『始祖の見る朝日』~ロリ鬼はなぜ、無惨様を太陽の下に連れ出したのか?~ 作:この俗物怪物くん
今回の『鬼滅の刃RPG:血の宿命』は――江戸無惨ルート、極限の耐久戦編です。
「告解ノ雨」の覚醒で一躍トップクラスの鬼となった朱鷺。
しかし同時に、「食料が溶ける」という欠陥を抱えた彼女は、再び“無惨様の庇護(=パワハラ)”の元に戻ることに。
そして迎えるのが――祝言、結婚、兄の乱入。
地獄の家庭ドラマが、まさか江戸の座敷で繰り広げられるとは。
トロフィー『始祖の見る朝日』を狙うその道のりは、もはや“百年単位の忍耐ゲー”。
愛、理不尽、そしてバグの狭間で、朱鷺ちゃんの旅は続きます。
さて、朱鷺(とき)ちゃんが江戸で『本草学者の養女』兼『幕府公認の仕事人』としての日々を始めてから、早二年が経過しました。彼女の仕事は、完璧そのものです
表では、人間嫌いの義父に代わり、奉行所に極上の薬を納める、儚げで美しい少女。 裏では、その薬学知識(毒薬)と『暗殺術(SSS)』を駆TCGし、幕府の厄介事を「処理」する、凄腕の暗殺者。
彼女の完璧な『仕事』ぶりは、すぐに江戸城上層部の知るところとなりました。依頼主も、最初のうちは奉行所の小役人が仲介でしたが、すぐにお奉行様本人となり、江戸城詰めの役人を経て…今ではなんと、老中付きの大目付・九条様から、直接依頼を頂戴するまでに出世しました。大したキャリアアップですね
その夜。朱鷺は、江戸城の一室で、大目付・九条と向き合っていた。
「…久しいな、朱鷺殿。貴殿の薬のおかげで、老中様のご機嫌もすこぶる良い。表の仕事も、見事なものだ」
「(にこにこ〜)それは、ようございました〜。それで、今日の『お薬』は、どちらのどなたに、お届けいたしましょうか〜?」
「(目を細め)…今回の標的は、大物だ」
彼が差し出した紙には、『公儀隠密・筆頭 橘 右京(たちばな うきょう)』の名が記されていた。
おっと、これは過去最高難易度のターゲットです。公儀隠密、つまり幕府直属のスパイマスター。彼自身も、朱鷺ちゃんとは別系統の暗殺術の達人です。これは骨が折れる…
朱鷺は、その名を見ても、表情一つ変えない。 ただ、赤い瞳で、じっと九条を見つめた。
「…九条さま。この方は、『知りすぎた』のですか〜?」
「…いかにも。知りすぎた者は、時に、害悪となる」
「(ふふっ)…わたくしも、貴方たちの『厄介事』を、知りすぎている一人ですわよね? わたくしは、いつ、『厄』になりますの?」
シン、と部屋が静まり返る。 暗殺者(朱鷺)と、その依頼主(九条)の、冷たい腹の探り合い。 ここで選択を誤れば、朱鷺は幕府からも追われる身となる。
九条は、あからさまに動揺した。冷や汗が、その額に浮かぶ。
「な、何を言うか! 貴殿は、我らの『薬』だ! 厄であろうはずが…!」
「(…嘘の気配が、濃いです〜)」
まずいですね。このままでは、この依頼を達成しても、次は自分が消される。ここは、一旦、市井の仕事人に戻るしかないか…? そうなると、捕食効率が大幅に下がり…
朱鷺が、そっと立ち上がろうとした、その時。 九条が、慌てて口を開いた。
「ま、待て! 待ってくれ! …そ、そのようなことには、絶対にならん! ならないように、このワシがする!」
「…ほう? その、根拠は?」
「(観念したように)…愚息が…。ウチの愚息が、貴殿に、その…ほの字なのだ…。 貴殿が奉行所に薬を納めに来るたび、隠れて見ているのを、ワシは知っておる…。あの子が、ワシに泣いて懇願したのだ。『あの白い髪の姫を、決して傷つけないでくれ』とな…!」
…なんと! 大目付の息子が、朱鷺ちゃんにガチ恋勢だったとは! これぞ、ロリ系美少女ビルドの真骨頂! 権力者の身内を、無自覚に籠絡していました!
朱鷺は、じっと九条の気配を探る。
「(…嘘の匂いは、しませんね〜。息子の情に絆(ほだ)されるとは。九条さまも、人の親、ですのね〜)」 彼女は、再び席に座り直した。
「よろしいでしょう。その『お仕事』、お受けいたしますわ」
暗殺は、困難を極めた。 標的である橘右京は、さすが公儀隠密の長。朱鷺の『気配遮断(EX)』を、何度も見破りかけた。 屋敷は罠だらけ。影には、常に部下たちが潜んでいる。
「(…ふふっ、楽しいです〜。久しぶりに、本気のお仕事です〜)」
だが、彼女のスキルは『SSS』。格が違った。 罠を逆利用し、影を影で制し、彼女は、ついに橘の寝所に忍び込む。 そして、月明かりが刀身を濡らすよりも早く、『かくあれかし』が、その頸動脈を切り裂いていた。
暗殺、成功! 食事は後回しです! 敵の増援が来る前に、ここから離脱…ん!?
その時だった。 朱鷺の身体が、凄まじい熱を発し始めた。 食べた悪人たちの怨嗟か、それとも、彼女が殺し続けた業か。 身体の奥底で、何かが、弾け飛んだ。
「(あ…あつ…い…? なに、これ…。空が…泣いてる…?)」
[血鬼術、覚醒]
彼女の周囲に、霧のような雨が降り始めた。 乳白色の、静かな、静かな雨。 だが、その雨粒が、屋敷の瓦に触れた瞬間、ジュウウウウウ!という音と共に、瓦が、煙を上げて溶けていく。
「(わぁ…きれい…)」
彼女は、その雨を、不思議そうに手のひらで受け止めた。 彼女の肌だけは、溶けない。
[血鬼術名:告解ノ雨(こっかいのあめ)]
◼ 概要
静寂の祈りとともに空が白く濁り、乳白色の酸の雨が降り注ぐ。 その雨は彼女の血から生まれ、触れたものすべてを無音のうちに溶かす。 人も鬼も、武器も建物も、例外なく融解していくが、術者自身は決して傷つかない。
雨の強度・範囲・持続時間は、術者の意思で精密に制御可能。 その姿はまるで“神の奇跡”でありながら、 実際には「祈りの形をした審判」にほかならない。
◼ 効果
降雨範囲: 最大半径100メートル(術者の集中次第で縮小・拡張可能)
酸性強度: 鬼ですら再生不能。細胞単位で融解し、血肉も骨も気化する。
音響特性: 雨がすべての音を吸収し、世界は完全な静寂に包まれる。
走者(私):「強力です! 強力ですが…!」
朱鷺が呆然と見守る中、『告解ノ雨』は、橘右京の亡骸はおろか、彼が隠し持っていた密書も、部下たちの気配も、屋敷そのものも、音もなく溶かし、消滅させてしまった。
走者(私):「あー! 獲物(食事)が! 獲物が消えちゃいましたー!」
朱鷺:「(ぽかん)…あ…。わたくしの、ご飯…」
強力すぎる血鬼術。それは、鬼としての彼女の食料調達を、根底から覆しかねない、諸刃の剣だった。 使い所が、あまりにも難しすぎる。 朱鷺は、空腹を抱えたまま、静かに雨が降り続く現場を、後にするしかなかった。
◇◇
血鬼術『告解ノ雨』に目覚めた朱鷺(とき)ちゃん。しかし、この技は獲物(食事)まで溶かしてしまうため、仕事人プレイとの相性は最悪です。まあ、それは些細な問題。それよりも、大目付・九条様の息子さんとの関係が進展しました
九条 和馬(くじょう かずま)御年16歳。 父とは似ても似つかぬ、心優しく、真っ直ぐな気性の少年だった。 彼は、父の屋敷に薬を届けに来る、儚げな白い髪の少女(朱鷺)に、本気で恋をしてしまったのだ。
彼は実に善良なNPCです。朱鷺ちゃんが裏で悪人を喰らう鬼だとは夢にも思わず、純粋なアプローチを続けてきました。そして…
「(…結婚…ですか〜? わたくしと、和馬さまが…?)」
「は、はい! 貴女が、赤松先生の養女であろうと、髪の色が人たと違おうと、構いません! 貴女を、一生、俺が守りたい!」
プロポーズイベント発生! これは、江戸で生きる『隠れ蓑』として、最高の手札です。もちろん、受け入れます
[ステータス更新:朱鷺(見た目14歳) → 朱鷺(見た目16歳)に擬態成長を開始]
鬼は成長しませんが、『擬態』スキルで見た目年齢を調整できます。これで16歳の和馬くんと祝言を挙げても不自然ではありませんね
こうして、朱鷺は、大目付の息子・和馬と、ささやかながらも祝福された祝言を挙げることになった。 これで、江戸における彼女の身分は、完全に安泰となりました。
そして、祝言の日。 朱鷺は、美しい白無垢に身を包んでいた。 その隣には、緊張でカチカチになった和馬。 だが、問題は、その高砂(たかさご)の、朱鷺側の親族席に座る、謎の男だった。
無惨「…ふむ。なかなか良い祝言ではないか、朱鷺。その男、和馬とか言ったか。私の大事な妹を、泣かせたらどうなるか…分かっているな?」
「(冷や汗だらだら)は、はい! 命に代えましても、朱鷺殿を幸せにいたします、お義兄(にい)さま!」
怖いいいいいい!そうなんです。皆さん、お忘れかもしれませんが、無惨様、最近ようやく朱鷺ちゃんのことを思い出しまして。どうやら、例の『碧い彼岸花(亜種)』の件で彼女を側に置くため『朱鷺は、遠い昔に生き別れた、私の実の妹である』という、とんでもない後付け設定を、自らの記憶と朱鷺の記憶に強制的に刷り込んだのです!
その結果、これです。『妹の結婚式に出席する、心優しい(?)兄』という、地獄の絵面が完成しました。ちなみに無惨様、夫となった和馬くんと、普通に仲良く酒を酌み交わしてます。怖すぎる
「(白無垢姿でにこにこ〜)お兄さま、お酒、ついであげますね〜」
「うむ。…和馬くん、君のところの米相場は、最近どうなのだね?」
「は、はい! お義兄さまのところには及びませんが、今年は…」
朱鷺ちゃん自身は、この状況を『最高の隠れ蓑』だと割り切っているようです。しかし、ステータスを見ると、夫・和馬への『愛着』も芽生えている模様。妻としての務めも、ちゃんと果たしています。寝る時も一緒です。…和馬くん、鬼の身体能力を持つ妻との夜は、色々と大丈夫なんでしょうか…
祝言を挙げ、幸せな新婚生活を手に入れた朱鷺。 だが、彼女の『仕事人』プレイは、終わらない。 いや、むしろ、兄という立場を手に入れた無惨様からの無茶振りは、ここからが本番だった。
江戸の屋敷で贅沢三昧の暮らしを送る朱鷺の元へ、夜な夜な、実兄(無惨)が、指令を持って訪れるのだ。
<普通の指令>
「朱鷺。最近、江戸で嗅ぎ回っている鬼狩りがいる。鬱陶しい。始末しろ」
「朱鷺。私の商いが拡大しすぎた。金(活動資金)が足りん。明朝までに、黄金千両を用立てろ」
<おかしな(理不尽な)指令>
「朱鷺。この刺繍を見ろ。この複雑怪奇な『変な模様の刺繍』を、今から一分で完璧に仕上げてみせろ。できなければ、お前の夫の指を一本折る」
「(にこにこ〜)はい、お兄さま〜(暗殺術SSSの手さばきで、50秒で仕上げる)」
「(イライラしながら)…朱鷺。私は今、猛烈にイライラしている。 その原因を探り、即刻、排除しろ」
「(きょとん)…お兄さま。原因は、特にないようです〜。『ただ、なんとなくイライラしている』だけ、です〜」
「なんだと! 私が、理由もなくイライラなど…!…うむ。そうかもしれん。…なら、私が満足するまで、肩でも揉んでいろ」
これです! これが、このゲームの真の地獄です!」 「無惨様は、朱鷺を便利な道具として酷使しますが、『妹』という設定と、例の『碧い彼岸花』の件があるため、決して殺しはしません。その代わり、友好度を上げるために、これらの理不尽なミッションを、100%完璧にこなし続けなければならないのです。一つでも失敗すれば、友好度は即座に『不信』まで急降下します
なぜ、こんな苦行を続けるのか。それは、トロフィー『始祖の見る朝日』の獲得条件、『日光を克服した無惨と、友好度親密以上で朝日を見る』ためです
ここで、最大の注意点。 朱鷺ちゃんの血鬼術『告解ノ雨』は、日光克服とは何の関係もありません。もし、プレイヤーである朱鷺ちゃんが、何かのバグや裏技で先に日光を克服してしまうと…
[GAME OVER - お前は、私のための『部品』だ] (※無惨様に吸収され、取り込まれて終了)
はい、これで3敗してます。このゲーム、主人公が先に日光克服すると、問答無用で無惨様に食われてゲームオーバーなんです
つまり、我々がやるべきことは一つ。 原作の主人公、竈門炭治郎の妹、『竈門禰豆子』というNPCが、日光を克服するというメインシナリオのイベントが発生するまで、ひたすら待ち続けるしかないのです
江戸時代から、大正時代まで。およそ、百年単位の時間がかかります。 その百年以上もの間、ひたすら、無惨様の機嫌を取り、理不尽な命令をこなし続け、友好度を『親密』まで引き上げる。 これが、このゲームを『江戸時代スタート』で行った、本当の理由です
朱鷺は、今日も、夫・和馬の寝顔を見つめた後、そっと屋敷を抜け出す。 実兄(無惨)から命じられた、新たな「仕事」をこなし、その獲物を喰らうために。 彼女の、長くて、気が遠くなるような、鬼としての夜が、続いていく。
ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。
今回のテーマは――「永遠の服従と、永遠の仮面」
朱鷺ちゃん、江戸で結婚しました。
でも、夫の寝顔を見つめながら、夜ごと人を殺す。
昼は薬師、夜は仕事人、そして“妹”という偽りの身分。
でも、ここまできてやめられない。
百年後の「朝日」を見るため、彼女はまだ走り続けるのです。
あなたなら、この理不尽耐久ゲーを続けられますか?
そして――もし無惨様が“あなたの兄”になったら、どうします?
感想をお聞かせください。