『始祖の見る朝日』~ロリ鬼はなぜ、無惨様を太陽の下に連れ出したのか?~ 作:この俗物怪物くん
かに見えたその夜、無惨の琵琶が鳴り響く。
そう、あの“パワハラ会議”が再び始まろうとしていたのだ。
下弦の鬼たちの運命を懸けた朱鷺の交渉、そしてまさかの“娘”誕生。
一方その頃、帝都を走る夜汽車では――
鬼の一家が、地獄の家族旅行を満喫していた。
無限列車異聞。
鬼の視点で語られる“もう一つの旅路”が、今、始まる。
いやー、那田蜘蛛山の一件、上手くやりました! 累くんを保護し、炭治郎くんたち鬼殺隊主力も(システム上とはいえ)生存させ、しかも無惨様の友好度低下も防ぐ! これで、当分は穏やかな日々が…
ベベン!
…ん? この琵琶の音は…まさか…!
気づけば、朱鷺は無限城に召喚されていた。 そして、目の前には、下弦の鬼たちが勢揃いしているではないか! (※累くんは朱鷺の『息子』として別枠扱いのため、ここにはいない)
で、なんでパワハラ会議が招集されてるんですか!?前回(累くん救出作戦)は、このイベント、発生しなかったじゃないですか! なぜ!?
玉座に座る無惨様の表情は、最高潮に不機嫌である。 彼は、集まった下弦の鬼たちを、ゴミでも見るかのような目で見下している。
「…集めた理由は分かっているな? 下弦の鬼どもよ」
「は、はい…! 無惨様…!」
「(ガクブル)」
「貴様らは、あまりにも弱すぎる」
「先日、那田蜘蛛山で鬼狩りどもと一戦交えたそうだが…報告によれば、柱二名を重傷に追い込み、隊士五十名を殲滅したのは、ほとんど累一人の戦果だそうではないか!」
あー! そういうことか! あの時の報告、朱鷺ちゃんが『面倒なので、全部累くんが頑張りましたってことにしとこ〜』って、虚偽報告したせいだ!
その結果、無惨様の中では『下弦の伍(累)があれだけやれたのに、他の下弦は何をやっているんだ! 使えん!』という思考回路になったんですね! いくらなんでも求めるレベルが高すぎます! これは読めません!
きっと、このゲームの無惨様のAIを担当した開発者は、性格も無惨様なんでしょう。根性が捻じ曲がってるに違いありません!
「よって、今日限りで下弦の鬼は解体する。貴様らは、ここで死ね」
絶望に染まる下弦の鬼たち。
まずい! ここで下弦を全滅させられたら、後の『仕事人プレイ』の標的(食料)が減ってしまう! それに、魘夢くんには無限列車編で活躍してもらわないと…! なんとか介入しないと!
朱鷺は、すっと前に進み出た。
「(にこにこ〜)お待ちくださいまし〜、お兄さま〜」
「…なんだ、朱鷺。貴様は下がっていろ」
「まあまあ〜。彼らも、まだ使い道があるかもしれませんわよ〜? このまま処分してしまうのは、少々もったいないのでは〜?」
無惨は、少し考える素振りを見せた。
「…ほう? 例えば、どう使うというのだ」
よし! ここで選択肢! なんとか、生存ルートを選ばなければ!
▼ 無惨様への提案
① 「一人ずつ、わたくしが『告解ノ雨』で溶かして差し上げますわ」
② 「全員まとめて、『告解ノ雨』の大雨で洗い流しましょう」
③ 「お兄さまが粛清なさるお姿を、わたくし、傍で踊りながら拝見したいです〜」
④ 「わたくしの『告死の剣』で、芸術的に切り刻んでご覧にいれますわ」
⑤ 「わたくしの血鬼術に耐えられた者だけ、伸びしろありと見なし、再教育するのはいかがでしょう?」
なんで選択肢が5つあるのに、言ってる内容が全部『自分で粛清する』なんですか!? ふざけてる!
こ、これなら、まだ⑤が一番マシか…!? 生き残る可能性が、僅かにある…!
「(にこにこ〜)⑤番で、お願いいたします〜」
残酷? よく見てください! 他の選択肢を! まだマシでしょう!
無惨は、少し考えた後、ニヤリと笑った。
「面白い。よかろう。だが、条件がある。貴様の血鬼術、全力で、一分間。それで生き残った者だけ、許してやろう」
ぜ、全力で一分!? 鬼でも即死レベルですよ! まあ、やるしかありません! 下弦のみんな、頑張って生き残って!!
朱鷺は、下弦の鬼たちに向かって、慈愛に満ちた(ように見える)笑顔を向けた。
「皆様〜。お兄さまのご慈悲ですわ〜。わたくしの『雨』、全力で受け止めてくださいましね〜?」
そして、彼女は祈りのポーズを取った。
「血鬼術――告解ノ雨」
「「「ぎゃあああああああああああああああ!!!!」」」
無限城に、下弦たちの絶叫が響き渡る。乳白色の酸の豪雨が、容赦なく彼らの肉体を溶かしていく。
(目を覆いながら)あわわわ…! 見てられない…! でも、頑張れ! 超頑張れ!
一分後。 雨が止んだ時、そこに立っていたのは…
魘夢くんだけ…!? いや、彼はまあ、しぶといから分かりますけど…あれ?
魘夢の隣で、下弦の肆・零余子(むかご)ちゃんが、身体の半分以上を溶かされながらも、かろうじて息をしていた!
零余子ちゃん!? 意外! よく生き残った! …もしかして、彼女の血鬼術が影響あったのでしょうか?
ちなみに、このゲーム、下弦の鬼の血鬼術は、原作に描かれていない鬼に関しては、完全にランダムで周回ごとに変わるんです。もしかしたら、零余子ちゃん、今回『酸性耐性(微)』みたいな、地味だけど役立つ血鬼術を、たまたま引いていたのかもしれません!
無惨は、生き残った二人を見て、満足げに頷いた。
「ふむ。まあ、多少は骨のある者もいたか。よかろう、生き残った褒美だ」
彼は、自らの血を、魘夢と零余子に、さらに大量に注ぎ込んだ!
「(恍惚)ああっ…! 無惨様…!」
「ぎゃあああ! 痛い! 痛いぃぃぃ!」
あー! 無惨様、さらに血を注いでますね〜! これに適応できなければ、結局は死ぬんですが…。頑張って生き残ってくださいー!
朱鷺は、血の奔流に苦しむ零余子ちゃんの姿を、なぜか羨ましそうに見つめていた。
「(じゅるり…)いいなぁ、零余子ちゃん…。お兄さまの血、あんなにたくさんもらえて〜。わたくしも、もっと欲しいです〜…」
(ドン引き)…朱鷺ちゃん…。あなたのその思考回路が、一番怖いです…
こうして、下弦解体パワハラ会議は、予想外の生存者二人を出し、幕を閉じた。 そして、朱鷺の異常なまでの無惨様への忠誠心(?)は、さらに深まっていくのだった。
◇◇
いやはや、驚きました! あの地獄のパワハラ会議(粛清)を、下弦の肆・零余子ちゃんが、まさか生き残るとは! しかも、その後の無惨様の追加の血にも、無事に(?)適合したようです! おめでとう、零余子ちゃん!
で、そんな彼女を見た朱鷺ちゃんですが…
「まあ! 零余子ちゃんも、わたくしと同じで、髪が白いのですわね〜! これはもう、運命ですわ!」
「へ?」
「今日から、貴方はわたくしの娘ですわ! 累くんの、お姉ちゃんね!」
「…姉上…?」
「ええええええ!?」
というわけで、朱鷺ちゃんファミリー、増員です! どうやら、白髪という共通点だけで、娘(累の姉役)にすることにしたようです。もう、このゲーム、選択肢とバトル以外は、基本的にキャラクターが勝手に動くので、こういう突発的なイベントが起こりがちなんですよね…
さて、娘になったことで、零余子ちゃんのステータスがようやく開示されました。ふむふむ…ステータス自体は、やはり強化された累くんよりは劣りますが、流石に下弦の鬼、といったところでしょうか。問題は、血鬼術…?
[血鬼術名:『蜃(しん)』]
[効果:自らを『可能性の霧』に包み、現在の自分と、『あり得たかもしれない自分』を任意に入れ替える]
なんか、概念的ですが、これ、とんでもなく強力なのでは!?
つまり、パワハラ会議の時は、『ギリギリ生き残る可能性があった自分』と、死ぬ寸前の自分を入れ替えた…ということでしょう! ただ、『生き残る可能性』が皆無…例えば、日光の下で完全に逃げ場がない、とかだと発動しないんでしょうね。攻撃も、『当たらなかった可能性のある自分』と入れ替わるとかで、回避できそうです!
「まあ! 零余子ちゃん、すごい術をお持ちですのね〜! さすが、わたくしの娘ですわ〜!」
「(母…? 姉…? よく分からないけど、なんだか褒められてる…?)」
朱鷺は、早速、新しい娘(零余子)に、全力でお母さんムーブをぶちかましています。 着せ替え人形にしたり、髪を結ってあげたり…。零余子ちゃん、完全に戸惑っていますが、朱鷺(無惨様の側近)に逆らえるはずもなく…。
さて、家族も増え、帝都での『仕事人』プレイも順調。そろそろ、原作における『無限列車編』の時期ですが、下弦の壱・魘夢(えんむ)くんはパワハラ会議で生き残りましたが、このルートでは無限列車は襲わないはず。特に何もせず放置で…
ベベン! (無限城への召喚音)
「あらあら〜、お兄さま(無惨)〜。どうなさいましたの〜?」
「朱鷺。命令だ。魘夢が、今宵、無限列車というものを使って、鬼狩りどもを始末するらしい。貴様は、猗窩座(あかざ)と共に、その見届け役として同行しろ」
できませんでしたー! なんで!? このルートでは発生しないはずじゃ…! あ、そうか! 魘夢くんが生き残ったから、彼が独自に計画を実行に移したのか! そして、無惨様は、それを朱鷺ちゃんと猗窩座さまに監視させると…! くそっ! 面倒なことに!
朱鷺は、しかし、この予想外の任務に、目を輝かせた。
「(ポン!)まあ! 電車! あれに乗ってみたかったのです〜! 分かりましたわ、お兄さま〜! じゃあ、家族そろって、電車の旅に行ってまいります〜!」
「…は? 家族…? いや、貴様と猗窩座だけで…」
「いってきまーす!」(ベベン!←無限城から退室)
「………(ため息)」
どうしてそうなる!? いや、まあ、朱鷺ちゃんらしいですが…!
という訳で、現在。 夜汽車――無限列車の中。 一つのボックス席に、四人の男女(?)が座っていた。
朱鷺(母): (窓の外を眺めて、わくわく〜)
猗窩座(父?): (腕組みをして、仏頂面)
累(息子): (分厚い本を読んでいる)
零余子(娘): (落ち着かない様子で、そわそわ)
全員、人間に擬態している。
…絵面だけ見ると、普通の家族旅行なんですけどねぇ…。中身は、元・上弦の弐(側近)、上弦の参、下弦の伍、下弦の肆ですからね…。地獄かな?
………しかも…
「うまい! うまい! うまい!」
三つほど後ろの席から、やたらと威勢のいい声が聞こえてくる。炎柱・煉獄杏寿郎だ。彼は、猛烈な勢いで牛鍋弁当をかき込んでいる。
うわぁ…。このルートでも、煉獄さんは乗車してるんですね…。うるさい…
「…(煉獄を一瞥し)…あの男。ただ食欲旺盛なだけではないな。あの食への集中力、隙のなさ…素晴らしい。至高の領域に近い」
何言ってるのこの人。 食べることに至高の領域とかあるんですか…?
「(猗窩座の腕をつんつん)狛犬くん。今は、あの人を襲ってはダメですよ〜。魘夢くんのお仕事の邪魔は、しないように、とのことですから〜」
「…分かっている、朱鷺」
「(小声で)…あのぅ…母上…。本当に、私たち、ここにいて大丈夫なのでしょうか…。鬼狩りの柱もいますし…」
「(本から目を離さず)…姉上。母上のやることに、口を挟むのは無駄だと、もう学んだでしょう。慣れることです」
「うぅ…なんで私が…こんな地獄に…」
朱鷺は、そんな娘(零余子)の頭を撫でながら、にっこりと微笑んだ。
「まあまあ〜、零余子〜。心配いりませんわ。この列車、終点に着く頃には、きっと、わたくしたち四人だけになっていますから〜」
その笑顔は、天使のようであり、悪魔のようでもあった。
それでは、皆様! 地獄の家族旅行付き・無限列車編! スタートです!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回はついに、朱鷺ファミリーが“列車でお出かけ”することになりました。
那田蜘蛛山の血戦から一転、完全コメディかと思いきや、
朱鷺・猗窩座・累・零余子という歪な家族構成が、
意外にも“人間味”を帯び始めています。
特に、零余子(むかご)ちゃんの血鬼術『蜃(しん)』――
「あり得たかもしれない自分」と入れ替えるという能力は、
この世界そのものの“分岐構造”を象徴しているようにも思えます。
皆さんは、朱鷺ちゃんたちを
どんな「家族」に見えたでしょうか?
鬼の絆か、悪夢の劇か、あるいは哀しき信仰の残滓か…。