転生オリ主が魔皇ロールする話 作:野生の生蛇
太陽が沈み、
ジェーンは己の城の一つであるカリンシャの城を歩く。
かつ、かつという硬い靴の音だけが響く。
向かう先は軟禁部屋である。
暫く歩けば目的の部屋に到着する。
見張りの兵士である
中の作りは貴賓室だ。部屋が寝室とリビングに別れている。
リビングの窓の前には女が一人立っており、ジェーンがドアを開けて中に入った事で気づき振り向いて来る。
花に例えられるほどに凛々しさと愛らしさを持つ美貌の顔。
艶めいている金の髪。金髪が天使の輪の様に見える。
着ている服も高位の貴族が着るような仕立ての良い服──聖王女その人であるカルカ・ベサーレスだ。
「魔皇イブ……何の用ですか」
「何。余の配下はどうしているかと思ってな」
カルカはキっとジェーンを睨みつける。その首には首輪がハメられている。
これは魔法が一切行使出来なくなる呪いのアイテムであり名を
名の通り一切の魔法を封じる代わりに物理攻撃力が高くなる装備品である。今のカルカは金級冒険者程度の身体能力を持つ代わりに魔法が一切使えない。
「……あなたの配下だというライカードは私のベッドで寝てますよ」
「なんだ、男女の関係には成らんかったのか?」
「なる訳ないでしょう」
そうか、とジェーンは顎に手を当て考える。
カルカの部屋にはカルカ以外に最近ジェーンが作り上げたホムンクルスであるライカードを入れている。
ライカードは多少知識と技術を持つが、情緒というのが不安定だった。その為人の事を理解させるためにカルカと暮らさせているのである。
その為にカルカを生存させたのかというとそうではなく、単にジェーンがカルカ生存ルートにしたかったというだけである。
「ではもう一度聞こうか──余の配下になるつもりはないか?」
「……絶望と不幸を撒き散らす悪魔の手下に成る気は無いです」
「そうか、残念だ」
ジェーンは何度目かのやり取りをする。
「では、余はそろそろ失礼するとしよう。これでも忙しい身なのでね」
■
シズとネイアはカリンシャにある城に潜入し、目的である
執務室に
シズとネイア、ビービーゼー、連れて来た
「まさか、
そこにドアを開けて執務室に入って来る者が居た。
身長は百七十五センチ程。黒髪に緑目の優男。執事服を纏い、腰にはミスリルの剣を差している。
「──ライカード! やはり来たか!」
ビービーゼーが男の──ライカードの名を叫んだ。
「ライカード……イブの配下の悪魔の一人……!」
ネイアは既にシズやビービーゼーから話をある程度聞いてるため知っていた。
だが、ここまで人間と酷似しているのか、と歯ぎしりをする。
全員が硬直して動けない中、シズが短剣片手に駆け出し、ライカードに斬りかかった。
ライカードは剣を抜いて迎撃し、鍔競り合いが生じる。
「シズ・デルタ……何故主に逆らうのですか?」
「今の私はアインズ様のシモベ。もうイブなんかには従わない」
「なんたることを……!」
ライカードは剣を振るい、シズはバックジャンプで避ける。
「連戦に成りますが大丈夫ですか?」
ネイアは背負っているビービーゼーに話しかける。
先の戦闘で魔力を消耗したはずだ。
「大丈夫だ。まだまだ戦えるとも……!」
「わかりました。行きますよっ!」
ネイアはアルティメイト・シューティングスター・スーパーを使って弓矢を放つ。
ライカードは放たれた矢を剣を持って弾くが、その隙をついてシズが斬りかかり、傷を負わせる。
そう言った戦闘が一分程続く。
「ちっ──」
次第にライカードは苛つき始める。
そも、ライカードに戦闘経験はない。ステータスこそレベル三十ほどあるが、その程度だ。
内訳は種族レベル十職業レベル二十程度である。
だからこそ戦闘経験のあるネイアやシズに圧倒される。
「<陰・五行・豪火球>!」
ビービーゼーが精神系魔法を唱える。第四位階の攻撃系魔法だ。
小さな火球が生れ、ライカードに向かって飛び、着弾と同時に爆発する。
「くっ……妙な魔法を……」
ライカードはそこそこのダメージを受ける。
装備品も現地産の大した装備でない以上魔法体勢も相応に低く、第四位階の攻撃魔法でもダメージは大きい。
シズが蹴りを入れてライカードをノックバックさせ距離をとる。
それと同時にシズはアイテムボックスからハンドガンを取り出し三発撃つ。
胴体に二発。左足に一発当たりライカードは膝をついた。
だがすぐさまライカードは立ち上がる。それでもダメージは蓄積している。
このままいけば勝てる──そう思った時ライカードの背後に黒い楕円形の光が生れる。
「
シズが魔法の門を睨んだ。
──瞬間。この場の全員が恐怖に怖気づいた。
巨大な獣を前にしたような、薄氷の上に立っていたのを知らされたような恐怖。
「おんやぁ? これはどういう状況でありんす?」
出てきたのは絶世の美少女だった。
銀髪と白磁の肌を持ち、赤と紫を基調としたボールガウンとヘッドドレスを付けた少女だ。
その瞳は爛々と赤く輝いている。
「シャルティア、ブラッドフォールン……!」
シズがシャルティアの名を呼んだ。
「シズ! 知ってるの?」
すかさずネイアが問いかける。
「……魔皇イブに従う最高位幹部。今の戦力では絶対に勝てない」
「そんな……!」
「確かに今のわらはイブ……様に従う者でありんすね」
くすり、とシャルティアはほほ笑んだ。
「さて、どうやらライカードもピンチの様子……ここは撤退するでありんすよ」
撤退、という言葉にネイアは疑問を抱いた。
自分たちを皆殺しに出来る怪物がやすやすと撤退を選ぶ? 何か狙いがあるのか?
「待ってください……我が主の敵がまだ……」
「煩いでありんすねぇ」
シャルティアはライカードの眼前まで瞬時に移動すると腹に拳を入れる。
それだけでライカードはこれまで以上のダメージを受け、気絶した。
「では、さらばでありんす」
そうしてライカードを担いでシャルティアは撤退した。