『始祖の見る朝日』~ロリ鬼はなぜ、無惨様を太陽の下に連れ出したのか?~ 作:この俗物怪物くん
今回は、その続き――無限城での地獄のような胃腸クライシスを経て、
いよいよ“鬼ルート”が本格始動します。
「青い彼岸花」と「止瀉薬」という、誰も想定していない組み合わせで、
まさかの“太陽克服”を成し遂げるとは…開発者も泣いてます。
チュートリアルでラスボスの腹を破壊し、
なおかつ昼寝しながら太陽を克服する――
唯一の正史かもしれません。
さて、前回、我らが朱鷺(とき)ちゃんは、無惨様が千年探し求めた『青い彼岸花』の亜種、『碧い彼岸花』をあっさり献上。無惨様は狂喜乱舞と大混乱の渦中にあります。ここからが、この『鬼スタート』ルートの真骨頂ですよ
無限城、無惨の私室(ラボ)
無惨は、目の前にある一本の『碧い彼岸花』を、震える手で乳鉢に入れ、すり潰し始めた。 その目には、千年来の悲願達成への期待がギラギラと輝いている。
「(そうだ…これだ…。この匂い、この成分…。古文書にあったものと、九割九分一致する…! 微妙な色の違いなど、生育環境の差に決まっている!)」
彼は、手際よく成分を抽出し、漆黒の液体を精製すると、一瞬のためらいもなく、それを呷った。 そして、鳴女に命じ、無限城の構造を変化させる。 天井が開き、そこには、擬似的な「日光」を生み出す血鬼術の空間が用意された。
「朱鷺。貴様は、そこで、歴史の証人となれ」
「はぁい、無惨さま〜」
無惨は、ゆっくりと、その光の中へと足を踏み入れた。 ジュッ、という焼ける音は…しない!
「来た…! 来たぞォォォォ!!! 焼けない! 私の身体が、太陽の光で焼けない!」 歓喜。千年の孤独な戦いが、今、終わった。 彼は、完璧な生命体として、天に両手を突き上げた。
「ついに、ついに私は、完璧な――」
ギュルルルルルルルルルルッッ!!!!
「…………む?」
ドゴォォォォン!!!(腹の底から響く、地獄の釜が開くような音)
「(顔面蒼白)…あ……あ……あ゛」
次の瞬間。 鬼の始祖の姿は、そこになかった。 彼が立っていた場所から、無限城の最奥にある厠(かわや)まで、衝撃波の軌跡だけが残されていた。
あーっと! やはり亜種! 副作用がありました! 『碧い彼岸花』、効果は『一日限定の太陽克服』ですが、デメリットとして『致死レベルの下痢(致死はしない)』というとんでもないデバフが付与されるようです!
ガン! ガン! ガン! と、厠の扉を内側から凄まじい力で叩く音と、無惨様のうめき声が響き渡る。
「朱鷺ィィィィィ! 貴様ァァァ! 何を献上しやがった! 腹が! 私の腹がァァァ!」 「(きょとん)あらあら〜。お腹、こわしちゃったんですか〜?」
「胃腸薬だ! 今すぐ薬を持ってこい! 貴様のせいで、私のお成り(※高貴な方の排泄)が、止まらんのだ!!!」
おっと、無惨様から直々のクエストが発生しました。屋敷内を探索して胃腸薬を探す…のが普通ですが、朱鷺ちゃんには『暗殺術(SSS)』があります。つまり、薬学知識もカンスト済みです
朱鷺は「かしこまりました〜」と返事をすると、その場に懐から大鍋を取り出した。 そして、どこからともなく持ち出した、乾燥させた黒いトカゲの尾だの、泡を吹く紫色のキノコだの、ドクドクと脈打つ何かの根だのを、鍋に放り込み、煮込み始めた。
どう見ても魔女の毒薬です。本当にありがとうございました
数分後。 どす黒く泡立つ、およそ薬とは思えない液体を盃に注いだ朱鷺は、それを厠の扉の前まで持っていく。
「無惨さま〜、お薬できましたよ〜」
ガチャリ、と扉が数センチだけ開く。 そこから、脂汗でぐっしょりと濡れ、青白い顔をした無惨様が、疑いの目でその盃を睨んだ。
「…貴様。それは、なんだ」
「(にこにこ〜)わたしの教団に伝わる、秘伝の『止瀉薬(ししゃやく)』です〜。どんなに酷いお腹の病も、これ一発で治るんですよ〜。さあ、どうぞ〜?」
「(…この匂い…どう考えても猛毒のソレだ…。しかし…! この腹痛と、この小娘の無垢な笑顔…! ええい、ままよ!)」
無惨は、その毒薬(?)をひったくると、一気に飲み干した。 そして、ピタリ、と。 あれほど無限城を揺るがしていた腹の鳴動が、静まった。
「……」
彼は、ゆっくりと、しかし、まだ少し足元のおぼつかない様子で、厠から出てきた。 その顔には、安堵と、それ以上の疲労と、朱鷺に対する計り知れない困惑が浮かんでいた。
「…ふん。…まあ、効いたようだな」
(よしよし! 役に立ったのか立たなかったのか分からない、この絶妙なポジション! これこそが無惨様の好感度を稼ぐ最短ルートです!)
無惨が、疲れた様子で椅子に座り直した、その時。 朱鷺が、こてん、と首を傾げ、自分のお腹をさすった。
「あ、あのぅ、無惨さま〜。わたくし、お薬を作ったら、お腹が空いちゃいました〜」 「……」
その言葉が、無惨の理性の最後の糸を切った。
「…チッ! 勝手にしろ! さっさと外に出て、人間でも何でも喰ってこい! 貴様のその使えない花のせいで、私の威厳も何もかも滅茶苦茶だ! しばらく私の前に顔を出すな!」
ベベン! 鳴女の琵琶の音が響き、朱鷺の足元に穴が開く。
「きゃー!」
「はい、というわけで、無事に無限城から放り出されました! これにて、波乱万丈のチュートリアルは終了です! いやー、普通は『碧い彼岸花』イベントなんて無いはずなんですけどね! SSSランクの暗殺術(キリシタン)が生み出した、奇跡のバグスタートでした! さて、無惨様の友好度は『混乱』、朱鷺ちゃんのステータスは『空腹』 ここから、本格的に『鬼滅の刃RPG』、始まります!」
◇◇
さて、無限城から無一文で(比喩ではなく本当に)放り出されました、朱鷺(とき)ちゃんです。ステータス画面を開いてみましょう
「おっと、体力ゲージの横に、見慣れない紫色のゲージが表示されていますね。これが『鬼スタート』専用の【空腹ゲージ】です。これがゼロになると『飢餓状態』になり、プレイヤーの操作を一切受け付けなくなります。最悪、近くにいるNPCに無差別に襲いかかり、鬼殺隊に通報されてゲームオーバーです」
「(お腹をさすりながら)…むぅ。お腹が、すきました…」
というわけで、餓死(操作不能)る前に、早速『食材』を探しに行きましょう。なるべく、人に見つからないように…
朱鷺が、夜の闇に紛れようと物陰に身を潜めた、その瞬間。 [スキル:暗殺術(SSS)が発動] [パッシブ効果:気配遮断(EX)が作動します]
フワリ、と。 朱鷺の存在感が、完全に消えました。 足音も、匂いも、気配すらも。まるで、彼女だけがこの世の理から切り離されたようです。 さすがSSSスキル、格が違います。
「(きょとん)…あれ? なんだか、身体が軽いです〜」
これならイケますね。夜の闇に紛れて、手頃な家屋に侵入してみましょう。…お、あそこの立派な武家屋敷がいいですね
朱鷺は、まるで猫のように音もなく塀を乗り越え、警備の侍の真横を通り過ぎても、誰にも気づかれません。 そのまま、屋敷の主人が寝ているであろう、一番豪華な寝室へと侵入成功。 中には、酒臭い息を立てて眠る、恰幅のいい男が一人。
「(獲物、発見です〜)」
彼女は、懐から、教団で使っていた暗殺用の特殊なナイフを取り出します。 それは、黒い刀身に、『かくあれかし(※)』とだけ、冷たく刻まれた、不気味な得物。 (※仕事人・必殺シリーズのオマージュですね。芸が細かい)
朱鷺は、眠る男の首筋に、寸分の狂いもなく、その刃を突き立てた。
ザシュッ!
声も出させず、一撃で絶命。 そして、そのまま、彼女の初めての「捕食」が始まります。 …えー、このシーンは、倫理規定に配慮して、早送りでお送りします。
…はい、ごちそうさまでした。死体が見つかると、このエリアの『噂レベル』が上がって鬼殺隊の介入が早まるので、骨の一片も残さず、完食するのがセオリーです
[空腹ゲージがMAXになりました] [デバフ:満腹(軽度)が発生しました(素早さ-5)]
おっと、ロリ系の見た目なので、胃の容量が小さかったようですね。多少のデバフが発生しましたが、仕方ありません
翌朝。 朱鷺が潜んでいた路地裏まで、町人たちの歓声が聞こえてきます。 「あの強欲な岡っ引きが、昨晩から忽然と姿を消したらしいぞ!」 「天罰だ!」「これで俺たちの年貢も安くなる!」
なんと! 昨晩の男は、民衆を苦しめる悪人だったようです! これはラッキー! これなら『噂レベル』も上がらず、むしろ『謎の義賊』として、良い噂が広まる可能性があります
ここで、このゲームの捕食に関する基本解説です。 基本的に、男→女→子供の順で、鬼にとって『美味しく』なり、獲得できる経験値も高くなります。 一番効率的なのは子供を狙うことですが、これは『噂レベル』が爆発的に上がり、即座に柱クラスが派遣されるハイリスク・ハイリターンな諸刃の剣です
ですが、今回は、思わぬ道筋が見えましたね。 どうやら朱鷺ちゃんの『暗殺術(SSS)』は、こういう使い方が正解のようです。 人を食べまくって力をつけるしかありませんが…これからは『仕事人プレイ』を楽しんでみましょう
力なき者の怨嗟を晴らす、謎の暗殺者、朱鷺。 その正体が、獲物を骨まで喰らう、幼い鬼であるとは、誰も知らない。 これなら、鬼殺隊も、まさか鬼の仕業とは思わないでしょう。 『碧い彼岸花』の件といい、このプレイングといい、今回の朱鷺ちゃんは、本当に苦労しなさそうです。
さて、初回の捕食も無事に成功したところで、次の目的、血鬼術の獲得を目指…
…ん?
今、私の目の前には、信じられない光景が広がっています。 ゲーム内の時刻は、午前11時。 燦々と太陽が輝く、町外れの縁側で。
朱鷺ちゃんが、猫のように丸くなって、普通に日向ぼっこしています。
「(すぴー…すぴー…)…あったかい、です〜…」
な…! なぜ焼けない!? …ま、まさか…! 急いで、アイテム欄とステータス欄を確認。
[バフ:太陽克服(亜種)- 持続時間:23時間58分] [所持アイテム:秘伝の止瀉薬(改)]
思い出しました! あの時、無惨様のために調合した『秘伝の止瀉薬』! あれを調合した際、朱鷺ちゃんは、『碧い彼岸花』の薬効も、ちゃっかり自分の薬に混ぜ込んでいたようです!
つまり、
碧い彼岸花 = 太陽克服 + 激しい下痢
秘伝の止瀉薬 = 激しい下痢を止める
これを、同時に飲んだ結果…デメリットだけを完璧に打ち消した、『一日限定・太陽克服薬』が完成していたのです!
「(むにゃむにゃ)…無惨さま…おなか、痛いの…治って、よかったですねぇ…」
無惨様は、今この瞬間も、無限城で(おそらく)腹痛の再発に怯えながら、部下の粛清もできずにイライラしているというのに…。 当の本人(朱鷺)は、その原因となった奇跡の薬で、のんきに日向ぼっこを楽しんでいます。
…うん。 このルート、やっぱり、色々とネジが外れてますね!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
今回のテーマは――「無惨様でも腹は下す」。
どんなに完璧な生命体でも、食あたりには勝てません。
あなたなら、
「腹を壊した無惨様」と「日焼けする鬼」、
どっちのスクショを撮りますか?
感想や一番笑ったシーン、ぜひ教えてください!
――あなたのコメントが、朱鷺ちゃんの生存フラグになります