海の恐怖!グラ・バルカス帝国海軍vs原子力潜水艦   作:通常弾頭

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第十一話

第3文明圏 アルタラス王国周辺海域

 

 戦艦〈ラ・カサミ〉の沈没地点。

 脱出した乗組員たちがその沈む戦艦の姿を見送り、悔しさを滲ませ、辺りが沈黙に包まれる中、目の良い乗員の一人が何かを見た。

 

「司令!東の方より、何か来ます!」

「なんだ……?」

 

 その乗員の言葉を受け、司令官のレイダーは東の方角を見た。その言葉に釣られ、艦長のミニラルや他の乗組員達もその方角を見る。

 見えて来たのは、一対の巨大な翼を持つ鋼鉄の飛行物体。それは彼らから見える範囲に近づくと、翼を展開し、急激に速度を緩める。

 目の良い乗員が、その展開された翼に日の丸が描かれていることに気がついた。

 

「あれはニホンの哨戒機だ!救援です!」

 

 その言葉に、ボートで浮かんでいた乗組員達は沸き立って喜んだ。日本の救援がこんなにも早く到着するとは思っていたなかったからだ。

 


 

日本国海上自衛隊 航空集団 第1飛行隊

 

 彼らが見たのは、日本国海上自衛隊で配備が進む()()()新型哨戒機"P-1"だった。

 アルタラス王国のル・ブリアス航空基地よりスクランブル出撃したこの機体は、アフターバーナーを全開にし、全速力で現場海域に向かっていた。

 この機体は日本が原子力潜水艦を実際に保有したことで、仮想敵国の有する原潜を想定したドクトリンを改定したことで生まれた機体である。

 見た目は小柄なB-1爆撃機といった印象で、潜水艦捜索のための短距離離陸・低速低空飛行能力を持ちつつ、可変翼と新型エンジンによる音速飛行も可能という、哨戒機にしては珍しい特性を併せ持ってる。

 要は仮想敵の潜水艦が急に現れても、音速で飛行し現場に急行できる機体なのだ。

 派遣された機体が現場に到着すると、まず周りを双眼鏡で確認していた副機長が状況を機長に伝える。

 

「機長、付近にムー海軍の艦艇を確認しました」

 

 彼は現場海域の周辺にムー海軍の艦艇が存在するのを確認した。

 そして円陣の中央にて沈みゆく〈ラ・カサミ〉を確認し、機長にそれを伝える。

 

「……旗艦は沈んでいるようです」

「敵の潜水艦がまだ近くにいるはずだ。仇を討つぞ。減速しつつ旋回に移れ」

 

 機長は簡潔な命令を伝えると、機体の可変翼を広く展開して高度を下げた。

 そして機体後部に取り付けられた磁気探知機を作動させ、低空を這うように飛行して敵潜水艦を探した。

 ソノブイも投下しようと思ったが、その結果は意外にも早く出た。

 

「探知機より機長へ。方位206、距離6000に敵潜水艦の痕跡を確認」

「よし、向かうぞ」

 

 機長は機体を大きく旋回させ、発見した敵潜水艦の痕跡の上空に到着。

 目標に対して進路を合わせ、爆弾倉を解放。機長は武装から爆雷を選択した。

 

「スタンバイアタック……アタック、ナウ!」

 

 その言葉とともに、機長は投下ボタンを親指で押す。その途端、爆弾倉から爆雷が二つ落とされた。

 着水した爆雷はそのまま深く沈んでいき、そこにいる潜水艦に対してゆっくりと傷を付けようとした。

 


 

シータス級大型潜水艦〈ミラ〉

 

「なんだ、あの機体は……?」

「分かりませんが、おそらく日本の哨戒機かと……」

 

 その少し前、潜水艦〈ミラ〉は潜望鏡からその機体を確認していた。

 奇妙な機体はなんと翼を大きく展開し、その角度を変えている。そして、急旋回してこちらに接近していた。

 副長の憶測にハッとした艦長は、即座に命令を下す。

 

「急速潜航!面舵いっぱい!」

「了解です。急速潜航!スターボード!」

 

 その命令により、潜水艦の中は静かながらに忙しくなる。急速潜航で敵哨戒機の磁気探知機から逃れようと、深く深く潜る。

 グラ・バルカス帝国の常識では、5ノットの低速で機関を停止し、深く潜れば磁気探知機には見つからない筈だった。

 だが、水面近くで何かが落とされる音を聞き、ソナーマンが吠えた。

 

「艦長、敵哨戒機より爆雷です……!」

「くそっ、気づかれたか……」

 

 なんと言うことか、ニホンの哨戒機はこちらの位置を掴んで爆雷を投下して来た。しかもかなり近い位置に聞こえた。

 

「(頼む、当たらないでくれ……!)」

 

 艦長含めた全員が口を紡ぎ、祈るように外れる事を願った。だが、その直後に激しい衝撃で艦内が揺さぶられる。

 

「損害報告!」

『バラストタンク損傷!艦内に浸水発生!』

 

 艦長が艦内に吠えると、電話回線から後部乗組員の悲鳴が聞こえた。

 その損害はかなり致命的で、浸水はこのままでは電動機室にまで伝わり航行不能……最悪沈没する可能性すらあった。

 

「艦長!今浮上しなければやられます!」

「緊急浮上!!」

 

 こうなれば潜水艦に立場はない。

 艦長は残りのバラストタンクから全ての海水を吐き出し、緊急浮上を決断した。

 潜水艦〈ミラ〉がゆっくりと海面近くに浮上していく中、ダメージコントロールを指揮しつつ、艦長は対空機銃類を指揮する甲板長に向かって吠えた。

 

「対空機銃、応戦用意!こうなったら敵の哨戒機を撃ち落とすぞ!!」

「ヤヴォール!返り討ちにしてやりますよ!!」

 

 艦長の指示を受け、甲板長以下対空機銃の操作要員達がセイル付近で待機。すぐにでもハッチを開いて甲板に出られる状態で待ち構えた。

 


 

日本国海上自衛隊 航空集団 第1飛行隊

 

「敵潜水艦、浮上しています」

 

 一度爆雷を落とし、戦果確認をしている最中。

 破片と気泡を確認し、再アプローチに入ろうとしていたその時、磁気探知機で潜水艦が浮上しているのが確認された。

 それと同時に、水面に潜水艦の艦首が現れた。鋭利なナイフのような船体と使われていない航空機格納庫。

 その姿は、第二次世界大戦時最大の潜水艦である伊号400型潜水艦に似ていた。

 副機長が双眼鏡で確認すると、その艦上に設けられた対空機銃に人が集まろうとしているのが見えた。

 

「機長!対空砲座に人が集まっています!」

「銃座に人が付く前に仕留めるぞ。対潜爆弾用意!」

 

 機長は爆弾倉に設けられた特殊なパイロンを操作し、浮上した敵潜水艦に対して使うMk.84無誘導爆弾に切り替えた。

 敵潜水艦は今にも射撃して来そうだ。ここまで近いと被弾したらP-1でも危ない。勝負はまだ相手が撃てない今しかない。

 

「ボムズアウェイ!」

 

 位置に着いた途端、機長は全てのMk.84無誘導爆弾を敵潜水艦に向かって放り投げた。

 その全てが吸い込まれるように、潜水艦の周囲に着弾すると、二発が艦に直撃して爆発を起こす。

 艦首と中央に被弾した敵潜水艦は、魚雷と対空砲の弾薬に引火したのか、連続してあちこちで爆発が発生。そのまま反撃される事なく敵潜水艦は沈んでいく。

 

「敵潜水艦、撃沈」

「よしっ……」

 

 機長はP-1初の実戦投入による戦果に喜びつつ、自機が無傷である事を確認するとホッとした。

 他に敵潜水艦が居ないかを確認したが、探知機によると潜水艦の反応はこれ以上なかった。敵の脅威は過ぎ去ったが、ムーの戦艦はもう海の底へ沈んで見えなくなっていた。

 


 

日本国防衛省

 

「今回はムーの戦艦が被害を受けたが、位置的に見て日本の商船が被害を受けていたかもしれないな」

「早急に対策しなければなりません」

「第三文明圏までなら、既存の護衛艦で護衛すればいい。問題はそれ以降だが……」

 

 日本国防衛省の会議室にて、今回のグラ・バルカス帝国の潜水艦の出現について、深く議論されていた。

 今回の件を受け、各地の港を出港予定だった商船やタンカーなどは運行を停止している。このような状態が続けば、経済にも影響が出てしまう。

 

「流石の伊号400型潜水艦でも、レイフォル沖から無補給で来るのは困難でしょう。どこかに補給基地があるはず……」

「なら叩くしかないだろう。防衛出動の一環として敵潜水艦とその基地を全て破壊するべきだ」

 

 積極的な防衛省幹部がそう言うが、反対意見も多数上がる。何せ彼らはどこにグラ・バルカスの基地があるか分からないままだったからだ。

 

「まだどこに潜水艦基地があるかはわからない以上、虱潰しにするのは難しいぞ」

「衛星から見ても痕跡を見つけるのは難しいでしょうし……」

 

 幹部らがそう言うが、ここで空自から出向していた三津木という若手幹部が手を挙げた。

 

「あー、失礼?それなら、私にいい考えがあります」

「え?」

 

 その言葉を受け、三津木に注目が集まった。

 

「要は敵の潜水艦基地を無力化してしまえば良いんでしょう?なら、後はグラ・バルカス帝国にまで打撃を与えられますよ」

「……?」

 

 三津木の言葉には、幹部らは首を傾げた。

 だが、最終的にこの会議は夜まで続いた。

 




ちなみに今回出た可変翼P-1は実際にあった計画案だそうです。
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