『始祖の見る朝日』~ロリ鬼はなぜ、無惨様を太陽の下に連れ出したのか?~   作:この俗物怪物くん

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本章では、那田蜘蛛山事件の“再演”が、
朱鷺という異物の手によって、完全に別の結末へと書き換えられます。

彼女は微笑みながら真実を捻じ曲げ、鬼と人との間に一日限りの“夏の平和”を創り出す。

これは、太陽の下でスイカを割った鬼たちの、
優しすぎて残酷な夜の物語です。


日輪の下でスイカを割る鬼たち

川に足をつけながらの奇妙な対話は、いつまでも続くかのように思われた。 炭治郎が語る「鬼」の悲劇と、鬼殺隊の使命。 朱鷺(とき)は、それをただ「ふむふむ〜」と相槌を打ちながら聞いていたが、やがて、ぱん、と手を叩いた。

 

「なるほど〜、よく分かりました〜。大変ですのね〜、鬼殺隊というのも」

 

彼女は、にっこりと、しかし有無を言わせぬ笑顔で続ける。

 

「それで? 貴方たちがこの山で探していたという『鬼』は、おりましたか? いなかったのではありませんこと?」

「そ、それは…! 確かに、今は気配が…!」

「でしょう? ならば、もうお帰りなさいな。ここは九条家の敷地ですの。不法侵入は、本来ならお奉行様へ突き出して、しばらくお白洲(しらす)から出てこられなくなるほどの重罪ですのよ? 今回は、貴方たちがまだ子供(※見た目)であることと、わたくしの温情で見逃して差し上げますから」

 

おっと、ここで『不法侵入』という正論と、『温情』という名の脅しをかけてきました! さすが朱鷺ちゃん、交渉術もSSS級です!

 

しかし、炭治郎は食い下がる。彼の鼻は、目の前の三人が放つ、微かだが確かな「鬼」の匂いを捉え続けているのだ。

 

「ま、待ってください! あなたたちは…本当に、人間なのですか!? その匂いは…!」 「そ、そうだよ! 音だって、なんか変なんだよ!」

「お前ら、本当は何者だ!」

 

朱鷺は、心底不思議そうな顔で、首を傾げた。

 

「まあ、失礼な。わたくしたちが人間でなくて、何だというのです? 貴方たちのお話にあった『鬼』は、日光に当たると塵になって死んでしまうのでしょう?」

 

彼女は、燦々と輝く太陽を指差した。

 

「ご覧なさいな。わたくしたちは、このお日様の下で、もうどれだけお話していますこと? これでも、まだ疑いますの?」

 

「だ、だけど…! もしかしたら、あなたたちは…日光を克服できたのかも…!」

 

その言葉に、朱鷺は、初めて表情を消した。 そして、氷のように冷たい声で、核心を突いた。

 

「…もし、そうだとしたら?」

「え…?」

「もし、わたくしたちが、日光を克服した鬼だとしたら…貴方たち鬼殺隊は、もはや存在意義がないのではありませんこと? どうやって、我々を滅ぼすのです? 貴方たちの拠り所である『太陽』が効かないのですよ? そうなれば、鬼は無敵。 人間が、我々に抗う術は、もう、ないのですわ」

 

その、あまりにも絶対的な論理。 炭治郎、善逸、伊之助は、言葉を失った。 もし本当に、目の前の鬼(かもしれない存在)が日光を克服しているとしたら、自分たちの戦いは、あまりにも無力だ。

 

朱鷺は、再びいつもの笑顔に戻ると、優しく諭すように言った。

 

「ともかく、今日はお帰りなさいな。わたくしたちは、避暑に来ているだけですの。このような美しい場所で、荒事になるのは好みませんわ。ねえ、あなたたち?」

 

彼女が隣を見ると、猗窩座と累が、無言で、しかし力強く頷いた。

 

「…主(朱鷺)の言う通りだ」

「…母上の邪魔は、しないでください」

 

言いしれない圧! 猗窩座さまと累くんの無言の肯定が、朱鷺ちゃんの言葉に、とてつもない重みを与えています!

 

それでも、まだ納得できない表情の炭治郎たち。 朱鷺は、仕方ないわね、というように、ポンと手を打った。

 

「あらあら〜、分かりましたわ。貴方たちも、任務で来た以上、手ぶらでは帰りにくいのでしょう?」

 

彼女は、川で冷やしていた残りのスイカを、次々と取り出した。

 

「はい、これをお土産に差し上げますわ! まだまだたくさんありますから、一人二つずつ、どうぞ〜!」

 

大きなスイカを、半ば強引に三人に持たせる。

 

「い、いや、そういうことじゃ…!」

「(スイカは嬉しいけど…!)」

「(やった! スイカだ!)」

 

そして、朱鷺は、満面の笑みで、最後の言葉を告げた。 それは、慈悲のようでもあり、宣戦布告のようでもあった。

 

「分かりましたわ! じゃあ、貴方たちの言う通り、わたくしたちは『鬼』だということにしましょう!」

「!?」

「わたくしたちが鬼なら、またすぐに会うことになりますわ。特に、わたくしたちの身分(九条家)も、この顔も、貴方たちに知られてしまったのですから。次に会った時は、殺すしかありませんわよね?」

「貴方たちも、鬼を見逃してはおけないのでしょう? ならば、その時に、殺して差し上げますから…ね」

 

彼女の赤い瞳が、妖しく煌めく。

 

「貴方方も、その時には、この首を斬るつもりで、かかって来なさいな。…まあ、斬れるものなら、ですけど〜?」

 

その言葉を最後に、朱鷺は、猗窩座と累を伴い、川の上流へと姿を消していった。 後に残されたのは、重いスイカと、それ以上に重い混乱と恐怖を抱えた、三人の少年たちだけだった。

 

 

 

 

◇◇

 

 

いやー、スイカ作戦、大成功でしたね! 炭治郎くんたちを完全に煙に巻くことができました。友好度は下がりませんでしたが、彼らに強烈な『混乱』デバフを付与し、戦闘を回避。これぞ、知略と財力(スイカ代)の勝利です! さあ、彼らが帰れば、この那田蜘蛛山編も…

 

【!】 [緊急通信受信:送信者 - 鬼舞辻無惨]

 

おっと!? 無惨様から直接、念話(テレパシー)…!? いったい何事…!

 

「…朱鷺(とき)。その場にいる、『日輪の耳飾り』の少年…そいつを、今すぐ、殺せ」 「(…っ!? お兄さま…!?)」

「理由は問うな。私の決定だ。…必ず、仕留めろ」

 

プツン。 通信が切れる。

 

な…! なぜこのタイミングで! まさか、無惨様も、炭治郎くんの『何か』に気づいたのか…!? くそっ! せっかく穏便に済ませるつもりだったのに!

やれやれ…せっかく避暑(バカンス)のつもりだったのに、全力戦闘になりますね…

 

 

朱鷺は、一瞬にして表情を切り替えた。 踵(きびす)を返し、帰ろうとする炭治郎たちを、満面の笑みで呼び止める。

 

「あらあら〜、皆様、もうお帰りですの〜? せっかくここまでいらしたのに、日帰りでは味気ないでしょう?」

「い、いや、しかし…! 俺たちは任務中だし…!」

「まあまあ〜。もう日は傾いておりますし、今からあの暗いトンネルを戻るのは危険ですわ。わたくしたちの別荘にお越しなさいな。 大したお構いもできませんが、お布団くらいはご用意できますわよ。明日になれば、麓(ふもと)まで自動車でお送りしましょう」

 

出ました! 朱鷺ちゃんの『嘘』スキル! 彼女の美貌と、先ほどの(比較的)穏やかな対応も相まって、説得力が異常に高い!

 

炭治郎たちは、一瞬、躊躇(ためら)った。 目の前の少女たちが鬼である(かもしれない)という疑念は、消えていない。 しかし、連日のトンネル掘りと山中探索で、彼らは疲労困憊だった。 そして何より、炭治郎には、この不可解な存在を、もう少し見極めたいという思いもあった。

 

「…わかった。…お言葉に甘えさせてもらう。だが、俺たちは鬼殺隊だ。怪しい動きを見せたら、容赦しない」

「(にこにこ〜)もちろんですわ〜。さあ、こちらへ〜」

 

朱鷺は、内心で舌を出しながら、一行を例の「お洒落な山の家」へと案内した。 道中、猗窩座(あかざ)と累(るい)が、小声で朱鷺に尋ねる。

 

「…朱鷺。なぜだ? あの少年は、殺せとの御命令だったはず」

「…母上…?」

「(小声で)…お兄さまからの指令ですわ。『日輪の耳飾りの少年を殺せ』と」

「…!」

「どちらにせよ、夜でなければ、貴方たちも十全には力を出せないでしょう? 夕飯までは、仲良くしましょう。 その方が、油断もしてくれるでしょうし」

 

猗窩座と累は、その言葉を聞き、一瞬で思考を戦闘モードへと切り替えた。

 

 

別荘での時間は、奇妙なほど穏やかに過ぎていった。 炭治郎たちは、久しぶりの布団でぐっすりと昼寝をし(※朱鷺が用意した、最高級の羽毛布団)、 夕食には、山の幸(※人間が食べられるもの)を使った、豪勢な料理が振る舞われた。 禰豆子も箱から出て、最初は警戒していたものの、朱鷺や累(※見た目が子供)と、意外にも打ち解けて話している。 匂いや音は、依然として奇妙なままだが、敵意は感じられない。

 

食事が終わる頃。 朱鷺は、にっこりと炭治郎に尋ねた。

 

「さて、炭治郎さん。お食事は、美味しかったですか?」

「あ、ああ…。とても、美味しかった。ごちそうさま」

 

その言葉を聞いた瞬間。 朱鷺、猗窩座、累の三人の雰囲気が、一変した。 穏やかだった空気が、氷のように冷たく張り詰める。

 

三人は、ゆっくりと立ち上がり、擬態を解いた。 朱鷺の瞳は、より深く、妖しい赤に。 猗窩座の全身には、罪人の証である文様が浮かび上がる。 累の瞳には、下弦の伍を示す数字が刻まれた。

 

「それは、ようございました〜」

「では、食後の『運動』と参りましょうか」

「改めて名乗りましょう。わたくしの名は朱鷺。かつては上弦の弐、今は御方(※無惨の名は言わない)の側近を務めております〜」

「俺は猗窩座。上弦の参だ」

「…累。下弦の伍…」

 

「貴方たちの感覚は、正しかった。わたくしたちは、ご明察通り『鬼』ですわ」

「!!!」

「ひぃぃぃ!」

「(ギリッ…!)」

 

朱鷺は、心底残念そうに、しかし、どこか楽しげに続けた。

 

「本当に、ただ避暑に来ていただけですのにねぇ。貴方たちを見逃すつもりだったのですが…御方の指令とあっては、是非もなし。死んでもらいましょうか」

 

彼女は、部屋の時計をちらりと見る。

 

「大丈夫ですわ。ちゃんと、食後の厠(かわや)を済ませて、貴方たちの刀を取りに行く時間くらいは、お待ちしますから。悔いの残らないように、身支度をなさいな」

 

そして、にっこりと微笑む。

 

「あ、それと。わたくし、この別荘(うち)は壊したくないので、お話の続きは、外でいたしましょうね?」

 

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回は那田蜘蛛山を、誰も血を流さない避暑地として描いてみました。

炭治郎たちを手のひらで転がす朱鷺の姿を、
「優しさ」と見るか、「恐怖」と見るか――
読者の皆さまの解釈が分かれるところかもしれません。


もしよければ、あなたの感じた朱鷺の笑顔の意味を教えてください。
コメント欄での感想、とても励みになります。
次章、いよいよ「夜会戦」が始まります――。
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