『始祖の見る朝日』~ロリ鬼はなぜ、無惨様を太陽の下に連れ出したのか?~   作:この俗物怪物くん

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「人と鬼、どちらが正しいのか」
そんな問いに、答えなどないのかもしれません。
この章は、朱鷺と猗窩座――かつて狛治と呼ばれた男が、煉獄杏寿郎と交わした“もう一つの夜明け”の記録です。
互いに譲れぬ信念を抱えた二人が、刀と拳で語り合う。
そこにあるのは、勝敗ではなく「赦し」の形。
彼らが選んだ終焉が、もしもほんのわずかにでも光を帯びていたなら――
その光こそが、人の強さであり、鬼の涙だったのかもしれません。


告解の雨、黎明を裂いて

列車の屋根の上、下弦の壱・魘夢との死闘は続いていた。機関室周りの肉塊は、猗窩座)の一撃で吹き飛ばされるも、即座に再生し、炭治郎と朱鷺に襲いかかる。炭治郎は魘夢の血鬼術にかかり、眠りと覚醒を繰り返しながらも必死に食らいつく。

 

「はぁ…はぁ…! くそっ…! また夢に…!」

 

朦朧とする意識の中、炭治郎は現実の自分の頸を斬りそうになる。それを朱鷺が間一髪で止めた。

 

「危ないですわ、炭治郎くん!」

 

だが、背後から忍び寄った運転士の錐が、炭治郎の腹部を貫く。

「ぐっ…!」

朱鷺は舌打ちし、運転士を手刀で気絶させるに留めた。

 

炭治郎は激痛に耐え、最後の力を振り絞る。上空に飛び上がり、列車と融合した魘夢の頸があるであろう場所目掛けて斬り込んでいく! しかし、そこにはおびただしい数の、不気味な目が待ち構えていた。

 

「まずい…! また眠らされる…!」

 

その時、朱鷺の絶叫が響き渡った!

 

「させないと………言ったああああ!!!」

 

彼女は、黒い暗殺ナイフ『かくあれかし』を核として、白銀の液体で形成された大鎌を天に掲げた!

 

「血鬼術! 告解の雨――滂沱(ぼうだ)!!!」

 

鎌の切っ先から、凄まじい水圧を持った乳白色の酸の濁流が、津波のように魘夢の肉塊へと叩きつけられた! ジュオオオオオオオオオ!!! 無数の目が悲鳴を上げる間もなく溶け落ち、分厚い肉壁を抉り、その奥にある頸椎の骨を白日の下に晒した!

 

「炭治郎くん! 今ですわ!!!」

「(朱鷺さんの血鬼術が…道を切り開いてくれた…!)はい! この一撃で…! 骨を断つ!!!」

「ヒノカミ神楽――碧羅の天!!!」

 

炎を纏った舞が、露出した頸椎を完璧に捉えた! ゴガッ!!! 鈍い音と共に、下弦の壱・魘夢の頸椎が断ち切られた!

 

やったああああ! 見事! 討伐完了です!

 

主を失った列車が制御を失い、激しく揺れながら脱線していく! 朱鷺は負傷した炭治郎を咄嗟に抱きかかえ、列車から飛び降りた。

 

地面に優しく下ろされる炭治郎。

 

「ありがとう、炭治郎くん。ごめんね」

「いえ…朱鷺さんこそ、ありがとうございます」

 

奇妙な共闘を経て、二人の間には、敵同士でありながら、かすかな連帯感のようなものが生まれていた。

 

ガシャアアアアアン!!! 列車は激しく脱線したが、死者はいないようだ。後方車両では、累が張った無数の糸がクッションとなり、衝撃をほぼ最低限に抑え込んでいた。

 

しかし、まだ終わらない。魘夢の肉片が蠢き、最後の悪あがきを見せる。

 

「ここまでやったのに負けたのか…? 裏切り者どもめ……! せめて道連れに…!」

 

だが、その肉片を、後から追いついてきた零余子が冷たく踏み潰した。

 

「お前は相手が悪かったのよ。諦めな!」

 

 

脱線した列車の傍らで、炭治郎は煉獄と猗窩座から呼吸による止血のアドバイスを受けていた。

 

「全集中の常中ができるようだな! もっと集中して研ぎ澄ませ! 破れた血管を感じて止血しろ!」

「そうだ。集中しろ。そこだ。…弱い自分を嘆くなら、鍛錬しろ。強くなれよ」

「はい! ありがとうございます!」

 

煉獄が、ふぅ、と息をつき、夜明け前の空を見上げた。

 

「うむ、さて…と」

 

猗窩座も、同じように空を見上げる。

 

「……そうだな……」

 

次の瞬間。二人の間から、凄まじい闘気が立ち昇った。

 

「…見事な戦いぶりだった。杏寿郎。炭治郎、善逸、伊之助。…だが…」

 

「ああ。…休戦は、この列車内だけ…だったな」

 

「その通り…と言いたいところだがな。これほどの騒ぎだ。貴様らを見逃してやろうとも思ったが…魘夢が殺された以上、俺も戦わずに帰ることはできまいよ。 …なあ、朱鷺?」

「(静かに頷き)…ええ。せめて、貴方一人の首は、此処に置いていってもらいますわよ。煉獄さん」

 

「安心しろ。戦うのは、俺一人だ。 そして、お前(煉獄)が死んでも、他の乗客や炭治郎たちは見逃してやる。それが、せめてもの礼だ」

 

「そうか。…そこの子(累)には、列車も守ってもらったからな。礼を言う」

「…別にいいよ。気まぐれさ。他の鬼に食われるのは気に入らないしね」

「(ニヤニヤ)あらあら〜。ツンデレっていうらしいですよ〜? お母様が言ってたわ(笑)」

「(顔を赤くして)なっ…! 姉上! 余計なことを…!」

「(ふふっ)なんか、吹っ切れたみたいね? 」

 

「(猗窩座に向き直り)初対面だが、君のことは嫌いではない。しかし、鬼は見過ごせん!」

「お前たちは、それで正解だろうさ。…さて、一つ、素晴らしい提案をしよう」

「お前も、鬼にならないか? その燃えるような闘気、その信念…貫くならば、永遠の強さが必要だろう?」

 

「ならない」

 

「(目を細め)…その闘気…練り上げられている。至高の領域に近い」

 

お! 今回は食欲じゃない! 純粋な武人としての賛辞ですね!

 

「改めて名乗ろう! 鬼殺隊・炎柱、煉獄杏寿郎だ!」

「上弦の参、猗窩座。 …そして、此処にいる朱鷺の、夫だ」

 

「!? 狛犬くん…!? あなた…記憶が…?」

 

朱鷺の顔に、驚愕と、そして、微かな希望の色が浮かぶ!

 

猗窩座は、朱鷺を一瞥し、そして再び煉獄に向き直った。

 

「鬼になれ、杏寿郎。 そうして、永遠に弱き者を守ればいい。その信念を、永遠に貫けばいい。人間には、それはできない。老いるからだ。死ぬからだ。鬼になろう、杏寿郎。そうすれば、百年でも、二百年でも、大切なものを守れる」

 

「断る! 老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。 老いるからこそ、死ぬからこそ、たまらなく愛おしく、尊いのだ!」

「強さというものは、肉体に対してのみ使う言葉ではない! 人間は弱くない! 何度でも言おう! 俺は、いかなる理由があろうとも、鬼にはならない!」

 

「…そうか…。…そうだな。人間とは、そういう奴らだった。俺も…かつては…」

 

彼は、一瞬、遠い目をした。だが、すぐに闘気を高める。

 

「…いや。今、俺は、守るもののために」

 

「術式展開――破壊殺・羅針!」

 

雪の結晶の陣が、猗窩座の足元に展開される。

 

「鬼にならないなら、殺す。 …構えろ、杏寿郎」

 

「フッ」

 

炎のような闘気を纏い、煉獄も構える。

 

次の瞬間、猗窩座の姿が消えた! 常人の目には追えぬ速度での踏み込み!

 

「破壊殺・乱式!!」

 

無数の拳の残像が、煉獄に襲いかかる!

 

「炎の呼吸・壱ノ型・不知火(しらぬい)!!」

 

炎の斬撃が、拳の嵐を切り裂き、いなしていく!

 

す、すげえ…! まさに、頂上決戦! 操作しているのは猗窩座さまですが、煉獄さんのAI、めちゃくちゃ強いです! これは、一瞬たりとも気が抜けません!

 

拳と刃が、激しく火花を散らす。

 

「(楽しげに)今まで殺してきた柱に、炎はいなかったな!」

「俺の誘いに応じるやつも、またいなかったよ!」

「今までは理解できなかった。なぜだろう? 同じく武の道を究めんとする者として、理解しかねた。選ばれたものしか鬼になれないというのに。素晴らしい才能を持つものが、醜く老い衰えていく…。俺は、我慢できなかった。死んでくれ。若く、強いままで…とな」

「…滑稽な話だ」

 

「はあっ!!」

 

煉獄の反撃! 炎を纏った刃が、猗窩座の懐深くへと迫る!

 

「破壊殺・空式!! おらああああ!!」

 

見えない拳圧が、煉獄を吹き飛ばそうとする!

 

「炎の呼吸・肆ノ型・盛炎のうねり!!」

 

渦巻く炎の盾が、空式を防ぎ切る!

 

「(感嘆)…この、素晴らしい反応速度! この、素晴らしい剣技…! …失われていっても当然。人間ならば、当然のことだ」

「だが、受け継がれていく…。血を介さなくても、子を残せなくても…そうだな? 杏寿郎」

 

「ああ! そこまで分かっているなら、なぜ!」

 

「それでも、俺は強さを求める!」

 

彼の瞳が、後方で見守る朱鷺を、一瞬だけ捉えた。

 

「なぜなら! 既に永遠を歩んでいるもののため! 俺を愛する者のため!」

「俺は…! 人間として! 鬼として! 『狛治』は、負けるわけにも、死ぬわけにも、いかないのだ!!!」

 

うおおおおおおおおお!!! 猗窩座さま! 記憶が!? 記憶が戻ってる!? いや、完全じゃない!? でも、『狛治』としての誓いが、彼を突き動かしている! 熱い! 熱すぎる展開です!

 

猗窩座の闘気が、さらに高まる。 煉獄もまた、その覚悟に応えるように、刀を握りしめる。 二人の死闘は、夜明けが近づく中、さらに激しさを増していく!

 

 

 

◇◇

 

 

 

煉獄さん vs 猗窩座さま! まさに死闘! こちらが操作している猗窩座さまも、煉獄さんの猛攻に何度も体勢を崩されています! AIのくせに強すぎる!

 

凄まじい技の応酬。 煉獄の身体は、もはや限界を超えていた。片目は潰れ、肋骨は砕け、内臓も傷ついている。呼吸をするだけで、血が逆流するほどの重傷。

 

「…生身を削る思いで戦うか…素晴らしい人間の力だ。 だが、杏寿郎。その傷は、もう取り返しがつかない」

「鬼であれば、瞬きする間に治る。 だからこそ…人間は練り上げた。技術を。継承を。高みを目指して…。だが…」

 

彼の瞳が、憐れむように煉獄を捉える。

 

「化け物にも、矜持はある。 この場では、どうあがいても、化け物(俺)には勝てないぞ、杏寿郎…」

 

その言葉に、後方で戦いを見守っていた炭治郎が動いた!

 

「煉獄さん!」

 

彼が、刀を杖代わりに、二人の間に入ろうとする!

 

ヒュン! しかし、その足元に、鋭い糸が数本突き刺さり、彼の動きを止めた。累だ。

 

「ぐぅ! なにを……あれ?」

 

糸は、炭治郎を傷つけるのではなく、彼の腹部の傷口を、器用に縫い合わせているではないか!

 

「(冷たく)…お前が死んだら、妹(禰豆子)が悲しむだろう? 悪いけど、そのまま見ていて。…僕たちだって、本当は助けに入りたいんだ」

 

彼は、苦しげに父(猗窩座)を見つめている。

 

煉獄の身体から、再び、凄まじい闘気が燃え上がる!

 

「俺は、俺の責務を全うする! ここにいる者は、誰も死なせない! そして、お前を斬る!!」

 

炎が、爆ぜた。 煉獄の全身が、灼熱の炎に包まれる。それは、彼の生命そのものを燃やすかのような、最後の輝き。 (一瞬で、広範囲の肉を根こそぎ抉り斬る、奥義…!)

 

「(息を呑む)…見事だ…! それほどの傷を負いながら、この闘気、気迫、精神力…! 一分の隙もない構え…!」

 

彼は、初めて、心の底から笑った。

 

「ははは! やはり、人間というものは、素晴らしいなあ!」

 

「限界を超えろ! 心を燃やせ!! 俺は、炎柱! 煉獄杏寿郎!!!」

「奥義・玖ノ型――煉獄!!!!」

 

「ならば、こちらも応えよう! 破壊殺・終式――青銀乱残光(あおぎんらんざんこう)!!!!」

 

「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」

 

炎の龍と、青銀の流星が、激突する! 凄まじい衝撃波が、周囲の木々を薙ぎ払い、地面を抉る!

 

「(目を見開き)……互角…!?」

 

煙が晴れた時。 猗窩座の右拳は、煉獄の鳩尾を深く貫いていた。 そして、煉獄の日輪刀は、猗窩座の頸に、半分ほど食い込んでいた。

 

「ぐうっ…! だが…! まだ負けてはいない! 首は、まだ繋がっているぞ! 杏寿郎!!!」

「(血反吐を吐きながら)俺も…まだ、死んでいない! お前の首を! 落とすまでは!!!」

 

互いに、致命傷。 だが、鬼である猗窩座は再生する。人間である煉獄は…。 勝負は、決したかに見えた。

 

しかし、猗窩座の腕が、煉獄の身体から抜けない! 煉獄の、凄まじい筋肉の収縮が、彼の腕を捕らえて離さないのだ! そして、東の空が、白み始めている…!

 

「(な…!? この力…! 腕が抜けない…! まずい、朝が来る…!)」

「(…関係ない!! 俺は、俺はここで決着をつけなければ、前に進めない! 思い出した、この記憶に! 俺自身の中で、決着をつけなければ!)

「(たとえ、この身が滅んでも…いや! 生きて勝つ! 朱鷺!! 俺に力を!!!)」

 

「動け! 伊之助! 煉獄さんのために、動け!!」

「はっ! うおおおおお!!!」

 

炭治郎と伊之助が、最後の力を振り絞り、猗窩座へと斬りかかる!

 

まずい! ここで攻撃が通れば、相打ちになる! 猗窩座さまが操作可能な状態にならない! バグか!?

 

「それは、ダメよ!」

 

零余子が、伊之助の前に立ちはだかる! 彼女の血鬼術『蜃』が発動! 伊之助の斬撃は、霧のような幻影をすり抜け、逆に、霧の中から現れた拳が、伊之助を吹き飛ばす!

 

「ぐはっ! なんだ今の!?」

 

同時に、朱鷺が、炭治郎を押さえつける! しかも、馬乗りで!

 

「どいてください! 煉獄さんを…!」

 

しかし、朱鷺は、泣いていた。 涙をボロボロと流しながら、必死に炭治郎を押さえつけている。

 

「(嗚咽)…この戦いは…邪魔しないで…! お願いだから…!」

 

彼女には、分かっていた。これが、猗窩座(狛治)にとって、どれほど重要な戦いなのか。そして、煉獄という男が、どれほど尊い存在なのか。

 

「(陽光が差し込む!)…だが、逃げない! 俺は、絶対に逃げない!!」

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

「これで、終わらせる!!! 俺は勝つ! 勝つ!! 勝つ!!! 勝つんだ!!!!」

 

ゴッ!!! 猗窩座は、煉獄の腹筋に捕らえられた右腕を、自ら引きちぎった! そして、残った左腕で、渾身の裏拳を、煉獄の顔面に叩き込んだ!

 

煉獄の体が、糸の切れた人形のように、後方へと吹き飛ばされる!

 

決着!!! 右腕は失いましたが、猗窩座さまの、勝利です!!

 

猗窩座は、朝日を浴びて苦悶の表情を浮かべるが、そこに累が駆け寄る!

 

「父さん! 早くこれを!」

 

差し出されたのは、『太陽克服(一日限定・激マズ)薬・改』!

 

猗窩座は、舌打ちしながらも、それを素早く飲み干した!

 

「(顔をしかめ)…ぐ…! まずい…!」

 

だが、身体が焼ける苦しみは、確かに和らいでいく。

 

よし! これで、ひとまずは決着! 無事に猗窩座さまも生存! ですが…煉獄さんは…

 

夜明けの光の中、鬼たちは静かにその場を後にする準備を始める。 残されたのは、重傷の鬼殺隊士たちと、地に伏した炎柱。 無限列車編、その壮絶な結末は、もうすぐそこまで来ていた。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

…終わりました。炎柱・煉獄杏寿郎 vs 上弦の参・猗窩座。凄まじい戦いでした…。結果は、猗窩座さまの辛勝。ですが、その代償は、彼の右腕一本。そして何より、『狛治』としての記憶の一部を取り戻しかけたことによる、深い精神的な動揺でした」 「白熱しました…そして、泣けましたね…

 

朝日が昇り始め、猗窩座は『太陽克服薬(一日限定・激マズ)』の効果で辛うじてその場に留まっている。 朱鷺(とき)、累(るい)、零余子(むかご)が、彼の元へ駆け寄る。

 

「狛犬くん! 大丈夫ですの!? 腕が…!」

「父さん! 無事ですか!」

「もう! 無茶ばっかりするんだから!」

 

三者三様の心配の声。それは、もはや演技ではない、本物の家族のような響きを持っていた。猗窩座は、その声に、戸惑いながらも、どこか安堵するような表情を浮かべていた。

 

一方、地に伏した煉獄は、最後の力を振り絞り、ゆっくりと起き上がろうとしていた。しかし、身体はもう動かない。彼は、自らの死を悟っていた。 それでも、彼は、駆け寄ってきた炭治郎たちに、穏やかな笑顔で語りかける。

 

「…竈門少年…。俺の生家へ行くといい…。歴代炎柱が残した手記がある…。そこに、君が言う『ヒノカミ神楽』…『日の呼吸』の手がかりがあるかもしれん…」

 

原作通りの、最後の言葉。

 

その時、炭治郎が、ハッとして猗窩座の方を振り返った。

 

「 あの…! 猗窩座さんに、何か話があるそうです!」

 

煉獄は、静かに頷き、猗窩座に向かって声をかけた。

 

「…君は、強かった。俺は、負けた。 …鬼に負けて、これほど晴れやかな気分になったのは、初めてだ。だから…少し、話をしてみたかった」

 

猗窩座は、驚いたように煉獄を見た。そして、静かに答える。

 

「…杏寿郎。…いつだって鬼殺隊は、俺たちに有利な夜の闇の中で戦っている。人間は、傷も簡単には治らない。それでも、俺は…逃げることはしなかったつもりだ」

「ああ…君は強かった。化け物の矜持…だったか。見事だったよ」

「…お前は、俺よりも、ずっと強かったよ、杏寿郎。…俺にも、あの時(人間だった頃)、お前ほどの強さがあれば…」

 

煉獄は、穏やかに笑った。

 

「その後悔を抱えても、歩くことに決めたのだろう? 鬼が、泣くな。泣かないために、鬼になったのだろう?」

「…!」

 

「…今回の勝負は、俺の勝ちだ。だが…俺は、お前に負けた気分だよ」

 

彼は、そう言うと、煉獄に背を向けた。 そして、朱鷺の肩をそっと抱き寄せ、その場を去ろうとする。その横顔は、どこか悲しげな笑顔に見えた。

 

「狛犬くん…」

 

彼女は、何も言わず、ただ、彼の背中に寄り添った。

 

…煉獄さん、逝去。無限列車編、終了です…。悲しいですが、これが原作の流れ…。しかし、感傷に浸っている暇はありません! この後には、恐ろしい無惨様への報告が待っています!

 

無限城。 朱鷺と猗窩座は、無惨の前にひざまずいていた。

 

「ご報告に参りました、お兄さま(無惨)」

「(書類から目を離さず)…で?」

「魘夢は、失敗いたしました。 あろうことか、わたくしにまで血鬼術をかけるという体たらく。ですので、わたくし自ら、粛清いたしましたわ」

「…そうか。ご苦労」

 

(よし! 魘夢の件は、上手く誤魔化せた! 問題は、次だ…!)

 

無惨の視線が、猗窩座に向けられる。

 

「…そして、猗窩座。貴様、柱を殺したそうだな」

「はい。魘夢が死んだ以上、手ぶらで帰るのも憚られましたので」

 

ピキッ。 無惨の額に、青筋が浮かんだ。

 

「…お前は、思い違いをしている。 得意げに、柱を一人殺しただと? …その場には、他に三人の鬼狩り(炭治郎たち)がいたはずだな? 十二鬼月と、私の側近がいて、柱以外は、一人も殺せなかった、と?」

 

ブシャアアアア!!! 猗窩座の身体から、血が噴き出した! 無惨のパワハラ細胞破壊攻撃だ!

 

「ぐ…っ!」

 

その時、朱鷺が、毅然として割って入った!

 

「お待ちくださいまし、お兄さま! それは、わたくしが約束したのです! 煉獄杏寿郎、一人を殺すのみ、と!」

「(苦悶しながら)いや、朱鷺! 俺は、俺が…!」

「黙れ、猗窩座」

 

無惨の、絶対零度の視線が、朱鷺に向けられる。

 

「…朱鷺よ。…どういうつもりだ? 私は、『耳飾りの剣士は殺せ』と、確かに命じたはずだが…?」

 

やばいやばいやばい! 最大の地雷を踏んだ! ここでしくじれば、友好度『親密』も水の泡! 最悪、ゲームオーバー…!

 

朱鷺は、しかし、怯まなかった。 彼女は、まっすぐに無惨を見据え、言い放った。

 

「覚えております。しかし、あの場では、できませんでした」

「…何故だ?」

「わたくしの、矜持に、反しましたから」

「…もし、それでもお疑いならば、わたくし自身の命にかけて…!」

 

「!」

 

無惨の目が、わずかに見開かれた。 彼は、朱鷺の瞳の奥にある、揺るぎない覚悟を見た。そして…おそらくは、彼女が持つ、猗窩座への、歪んだ、しかし絶対的な『愛』をも。

 

無惨は、しばし黙っていたが、やがて、ふっと息をついた。

 

「……。そうか。…ならば、いい。お前ができなかったのなら、他の誰にも、できんだろう。…下がれ」

 

[友好度:+1]

 

ふーーーーーーーっ!! 助かったあああああ!!! しかも、友好度が1上がった!? なぜ!?

まさか…朱鷺ちゃんの『矜持』とかいう、無惨様には絶対理解できないであろう概念に、逆に『こいつ、面白い』とでも思ったんですか!? この方の思考回路、本当に分かりません…!

 

朱鷺は、安堵の息をつき、猗窩座と共に下がろうとした。 しかし、彼女は、最後に、振り返り、無惨に向かって、深く、深く頭を下げた。

 

「お兄さま…。わたくしが…必ず、貴方様に、朝日を見せてご覧に入れます!」

 

その言葉に、無惨は、一瞬、虚を突かれたような顔をした。 そして、ほんのわずかに、口元に笑みを浮かべた…ように見えた。

 

「………当然のことだ」

「…………………………………頼むぞ。妹よ」

 

…やった。これで、トロフィー獲得へのフラグは、完全に立ったはずです。あとは…あとは、禰豆子ちゃんが太陽を克服し、無惨様がそれを知る、その時を、待つだけ…!

 

朱鷺は、血を流しながらも安堵の表情を浮かべる猗窩座の手を取り、静かに無限城を後にした。 彼女たちの、長くて短い夜は、まだ終わらない。




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
原作では決して成し得なかった「煉獄との真なる対話」を描けたことは、私にとっても長年の念願でした。
「俺は勝つ!」という言葉に込めたのは、暴力でも誇りでもなく――“過去の自分に打ち勝つ”という祈りです。
この章の猗窩座を、あなたはどう見ましたか?
救われたと思いますか? それとも、まだ赦されていないと思いますか?
もしよければ、あなたの感じた「夜明け」を教えてください。
コメント欄で、お待ちしています。
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