の配下を着々と削れている。

 魔皇の配下は悪魔が七割ホムンクルス三割と言ったところだ。

 

(──この方だけは、何としても守らなければ!)

 

 ガゼフは決意を胸に、鱗の悪魔(スケイル・デーモン)との戦いに挑んだ。

 

 

 

 ■

 

 

 イビルアイとナーベラルが戦う戦場にジェーンが空から地面に叩きつけられた。

 

「舐めるなよ、人間──!」

 

 ジェーンは即座に体勢を直すも追撃してきたパンドラによって縦に両断された。

 

「やった!」

 

 そのことにイビルアイは歓喜の声を上げる。

 だがジェーンが腕を使い頭をくっ付ける事で、驚きの声に変った。

 

「……流石だ、さすがだよ、漆黒の英雄、モモン。余の想定をはるかに上回る強さだ。焦がれてしまうよ」

 

 ふぅ、とジェーンは溜息を吐いた。

 

「だからこそ、提案だ──ここで引くので見逃しては貰えないか?」

 

「なっ……何をいう! 勝負はまだ決まっていないだろう!」

 

 突然の命乞いにも似た発言にイビルアイが抗議の声を上げる。

 

「ほう? ──大方、配下の悪魔が控えているのだろう?」

 

 パンドラがそう発言する。その言葉によってイビルアイも察した。

 

「王都その物を人質にしているのか……!」

「その通りだ、仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)。余は万が一の際も想定して動くのでね──それで、どうだろう?」

「……わかった。受け入れよう」

「そうか──シャルティア・ブラッド・フォールン! 余の元にこい!」

 

 ジェーンの言葉にシャルティアが転移の魔法でジェーンの元に来る。

 遅れてアインズもモモンの傍に転移する。

 

「撤退だ。転移魔法を」

「わかりんした」

「待て、シャルティア! 私の事がわからないのか!」

 

 アインズは叫ぶ。その姿にシャルティアは濡れる。

 その間にプレアデスたち──ナーベラル以外──もジェーンに近づく。

 

「……ではな、人間共。いずれまた会おう」

「<上位転移>(グレーター・テレポーテーション)」

 

 

 かくして、王都動乱は終わった。

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