転生オリ主が魔皇ロールする話 作:野生の生蛇
「……ちょっと変わった配下でも創ろうか」
ジェーンは
「というとまたホムンクルスでありんすか?」
今、ゲルの中にはジェーンとシャルティアしかいない為、ある程度は砕けた口調で話せる。と言っても防音設備が整っていないのでロールプレイは続行だが。
「ああ。試しに作ってみよう」
ジェーンは腹を肥大化させ、そこから新たな生命を作り出す。
肥大化した脂肪はやがて人の頭の形になり、髪の毛が作られ顔となる。
そうして全身を作っていき、ついには分離される。
産まれたのは百七十五センチ程の男だ。
黒髪緑目の若い男である。顔つきは優男といった雰囲気だ。
「お前に名を与えよう」
ジェーンはしゃがみ込んで、男の頬に触れる。
「お前は今からライカードだ。いいな」
「はい……わかりました。主様」
男──ライカードはジェーンを主君と認め、跪いた。
■
ローブル聖王国の万里の長城の如く長い城壁。
その門がある要塞の前に多数の亜人種が攻めて来ていた。
亜人種の軍の中央をジェーン──魔皇イブが通る。
「そこでとまれ、亜人!」
砦の将軍はジェーンのほぼ人間の容姿を前に亜人かどうか悩んだが亜人の軍を支配する者が人間ではないという考えで亜人呼びした。
「ここより先は聖王国の領土である! 亜人が踏み入れていい場所ではない!」
その言葉にジェーンは大人しく足を止め、ポケットから声量拡大のアイテムを取り出す。
「初めまして、だな聖王国の人間よ。余は魔皇イブ。侵略者である」
その名乗りに将軍は震える。
「魔皇イブ! リ・エスティーゼ王国で猛威を振るったという大悪魔か!」
この世界でも悪魔判定されるのか、とジェーンは苦笑する。
「その通り、なのでこの国でも王国と同じことをしよう──」
ジェーンは右腕をブクブクと肥大化させる。
それは巨大な竜の顎に似ていた。
すかさずパベル・バラハが弓矢を放つ。
矢が綺麗に竜の顎となった右腕に着弾するも、少しへこんだだけで意に介さない。
遅れてパベルの部下たちが矢を放つが、こちらは傷一つ付かない。
「──
肉体を操作し竜の顎の形をした砲台でしかない。
放つのは骨の砲弾。爆薬は肉である。
骨の砲弾を形成し、肉を炸裂させることで放つ砲撃。そこにモンクの気の操作の
骨の砲弾が超高速で放たれる。
視力の優れたパベルでも視認する事叶わず、はた目から見ればレーザーにしか見えないだろうそれは城壁にぶち当たり、大爆発を起こす。
轟音と共に崩壊する。
結果、聖王国を百年以上守って来た城壁は容易く崩れ去り瓦礫の山となった。
亜人軍が咆哮を上げた。その声にジェーンは酔いしれる。
「ウォォォオ!」
そこに叫びながら一人の戦士──オルランド・カンパーノが走って来る。
人にとって見れば充分速いのだろうが、ジェーンにとってみれば遅すぎた。
ジェーンは右腕を触手に瞬時に変え、オルランドの首を跳ね飛ばした。
そのまま死体を放置し亜人軍に戻る。
戻ればそこには一様幹部の地位を与えた亜人たち──
そして執事服を着た一見人間に見える男、ライカードもいる。
「集まるのが遅い」
ジェーンは右腕の触手を振るいゼルンの右肩を削る。
「あああああ!」
ゼルンは痛みに悶え、地面をのたうち回る。
「では進軍を開始しろ」
その命令に従い、亜人たちは隊列に戻る。
遅れてゼルンも立ち上がり、己の軍に戻る。
「ふむ……」
ジェーンは腹をブクブクと煮立った湯のように膨れ上がらせ、ホムンクルスを十体程生み出す。
「いけ……全員殺す等という愚は犯さないように」
その命令に従いホムンクルスたちも進軍を開始した。
「さて、どうなるかな」
■
それから数日たった夕刻。ジェーンは一人聖王国の空を飛んでいた。
何時やっても空を飛ぶのはいいものだ、とジェーンは笑う。
空を飛ぶというファンタジーならではの快感はアインズたちナザリック勢にはあまり伝わらない快感だ。
アインズだってモモンガ時代に──というかDMMOの時代に空を飛ぶ感覚を知っている為、今更という感じなのである。
なので空を飛んで楽しいと思うのはジェーンただ一人であった。
そうして十分程飛んでいると目的地である聖王国首都カリンシャが見えてくる。
当然真っ当に入る気はなく、ジェーンは空から急降下し適当な広場に着地した。
「なんだ?!」
「何事だ?!」
きゃあ、という女性の悲鳴も入り混じる。
時刻はまだ夕刻であり、そろそろ帰ろうかと人々が思う程度の時間。人も当然多い。
「少し多いな」
ジェーンは雑に右腕を触手に変え振るい、周囲に居た人間を十人ぐらい殺す。
ジェーンにとっては罪のない一般人を殺す事など慣れた事である。其処に今更感じる事はない。
「化け物だ!」
「警備隊を!」
人々が口走りながら走って逃げていく。
「さて、と」
ジェーンは腹を肥大化させ、ホムンクルスを量産する。
その場にたちっぱで百体近く生み出していく。
生み出したホムンクルスに下された命令は当然、住人皆殺しの命令だ。
(──うん?)
そこでふと、ジェーンは不思議な繋がりを感じ取った。
まるで配下のホムンクルスが手足のように感じ取れるのだ。
これまでも作ったホムンクルスとは魔法的な繋がりを感じていたが、今はそれ以上に感じられる。
(……何か指揮関係のクラスでも得たか?)
しかしそれも悪くないのでは、なんて考える。
指揮関係のクラスでもステータスは上がるし、自分は時折配下を量産して戦うスタイルだ。
ならば配下の強化能力はあって困るものでもなし、いい事であると考える。
「さて、どうなるか」
■
それからしばらく待つと、聖騎士団がやって来た。
丁度ホムンクルスを量産していたところなので聖騎士たちは迷うことなく剣を抜き取りジェーンに襲い掛かる。
ジェーンは量産を辞め、体型を元に戻す。
ジェーンは刹那で動き、聖騎士の眼前に移動。腹に拳を当て、貫通させ殺す。
すぐさま地面を蹴って移動し他の聖騎士の前に移動。移動ついでに蹴りを放ち吹き飛ばし殺す。
三人目に向かってジャンプし、空からサマーソルトキックを放ち蹴り殺す。
「どんどんいこう」
そうして徒手空拳でジェーンは集まった聖騎士を殺し、死体の山を築いた。
そこからまた暫く待つと馬の足音が聞こえてくる。
遂に来るか、とジェーンは年甲斐もなくワクワクする。
馬に乗って来たのは聖騎士団団長レメディオス・カストディオ率いる聖騎士団だ。
レメディオスは馬から飛び降り、ジェーンに斬りかかる。
「お前がイブか!」
ウオォォオ! とレメディオスはイブに聖剣を以てして斬りかかった。
ジェーンは右腕で剣を弾き、後ろに飛ぶ。
「闘牛のような女だな。赤いマントでも振られたか?」
くすり、とジェーンは笑う。
「総員、退け! こいつは強い! 退きながら包囲網を作れ!」
レメディオスは少し距離をとりつつ剣を構える。
遅れて聖王女カルカ・ベサーレスと聖騎士団副団長ケラルト・カストディオが現れる。
数十人の聖騎士を連れ、正しく包囲網が作られる。
一見すると詰みに近いが、ジェーンにとってみればこの程度瞬く間に皆殺しに出来るので何の意味もなしていない。
「あなたが魔皇イブですね?」
「そういう貴様は当代の聖王か……他者のせいで聖王女と名のざる負えんとは、同情するよ」
ジェーンは嫌な笑みを浮かべる。
「……それで、貴方の望みはなんですか?」
「カルカ様、こんな悪魔と話す事なんてありません。とっとと殺して魔界に送還すればいいんです」
「ちょっと姉さま黙ってて、カルカ様は相手の目的を聞き出そうとしてるのよ」
本人たちにとっては小さな声なのだろうが、レベル八十のスペックを持つジェーンにとってみれば普通に話しているのと変わらず聞こえてくる。
「かつて、余はリ・エスティーゼ王国で暴虐と血の雨を降らそうとした。だが、漆黒の英雄モモンによってその計画は阻まれた──故別の国でやり直そうと思った訳だ。だが、この国にもモモンに匹敵する者が居ないのではないかと肝を冷やしていたが……とんだ杞憂だったらしい」
「なんだと! ただの冒険者より聖騎士団団長である私の方が強いはずだ!」
「ちょっと本気で黙ってて」
「故、この国を蹂躙しようと思う」
「そうですか──天使隊! 前へ!」
聖王女カルカの命令に従い
それをジェーンは右腕を触手に変え振るい、全て斬り捨てる。
その隙をついてレメディオスが突撃し、
ジェーンは左手の指で聖剣をつまんだ。
「──なっ!」
自身の攻撃を容易く防いだ。そのことにレメディオスは驚愕する。
ジェーンは指を弾き聖剣を弾く。レメディオスはどうにか手放さないようにした。
レメディオスは後ろに飛び、距離をとる。
その隙をついてケラルトが魔法を行使する。
「
光の光線だ。聖なる力を宿した光であり、悪に属する存在にダメージを与える魔法である。
だが、それまでだ。焼けた皮膚はすぐさまタレントで修復されてしまう。
「
今度は二つの光線がカルカから放たれる。
光線はジェーンの心臓部と腹にあたり、同じように皮膚を焼いた。
だが同じように傷は修復される。
「そんな……」
「再生能力? 何なら突破可能?」
ケラルトはモンスターのデータを思い出しながら再生能力の種を考える。
一部のモンスター、吸血鬼やトロール等は再生能力を持つ。
だが吸血鬼は銀の武器で。トロールは炎か酸で再生を阻害できる。
ならばこのモンスター、イブにも再生を阻害できる属性はあるはずだ。出なければ出鱈目な再生能力など有り得ない。
──実際はその出鱈目な再生能力であり、どんな属性の攻撃でも即座に再生できるが。
「せやぁぁ!」
レメディオスが聖剣を持ってしてジェーンに斬りかかる。
ジェーンは両腕の指を骨の刃に変え、聖剣と撃ち合う。
右腕の骨の刃と聖剣がせめぎ合う。
(なんだと……聖剣で斬れない?!)
聖剣はアダマンタイトにすら勝る謎の金属で出来ている。だというのにその剣で斬れない。
つまり相手の肉体──骨は人類が使える最高位金属すら超えているという事になる。
「どうした? 鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔をして」
ジェーンはニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべる。
そのまま右手で聖剣を弾き、左手で襲い掛かる。
だがレメディオスも聖騎士団団長にまで上り詰めた剣豪だ。すぐさま聖剣で防ぐ。
ジェーンは弄ぶように両手で襲い掛かる。それをレメディオスは本気で防ぐ。
相手は遊び半分程度の力だというのに、レメディオスは本気を持ってしないと防げない。そのことにレメディオスは苛ついた。
「そぉーれ!」
ジェーンは蹴りを放つ。
見え見えの攻撃で防御も間に合う速度だった。だが受けたレメディオスは遠くに飛ばされてしまう。
飛ばされたレメディオスは即座に体勢を直し、叫んだ。
「もっと頭を浸かって天使を使いなさい!」
その言葉によって天使たちがジェーンに群がる。
ジェーンは右手で雑に攻撃をし、一撃で天使を屠る。
ジェーンはまるで流れ作業のように天使を屠っていく。
レメディオスはジェーンに瞬時に斬りかかれる距離をとる。
そうしたのち、天使たちがタックルでジェーンの動きを止める。
「そこだっぁぁぁぁ!」
すかさずその隙をついてレメディオスは武技で強化した突きをジェーンにお見舞いした。
ジェーンは面白いように吹っ飛び、家屋に突っ込んで家を破壊し、瓦礫の下敷きになった。
「やった!」
「いや違う! 奴は自分で飛んだんだ!」
レメディオスは予想以上に飛んだことを獣の如き勘で答えを導き出した。
「──追撃だ! 神官たち、攻撃魔法を!」
レメディオスの言葉によって数人の指揮官が
火球が家屋にぶつかり爆発を起こす。壊れかけた家屋が更に壊れて完全な瓦礫の山となった。
「カルカ様の祝福を出来ますか?」
「わかりました。では聖炎の準備を」
「いえ、簡略化させていただきたい」
聖炎の儀式は高位聖職者のみが行える儀式だ。
悪に属する存在に大ダメージを与える事が出来るが、それは主目的ではなく普段は儀式の一環として使われている。
それを簡略化して行っても与えるダメージ量に違いはないが、術者への負担が大きくなる。
聖王女を守る身としては発言すべきでは無かったが、レメディオスはイブの強さを前にすべきだと考えた。
「わかりました。あなたがそういうのなら」
「それは流石に困るな」
瓦礫の下だというのにその声はこの場の全員の耳元で言われたかのように聞こえた。
瞬間、瓦礫の下から暴風が巻き起こる。
視力の良い者が居ればその風の中に触手が混じっている事に気づけただろうが、残念なことにこの場にはいなかった。
姿を変えたジェーンが瓦礫の山からはい出て来た。
額には黒い三つ目の目が見開き、左手の手首から先は骨の剣に造り替えられ、背中からは六つの触手がビュンビュン振るわれている。
「さぁ、ゆこうか」
ジェーンはとんと地面を蹴って疾走。即座にカルカの眼前にまで移動する。
右腕を伸ばしカルカの左足首を掴む。
「えっ?」
カルカが間抜けな声を漏らした。
カルカと聖騎士の鎧がぶつかり、カルカの綺麗な顔がひしゃげた。
「やめろぉぉぉぉ!」
レメディオスは叫び、ジェーンに挑みかかった──
ストック亡くなったんで更新完全不定期です。
あと四話ぐらいで終わりそう